専業主婦だけど離婚したい!離婚後に成功するための準備と注意点

専業主婦だけど離婚したい!離婚後に成功するための準備と注意点
専業主婦だけど離婚したい!離婚後に成功するための準備と注意点
  • 「離婚を考えているけど、専業主婦だから今は我慢している」
  • 「専業主婦だけど離婚したい!何から行動すればいい?」

離婚したいと考えている方の中には専業主婦の方もいると思います。離婚した後どうやって生活をしていけばよいかを考え、不安な気持ちになり離婚は無理だと考えてしまう方もいるはずです。

現在仕事をしていない方が離婚する場合、離婚後の生活で金銭的に困窮する恐れがあります。しかし離婚に際し請求できるお金、離婚後に利用できる支援制度などをあらかじめ確認し、十分に準備することで離婚後も安定した生活を送れる可能性があります。

この記事では専業主婦の方が離婚を成功させるために気を付けたいこと準備すべきことを解説しています。実際に離婚後に受けられる支援制度も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

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専業主婦が離婚するための準備

専業主婦の方がいきなり離婚すると生活費を捻出できなくなり、金銭的に困窮する恐れがあります。しかし現在収入がない方でもあらかじめ準備をしておくことによって離婚後も経済的に安定した生活を送れる場合もあります。実際にどのような準備をすればよいのかを具体的に見ていきましょう。

離婚理由を明確にする

まずはあなたがなぜ相手と離婚したいのか決定的な理由を明確にしましょう。離婚は相手の同意があれば成立しますが、もし相手が離婚に反対した場合は家庭裁判所での離婚調停を行い、それでも話し合いがまとまらない場合は離婚裁判を提起することになります。

離婚裁判で離婚が認められるためには、相手の行為が民法で定められている法的離婚事由に該当していなくてはいけません。以下のように「離婚に至ってもやむを得ない」と裁判で認めてもらうために必要な離婚理由のことです。

  • 不貞行為があった
  • 悪意の遺棄があった
  • 配偶者が3年以上生死不明である
  • 配偶者が回復の見込みがない重度の精神病である
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由がある

法律で離婚が認められる理由

例えば配偶者が不倫しており相手と肉体関係にある場合、法的離婚事由の不貞行為に該当するため、裁判でも離婚が認められる上に慰謝料の請求もできます。

法的離婚事由の2つ目の悪意の遺棄とは、民法で定められた夫婦の同居・協力・扶助義務を故意に放棄すること。断りなしに別居をする生活費を渡さない、または健康にも関わらず働かないといった行為が該当します。

またDV・モラハラは法的離婚事由の5つ目である『婚姻を継続し難い重大な事由』として認められる可能性が高いです。

法律で離婚が認められない理由

DVや不倫など相手に決定的な非はないものの性格が合わないから離婚をしたいという方は多いです。裁判所の調査によると、離婚調停・審判を申し立てる動機で最も多かったのは男女別に「性格が合わない」というものです。
(参考:裁判所|婚姻関係事件数 申立ての動機別申立人別 全家庭裁判所

しかし性格の不一致は先ほど提示した法的離婚事由に該当しないため、裁判では離婚が認められません。話し合いや離婚調停で相手が離婚に同意しなければ、離婚はできないということです。

そのため性格の不一致で離婚をしたい場合には法的離婚事由に該当する理由を探すか、家を出て別居に踏み切り婚姻生活が破たんしていることを裁判所に認めてもらうことになります。

性格が合わないことを理由に離婚する方法については、以下の記事でさらに詳しくまとめています。法的離婚事由に該当しない方はぜひ参考にしてください。
性格の不一致で離婚する方法|気になる離婚条件や有利に離婚するポイントを解説

離婚原因の証拠を集める

相手の行為が法的離婚事由に該当する場合は離婚裁判で離婚が認められ、慰謝料の請求も可能です。しかし明確な証拠がない場合、相手は自分の非を認めないケースが大半であり、裁判で決着をつけることができません。有利に離婚を進めるため、あらかじめ第三者にも相手の非が分かるような明確な証拠を集めましょう。

