- 「国際結婚した相手と離婚する方法は?」
- 「国際結婚で離婚する場合の注意点が知りたい」
日本人同士の離婚には、協議離婚・調停離婚・裁判離婚の3種類がありますが、国際結婚の離婚にはどのような手続き方法があるのでしょうか?そこでこちらでは、国別でみる国際結婚の離婚の方法や注意点について詳しく解説していきます。
また国際結婚での離婚を、より有利に進めるにはいくつかのコツや押さえておくべきポイントがあります。国際結婚の離婚は、法律や離婚についての考え方が違う外国の方と別れる手続きが必要になるため、日本人同士とは異なる点が多々あります。すでに離婚が決定している方はもちろん、離婚しようか悩んでいる方も必見です。
国際結婚の離婚率について
国際結婚の離婚率は、国が行っている統計でみることができます。国際結婚ならではの離婚理由とあわせてみていきましょう。
日本人同士の離婚よりも高い傾向
国際結婚の離婚率は、日本人同士の離婚よりも高い傾向があります。厚生労働省が調査した2020年「人口動態調査」によると、国際結婚した夫婦の離婚率は57.2%。日本人同士の夫婦の離婚率が36.1%と比べると倍近く、かなり高い割合となっています。
国際結婚の組み合わせは、日本人男性×外国人女性、日本人女性×外国人男性の2パターンあります。これらの組み合わせによっても、離婚率が変わってきます。
データで見る国際結婚の離婚率
では実際に2020年のデータ(人口動態調査)から、各定数婚姻「夫婦の国籍別にみた年次別婚姻・離婚件数百分率」を見てみましょう。
婚姻・離婚 | 総数 | 夫婦とも日本人 | 夫婦の一方が外国人 | 夫日本人×妻外国人 | 妻日本人×夫外国人 |
---|---|---|---|---|---|
婚姻 | 525,507 | 510,055 | 15,452 | 9,229 | 6,223 |
離婚 | 193,253 | 184,408 | 8,845 | 6,278 | 2,568 |
先ほど国際結婚の離婚率が60%近いと紹介しましたが、日本人男性×外国人女性の離婚率は68%、日本人女性×外国人男性の離婚率の41.3%比べると、特に高いことが分かります。もちろん母数(婚姻数)は日本人男性×外国人女性の方が3割近く多いので、単純に比較ができないのですが、何かしらの理由があるのではと考えられます。
次に国別の離婚件数と離婚率について見ていきましょう。こちらは国別上位3カ国の、国際結婚の離婚件数です。
夫婦のパターン/離婚件数 | 離婚件数1位 | 離婚件数2位 | 離婚件数3位 |
---|---|---|---|
日本人男性×外国人女性 | 中国:5,762件 | フィリピン:4,630件 | 韓国:3,664件 |
日本人女性×外国人男性 | 韓国:977件 | 中国:632件 | アメリカ:397件 |
そして国別の離婚率はこちらです。
夫婦のパターン/離婚率 | 離婚率1位 | 離婚率2位 | 離婚率3位 |
---|---|---|---|
日本人男性×外国人女性 | フィリピン:88.8% | 韓国:69.8% | タイ:67.7% |
日本人女性×外国人男性 | フィリピン:86.2% | 中国:69.4% | ブラジル:56.6% |
参照:夫妻の国籍別にみた年次別婚姻件数・百分率|e-Stat・夫妻の国籍別にみた年次別離婚件数及び百分率 |e-Stat
国際結婚の離婚理由
国際結婚の離婚理由や原因には、日本人同士の場合と同様の不倫やDV、浪費や性格の不一致などがあります。一方で、次のような国際結婚ならではの離婚理由もあります。
- 言葉の違いによるコミュニケーション不足
- 生活習慣・食生活の違い
- 家族に対する価値観の違い
- 宗教に対する向き合い方
外国人の方との結婚では、両国の生活習慣や食生活、宗教など様々な価値観の違いが問題になります。分かったつもりで結婚しても、いざ一緒に暮らしてみるとその違いに驚くこともあり、双方が主張をし続けるとストレスになることも。
