- 「夫のモラハラが原因で離婚するのに慰謝料請求できる?」
- 「モラハラを証明できる証拠について知りたい」
芸能人の離婚理由としても話題にあがる「モラハラ」ですが、モラハラで慰謝料を請求して実際に受け取れるまでにはいくつかのハードルを越えなければなりません。こちらの記事では夫や妻のモラハラで離婚を考え、慰謝料を請求したいと考えている方のために、どんな行為がモラハラに該当するかについてや、慰謝料請求が難しい理由を解説。
また慰謝料請求のために有効や証拠や、請求の手順を紹介していくので、実際に証拠を集めたり手続きを進める参考にしましょう。モラハラが原因で慰謝料請求するのは簡単なことではありません。しかし法的に有効な証拠を準備して、法律の専門家の助けを借りられれば決して不可能なことではないことを覚えておきましょう。
モラハラで慰謝料請求するには?
モラハラが原因で離婚や慰謝料請求を考えている場合、本当に自分のされたことがモラハラ行為なのか知る必要があります。こちらではモラハラの定義や具体例などのほか、慰謝料請求が難しい理由について解説していきます。
モラハラの定義を知る
モラハラとは「モラル・ハラスメント」の略語で、直訳すると道徳的な嫌がらせのことを指します。人格を否定するような言葉を使ったり、無視など不機嫌な振る舞いで、配偶者を精神的に追い詰めるような行為のこと。精神的な暴力や虐待の一種で、女性が被害者になりがちですが、男性の被害者も最近では少なくありません。
モラハラの具体例
モラハラは夫婦喧嘩のときに現れるものではなく、普段の生活の中で行われることがほとんど。ついさっきまで機嫌良く会話をしていたのに、突然激高して次のような言動をしてくる場合があります。
- 殴る素振りや物を投げつけるふりで脅かす
- 子どもに危害を加えると脅す
- 些細な失敗で罵倒する
- 仕事を止めさせる・外で働くのを嫌がる
- 生活費を渡さない
- 大切なものをわざと捨てる・壊す
- 人前でバカにする・命令口調で言う
- 何日も無視をして口を利かない
- 友人や実家との付き合いを制限したり接触をチェックする
- 「誰のおかげで生活できるんだ」「役立たず」などと言う
他にも異常な嫉妬深さで配偶者の行動を制限して来たり、自分ルールを無理やり押し付けてくる行為もモラハラに該当します。モラハラ行為というのは多岐に渡り、複数の行為が幾度も繰り返されることで、次第に配偶者が心理的に追い詰められてきます。
モラハラする人の特徴
モラハラする人には、次のような特徴があります。
- 外面が良い
- 協調性がない
- 被害者意識が強い
- プライドが高い
- 他人を利用する
- 小さなことを指摘してくる
- 自分を正当化する(失敗を人のせいにする)
- 店員に横柄な態度をする
- 配偶者が楽しんでいるのが許せない
- 束縛が激しい・嫉妬深い
- 平気でうそをつく
- 物に当たったりして不機嫌をアピールする
モラハラする男性には「女性は家事と育児だけしていればいいんだ」という昔ながらの男尊女卑の考えを持っている場合が多いです。モラハラする女性に多いのが狭い範囲で生活している人で、被害者意識が強いのが特徴です。また自分の子どもや親に過剰に依存する傾向があり、男女問わず自分に甘く人に厳しいことも。
モラハラには人格障害や発達障害が根本にあることも最近分かってきて、離婚を切り出すと反省した態度を見せる場合もありますが、時間が経つとまた元通りになるのがほとんど。モラハラはよほど自分を変えようと努力できない限り、治らないと考えた方がいいでしょう。
慰謝料は精神的苦痛に対する損害賠償
慰謝料という言葉は民法に定義されていませんが、民法では「精神的苦痛に対する損害賠償請求」のことを指します。精神的苦痛というのはある事柄が原因で精神的に受けた損害のことですが、どのような行為で精神が傷付くかは人それぞれで、精神がどの程度傷がついたか証明するのは困難です。
そこで法律では精神的苦痛が発生しやすい行為(不法行為)というのを一般化して、その行為があったと認められれば精神的苦痛が生じたと評価して損害賠償を認めるという方針を取っています。したがって慰謝料請求が認められるためには、相手に不法行為があったのかを証明する必要があります。
離婚時に慰謝料請求する場合は、次の二つの意味を持つ慰謝料を請求することになるでしょう。
- 離婚原因慰謝料
- 離婚の原因となった不法行為による精神的苦痛に対する損害賠償
- 離婚自体慰謝料
- 離婚によって配偶者という立場を失うこと自体による精神的苦痛に対する損害賠償