証拠として有効なもの

例えば相手が暴力を振るう場合は怪我の診断書写真、動画・音声データが有効です。不貞行為の場合は肉体関係がある証拠が必要です。行為自体の証拠が確保できればベストですが、二人でラブホテルに入る写真や動画、LINEのやりとりなど、誰が見ても肉体関係があったことが分かる物品が証拠として採用できます。

動画や音声の場合、一部を切り取ったものや編集をしたものだと偽造を疑われる恐れがあるため編集を加えず前後関係が分かるものがよいでしょう。近年ではLINEのやりとりを証拠にする方も多いですが、LINEのスクリーンショットは人為的に作成したものと区別がつきません。LINEを証拠にする場合はLINEの画面をスマートフォンごと別のカメラで撮影するのが最善です。

離婚時にかかる費用を算出する

離婚に際し必要になる費用を算出し、現在の貯蓄で間に合うかどうかを確認しましょう。離婚前後で必要になる費用は以下の通りです。

引っ越し費用

原則として離婚時の引っ越し費用は相手に請求ができません。夫婦はお互いに協力する義務がありますが、離婚のための引っ越しは夫婦関係を解消した後の生活ですので協力の対象にはなりません。

不倫をしていた等、相手に離婚原因があることが明白である場合は引っ越し費用の負担に応じてくれる可能性はありますが、法律で定められている義務ではないため、自分で費用を確保したほうが確実でしょう。

実際にかかる料金の目安

一人で引っ越しをする場合は単身者向け引っ越しパックがおすすめです。よく単身者の引っ越しで利用される日通の単身パックLサイズは最低30,800円から、近場であればさらに安いSサイズが利用可能です。
(参考:日本通運|NXの国内引越サービス

搬出したい家具や家電が少ない場合は配達会社が提供する引っ越しサービスのほうがお得に利用できる可能性があります。ヤマト運輸が提供する単身者向け引っ越しサービスのヤマトホームコンビニエンスは最低23,100円から。大型家具を発送したい場合は一つから発送手続きができるらくらく家財便も便利です。
(参考:ヤマト運輸 ヤマトホームコンビニエンス

住居の初期費用

現在住んでいる家を出て賃貸住宅を借りる場合、家賃だけでなく契約時にまとまった費用が必要です。住宅の初期費用には以下のものが含まれ、合計で家賃1ヶ月分の4.5倍~5倍程度の金額がかかります。

項目 費用の目安 内容
敷金 家賃1ヶ月分 部屋を退去する際の現状回復費用
前家賃 家賃1ヶ月分 入居する月の家賃
礼金 家賃1ヶ月分 大家さんへのお礼にあたる費用
仲介手数料 家賃0.5~1ヶ月分 不動産会社へ支払う費用
火災保険料 1.5万円~2万円 火災や水漏れなどのトラブルに備える保険費用

近年では敷金・礼金が設定されていない住宅もあるため、費用を抑えたい方はそのような物件に絞るとよいでしょう。実家を頼れる方は、収入が安定し住宅費用が貯まるまで実家に住まわせてもらうという方法もあります。

当面の生活費

離婚を機に仕事を始める場合、給与を得られるまでには日数がかかります。仕事ができず支援制度を利用する方でも、すぐに現金を手にできるとは限りません。離婚後の生活が行き詰らないように1~2ヶ月分の生活費を確保しておきましょう。

総務省の家庭調査報告では、2023年度の単身世帯(一人暮らし)の一カ月あたりの支出平均は167,620円という結果が出ています。離婚後の生活が予想できないという方はこの金額を目安に貯蓄をすることをお勧めします。
(参考:統計局統計調査部消費統計課 | 家計調査/家計収支編 単身世帯 年報

弁護士費用

離婚の手続き自体は弁護士に依頼する必要はありません。しかし財産分与や養育費、慰謝料を確実に請求したい方は弁護士に依頼することをお勧めします。また離婚話がまとまらず裁判を提起する場合も、手続きが煩雑なため弁護士に相談することを強くお勧めします。

弁護士はお金がかかるというイメージが強いと思いますが弁護士に依頼をすることで財産分与などを多く獲得できるため、弁護士に依頼をして損をしたというケースは滅多にありません。