日本人男性×外国人女性の国際結婚で多いのが、両国の間に経済的格差があるような場合です。外国人女性は母国にいる家族を養うために日本人男性と結婚するというパターンが多く、結婚したとたんに母国の家族を日本に呼び寄せて一緒に暮らすよう強要したり、仕送りするために夫に援助を求めるということがあります。
このような状況だと日本人男性は、「相手の女性はお金(日本国籍)目的で自分と結婚したのでは?」と思うようです。相手に幻滅したり失望したりして、夫婦仲が悪くなるパターンも見られます。
国際結婚の離婚手続き方法について
では実際、国際結婚の離婚手続きは、どのように進めていけばいいのでしょうか。
通則法に基づく考え方
日本人同士の離婚であれば、個人間の財産や身分の関係について定めた「民法」に基づいて手続きが行われます。しかし国際結婚では、日本とアメリカ、日本と中国など、複数の国の法律が関係してきます。
このように複数の国の法律が抵触する場合、どちらの法律に基づいて手続きを行うかについては、「法の適用に関する通則法(通則法)」の定めに準じて決められます。通則法第27条では、国際結婚のカップルが離婚するにあたって、どちらの国の法律が適用されるのか(準拠法)という問題について、次のように示しています。
夫婦の本国法が同一であるときはその法により、
その法がない場合において夫婦の常居所地法が同一であるときはその法により、
そのいずれの法もないときは夫婦に最も密接な関係がある地の法による。
ただし、夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人であるときは、離婚は、日本法による。
外国人との離婚については、この準拠法の問題や、どこの国の裁判所で紛争を処理すべきかという問題(国際裁判管轄)についての規定が重要に。
上の通則法では、国際結婚の夫婦が日本に住んでいるときは日本の法律に従って離婚の手続きを行うとしています。夫婦が日本と外国に別れて住んでいるときは、夫婦に最も密接な関係がある国の法によりますが、夫婦のどちらかが日本に住む日本人のときは、日本の法律が適用されます。
日本と相手国、2つの手続きが必要
通則法では、夫婦が日本に住んでいる場合や夫婦の片方が日本に住む日本人の場合、日本の国の法律に基づいて離婚の手続きを行うとしています。しかし日本の法律に基づいて離婚届けが役所に受理された時点では、単に日本での離婚が成立しただけのことで、相手国では離婚は成立していません。
国際結婚の夫婦それぞれが離婚手続きを完了するには、日本と相手の国、それぞれでの離婚手続きが必要です。
国によって離婚方法が異なる
ここで問題になるのが、日本と外国とでは離婚方法に違いがあるということ。例えば日本では夫婦間の話し合いのみで離婚できる協議離婚が認められていますが、アメリカなどでは協議離婚は認められていません。またフィリピンでは、そもそも「離婚」自体が認められていないため、フィリピンでの離婚手続きができません。
中国や韓国、タイなどでは協議離婚が認められているものの、日本でのみ離婚手続きを行い、それぞれの国で離婚手続きを行わない場合、その外国人はずっと結婚している状態です。次に出会った人と再婚しようと思ったときに「重婚」状態を指摘され、再婚できなくなります。
このように国際結婚の離婚では、双方の国それぞれで手続きが必要な場合があり、注意点やポイントが異なることも忘れずに覚えておきましょう。
【国別】離婚手続きの進め方
では実際に国別の離婚手続きの進め方について解説していきます。例として挙げた国の中に夫や妻の母国がない場合は、まず日本にある相手国の大使館に問い合わせてみましょう。相手国まで赴いて離婚手続きが必要なケースがありますが、大使館に申請すれば離婚が成立する可能性もあります。
アメリカ
アメリカ人との離婚手続きは、基本的に各州の法律によります。アメリカでは協議離婚が認められていないものの、1990年1月1日以降は夫婦のどちらかが日本人であれば協議離婚を認めています。ただし役所に離婚届けを提出するという日本の離婚方法が合法かどうかは、各州によります。
