- 「別居が理由で慰謝料請求はできる?」
- 「別居時の婚姻費用や慰謝料を請求する方法が知りたい」
別居が理由で慰謝料を請求できるケースがあるということをご存じですか?一方的な別居や法的な問題になる可能性が高く、場合によっては慰謝料を請求できます。また夫婦の収入によっては、別居時に婚姻費用を請求できる可能性があります。
こちらの記事では法的な判断基準や勝手に別居されたときの対処法、慰謝料の請求方法について詳しく解説。別居後の不倫や浮気で慰謝料を請求できるかについては、別居中の夫婦関係がポイントになります。場合によっては専門家の力を借りながら、一方的に不利な立場にならないようにしましょう。
別居は法的な問題になる?
まずは別居の法的判断について解説していきます。本記事を読んでいる方の中には「別居すると訴えるぞ」と脅されている方や「夫が勝手に家を出ていった…これって慰謝料請求できるの?」とお悩みの方がいるかもしれません。いかなる理由があっても、別居をすると法的な問題になるのでしょうか?
「悪意の遺棄」とみなされる可能性がある
別居の様態によっては、「悪意の遺棄」とみなされる可能性があります。次項では悪意の遺棄について解説しています。
悪意の遺棄とは
「悪意の遺棄」とは、民法上の夫婦間の義務違反を指します。言葉の意味として、「悪意」とは社会的や倫理的に非難に値する要素を含みます。「このようなことをするとこうなるだろう」と知っていたことを意味します。そして「遺棄」とは、正当な理由なく夫婦間の義務を履行せず、その状態を一定期間継続させることを指します。
夫婦間には、次のような義務があると民法第752条・760条に規定されています。
(同居、協力及び扶助の義務)
第七百五十二条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
(婚姻費用の分担)
第七百六十条 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
引用:民法|e-GOV法令検索
つまり、次の4つの義務があるということが分かります。
- 同居して生活すること(同居義務)
- 協力して生活すること(協力義務)
- 互いに助け合って生活すること(扶助義務)
- 婚姻費用を分担すること
これらを総合すると、悪意の遺棄とは「積極的に婚姻生活や共同生活の維持を破綻させる意思を持ったり、破綻しても構わないという意思を持ちながら、民法に規定された夫婦間の義務を継続的に履行せず、共同生活を拒否すること」という意味となります。
悪意の遺棄に該当する別居
とはいえ別居すべてが悪意の遺棄に該当するという訳ではありません。悪意の遺棄とみなされるのは、正当な理由がない別居の場合です。別居に正当な理由があるかどうかについては、別居開始時の夫婦関係や別居の様態、別居に至る経緯や理由、別居後の生活状況や双方の言動などを見て総合的に判断されます。
一般的に悪意の遺棄と認められやすいのは、次のようなケースです。
| 同居義務違反 |
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| 協力義務違反 |
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| 扶助義務違反 |
|
悪意の遺棄と認められるためには、一方的な別居が非難に値するかがポイントに。小さい子どもがいる、家に残された側に収入が無い、配偶者や子どもが病気を持っているなど具体的な状況を主張・立証していくことで、悪意の遺棄が認められやすくなります。
悪意の遺棄で離婚を考えたときのポイントは、こちらの記事を参考にしましょう。
「悪意の遺棄での離婚|認められる条件と必要な証拠、スムーズに離婚するためのポイントとは」
離婚原因の根拠となる
そして悪意の遺棄は、法律上の離婚原因や慰謝料請求の根拠となります。民法には法律で認められた離婚理由「法定離婚事由」として、次の5項目を規定しています。
(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
引用:民法|e-GOV法令検索
法定離婚事由の2番目が、今回のテーマである悪意の遺棄です。裁判所で別居が悪意の遺棄に該当すると判断されれば、相手が離婚を拒否していたとしても離婚が認められます。一方で悪意の遺棄をした側は「有責配偶者」となり、有責配偶者からの離婚請求は原則として認められません。