離婚の原因となる不法行為には不貞行為やDV、悪意の遺棄などがあり、配偶者の行為がモラハラの定義に当てはまらなくても精神的苦痛が認められる場合も。また男女間だけでなく職場でのセクハラやパワハラでも慰謝料請求が可能です。
婚約者や恋人間でも請求できる
モラハラで慰謝料請求できるのは夫婦間だけではありません。婚約者からのモラハラや恋人からのモラハラでも慰謝料が請求できます。というのも2014年6月の法改正によって、夫婦間だけでなく同居する恋人や事実婚の相手からのモラハラや暴力についても「配偶者暴力防止法」が適用されるようになったためです。
とくに内縁関係(事実婚)の相手からのモラハラで別れた場合、モラハラで離婚したときと同程度の慰謝料を請求できる可能性が。「結婚していないから」などと諦めず、まずは男女問題に詳しい弁護士に相談してみましょう。
慰謝料請求が難しい理由
モラハラは慰謝料を請求できる立派な不法行為ですが、実際に請求するには難しい理由があります。
モラハラは気が付きにくい
モラハラ行為を行っている人はもちろん、モラハラの被害者でも自分がモラハラを受けていることを気付かないことがあります。これは長い間モラハラを受けたことで「自分が悪いから相手が怒るんだ」などと正しい判断ができなくなるため。このようなケースでは被害者から別居や離婚を切り出すことは少なく、問題が長期化する場合も。
またモラハラの加害者はそもそも自分の言動が悪いことと思っておらず、そればかりか「相手のためを思ってやっているんだ」と本気でモラハラ行為を行っているケースも多くあります。またモラハラする人は外面が良く、周囲の人や子どもの前ではいい父親を演じてるため、モラハラ行為が第三者に気づかれにいという特徴があります。
証拠を確保しにくい
モラハラ行為の証拠を確保しにくいのも、モラハラで慰謝料請求が難しい原因です。DVなどの暴力行為では、暴行を受けて体にできたケガやアザの写真のほか、病院に行ったときに診断書が証拠になります。しかしモラハラは言葉や態度による暴力ということで、目に見える証拠が取りにくいためです。
またモラハラは1回の行為だけではそれほど意味のない言動でも、毎日のように繰り返されることで精神的ダメージを受けることも。そのようなことからも、モラハラの明確な証拠は取りにくいといえいます。
話し合いは困難
慰謝料を請求する場合は、相手に不法行為があったことを認めさせる必要があるのですが、モラハラをする人はそもそも口が達者で自分を正当化するのに長けているため、話し合いにならないことがほとんど。また「相手のためを思ってやっている」と本気で考えてる人が多く、プライドが高いため、相手の言葉を真摯に聞こうとしません。
また調停や裁判の場でも、慰謝料請求の合意は容易ではないでしょう。モラハラ加害者は自分の印象を良く見せる技術はピカ一なので、こちらが要求する慰謝料の請求額が認められないことも。よほど交渉上手な人なら話し合いになるかもしれませんが、いずれにしろ簡単には終わらないので、証拠をしっかり集めたり、弁護士に交渉を依頼するなどの対策は必須です。
慰謝料請求に有効な証拠とは
こちらでは慰謝料請求に有効な証拠を紹介します。上で紹介したようにモラハラ加害者は自分の非を認めないばかりか、自分にそのような行動をさせる相手が悪いと考えています。裁判になってもモラハラ行為を認めない可能性が高いため、モラハラを理由に離婚しようと思ったら、証拠は普段から取っておくようにしましょう。
毎日の出来事を記した日記
いつどのような状況でどんなことを言われたかなど、毎日の出来事を詳細に記録した日記は証拠になります。日記をつける場合は、日付・時間・言われたことやされたことなどなるべく具体的に記録しましょう。日記を付ける場合は、スマホのメモアプリなどデジタルではなく手書きの日記がおすすめです。
メモアプリなどは証拠の改ざんを疑われる可能性があるため、手書きの方がより信ぴょう性が高まるという理由からです。さらに生活費を入れてくれない場合は、通帳のコピーや家計簿、購入したレシートなどを取っておくといいでしょう。今は日記や家計簿を付けていない人も多いですが、相手のモラハラ行為に疑問を感じたら、なるべく早めにつけ始めることをおすすめします。
相手の言動の録音・録画
モラハラを受けているときの相手の発言を記録した録音データや、物に当たっていたり殴る素振りを録画したものも証拠として有効です。最近ではスマホをボイスレコーダーとして使うという方法があります。また小型のボイスレコーダーや隠しカメラなど簡単に手に入るので、複数準備して普段いるリビングなどに設置しておきましょう。