日本の裁判離婚がアメリカでも有効だと認められるためには、次のような要件があります。
- 当事者双方が裁判に出廷していること
- 裁判所の管轄地に少なくともどちらか一方の住所があること
- 当該離婚がアメリカの公序良俗に著しく反していないこと
アメリカ人の相手と離婚手続きをするためには、事前に米国大使館に問い合わせたり、当該州の法律に精通した弁護士に相談することをおすすめします。
中国・台湾・香港
中国や台湾では、日本と同様に協議離婚が認められています。中国では離婚に関する統一した法律がなく、少数民族に関する自治区の条例や習慣法、軍人や公務員に適用される特例法などもあるため、相手方の民族や立場、居住地域によって適用法が異なる可能性が。
また台湾では、日本の調停調書が認められない場合があるので注意しましょう。香港では、適用法が「中華人民共和国婚姻法」となっている地域がある一方、香港特別行政区ではイギリスの「婚姻法」、マカオ特別行政区では「1996年ポルトガル民法」が適用されます。
韓国
韓国は日本と同様に、協議離婚が認められています。ただ韓国では協議離婚する場合、離婚に伴う慰謝料等の損害賠償請求を認める規定が存在していません。そのため協議離婚では慰謝料請求ができないと考えられます。また韓国の役所に離婚の届出をする前には、韓国の家庭裁判所「家庭法院」での確認手続きが必要です。
日本と韓国とは人々の交流が多く、密接な関係があります。そのため日本にも韓国報に詳しい専門が多くいます。韓国人のパートナーとの離婚を考えている方は、一度そのような専門家に相談することをおすすめします。
フィリピン
上で説明した通り、フィリピンには「離婚」という制度自体が存在していません。「フィリピン家族法」第26条では、「フィリピン人と外国人の婚姻が成立し、その後外国人の配偶者によって離婚の手続きが有効になされた場合、その元配偶者が再婚することが可能になったときは、フィリピン法が適用となるフィリピン人も再婚できる」としています。
ただフィリピンにある婚姻記録に訂正を加えるためには、「Recognition手続き」という手続きが必要です。このRecognition手続きは、フィリピンの弁護士に依頼して日本で成立した離婚をフィリピンの裁判所に承認してもらい、その承認した事実を婚姻記録に記載するという手続きです。
この手続きをしないまま、フィリピン人の元配偶者が別の人と再婚した場合、フィリピンでは重婚扱いとなってしまいます。
タイ
タイ人配偶者との離婚では、婚姻時にどちらの国の手続きから最初に行ったかや、常居所が日本にあるかどうかで手続きの手順が変わってきます。それぞれの離婚手続きの手順はこちらです。
婚姻時の手続き順 | 常居所 | 離婚手続きの方法 |
---|---|---|
日本→タイの順で手続き | 日本 | 日本から離婚手続きを行い、タイで離婚手続き(報告)する |
タイ | 日本に住民票を移して日本の住所を取得、その後日本で離婚手続きを行い、次にタイで離婚手続き(報告)する | |
タイ→日本の順で手続き | 日本 | 日本から離婚手続きを行い、タイで離婚手続き(報告)する |
タイ | タイから離婚手続き(報告)を行い、次に日本で離婚手続きする |
日本とタイとの手続きを逆にしてしまうと、それぞれの役所で届を受け付けてくれないので、くれぐれも手順を間違ってしまわないように注意しましょう。
参考:離婚届(タイ側)の手続きの流れ及び要項|タイ王国大阪総領事館
国際結婚における離婚手続きのポイント
国際結婚から離婚に進むには、日本と相手国の二カ所で手続きが必要です。国によっても手続きが異なってくるため、日本人同士の離婚とは違うポイントが重要に。こちらでは国際結婚での離婚手続きの注意点などについて解説していきます。
そもそも結婚が成立しているかの確認が必要