また相手が勝手に家を出ていったまま別居期間が3年、4年、5年と過ぎてしまうと、長期の別居自体が夫婦関係の破綻とみなされて、5番目の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚が認められる可能性も。勝手に家を出ていかれたものの離婚はしたくないという方は、別居解消のための策を取る必要があります。
慰謝料請求の根拠となる
悪意の遺棄で離婚した場合、離婚慰謝料を請求できる可能性があります。以下で詳しく説明していきますが、悪意の遺棄で請求できる慰謝料には相場があり、請求するためには証拠の確保も必要です。相手の悪意の遺棄で慰謝料請求を考えている方は、速やかに慰謝料請求の準備を進めるようにしましょう。
家庭内別居は「別居」ではない
家庭内別居も別居になるの?という疑問をお持ちの方がいるかもしれません。確かに同じ家に住んでいるだけで会話もなく家計も全く別であれば、別居とほぼ同じことと考えてもおかしくありません。しかし法律上の扱いは、家庭内別居と別居は全く別物になります。
というのも第三者の目で見ると、夫婦が完全に別居している場合には、夫婦関係が破綻していることは明らかです。そのため離婚を認められやすい傾向にあります。一方で家庭内別居の場合は、表向きは同じ家に住んでいるため、夫婦関係が破綻しているかなど家庭内の状況は判断できません。そのため、離婚を希望する場合でも、裁判で認められにくい傾向があります。
家庭内別居の定義やデメリットについては、こちらの記事を参考にしてください。
「家庭内別居はどのような状態?離婚理由になる?メリットやデメリット、注意点を知ろう」
勝手に別居されたときの対処法
ある日突然夫や妻が家を出ていって勝手に別居されてしまった場合、最も怖いのはこの現状が既成事実となってしまうこと。何も対応を取らないままでいると、別居を容認したとみなされてその後の慰謝料請求や離婚交渉で不利になる可能性があります。自分の権利や生活を守るためにも、次のような対処が必要です。
婚姻費用を請求する
夫が勝手に家を出ていった場合、残された妻と子どもの生活費(婚姻費用)を請求できます。民法第760条にも規定されている通り、婚姻費用は夫婦の収入の多い側が少ない側に対して支払う義務があるものです。具体的には次のような費用を婚姻費用として請求できます。
- 食費
- 日用品の購入代金
- 衣料費
- 家賃
- 医療費
- 交通費
- 交際費
- 未成年で働いていない子どもの養育費や教育費
慰謝料との違い
勝手に別居されてしまった場合、婚姻費用と慰謝料を混同して「どちらかだけしか請求できないのでは?」と思う方がいます。しかしこれら2つの金銭は、請求条件や目的が異なります。まずは違いを正しく理解して、どのような順で請求していったらいいか覚えておきましょう。
| 項目 | 婚姻費用 | 慰謝料 |
|---|---|---|
| 請求の目的 | 別居中の配偶者と子どもの生活費の分担 | 精神的苦痛への損害賠償 |
| 請求の条件 | 収入の少ない側が請求できる | 悪意の遺棄など不法行為の証明が必要 |
| 支払期間・支払い方法 | 別居中継続して毎月支払う | 離婚時に一括または分割で支払う |
| 優先度 | 請求時点から支払い義務が発生するため最優先で請求する | 確実な証拠を確保したうえで請求する |
婚姻費用の相場
毎月の婚姻費用の金額は、夫婦の話し合いによって自由に決められます。しかし協議がまとまらないときには、裁判所が公表している「婚姻費用算定表」をもとに算出するのが一般的です。算定表では夫婦の年収(給与所得・自営)と子どもの人数・子どもの年齢に応じた目安金額が表示されています。
2~3万円の幅を持たせているので、この金額の範囲内で月額の婚姻費用を決めていきます。
なるべく長く婚姻費用をもらい続けたいとお考えの方は。こちらの記事を参考にしてください。
「婚姻費用をもらい続ける方法は?損しないための対抗策とよくある質問に答えます!」
婚姻費用の請求は早めに
婚姻費用が発生するのは、原則として請求した時点から別居の解消もしくは離婚に至るまでです。後になってから過去の婚姻費用を請求することは基本的に不可能です。そのため、別居したらただちに相手に対して婚姻費用を請求することをおすすめします。