項目 概要 費用の目安
相談料 弁護士への相談時にかかる費用 無料~5,000円(30分)
着手金 弁護士に事件を依頼した際に支払う費用 無料~50万円
成功報酬 事件が解決した際に支払う費用
固定報酬と得られた利益の一部を支払う報酬の2種
固定報酬:20万円~50万円
+経済的利益の一部
日当 弁護士が裁判所などに出向いた際に支払う費用 半日:3万円~
一日:5万円~
実費 手続きにかかる印紙代や郵便料金、弁護士の出張時の交通費など 1万円~

最近では多くの法律事務所で無料相談を設けているため、相談料は実際にはかからないケースが大半です。着手金は事件に着手した際に支払う費用で、原則として返金はできませんが、事件によっては着手金を無料にしている法律事務所もあります。

実際にかかる金額の相場

離婚問題を弁護士に依頼する際にかかる費用は離婚方法によって異なります。お互いの話し合いだけで離婚を決める協議離婚は、裁判所への出廷がないため比較的費用を低く抑えられます。

話し合いで離婚ができない場合は家庭裁判所で調停を行い離婚をする調停離婚、裁判の判決で離婚を認めてもらう裁判離婚となり、かかる金額も高くなります。ただ協議離婚から調停、裁判へ移行し継続して委任する際は着手金が減額されるケースが大半です。

離婚を成立させることだけを弁護士に依頼した場合、かかる金額の目安は以下の通りです。

離婚方法 着手金 報酬金
協議離婚 15~40万円 20万~50万円
調停離婚 20~50万円 20万~50万円
裁判離婚 30~60万円 30万~60万円
弁護士費用を払えない時は

弁護士費用を捻出できない時は弁護士費用の後払いや分割払いに対応している事務所に依頼することをお勧めします。法律事務所の中には、慰謝料や財産分与などでまとまった財産が手に入った後の支払いに対応している事務所もあります。

また国が設立した日本司法支援センター(法テラス)の活用も検討しましょう。法テラスは誰でも法的サービスが受けられることを目的に設立された支援法人機関で、弁護士費用を立て替えてもらうことができます。

離婚の際にかかる弁護士費用、費用をおさえるコツについては以下の記事で詳しくまとめています。ぜひ併せてお読みください。
離婚時の弁護士費用を徹底解剖!費用をおさえるコツや注意点を紹介

子どもの親権を考える

夫婦の間に子どもがいる場合、離婚後は夫婦のどちらかが親権を獲得し子どもを養育していくことになります。離婚を検討している専業主婦には、経済力がないことを不安に感じている方もいるでしょう。経済力が親権獲得に不利になると考えて離婚に踏み切れない方もいるはずです。

ただ実際に親権を決定する際に重要視されるのは監護実績です。監護実績とは、今まで子どもの世話をしてきた実績のこと。どれまで子どもとどのように関わってきたかが重視されます。

そのため専業主婦であることだけを理由に親権獲得が不利になることはありません。事実、調停や裁判において母親が親権を獲得したケースは9割以上にものぼります。

専業主婦が親権を獲得しにくい例

専業主婦であっても親権を獲得できますが、以下のようなケースでは親権が認められない可能性があります。

  • 子どもと別に住んでいる
  • 子どもを虐待していた
  • 母親が重病で回復が困難である
  • 子どもが親権者に父親を選んだ

親権を獲得する決め手は子どもの監護実績ですので、既に子どもと別に住んでいる場合は親権が認められにくいです。また親権決定には子どもの利益や福祉も重要視されるため子どもを虐待していた場合や重い病にかかり子どもの養育が難しいと判断された場合も親権が認められません。

子どもがある程度成長し自分の意見を主張できるようになると、親権を決める際に子どもの意見が尊重されるようになります。、また15歳以上の場合は子どもの意思を必ず確認するよう家事事件手続法で定められていますので、15歳以上の子が「父親と暮らしたい」と主張した場合、今までの監護実績に関係なく父親が親権を獲得します。

専業主婦が親権を獲得するための準備

普段からあなたが中心に育児を行っている場合、専業主婦であっても親権が獲得できる可能性は大いにあります。しかし不安を抱える方に向けて確実に親権を獲得するためにできる準備を紹介します。