離婚の手続きをする前に、そもそも結婚(婚姻手続)が成立しているかの確認が必要です。というのも、国際結婚では一つの国だけで婚姻の手続きが成立していても、もう片方の国で婚姻が成立していないという状況が起こりがちのため。初めから婚姻が成立していなければ、離婚手続きの必要がありません。
協議離婚が認められない国がある
上で説明した通り、世界には協議離婚が認められていない国があることを覚えておきましょう。日本では離婚の約9割が協議離婚と言われていますが、実は世界を見ると、協議離婚を認めている国は10カ国未満と極めて少ないことが分かります。協議離婚を認めているのは、日本以外では次のような国のみです。
- 中国
- 台湾
- 韓国
- スウェーデン
- ノルウェー
- オランダ
上記外の多くの国では、裁判所をはじめとする第三者の介入なしで離婚することが認められていません。国際結婚のカップルが離婚するには、日本と相手国の2カ所で手続きが必要。相手国の離婚に関する法律を知り、どのように手続きを進めるべきか考えることは、離婚をスムーズに進める秘訣です。
協議離婚の慰謝料相場について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしましょう。
「協議離婚の慰謝料相場が知りたい!増額・減額できる秘訣や慰謝料の決め方を解説」
相手が離婚に同意しない場合は裁判が必要
外国人の配偶者が離婚に同意しない場合は、裁判所を通しての手続きをしなければなりません。相手方が日本に住んでいるケースでは、住所地に管轄があるという原則により、国際裁判管轄が日本の裁判所に認められます。そして準拠法については、片方の当事者が日本在住の日本人の場合、日本法に基づいて離婚できるかが歓談されます。
裁判所を通す手続きは日本人同士の離婚と同様に、離婚調停から離婚裁判に進みます。通常は調停前置主義といって、裁判の前に必ず調停の申し立てが必要です。しかし外国人の配偶者が日本を出国し、どこにいるか分からないような場合にはその限りではありません。
このようなケースでは、離婚調停を起こしても相手が出頭する見込みがありません。そこで裁判所に「調停に付することを適当でない」事件であることを説明すれば、離婚調停を経ずに裁判を起こすことが可能になります。
離婚慰謝料についての考え方の違い
日本と外国とでは、離婚慰謝料についての考え方が異なる場合があります。そのため日本人配偶者に対してするのと同様に「不倫したのから離婚するときに慰謝料支払ってください」と言っても「どうして不倫して離婚したからといって慰謝料を支払わなければならないのか」と話し合いにならない可能性が高いです。
アメリカやフランスなどでは、不倫した配偶者に対して慰謝料請求することは認められていますが、不倫相手に慰謝料を請求することは認められていません。またドイツでは、そもそもの不倫慰謝料についての規定すらないのが実情です。外国人の配偶者に慰謝料を請求したいとお考えの方は、相手国の慰謝料についての考え方についても学んでおきましょう。
子どもの親権の問題
国際結婚したカップルの間に子どもがいる場合、子どもの親権についてもトラブルになる恐れがあります。日本では離婚時に未成年の子どもの親権を協議や調停、裁判で夫婦のどちらにするか決めます。しかし外国では、離婚後も両親ともに親権を持つ「共同親権」が認められている国も多く、どの国の法律に基づいて親権を決定するか通則法の確認が必要です。通則法第32条では、子どもの親権について次のように定めています。
親子間の法律関係は、子の本国法が父又は母の本国法(父母の一方が死亡し、又は知れない場合にあっては、他の一方の本国法)と同一である場合には子の本国法により、その他の場合には子の常居所地法による。
通則法では、ほとんどのケースで子どもの国籍がある国の法律に従い、子どもの国籍と両親の国籍が異なるケースでは子どもが住んでいる国の法律に従うとしています。
父親が子どもの親権を取れるか知りたい方は、こちらの記事を参考にしましょう。