婚姻費用を払わないで済む方法があるか知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
「婚姻費用を払わない方法が知りたい!未払いで起こることと払えなくなるケースを知り、適切な対処法を」
婚姻費用の請求方法
婚姻費用を請求するために、まずは夫婦で話し合うことから始めてください。話し合いで合意できないときには、家庭裁判所に「婚姻費用分担請求調停」を申し立てる方法が一般的。調停では双方の収入や子どもの有無などを踏まえて、基本的に算定表の範囲内で適切な分担金額が提示されます。
調停がまとまらないときには、審判で判断されます。審判では相手の合意がなくても、算定表に従って婚姻費用の金額が決められます。相手が支払いを拒んでいたとしても、最終的に審判で支払い義務が確定すると強制執行もできるようになります。
婚姻費用をもらい続ける方法が知りたい方は、こちらの記事を参考にしましょう。
「婚姻費用をもらい続ける方法は?損しないための対抗策とよくある質問に答えます!」
離婚届不受理申出を提出する
勝手に別居された場合、相手に無断で離婚届を提出されてしまわないように、役所に「離婚届不受理申出」を提出しておきましょう。とくに相手が離婚を希望しているときには、離婚協議が始まらないうちに勝手に離婚届を提出してしまうケースも考えられます。そうなると立場の弱い側が、不利な状況となってしまいます。
あらかじめ離婚届不受理申出の手続きをすることで、相手が離婚届けを提出しようとしても役所の窓口で受理されません。合意ない離婚や不正な届け出を未然に防げるという意味で有効です。
離婚届不受理申出は、申出人の本籍地もしくは住所地がある市区町村役場の住民票・戸籍担当窓口に提出してください。申出人が直接提出するのが原則ですが、郵送も可能です。ただし本籍地以外の役場に提出した場合、謄本が本籍地のある役場に転送するまで時間がかかるため、タイムラグが生じる点に注意が必要です。
証拠の保全
相手のDVやモラハラ、不倫(不貞行為)などの不法行為を理由に離婚を検討しているときには、それらの証拠を別居前に確保しておきましょう。別居してしまうと相手の行動を把握しにくくなるなど、証拠を確保するのが難しくなるためです。また悪意の遺棄で慰謝料や離婚を請求しようとお考えの方は、その証拠も必要です。
具体的には次のような証拠が有効です。
| 不倫(不貞行為) |
|
| DV・モラハラ |
普段の生活やDV行為の詳細を記した日記・メモ |
不倫の証拠の残し方について詳しくは、こちらの記事を参考にしましょう。
「不倫の証拠の残し方|具体例ごとの集め方と残すときのポイント・注意点を知って証拠を効果的に使用しよう」
収入の調査
別居後に請求できる婚姻費用や離婚後の養育費は、基本的に夫婦の年収から算出します。相手の収入について詳しく知らない方は、適正な金額で取り決めするためにも収入調査が必要です。具体的には次のような資料を別居前にコピーしておくといいでしょう。
- 直近3カ月程度の給与明細書
- 賞与明細書
- 源泉徴収票
- 所得証明書
- 直近の確定申告書の控え
- 課税証明書
- 納税通知書
- 夫婦共有口座や相手名義の口座の預貯金通帳
とくに相手に収入が複数ある場合、一部の収入を隠している可能性があります。別居前にすべての収入に関する資料を確保することをおすすめします。
財産の調査
別居後離婚となった場合には、財産分与を行うのが一般的です。財産分与とは婚姻期間中に夫婦が協力して形成した共有財産を等分に分ける手続き。年収や仕事内容にかかわらず、半分ずつ分けるのが原則です。財産分与で損をしないためには、共有財産の調査が必須です。具体的には次のような財産の調査を行ってください。
- 現金
- 預貯金
- 不動産
- 年金
- 退職金
- 有価証券
- 生命保険
- 宝飾品
- 高価な家具・家電
財産分与時の口座整理の注意点については、こちらの記事を参考にしましょう。
「【離婚前】口座整理の注意点とは?ケース別・口座整理のポイントとよくある疑問質問にお答えします!」
離婚したくない場合は修復に向けて行動する
勝手に家を出ていかれても「早く戻ってきて欲しい」「離婚は避けたい」と思っている方は、関係修復に向けて行動する必要があります。とくに別居が長期化するほど、夫婦関係の修復は困難に。また上で紹介した通り、長期間の別居はそれだけで法律上の離婚理由になります。