モラハラ行為を録音・録画する場合は、次のことに気を付けてください。
- 物に隠して設置するときは音が十分に拾えない場合があるので複数台準備する
- 前後の会話も含めて録音するようにする
- 編集データと疑われないように周囲の状況が分かるように録音・録画する
- 同じような会話でも複数残しておく(繰り返されたという事実で精神的苦痛が大きいと判断されるため)
「相手に黙って録音・録画するのは盗聴では?」と心配になるかもしれませんが、会話を相手に黙って録音する行為は「秘密録音」に当たりますが、盗聴とはみなされないため犯罪にはなりません。
メールやLINEの返信
もしもメールやLINEでモラハラ的な言葉が返ってきたら、返信内容もスクリーンショットで保存しておけば証拠として役立ちます。また一日に何度も電話をかけてきたことが分かる着信履歴のスクショも証拠になります。音声や録画で証拠を残しにくい場合は、メールやLINEの返信などの証拠を確保しましょう。
メールやLINEの返信を証拠として提出しても、違法性に問題はありません。他人の携帯電話を無断で操作してデータを入手した場合はプライバシーの侵害となりますが、自分の携帯でのやり取りを証拠として提出しただけでは犯罪にはなりません。
後遺症の診断書(うつ病・PTSD・適応障害など)
モラハラによって精神を病み、うつ病やPTSD、適応障害などで病院に通っている場合は、必ず医師から診断書をもらっておいてください。精神科や心療内科の診断書は、精神的苦痛を受けたことが分かる有力な証拠となるからです。他にも不眠症やパニック障害、ストレス性の身体症状もモラハラが原因とみなされる可能性があります。
病院への通院履歴
診断書と一緒に病院への通院履歴も証拠としてとっておきましょう。診察料の領収書や処方された薬の領収書、薬の名前が分かるお薬手帳なども有効な証拠です。長期間にわたって通院してたことが分かれば、慰謝料を増額できる可能性があります。
警察・第三者機関への相談履歴
離婚を考える以前に、モラハラについて公共機関や弁護士に相談したことがある方は、その記録をとっておくだけで証拠になります。またモラハラで身の危険を感じて警察に相談したという記録も証拠になります。ただ単に日記などにモラハラのことを記録していてもそれだけで有力な証拠とはみなされませんが、第三者に相談した記録は裁判に提出できる証拠となります。
第三者機関や弁護士事務所では相談があると記録に残しています。証拠として裁判所に提出する前に日時や相談内容などに間違いがないかチェックしておくと確実です。
モラハラ慰謝料の相場金額
モラハラで離婚する場合の慰謝料相場はどのくらいになるのでしょうか。こちらでは慰謝料の金額を左右する要素や高くなるケース、慰謝料以外に請求できるお金について解説していきます。
慰謝料の金額を左右する要素
配偶者のモラハラが原因で離婚する場合、慰謝料の相場は次のような要素で変わってきます。
- モラハラの程度
- モラハラが続いた期間・頻度
- モラハラによる精神的苦痛の度合い
- 相手の収入
- 婚姻期間
裁判で慰謝料の金額を決める場合に重要なのは「モラハラ行為によってどれだけ精神的苦痛を受けたか」ということ。裁判官は提出された証拠をもとに、慰謝料の金額を認定していきます。
慰謝料が高額になりやすい事例
慰謝料請求裁判では裁判官が被害者側の精神的苦痛が大きいと判断すれば、慰謝料の金額は高額になりやすいです。というのも裁判官はできるだけ証拠に基づいて慰謝料の金額を決めるため、ただ単に「とても辛かったから」という理由だけでは慰謝料の金額は高額になりません。具体的には次のようなケースで高額になりやすいでしょう。
- モラハラの回数や頻度が多い
- モラハラの継続期間が長い
- モラハラの悪質度が高い
- うつ病などの精神的疾患が発生
- 請求する側の収入や資産が少ない
- 請求する側の年齢が低い
- 婚姻期間が長い
- 年齢の低い子供がいる
- 子どもが多い
- 財産分与額が低い
より高額な慰謝料を請求するには、上のようなケースを示す証拠をどれだけ集められたかがポイントに。また重いうつ病など重度の障害を負った場合や、それにより仕事ができなくなったという方は、相場以上の慰謝料を請求できます。
モラハラの慰謝料相場