「父親が親権を取れる確率は?重視されるポイント・親権獲得のためにすべきことを解説」
離婚後の子どもの連れ去り
国際結婚の離婚では、一方の親による子どもの連れ去りに注意しなければなりません。というのも複数の国家間で、国際離婚による子どもの連れ去りについて、「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)」が締結されたことが理由です。
日本人同士の離婚であれば「突然妻が子どもを連れて家を出た」という光景は珍しくありません。子どもにとっては急に環境が変わって戸惑うこともあるでしょうが、次第に新しい環境に慣れていくでしょう。しかし日本と外国とではそうもいきません。片方の親の判断で言葉も分からないような外国に連れていかれることは、子どもの意思を考慮しない行為で、子どもの成長に害があると考えられます。
そのためハーグ条約の規定により、日本から外国人がその国へ子どもを連れ去った場合や、外国に住んでいた日本人が日本に子どもを連れ帰ったような場合は、子どもの返還を求めて民事訴訟される可能性が。またアメリカやカナダ、イギリスなどでは、実子でも誘拐罪として刑事罰が科される恐れがあります。
参考:ハーグ条約|外務省
離婚後の子どもの国籍
離婚後の子どもの国籍はどうなるのでしょうか。国際結婚の場合でも、片方の親が日本人ならその子どもも日本国籍を取得できます。通常は子どもが生まれてから3カ月以内に、日本の自治体役場に「出生届」を提出すれば手続き完了です。
ただアメリカやカナダなどは、出生地国の国籍も取得可能なため、子どもが二重国籍になる場合も。成長した後(22歳まで)に子ども自身が国籍を選択できるようにするためには、出生届を提出するときに「国籍留保」の手続きも一緒に行いましょう。
離婚後の名字に関する手続き
外国人と日本人との離婚の場合、離婚後の名字(姓)に関する手続きは、日本人同士の離婚とは全く異なります。日本人同士の離婚では、旧姓に戻すケースと、結婚中の姓を名乗り続けるケースのどちらかから選べますが、外国人との離婚では、離婚後も結婚していた当時の姓のままが原則です。
もし旧姓に戻りたい場合は、離婚後3カ月以内に役所に申請する必要があります。それを超えてしまうと、家庭裁判所に申し立てて許可が必要に。手続きが煩雑になるので、なるべく3カ月以内に申請するようにしましょう。
子どもの戸籍と姓
離婚後の子どもの姓については、婚姻中の姓のパターンに応じて手続き方法が変わってきます。国際結婚夫婦の間の子どもの姓については、次の3パターンとなっています。
夫婦の姓 | 子どもの戸籍と姓 |
---|---|
夫婦同姓(日本人が外国姓を名乗っている) | 日本人の親と同一戸籍・外国姓を名乗る…① |
夫婦別姓 | 日本人の親と同一戸籍・日本姓を名乗る…② |
子の単独戸籍・外国姓を名乗る…③ |
①の日本人親と同一戸籍、外国姓を名乗っている子どもは、両親の離婚後、次のような手続きをすることで、外国姓と日本姓のどちらかを選択できます。
外国姓 | 親権に関係なく、離婚してもそのまま日本人親の戸籍に入り、親と同じ外国姓を名乗る |
日本姓 | 親が日本姓を名乗りたい場合、「氏名変更の届出」提出時に、子どもの戸籍を入籍させる「同籍する旨の入籍届」も提出すると、親の日本姓を名乗れる |
②の日本人親と同一戸籍、日本姓を名乗っている子どもは、離婚後に次のような手続きをします。
外国姓 | 家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立」をする |
日本姓 | 手続きの必要なし |
③の子の単独戸籍・外国姓の場合、次のような手続きとなります。
外国姓 | 手続きの必要なし |
日本姓 | 子の戸籍を親の戸籍に入籍させる「同籍する旨の入籍届」を提出 |
離婚をスムーズに、有利に進める方法
国際結婚の離婚は、国ごとに手続き方法が異なるなどで、スムーズに進まないことも多々あります。少しでもスムーズにかつ有利に離婚を進めるためには、次のような方法を取りましょう。