別居解消に向けてこまめな連絡を取る、子どもを定期的に会わせる、週末婚を提案するなどの工夫が必要です。相手がこちらからの連絡を無視するときには、弁護士を通じて連絡を取るといいでしょう。
別居を解消したいときにすべきことについては、こちらの記事を参考にしてください。
「別居を解消したい…長期化のリスクと交渉のポイントを踏まえて、早期の別居解消を実現しよう!」
離婚を考えている場合は離婚準備を進める
離婚もやむを得ないと考えている場合は、離婚準備を始めてください。離婚方法を検討して希望する離婚条件を整理した上で、相手と離婚協議を行います。慰謝料請求や婚姻費用請求をお考えの方は、必要な証拠や情報を速やかに集めておきましょう。
離婚したいと思った場合にやった方がいい準備については、こちらの記事を参考にしましょう。
「離婚したいと思ってからやること6選&離婚準備の注意点とは?適切な準備期間でスムーズな離婚を」
別居で慰謝料請求が認められるケース・認められないケース
こちらでは別居で慰謝料請求が認められるケースと、認められないケースについて具体例を挙げて紹介していきます。
認められるケース
別居を理由とした慰謝料請求が認められるのは、次のようなケースです
正当な理由もなく同居を拒否する
正当な理由もなく一緒に住むのを拒否したり、同意なく勝手に家を出ていった場合には、悪意の遺棄による慰謝料請求が可能です。また話し合いもなく別に住む場所を契約して一人暮らしを始めた場合、実家に帰って戻ってこないケースなども該当します。
ここでは婚姻費用を分担しているかどうかは全く関係ありません。正当な理由なく同居を拒否した上に生活費も支払ってくれないときには、同居義務違反だけでなく、協力義務や扶助義務にも違反しているとみなされ、より悪質な悪意の遺棄があったと判断されます。
不倫相手の家に行って帰ってこない
不倫相手の家に行って自宅に帰ってこない場合にも、悪意の遺棄にプラスして不貞行為が理由の慰謝料請求が可能です。そもそも夫や妻がいながら、配偶者以外の人と性的関係を持った時点で夫婦の貞操義務に違反する不貞行為となります。実際に性的関係を持っている最中の証拠を確保できなくても、相手の家に住んでいるということ自体で不貞行為と認められる可能性が高いでしょう。
認められないケース
一方で次のようなケースでは、悪意の遺棄による慰謝料請求が認められない可能性があります。
やむを得ない事情がある
別居にやむを得ない事情があり双方納得の上で別居しているときには、悪意の遺棄とは認められないでしょう。具体的には次のようなケースです。
- 転勤に伴う単身赴任
- 出稼ぎなど職業上の理由による別居
- 病気療養のための別居
- 親族の看護・介護のための別居
- 子どもの進学に伴う別居
別居にやむを得ない事情があるかどうかは、もろもろの事情を考慮して総合的に判断されます。
正当な理由がある別居
別居に正当な理由があるときには、無断で家を出ても悪意の遺棄に当たりません。具体的には次のような別居が当てはまります。
- 相手のDVやモラハラから逃れるため
- 相手の浮気や不倫など不貞行があった場合
- 生活費を渡してくれないなど経済的な理由があるとき
- 長期間にわたる夫婦の不和や性格の不一致があるとき
- ギャンブル依存やアルコール依存による生活破たんがあるとき
正当な理由がある別居でよくあるのは、相手のDVやモラハラから逃れるための別居です。相手の攻撃から逃れ、自分や子どもの心身を守るためには物理的な距離を取らざるを得ません。そもそもそのような状況を作り出したのは、DVやモラハラをする側です。
もしかしたら相手は「無断で別居するなんて同居義務違反だ」と攻撃してくるかもしれません。しかし同居中にDVやモラハラを受けていたという証拠がある限りは、一方的に別居したとしても悪意の遺棄に該当しません。
モラハラ夫と離婚する方法について詳しくは、こちらの記事を参考にしましょう。
「モラハラ夫と離婚できない…!交渉ができない理由と対処法をもとにして慰謝料・離婚を勝ち取ろう
双方合意の上での別居
別居にやむを得ない事情がない場合でも、夫婦双方が合意した上で別居している限り悪意の遺棄に該当しないと考えます。互いの仕事や様々な理由で、結婚当初から別居婚を選択している方もいるでしょう。そのような場合には、悪意の遺棄による慰謝料請求はもちろん、離婚請求も認められないでしょう。