  • 監護実績の証拠を残す
  • 離婚後に親族を頼れるか確認する
  • 別居する際は子どもと離れない
監護実績の証拠を残す

親権をめぐり調停や裁判に発展した場合、客観的に監護実績を証明するものがあると有利です。母子手帳の記録幼稚園・学校との連絡帳のやりとりは自分が子どもを監護してきたという有力な証拠になりますので、捨てずに確保をしておきましょう。

育児日記も証拠になりますが、紙の日記は日時の偽造が安易なため、証拠としての価値は低い傾向があります。最近では投稿日時の偽造ができないSNSやブログに育児の様子を投稿をし、監護実績の証拠とする人も増えています。

離婚後に親族を頼れるか確認する

親権を決める際は経済力よりも監護実績が重要視されます。しかし離婚後に育児をサポートしてくれる親族(監護補助者)が全くいない場合、子どもを育てる環境が整っていないとみなされる恐れがあります。

親権獲得のためにはサポートの体制が整っていることをアピールできるとより確実です。親族に一緒に住んでもらう、もしくは近くに引っ越してもらうと理想的です。

別居する際は子どもと離れない

離婚の意思を相手に伝えた際、特に義両親と同居している場合、子どもを置いて出ていくよう伝えられるケースは珍しくありません。繰り返しになりますが親権獲得で一番重要視されるのは監護実績です。子どもと別に暮らしていると親権獲得に不利になるため、別居する際は必ず子どもを連れていきましょう。

しかし配偶者に無断で子どもを連れていくと違法の連れ去りとみなされ、かえって親権獲得に不利になる恐れがあります。必ず相手に伝えた上で子どもを連れて行ってください。

しかし相手のDVやモラハラを理由に別居する場合、相手に別居を伝えると逆上する恐れがあり、別居先にまで暴力を振るいに来る恐れがあります。このようにやむを得ない事情がある場合は黙って別居をしても罪には問われません。

財産や夫の収入を把握する

婚姻期間中に築いた財産は共有財産と呼ばれ、離婚時に財産分与によって分割ができます。対象となる財産は以下の通りです。

  • 現金・預貯金
  • 不動産
  • 株式
  • 投資信託
  • 保険
  • 退職金
  • 自動車
  • 住宅ローンなどの借入

対象となるのはあくまでも婚姻期間に形成した財産です。そのため独身時代からの預貯金、親から相続を受けた財産は対象外となります。

相手の財産隠しを防止する

夫婦間で収入に差がある場合、収入が多いほうが「相手に財産を渡したくない」と考え、故意に財産隠しを行うケースがあります。そのため財産の調査は相手に離婚を伝える、もしくは離婚したいという態度を匂わせる前に行っておきましょう。

調停や裁判で財産分与について争う場合は分与対象となる財産の証拠が必要ですので、以下のような資料のコピーや写真を確保しておきましょう。

  • 銀行の通帳
  • 有価証券
  • 不動産登記簿
  • 退職金などの明細書
  • 保険の契約書・明細書
  • 自宅にある現金

仕事を探す

専業主婦の方は今までに仕事をしたことがない、もしくはブランクがあるため、すぐに仕事を見つけにくい傾向があります。離婚後でも仕事は探せますが、すぐに就職できるとは限らないため、今のうちから就業に向け行動することを強くお勧めします。婚姻期間中は働けないという方は、離婚前に何らかの資格を取得するのもよいでしょう。

離婚時に夫に請求できるお金は?

離婚の際に夫に請求できる可能性があるお金として、以下のようなものが挙げられます。現在あなた自身に収入がない場合、夫からどれだけのお金を得られるかが離婚後の生活を左右しますので、漏れがないよう必ず請求を行いましょう。

  • 婚姻費用
  • 慰謝料
  • 財産分与
  • 年金分割
  • 養育費

婚姻費用

離婚前に別居している場合、相手に婚姻費用を請求できます。夫婦にはお互いに助け合って生活する相互扶養義務が民法で義務付けられており、婚姻関係にある間は夫婦間で生活水準が変わらないよう努める必要があります。これは夫婦が別居している間も例外ではありません。

つまりあなたが専業主婦の場合、別居中も夫と同じ生活水準の暮らしを送れるよう、相手に必要な費用を請求できるということです。実際に請求できる金額は裁判所のホームページに掲載されている養育費・婚姻費用算定表を使い、夫婦それぞれの収入と子どもの数を照らし合わせて確認ができます。
(参考:裁判所|平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について