国際離婚問題のプロに相談
国際結婚の離婚をスムーズに進めたいなら、その道のプロに相談するのがおすすめ。まずは相手国の法律に詳しい弁護士事務所を探し、その中でも国際結婚の実績が豊富なところを見つけましょう。
日本人同士の離婚でさえ離婚そのものや離婚条件で弁護士に依頼するケースがあります。ましてやそれよりも難航することが予想される国際離婚を自力で乗り切るのは、大変困難な道のりです。いち早く新生活をスタートさせるためには、国際結婚・離婚問題に詳しい弁護士に相談するのがベスト。
なるべくなら2~3つの弁護士事務所をピックアップしたうえで、実際に無料相談をして詳しく話を聞いてみましょう。一番親身に話を聞いてくれ、自分に合っていそうな弁護士に依頼するのが、弁護士選びを失敗しない秘訣です。
日本の裁判所で調停手続きする
日本の裁判所で調停手続きするのも、スムーズに離婚するためのポイントです。相手の国で離婚裁判などを行うときにネックになるのが言葉の壁。日常会話程度なら話せる人でも、法律的な専門用語などを理解し、完璧に使いこなせる人はそれほど多くありません。通訳を付ける場合でも、通訳にかかる費用は自己負担になることがほとんど。
その点、日本の裁判所で離婚の手続きを進める方が言葉の問題もなく、手続きもスムーズに行えるでしょう。ただし日本の裁判所に調停や裁判を起こせるかは、国際裁判管轄が日本にあるかによります。夫婦の両方が日本に住んでいる場合は日本で裁判ができますが、日本と外国で別々に暮らしている場合は、例外を除き日本の国際裁判管轄が認められません。
離婚調停の期間についてや期間を短くする秘訣は、こちらの記事を参考にしましょう。
「離婚調停の期間を短く有利にするには?長引く原因や疑問を解決して新たな一歩を」
金銭請求はなるべく一括で
慰謝料や子どもの養育費など、離婚時に発生する金銭の請求については、なるべく一括で支払ってもらうようにしましょう。毎月○万円などの長期分割にしてしまうと、外国人の元配偶者が日本から母国に帰国したり逃亡したりする恐れがあるからです。
相手方が日本国内にいない場合は、日本法に基づく強制執行(財産の差し押さえ)ができなくなり、受け取れるはずのお金が受け取れなくなります。このようなトラブルを事前に防ぐには、一括払いもしくはある程度まとまった金額を支払ってもらうように交渉しましょう。
離婚協議書を作成する
もし慰謝料や養育費を一括で払ってもらえないときには、必ず離婚協議書を作成し、合意した内容を書面化しておきましょう。公証役場で「認諾文言付き公正証書」にしておくと、相手方が不払いを起こしたときに直ちに強制執行が可能です。
ただし前述の通り相手が日本国外に出てしまった場合は、日本法に基づく強制執行は不可能です。相手がいる現地方の手続きを踏まえ、強制執行手続きを申し立てなければなりません。
養育費を強制執行するメリット・デメリットについては、こちらの記事を参考にしてください。
「養育費を強制執行する・されるデメリットとは?強制執行の基礎知識とデメリット回避方法」
まとめ
国際結婚カップルの離婚は、日本人同士の離婚よりも離婚率が高いのが現状です。言葉の壁や生活習慣の違いでトラブルになりやすく、宗教観や家族間の不一致が起きやすいのが、離婚率が高い理由です。外国人との離婚を考えたとき、準拠法と国際裁判管轄の規定がポイントです。
そして離婚の手続きは、日本と相手国の両方で必要になります。相手がどこの国の人かによって、その手続き方法が変わってくるため、まずはどのような手続きをすべきなのか在日本の大使館に問い合わせてみましょう。外国人との離婚は、離婚そのものの他にも子どもの親権や慰謝料、離婚後の姓や子どもの国籍といった問題もあります。
なるべくスムーズに、そして有利に離婚するには、日本の裁判所で手続きを行い、金銭請求は一括が原則です。そして国際結婚問題に詳しい弁護士に相談するのがおすすめ。相手国の法律にも精通しているので、離婚手続きやその他の手続きを依頼する場合も安心です。