モラハラによる慰謝料の相場は一般的に50万~300万円です。モラハラにDVも加わったケースでは、相場以上の請求が認められる場合があります。離婚する場合、慰謝料は離婚自体慰謝料も含まれ、モラハラによって通院を余儀なくされたときは心と体を治療するための治療費も含まれます。
ただ証拠内容や被害の状況、婚姻期間の長さや子どもの有無によって請求できる慰謝料の金額が変動します。自分のケースではどれくらいの金額になるか知りたい方は、事前に弁護士に予想金額を聞いておくといいでしょう。
離婚理由や婚姻期間ごとの慰謝料相場は、こちらの記事を参考にしましょう。
「離婚慰謝料の相場が知りたい!離婚理由や婚姻期間による相場・金額をアップさせるポイントを解説」
慰謝料以外に請求できるお金
モラハラが原因で離婚する場合、慰謝料以外にも請求できるお金があります。
- 養育費
- 未成年の子どもがいる場合、親権者とならない方の親は子どもの養育のための費用を分担しなければならない。
- 財産分与
- 婚姻中に夫婦で築いた共有財産(預貯金・不動産・生命保険など)は基本的に折半しなければならない。
- 年金分割
- 婚姻期間中に納付した厚生年金について、支給額計算の基本となる報酬額の記録を分割すること。
調停や裁判では、慰謝料請求と同時に財産分与や養育費についても決められます。
モラハラ離婚での慰謝料請求方法と期間
モラハラ離婚で慰謝料を請求しようと思ったときの手順やかかる期間を紹介していきます。また慰謝料請求の時効や請求できる時期についても知っておきましょう。
証拠を集める
既出の通り、モラハラの慰謝料を請求するには、精神的苦痛を受けたという証拠が必要です。そのため慰謝料請求を考え始めたら、離婚を切り出す前に地道に証拠を集めておきましょう。見つかったときのことを考えるとどうしても録音や録画ができないという方は、一人でいるときにモラハラを受けた日時や場所、相手の言動をできるだけ詳細にメモに残しておいてください。
自宅にメモを残しておくと相手に見られる可能性がある場合は、親や信頼できる友人に預けることをおすすめします。証拠は多ければ多いほどいいので、有効な証拠が得られそうだと思ったら、なるべく数を多く集めるようにしましょう。
弁護士に相談
離婚や慰謝料請求を考えるようになったら、なるべく早めに弁護士に相談するのがポイントです。まずは自分が受けている行為がモラハラに該当するか判断してもらい、裁判で有効な証拠のとり方などのアドバイスが受けられます。多くの弁護士事務所では、初回相談を無料としています。相談に行く場合は、次のような内容をメモしておくといいでしょう。
- モラハラの内容
- 被害を受けた期間
- モラハラの証拠
- 希望について(慰謝料金額・離婚など)
- 弁護士への質問事項
弁護士と話をしたことのない方の中には、その場でスムーズに話ができないことも。限られた時間でキチンと判断してもらうには、上のような内容をメモにして持参することをおすすめします。
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協議離婚を目指して話し合い
協議離婚を目指して当事者同士で話し合いをする場合があります。協議離婚とは第三者を間に入れずに夫婦の話し合いのみで離婚する方法のことで、多くの夫婦が協議離婚によって離婚しています。ただしモラハラをしてくるような相手の場合、容易に話し合いに応じない可能性が高いと考えられます。
無理に二人っきりで話をしようとせず、話にならないと感じたらすぐに話し合いを止めましょう。場合によっては弁護士を含めた話し合いで、示談という形で和解を求める方法もあります。
内容証明郵便を発送
自分で直接相手と交渉することが難しいケースや、話し合いをしたくても相手が応じないという場合は、弁護士を通して内容証明郵便で慰謝料を請求しましょう。内容証明郵便とは郵便物の内容や差出人、差出日時について郵便局が証明してくれる郵便のこと。相手に郵送する分と写しの2通準備して、集配郵便局などの規模の大きな郵便局の窓口に出します。
内容証明郵便には法的に慰謝料を支払わせる強制力はありませんが、弁護士名で郵便を出すため万が一慰謝料を支払わないと弁護士が出て訴訟を起こされるかもしれないと思わせるのに有効です。
離婚調停を申し立てる
弁護士を通じた話し合いや内容証明郵便を出しても進展がない場合は、裁判所が仲介のもとで話し合う「離婚調停」という手続きがあります。調停は裁判所に申し立てて裁判官と調停委員が夫婦の間に入り、それぞれの言い分や希望を交互に聞いて、意見をすり合わせます。離婚調停で慰謝料についても話し合われます。