例えばあなたが専業主婦で相手の給与収入が600万円、14歳以下の子どもが一人いる場合は月に6~8万円を婚姻費用として請求可能です。

慰謝料

慰謝料は相手の不法行為によって受けた苦痛に対し、賠償金として請求できるお金です。離婚における不法行為とは、先に述べた法的離婚事由に該当する事柄であり、具体的には不貞行為DV・モラハラ悪意の遺棄などが当てはまります。

請求できる金額は個々の状況によって異なりますが、上記の不法行為について請求を行う場合はおおよそ50万円~300万円が相場です。しかし慰謝料を請求する側とされる側の収入の差が大きい場合、慰謝料の金額が増額されやすい傾向があります。収入が高いにも関わらず慰謝料が低かった場合、制裁の意味がないためです。

高額な慰謝料を手にするためのコツ、注意点や実際に慰謝料を請求する方法については以下の記事でまとめています。
離婚慰謝料で1000万もらえる?高額慰謝料を手にする方法と減額するコツとは

財産分与

財産分与とは、離婚の際に夫婦が婚姻期間中に築いた財産を分け合う制度のことです。夫婦間の収入に差がある場合でも、原則として半分ずつ受け取ることが可能です。

中には「自分が稼いだお金だ」と主張し、折半での財産分与を拒否する方も珍しくありません。確かに専業主婦は収入がありませんが、その分家事や育児で家庭に貢献をし、夫の生活を支えてきたはずです。専業主婦でも財産分与を受ける権利はありますので、物怖じせず堂々と請求を行いましょう。

ローンも財産分与の対象になる

財産分与においては、住宅ローンなどのマイナスの財産も対象になります。ローンの残高が多い場合は手元に残せる財産が少なくなる可能性がある点に注意が必要です。

ただ財産分与の対象になる借金は、住宅ローンや自動車ローンなどのあくまでも家族のために必要なものに限ります。ギャンブルや浪費など個人的な借金は、借金をした本人に責任があるため財産分与の対象とはなりません。

年金分割

厚生年金に加入している場合は婚姻期間中に支払っていた保険料納付額に相当する年金を分割し、夫婦で均等に受け取れるよう調整ができます。これを年金分割と呼び、国民年金は対象外となります。年金分割の方法は3号分割と合意分割の2種類があります。

分割の種類 3号分割 合意分割
主な対象 被扶養者 共働き夫婦
相手の合意 不要 必要
対象期間 2008年(平成20年)4月以降 婚姻期間全体

3号分割は第3号被保険者の期間を対象に分割を行う制度で、婚姻中に専業主婦で配偶者の扶養に入っていた方はこちらを利用することになります。ただし3号分割の対象となる期間は平成20年4月以降ですので、婚姻期間がそれよりも前の方は合意分割と併用して手続きを行いましょう。

3号分割は相手の同意は必要なく、自分だけで手続きを進めることができます。しかし合意分割はその名称の通り相手の合意が必要なため、もし分割に合意を得られない場合は家庭裁判所に調停を申し立て決定をすることになります。

養育費

夫婦間に子どもがいて、離婚後にあなたが監護する場合は相手に養育費を請求できます。養育費とは、子どもの非監護親が監護親に対して支払う養育のための費用です。受け取れる金額の目安は婚姻費用と同様、夫婦それぞれの収入と子どもの数によって決められます。

養育費の請求は個人間でも行えますが、快く支払いに応じない方もいるのが実情です。その場合は弁護士を介して請求をするか、養育費請求調停を申し立てることで相手が交渉に応じる可能性が高くなります。養育費の金額や期間を定めた後は、書面に取り決めを残しておきましょう。

しかし夫婦間で養育費の取り決めを行っても、相手方が必ず支払いを続けてくれるとは限りません。厚生労働省の調査によると、母子家庭の中で養育費を「現在も受けている」と答えたのは24.3%。養育費を継続して受け取れている家庭は母子家庭の4分の1にも達していません。
(参考:厚生労働省|養育費について

