- 「夫が自分をずっと無視していて毎日が辛い…」
- 「配偶者が自分を無視することを理由に、離婚や慰謝料請求はできる?」
夫婦喧嘩や言い争いをきっかけに、自分のことを無視し続ける夫。一緒に生活しているにも関わらずずっと無視をされている状態は非常につらいものです。対応に疲れ、離婚を視野に入れ始める人もいるでしょう。
しかし夫からの無視を理由に離婚はできるのでしょうか?また、無視を理由に慰謝料の請求はできるのでしょうか?今回は配偶者からの無視を理由に離婚するための条件、そして慰謝料請求の条件について詳しく解説をしていきます。配偶者からの無視を理由に離婚するか悩んでいる方はぜひお読みください。
妻を無視し続ける夫の心理とは
もともと自分の世界に没頭しやすい人や他人に興味が薄い人の場合、こちらから話しかけても気づかないことがあります。しかしそうではなく明らかに無視をしている場合、何らかの理由があるということです。一体どのような心理で妻を無視するのかを解説していきます。
拒絶や怒りを伝えるため
拒絶や怒りの意志表示をする目的で、わざと配偶者を無視するケースです。「言葉で示せばよいのに」と思うかもしれませんが、相手はそれができず無視することでなんとか怒りを示そうとしています。
こちらから見ると単なる逆切れに思えてしまうかもしれません。しかし怒りの気持ちをアピールするということは、あなたに問題を解決してほしい、関係を修復したいという気持ちの現れでもあります。あなたが歩み寄ることで現状が改善される可能性があります。
自分が優位だということを分からせたい
男性全員に当てはまるわけではありませんが、男性は自分のほうが優位に立ちたいと考える傾向があります。特にモラハラ気質の男性の場合自分が優位に立つことを目的にわざと相手を無視することがあります。
配偶者を無視して意図的に傷つけることにより「夫が不機嫌になれば自分が辛い思いをする」という考えを植え付けさせ、自分を恐れさせようとします。
関心がなくなった
配偶者への関心がなくなり、無視に至るパターンです。男性が喧嘩で深く傷つくことや一番気にしていることを言われた場合、妻への愛情が一気に冷め関心も持てなくなることがあります。
すると相手を無視しても問題ない、もう仲良くする必要がないと認識し無視するようになります。夫婦関係に大きなヒビが入り、簡単に修復はできない状態になっていると言えます。
配偶者からの無視を理由に離婚や慰謝料請求はできる?
配偶者にずっと無視され続けることで精神的に疲れ、中には離婚を考える方もいるでしょう。配偶者から無視されたことを理由に離婚が認められる条件を解説します。
合意があれば離婚ができる
離婚しようと思った場合、まずは夫婦が離婚するか否かを話し合うことが一般的です。離婚届を一緒に作成し役所へ提出ができれば、それだけで離婚は成立します。このようにお互いに離婚に同意した上で離婚に至ることを協議離婚と呼びます。
協議離婚はお互いに同意していれば理由は問いません。つまり無視されたという理由で離婚も可能ということです。
離婚裁判で無視を理由にした離婚は難しい
ただ必ずしも相手が離婚に同意するとは限りません。話し合いをしようとしてもそれすら難しい場合もあるでしょう。その場合は家庭裁判所で調停を行う調停離婚、法律によって離婚を認めてもらう裁判離婚による離婚を考えることになります。
裁判離婚で離婚を認めてもらうためには民法770条で定められている以下のいずれかの法的離婚事由に該当していなくてはいけません。
- 不貞行為があった
- 悪意の遺棄があった
- 3年以上生死不明である
- 強度の精神病にかかり回復の見込みがない
- その他婚姻を継続しがたい重大な事由がある
夫からの無視だけを理由に離婚をしたい場合、5つ目の「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するか否かを考えることになります。夫婦喧嘩の後に一時的に無視されている場合は婚姻を継続しがたいとは言い切れないため、離婚は認められない可能性が高いです。
ただ配偶者の無視が長期間続いている場合は無視がモラハラとして認められる可能性が高く、婚姻を継続しがたいとみなされ離婚が認められることがあります。
無視だけでは慰謝料の請求も難しい
相手の非によって離婚に至る場合、慰謝料を請求できることがあります。配偶者の無視によって心に傷を負い、離婚だけでなく慰謝料ももらいたい…と考える方もいるかもしれません。
ただ短い期間の無視の場合、先に解説した法的離婚事由に該当しないため慰謝料の請求は困難です。継続的に無視をされている状況が続いている場合、モラハラとして慰謝料を請求できる可能性はあります。しかし慰謝料を請求するためには、相手に非があるという客観的な根拠を提示しなければいけません。