調停案に合意できれば、合意内容は調停証書にまとめられ、離婚調停は終了です。離婚調停の手続きの流れはこちらです。
- 家庭裁判所へ調停を申し立てる
- 調停期日の決定・通知
- 第一回調停
- 第二回以降の調停
- 調停の終了
調停では相手と顔を合わせなくても済むように配慮がなされます。モラハラな配偶者と直接対面する必要がないため、相手を気にせず自分の主張を述べることができるでしょう。調停でお互いが納得できない場合は裁判へと進めます。
離婚訴訟(裁判)を起こす
話し合いや調停で結論が出ない場合は「離婚訴訟(裁判)」を起こすことになります。裁判をするには訴状や証拠書面を作成する必要があり、法的な知識と手間が必要です。そのため弁護士に依頼するのが一般的となります。離婚訴訟の手続きは次のような流れで進みます。
- 訴状作成
- 訴状を裁判所提出
- 裁判所から相手方へ訴状が送達される
- 第一回口頭弁論期日決定
- 第一回~数回の口頭弁論を繰り返す
- 判決
裁判には弁護士が代理人として出廷すれば本人は行く必要がありません。ただし本人が行くことで裁判官に自分の意見を表明できるという利点があります。こちらが不利にならないためには、なるべく口頭弁論に参加することをおすすめします。
裁判で確定した内容は、特別な事情がない限り基本的に覆りません。相手に慰謝料を支払う旨の和解案や判決が出されれば、万が一約束通り慰謝料が支払われなくても、和解調書や裁判の確定判決が債権名義となって、財産を差し押さえられる強制執行が可能です。
離婚の種類ごとの手続きや条件については、こちらの記事を参考にしてください。
「離婚前・離婚後の手続きの流れを解説!離婚の条件や種類別の期間、注意点とは」
慰謝料を手にするまでの期間
弁護士に相談して最終的に裁判で訴えるまでの期間は半年~1年前後です。弁護士を入れた話し合いのみで解決できる場合は数カ月程度で終わりますが、裁判になると1年以上はかかると覚悟しましょう。もしも精神的・経済的に長期の裁判が難しい場合は、慰謝料請求をやめる代わりに財産分与を多めにもらうなど、条件を譲歩して解決を図るという方法もあります。
慰謝料請求の時効
慰謝料請求には3年の時効があります。民法第724条によると慰謝料請求権は「損害および加害者を知ったときから3年」で時効となります。加害者は配偶者ですので、損害を知ったときというのは「モラハラされた時点」もしくは「モラハラによって病院にかかり治療が終了した時点」から3年ということに。
またモラハラが原因で離婚した場合の慰謝料は、離婚が成立してから3年で消滅時効を迎えます。ただし債権名義がある場合は、合意した支払期限から10年で時効となります。この場合の債権名義とは次のような書類です。
- 公正証書
- 調停調書
- 和解調書
- 裁判の確定判決
離婚後でも請求は可能
上のような理由から、離婚後でも慰謝料の請求は可能です。とはいえ離婚原因慰謝料はモラハラ行為があった時点から3年以内で時効を迎えることに。時効の期限が迫っている場合は、内容証明郵便を送ることで時効期間を延ばすことが可能です。詳しくは担当の弁護士にお問い合わせください。
モラハラで慰謝料請求するポイント
モラハラで慰謝料請求する場合には、いくつかのポイントがあります。
二人っきりで話し合うのはNG
いくら配偶者だといえ、慰謝料の交渉は二人っきりの場所で話し合うのは避けましょう。モラハラ加害者は口が上手く相手を言い負かすのに長けている一方で、モラハラ被害者は長年のモラハラによって相手に委縮してしまいがちです。したがって二人っきりで慰謝料のことを話し合おうと思っても、以前と同じようにモラハラ加害者の言いなりになってしまう可能性が高いでしょう。
最悪のケースでは、慰謝料の支払いを拒否されたにも関わず離婚に合意してしまうこともあるため、二人っきりで離婚や慰謝料について話し合うのは絶対に止めてください。
早期の別居も視野に入れる
モラハラによる精神的苦痛が長期に及ぶと、うつ病など精神的な病を発症したり、ストレスが原因の身体的症状が現れてしまいます。それ以前にも心身に様々な悪影響を及ぼすことがあるため、離婚を考えるようになったら、早期の別居も視野に入れて行動するようにしましょう。
中には「別居するとモラハラの証拠が取れなくなるから」と別居を躊躇する方がいるかもしれません。しかし苦痛を与えてくる配偶者と一緒に住んで、毎日モラハラに耐え続けるのは大変危険です。まずは別居して安全を確保してから、慰謝料請求や離婚について考えてみては?