「強制執行認諾文言付」公正証書を残しておくことで、養育費の未払いが発生した際に相手の財産を差し押さえることができ、確実に養育費を受け取ることが可能です。

シングルマザーが受けられる支援制度

あなたが親権を獲得した場合、離婚後は一人で子どもを育てていくことになります。自分だけの収入で母子の生活を支えていくのは大変難しいものですが、シングルマザーにはさまざまな公的支援助成制度がありますので積極的に活用をしていきましょう。

児童手当

児童手当は0歳から中学卒業までの児童を対象に、子どもの年齢や人数に応じて手当が受けられる制度です。ひとり親家庭を対象としたものではありませんが、手当を受けるには自治体への申請が必要です。受け取れる金額は以下の通り。

子どもの年齢 支給額(ひと月あたり)
0~3歳 15,000円
3歳~小学校卒業まで 第一子・第二子:10,000円
第三子以降:15,000円
中学生 10,000円

児童扶養手当

児童扶養手当はひとり親家庭が受けられる手当の一つで、離婚などによって父母いずれかと生計を別にしている世帯が支給対象です。子どもが18歳になった日以降の3月31日まで、すなわち高校卒業まで支給が受けられます。

ただし児童扶養手当には所得制限があります。子どもが一人の場合、年収160万円未満であれば全額支給が受けられますが、160万円を超えると支給額が減っていき、年収365万円を超えた場合は支給対象から外れますので注意してください。養育費を受け取っている場合、その8割分が受給者の所得とみなされる点にも要注意です。
(参考:こども家庭庁|児童扶養手当について

児童育成手当

児童育成手当は両親が離婚した家庭、父母いずれかが死亡し片親になった児童を扶養する人が受給できる手当で、子ども一人あたり月13,500円が支給されます。所得制限がありますが養育費が所得に算入されないため児童扶養手当よりも受けとれる対象が広いことがメリットです。

ひとり親向けの住宅手当

自治体によっては、ひとり親を対象に住宅手当を支給しているところもあります。制度は自治体によって異なり、初期費用の補助、家賃の補助、市営住宅への優先的な入居などさまざまですのでお住まいの自治体に確認をしてみてください。

例えば東京都渋谷区の「ひとり親世帯入居支援事業」は、区内で住み替えを希望するひとり親世帯に不動産店を紹介し、保証料の一部を上限50,000円まで補助します。

埼玉県さいたま市では、保証人がいない等の理由で賃貸住宅への入居ができないひとり親家庭に対して協力不動産店の情報提供を行うほか、家賃が低い市営住宅の抽選において優遇措置を行っています。

ひとり親家族等医療費助成

子どもを養育しているひとり親家庭を対象に医療費の一部を助成する制度で、通常マル親と呼ばれるものです。住民税が非課税の場合は自己負担なし、住民税課税世帯でも通常は3割負担のところ1割負担で医療が受けられます。

医療費に関する制度ですので、助成を受けるためには健康保険に加入していることが条件です。また医療保険の対象とならないもの、例えば健康診断や予防接種代、入院時の差額ベッド代などは助成の対象外となります。

専業主婦が離婚する際の注意点

ここまで専業主婦の方が離婚後に受け取れるお金、利用できる支援制度などを中心に紹介をしてきました。離婚後の生活についてイメージができた方もいると思います。

では実際に専業主婦がこれから離婚するにあたって注意すべきことを紹介します。これから相手に離婚を切り出そうとしている方はぜひ参考にし、万全の状態で相手と話をするようにしてください。

離婚を切り出すタイミングを考える

先に解説をした通り、相手側に離婚原因がある場合は証拠を確保しておくことが大切です。財産分与に備えて財産の関連書類の写真やコピーもあらかじめ用意しておきます。どちらも離婚を切り出した後だと警戒されて隠される可能性がありますので、準備を怠らないようにしましょう。

相手に離婚したい旨を伝えるタイミングは、相手の時間と気持ちに余裕があり、アルコールが入っていない時がベストです。仕事でトラブルがあった日など、相手の機嫌が悪い時は避けましょう。

冷静に話し合いを進める

離婚話を切り出した場合、ショックを受ける方が大半です。相手の反応を見つつ、必要であれば間を置いて話し合いを進めるようにしましょう。理由を聞かれた場合はできるたけ端的に伝えることが重要です。理由を長く伝えると、相手も自分が責められているような気分になり、口論に発展する恐れがあるためです。