別居を理由に慰謝料を請求する方法・ポイント
こちらでは、別居を理由に慰謝料を請求する方法やポイントを紹介していきます。勝手に別居されて慰謝料を請求したいという方は、参考にしましょう。
慰謝料の相場
夫婦の同居義務違反を理由とする慰謝料の相場は、数十万円~50万円程度です。別居後の婚姻費用を支払ってもらえないなど、協力義務・扶助義務違反があるなど悪意の遺棄の様態がより悪質だと判断されたときには、慰謝料金額がより高額になります。
また別居の原因が不倫相手と暮らすためという場合には、不貞行為による慰謝料請求が可能です。そのときの相場は、離婚しない場合で50万~200万円、離婚した場合は100万~300万円です。このように悪意の遺棄の悪質度合いや別居の理由などでも、慰謝料相場が変動します。詳しい金額が知りたい方は、弁護士などの専門家に相談するといいでしょう。
必要な証拠
別居を理由に慰謝料を請求するためには、それを証明する証拠が必須です。証拠がなければ配偶者に「そんな事実はなかった」と言い逃れされてしまいます。また調停や裁判になったときには、慰謝料を請求する根拠を提示できないと、あなたの要求は認められないでしょう。別居を理由に離婚を要求する場合でも、次のような証拠は必須です。
別居に至った経緯が分かる記録
別居に至った経緯が分かる物があれば、それを証拠として取っておきましょう。別居をする前に夫婦間で何らかの合意書や契約書を交わすというケースは稀です。とくに突然家を出て行ってしまったというケースでは、何の予兆もないことが少なくありません。
しかしよく探せば、別居を決意した痕跡や別居に至った経緯を見つけられるかもしれません。置手紙やメモ書きがあれば、別居しようと決めた理由が分かるかもしれません。またあなたから送った「早く家に帰ってきて」「どこにいるの」といったメールの内容も、いつから別居状態になったかを示す証拠に。同時にあなたが別居に同意していなかったという証拠にもなります。
送信履歴が消えてしまった場合でも、まだ相手と連絡が取れるのであれば、相手が一方的に同居を拒否していることが分かる内容のメッセージを引き出せれば、それも証拠となります。
別居の事実が分かる書類
別に暮らしているという事実が分かる書類も、証拠となります。次のようなものが別居の事実を証明する証拠です。
- 住民票の異動情報
- 同意なく別居を決め、賃貸物件を借りたときの契約書
- 不倫相手と一緒に住んでいることが分かる住民票の写し
生活費を払ってくれない証拠
別居後の婚姻費用を支払ってくれない証拠も、別居による慰謝料請求の上で重要です。夫婦それぞれの給与明細や源泉徴収票など、収入格差が分かる書類を確保しましょう。また相手からの入金が途絶えたことが分かる通帳のコピー、家計簿なども証拠として有効です。
家を出ていった相手に慰謝料を請求する方法
家を出ていった相手に慰謝料を請求するためには、次のような方法があります。
相手に連絡を取って話し合う
相手と連絡が取れるようであれば、電話や会って話し合ってください。夫婦関係を修復したい場合でも離婚を希望する場合でも、まず必要なのは夫婦での話し合いです。関係を修復したい方はとくに、相手が別居を決意した理由を探り、相手の心を解きほぐす必要があるでしょう。
内容証明郵便を送る
電話やメールでの呼びかけに応じてくれないときには、内容証明郵便で慰謝料を請求するという方法があります。ただしこれは相手が住んでいる場所が分かっている場合に限られます。内容証明郵便には法的な拘束力はないものの、書面の内容を裁判などで証拠として提出できます。
相手にプレッシャーをかける上でも有効なので、もし住所が分かっているときには内容証明郵便を利用して慰謝料を請求してみましょう。
話し合いが難しいときは調停を利用する
相手との話し合いが難しいときには、裁判所に「夫婦関係調整調停」を申し立てて、調停の中で話し合いを進めます。調停を申し立てるのは、原則として相手の住所地を管轄する家庭裁判所です。調停では男女1名ずつの調停委員と裁判官がいる場所で互いの主張を出し合います。
直接顔を合わせる必要がないので、相手に遠慮せず言いたいことが言えるのがメリット。離婚を希望する場合も、離婚する・しないや、離婚条件について調停の場で話し合います。
裁判で請求する