ただし何も言わず勝手に家を出てしまうと、裁判などで不利になる可能性が。必ず前もって手紙やメールなどで別居したい気持ちを伝え、記録としてとっておくことをおすすめします。
相談先を確保する
モラハラ被害を受けていることを相談できる相手や機関を確保することをおすすめします。モラハラ被害を長期間受けている人の中には「自分さえ我慢すれば上手くいく」と限界を超えて耐えた結果うつ病などを発症してしまったり、正常な思考力や判断力を失っているように見える方もいます。
辛いときは話を聞いてくれて理解してくれる人がいるだけでも心が軽くなります。一人でため込まず、周りの人の手も借りながら慰謝料請求や離婚訴訟を乗り切っていきましょう。
モラハラやDVは次のような公共機関などで相談できます。電話やネットで相談を受け付けている場合もあるので、気軽に相談してみてはいかがですか?
- DV相談+(プラス)
- 配偶者暴力相談支援センター
- 各都道府県の婦人相談所
- 女性センター
- みんなの人権110番
- 女性の人権ホットライン
- 福祉事務所
- 精神科・心療内科のカウンセリング
- 弁護士事務所
お金がないからと弁護士への依頼を躊躇しない
「依頼するお金がないから」と弁護士に依頼するのを躊躇する人がいるかもしれません。確かに経済的DVを受けていると手元に自由に使えるお金がなく、数十万円かかる弁護士費用をねん出できないという場合があるでしょう。
しかし法テラスを利用すると、3回までの法律相談は無料ででき、収入や財産が一定以下などの条件を満たせば完全に無料で弁護士に依頼ができます。離婚裁判では配偶者の収入や財産は条件に該当しないため、配偶者の収入が高くても法テラスを利用できます。
また弁護士事務所の中には、成功報酬は獲得した慰謝料から支払えるケースが多く、分割払いを受け付けている事務所も。例えば弁護士費用が36万円でも、1年間の分割払いにすれば月々3万円の支払いでOKです。このような方法なら、まとまったお金が準備できなくても弁護士に依頼可能です。まずは弁護士に相談する時に支払いについても聞いてみましょう。
離婚時に依頼する弁護士の選び方に悩んだら、こちらの記事を参考にしましょう。
「離婚時に依頼したい弁護士の選び方|相談前・相談時のポイントと費用に関する注意点を解説」
まとめ
モラハラとは人格を否定するような言葉などで配偶者を精神的に追い詰めるような行為を言います。モラハラは不法行為に当たるため慰謝料請求が可能ですが、当事者が気づきにくいという理由や証拠を確保しにくいという理由から請求が難しいとされます。慰謝料を請求できる時効は3年以内と決まっているため、離婚をしたらなるべく早めに請求手続きを取りましょう。
法的に慰謝料の請求を認められるには、詳細な内容の日記や録音・録画データ、医師の診断書などが証拠として必要です。まずは弁護士に相談して、裁判で使える証拠の集め方などを確認しましょう。同時に心身に異常をきたす前に、別居することも考慮に入れることをおすすめします。
慰謝料について話し合いにならない場合は調停や訴訟の場で解決していきます。モラハラによって離婚する場合、当事者間同士の話し合いは難しいのが実情です。離婚問題や男女問題に詳しい弁護士に間に入ってもらえれば、それ以上モラハラによって傷つけられるのを防げます。自分自身を守るためにも、弁護士に相談することをおすすめします。