つまり相手の無視を慰謝料請求の理由にする場合は「相手に無視をされている」ということを証明する必要があります。暴力や暴言であれば写真や録音などが明確な証拠になりますが、無視のように「行為がされていないこと」の証明は大変困難であり実際に慰謝料を請求することは難しいのが現状です。
無視以外に離婚が認められるケース
以上のように、配偶者から無視されたというだけでは離婚が難しく、慰謝料の請求は大変困難です。しかし以下のように法的離婚事由に該当することがある場合、裁判で離婚が認められる可能性が高いです。
- DVやモラハラがある
- 生活費を渡してもらえない
- 不貞行為の証拠がある
- セックスレスが続いている
- 3年以上音信不通である
- 長い間別居をしている
DVやモラハラがある
DVとはドメスティック・バイオレンスの略語で家庭内暴力のこと。モラハラはモラル・ハラスメントのことで道徳的な嫌がらせの意味です。暴力を振るわれている、もしくは精神的な暴力行為がある場合、法的離婚事由の中の「婚姻を継続しがたい重大な事由」とみなされ離婚が認められる可能性が高いです。
モラハラの具体例
今回解説している意図的な無視もモラハラに該当しますが、無視されていることを立証するのは難しいものです。無視以外にも、以下のような行為がモラハラに該当しますので、当てはまるものがないか確認をしてみてください。
- 殴る素振り、物を投げる振りをして脅す
- 大切なものをわざと捨てたり壊したりする
- 人前でバカにする
- 実家や友達との付き合いを過度に制限する
- 「役立たず」等、人格を否定する言葉をかける
証拠として有効なもの
暴力を振るわれている場合は暴力を受けた際の傷の写真、病院での診断書が証拠になります。モラハラの場合は相手の言動を記録した録音や録画が証拠として有効です。メールやLINEでのやりとりでモラハラがあった場合は、スクリーンショットで保存しておくことで証拠になります。
モラハラを理由にした慰謝料請求方法、有効な証拠の確保方法については以下の記事でさらに詳しくまとめています。ぜひ併せてお読みください。
夫婦や恋人間のモラハラで慰謝料請求できる?相場や方法を知って有効な証拠を確保しよう
生活費を渡してもらえない
生活に必要なお金を渡してもらえないことは経済的DVにあたります。経済的DVとはモラハラの一種で、金銭的な自由を奪うことによって相手を傷つける行為を指します。
普段の生活に著しく支障が出るほどの経済的DVを受けている場合、法的離婚事由の一つである悪意の遺棄にあたります。悪意の遺棄とは、意図的に(悪意をもって)扶養の義務を放棄すること。無視されているだけでなく生活費も受け取れていない場合、この理由で離婚が認められる可能性が高いです。
生活に著しく影響が出ていない場合でも、病院に行くお金や帰省のための交通費がもらえないなど金銭的理由によって行動が大きく制限される場合は経済的DVとみなされる場合があります。
不貞行為の証拠がある
不貞行為とは婚姻関係にある人が配偶者以外の異性と性的関係を持つことを指し、法的離婚事由の一つに該当します。相手が不貞行為をしている証拠が提出できる場合、お互いに同意がない場合でも離婚が認められ、慰謝料の請求も可能です。
不貞行為の定義
不貞行為に当てはまるケースは以下のような行為です。
- 性交渉および類似した行為
- 一緒に風呂に入る
- ラブホテルに2人で入る
- 同棲をしている
- 風俗に行く
性交渉があったことが明らかである以外にも性交渉があったと明らかに推認できる状況である場合も不貞行為として認められます。例えば一緒にラブホテルに入った、風呂に入ったなどの行為は性交渉があったと認めるには充分とされます。
また風俗も性交渉および類似した行為が伴うため、不貞行為とされます。一回だけの場合は離婚は認められませんが、複数回利用している場合は証拠を提示することで離婚できる可能性があります。
不貞行為の証拠として認められるもの
不貞行為を証明するために有効となる証拠は、性的関係にあることが客観的に明らかであるものです。具体的には以下のようなものが当てはまります。
- 性交渉中の動画や写真
- ラブホテルに入るところを撮影した動画、写真
- ラブホテルの領収書、カードの利用明細
- 性的関係を匂わせるLINEやメール
- 本人が不貞行為を認めている音声データややりとり
男女がラブホテルを利用した場合は性行為があったと誰でも推測ができます。そのため肉体関係そのものの直接的な証拠でなくてもラブホテルへ出入りした写真や動画、領収書などは不貞行為の証拠となります。
また性的関係があったことが推測できるメッセージや本人が不貞行為を認めた音声も証拠として有用です。スマートフォンのスクリーンショットは偽装が安易なため、本人のスマホごと別のスマホで写真を取ると証拠としての信憑性が上がります。
セックスレスが続いている