相手が感情的になったとしても、できる限り落ち着いた態度を心がけましょう。感情的になると話し合いが長引くだけでなく、離婚に向けた具体的な交渉が進められません。

相手が話し合いに応じてくれない場合、話し合いがまとまらない場合は弁護士へ相談することも検討しましょう。弁護士に離婚問題を依頼すると、あなたに代わり相手との交渉を全て請け負ってくれます。弁護士を介することで離婚への本気度が相手に伝わり、話し合いに応じてくれる可能性が高くなります。

話し合った内容を書面に残す

相手と話し合いを行い、財産分与や養育費、慰謝料などの取り決めを行ったら必ず離婚協議書として書面に残してください。口約束の場合、後から言った言わないで揉めることになる恐れがあるため、後で確認ができる書面に残すことが重要です。

養育費など金銭に関する取り決めを行った場合、離婚協議書を「強制執行認諾文言付」公正証書にしましょう。強制執行認諾文言とは、支払が滞ったときにすぐに強制執行(給与や預金の差し押さえ)を行うことに同意したという文言のこと。金銭が支払われなくなった際、すぐに相手の財産を差し押さえできます。

専業主婦が離婚を切り出されたら

今回の記事では、離婚をしたいと考えている専業主婦の方に向けた準備について中心に解説を行いました。今回はあなたから離婚を切り出すことを前提にお話をしましたが、現在夫婦仲が悪化しており相手から先に離婚を切り出されるかもしれないと考えている方もいるでしょう。

また自分は離婚したくないにも関わらず相手から離婚を切り出されて困っている方もいるかもしれません。そこで最後に、専業主婦の方が相手から突然離婚を切り出された際の対処法を解説します。

すぐには離婚に同意しないことが重要

相手から突然離婚を切り出された場合、まずはすぐには離婚に応じず、落ち着いて話し合いをすることが重要です。

相手が話し合いを拒絶している場合、離婚を焦っている場合は勝手に離婚届を提出する可能性もあるため離婚届不受理申出書を本籍もしくはお住まいの居住地の市区町村に提出しましょう。不受理届が出されている状態で離婚届が提出された場合、不受理届を申し出た本人の離婚意思が確認できないと離婚が成立しません。

あなたが有責配偶者の場合

あなたが有責配偶者(離婚原因を作った側)の場合、話し合いで離婚を拒否し続けても裁判で最終的に離婚が決定する可能性が高いです。しかしあなたが有責配偶者であることは財産分与とは全くの無関係ですので請求できる分は遠慮なく請求をしてください。

離婚成立まで別居をすることになった場合、相手に婚姻費用を請求しましょう。離婚話がまとまらず別居期間が長引いた場合、相手はその分婚姻費用を払い続けなければならないため、早く離婚をしようと条件を妥協してくる可能性があります。

相手が有責配偶者の場合

相手が有責配偶者の場合はあなたが同意しない限り離婚はできません。もしあなたが離婚をしたくない場合、相手が強く離婚を要求してきたとしても大きく構え、離婚に応じないようにしましょう。

相手が有責配偶者であるにも関わらず離婚を切り出した場合、慰謝料や財産分与であなたが有利な条件を引き出しやすくなります。もしあなたが離婚を視野に入れている場合、離婚と引き替えに自分が希望する条件を相手に提示し、交渉をしてみるのもおすすめです。

まとめ

専業主婦の離婚はどうしても金銭的な不安が付きまといます。特に子どもがいる場合、経済面を理由に離婚したい気持ちを我慢する方もいるでしょう。しかし相手からもらえるお金シングルマザーが利用できる助成を活用することで、離婚後も安定した生活が送れる可能性があります。そのためには、相手に離婚を切り出す前に準備できることを入念に準備することが大切です。

しかし財産分与や養育費について、相手が快く支払いに応じてくれるとは限りません。相手との交渉や手続きで困難を感じた際は弁護士に相談をすることをおすすめします。あなたが受け取るべき財産を相手に主張し、あなたに少しでも有利な結果になるよう全力を尽くしてくれるはずです。

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