調停での話し合いでも合意が得られないときには、最終的に裁判で慰謝料を請求していきます。調停までは自分一人でも対応できますが、裁判では法律的な知識が必須で手続きも複雑なため、弁護士に依頼するのが一般的です。離婚や夫婦問題に詳しい弁護士なら、過去の判例や経験をもとに、慰謝料金額の相場や離婚の可否なども判断してくれるはずです。
離婚調停は弁護士なしで対応可能か知りたい方は、こちらの記事を参考にしましょう。
「離婚調停は弁護士なしで対応できる?依頼したほうがよいケースとメリット・デメリット」
相手の居場所が分からないときは…
相手が家を出て行った先が分からない、生きていることは分かっているがどこに住んでいるか教えてくれないというときには、戸籍の附票や住民票の写しを取り寄せることで、転居先を見つけられるかもしれません。離婚届を提出しておらず婚姻状態が続いていれば、戸籍はこれまで通り同じです。相手の居場所が分からなくても、転居先の住所が判明できる可能性があります。
弁護士に相談する
家を出ていった相手と話ができない、どこに引っ越していったか分からないという方は、弁護士に相談するといいでしょう。弁護士には「弁護士照会(23条照会)」という特権があり、官公庁や民間企業に問い合わせて、相手の個人情報を入手することができます。具体的には次のような情報を得られます。
- 携帯電話のメールアドレスから電話番号
- 電話番号から現住所
- 勤務先から現住所や給与先
- 銀行の預金残高
- 証券会社が保有している株の情報
- 保険会社の加入情報
- 医療機関から通院・投薬情報
- 出入国の記録情報
たとえ住民票や戸籍の附票から現住所が分からなくても、弁護士による調査で判明する可能性も。「住所が分からないから慰謝料を請求できない」と諦めず、まずは弁護士に相談してみましょう。
別居後の不倫や浮気で慰謝料請求できる?
別居後に開放的な気分になって不倫や浮気を始める人もいます。では別居後の不貞行為で慰謝料請求は可能なのでしょうか。判断の基準と慰謝料請求できる・できないケースについて詳しく解説していきます。
夫婦関係破綻の判断
別居後の不貞行為に関する慰謝料請求でポイントになるのは、「婚姻関係(夫婦関係)が破綻していたかどうか」です。そもそも不倫の慰謝料というのは、不倫という不法行為によって夫婦の平穏な共同生活が破綻したことによる精神的苦痛を賠償するために支払われるもの。
不倫が発覚する以前から夫婦関係が破綻している状況では、慰謝されるべき損害が生じないとして、慰謝料請求が認められない可能性が高いでしょう。
慰謝料請求できるケース
別居中の不貞行為で慰謝料を請求できるのは、婚姻関係が破綻していない場合です。具体的には次のようなケースが該当します。
- 別居後も定期的に連絡を取り合い、会っていた
- 別居中も夫婦や家族で旅行や遊びを計画し出かけていた
- 別居後もこれまで同様に夫婦で子供の行事を準備し参加していた
- 別居を始めたばかりで夫婦関係が回復する可能性が高い
- お互いにやり直す意思がある一時的な別居だった
- やむを得ない事情による別居で婚姻関係の破綻とは関係なかった
- 別居中、双方から離婚に関する話が一切出なかった
- 夫または妻による一方的な別居で、相手は離婚を全く考えていなかった
上記のような状態で不倫が発覚した場合、婚姻関係は破綻していないと判断されて慰謝料請求が認められる可能性が高いです。
慰謝料請求が難しいケース
しかし次のような別居状態で不倫が発覚すると、すでに婚姻関係が破綻していると判断される恐れがあり、場合によっては慰謝料請求が認められないでしょう。
- 別居期間が長期に及び、夫婦関係を修復できる見込みが薄い
- 離婚前提の別居だった
- 別居期間中、夫婦間の交流が一切なかった
- 離婚協議中・離婚調停中・離婚裁判中だった
- 別居された側がその状態を放置していて別居や婚姻関係の破綻を受け入れていると判断された場合
婚姻関係の破綻とは別に不倫の証拠を確保できないと、慰謝料請求は難しいでしょう。とくに同居中とは違い、別居中は相手の行動を探ったり証拠を探すのが困難です。自分で探すのはほぼ不可能と言えます。また別居中の住居に無断で入るのは、たとえ夫婦であっても住居侵入罪に問われる可能性が高いです。
別居後に「もしかして不倫してる?」と思ったら、探偵などの専門家に依頼して証拠を集める方法を検討しましょう。
まとめ