無視と同時にセックスレスの状態に陥っていればセックスレスによる夫婦関係の破綻を理由に離婚が認められる可能性が。一般的に離婚が認められるセックスレス期間は1年以上が目安ですが、結婚してから一回も性交渉がない、もしくは極端に回数が少ない場合は1年未満でも認められるケースがあります。
ただ無視されていることを証明するのが難しいのと同様にセックスレスを証明するのは難しい傾向があります。証拠としては性交渉を拒絶された音声ややりとり、誰かに相談した際の記録や第三者の証言が有効です。
3年以上音信不通である
相手に無視されているだけでなく、行方をくらましどこに居るのかも分からない状態が3年以上続いている場合はそれを理由に離婚が認められます。3年以上連絡がとれず生死も不明であることは法的離婚事由の一つに該当するためです。
もし相手と連絡がとれないことを理由に離婚したい場合、以下のように生死不明の証拠になるものが必要です。
- 相手と最後にやりとりしたメールやLINE、通話履歴など
- 警察に捜索願を出した証拠(捜索願受理証明書)
- 親族や知人、勤務先の人による陳述書
長い間別居をしている
夫婦の別居は婚姻関係が破綻しているということを客観的に証明でき、法的離婚事由の「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当します。相手が離婚に同意しない場合、もしくは話し合いに応じない場合でも3年~5年程度別居をしていれば法的に離婚が認められる可能性があります。
ここでの別居は、単身赴任や家庭内別居は含まれません。配偶者が無視をしている場合、実質家庭内別居のような状態に陥っているかもしれません。しかし家庭内別居では夫婦関係が破綻していることを客観的に証明ができず、あくまでも別の家に暮らしている必要があります。
すでに別居をしていて離婚をしたい方、逆に離婚のために別居することを考えている方は、以下の記事もあわせてお読みください。
別居からの離婚が成立する期間はどれくらい?必要な期間や別居する際の注意点
自分を無視する配偶者と離婚するためにできること
ここまで解説をした通り、配偶者が自分を無視することを理由に離婚したい場合、他の法的離婚事由に該当するような行為があれば離婚が認められる可能性があります。しかし実際に無視以外の理由がない場合は難しい場合も。最後に無視をする配偶者と離婚をするにはどうすればよいかについて解説をします。
話し合いによる離婚を目指す
相手の無視は法的離婚事由に該当せず、夫婦関係が破綻しているということを証明できることも難しいため無視だけでは裁判での離婚は認めてもらえない可能性が高いです。そのためまずは話し合いでの離婚を目指しましょう。
あなたのことを無視し続けている場合、相手にはもはや夫婦関係を改善しようという意志がない可能性があります。こちらから離婚を話題にすることにより、相手も離婚に向けた話し合いに応じてくれる可能性があります。
話し合いが難しい場合は弁護士に依頼する
夫婦間との話し合いで解決ができればよいですが、自分のことを無視し続ける相手に話しかけるのは大変勇気が要ることです。また無視をしているからといって相手が離婚を希望しているとは限らないため、離婚を切り出すと逆上する人もいます。
話し合いで解決が難しいと感じた場合は離婚問題に詳しい弁護士に相談しましょう。様々な状況における離婚問題を解決しているため、有効なアドバイスがもらえるだけでなく、スムーズな離婚に向けて力になってくれます。
本人と直接話をせずに話し合いができる
弁護士に離婚手続きを依頼をすることで相手とのやり取りを全て代行してもらうことができます。配偶者が長い間あなたの無視を続けていたとしても、法律事務所からの連絡は無視できないはずです。離婚に向けた話し合いを全て任せることができるため、あなたはストレスフリーで新しい生活に向けた準備を進められます。
財産分与や親権の交渉をスムーズに進められる
相手の同意があれば離婚は成立しますが、離婚に際して忘れていけないことが財産分与です。婚姻後に築いた財産は離婚のときに分割し、夫婦それぞれに分けられます。弁護士が間に入ることにより、財産分与についての交渉も任せることができます。また子どもがいる場合はどちらが親権を取るかも重要事項です。弁護士に依頼することで自分に有利に交渉を進められる可能性があります。
まとめ
一緒に住んでいるにも関わらず、自分のことを無視する夫。パートナーが配偶者を無視する理由としては「怒っていることを分からせたい」「自分が優位に立ちたい」といったような心理が挙げられます。
無視されている状態は大変苦しいものですが、配偶者の無視だけで離婚を認めてもらうことは難しいため、離婚したい場合の手段は他の法的離婚事由を理由に離婚する、もしくは本人と話し合いをし、離婚に同意してもらう必要があります。
法的離婚事由がないが本人と話し合いができない、どうしたら離婚できるのか分からない方は法律相談所に相談することをお勧めします。今のあなたの状況に合わせ、最適な解決方法を提案してくれるはずです。