住宅ローンが残った家に離婚後も妻が住む方法|ケース別対処法と知っておくべき注意点

NO IMAGE
  • 「住宅ローンがある家に子どもと妻だけ住む方法は?」
  • 「離婚後も持ち家に住むには、ローン名義や不動産名義をどうすればいいか分からない…」

夫婦が離婚問題に発展したとき、財産分与が複雑になりがちなのが住宅ローンが残っているマイホームです。夫婦のどちらが住むのかそれとも住まずに売却するのか、売却してもローンが残ったときは誰が負担するのかなど、検討すべきことがたくさんあります。

今の日本では妻が子どもの親権を取るケースが多く、子どもの学校や離婚後の生活を考えたときには、今住んでいる家に引き続き子どもと暮らしたいと考える人も少なくありません。そこでこちらの記事では、住宅ローンが残っている家に妻が住みたいとなったときに取るべき方法や注意点について、詳しく解説していきます。

離婚の無料相談ができる弁護士を多数掲載中
お住まいの地域から弁護士を探す
北海道・東北 北海道青森岩手宮城秋田山形福島
関東 東京神奈川埼玉千葉茨城群馬栃木
北陸・甲信越 山梨新潟長野富山石川福井
東海 愛知岐阜静岡三重
関西 大阪兵庫京都滋賀奈良和歌山
中国・四国 鳥取島根岡山広島山口徳島香川愛媛高知
九州・沖縄 福岡佐賀長崎熊本大分宮崎鹿児島沖縄

目次

離婚後もマイホームに住み続けたいと思ったときに確認すべきこと

住宅ローンが残っている家に住み続けたいと思ったら、まずは離婚前に確認すべきことがあります。こちらを参考にして、自分が離婚後も住み続けることができるのか参考にしましょう。

住宅ローンが残っている家も財産分与の対象

前提として、婚姻期間中に取得した家であれば、住宅ローンが残っている場合でも離婚時の財産分与の対象となります。財産分与とは、離婚時に夫婦の共有財産を公平に分配する制度のこと。夫婦どちらの名義になっているかは関係なく、婚姻期間中に夫婦が協力して取得した財産であれば、全て対象です。

分与の対象となるのは、現金や預貯金、有価証券や保険などの他に、不動産や動産(自動車・家具・家財道具・貴金属・美術品など)も含まれます。そのため住宅ローンが残っている家も、財産分与の対象となります。

財産分与の対象外の財産

一方で結婚前から所有していた不動産や、相続・遺贈・贈与などによって取得した財産は、原則として財産分与の対象とはなりません。また離婚前に別居していた場合、別居後に取得した財産は分与の対象外です。さらに夫婦の一方が会社を経営していた場合で、法人名義になっている財産は分与の対象外です。

住宅ローンが残った家はトラブルになりやすい

住宅ローンが残っている家も財産分与の対象となるのが原則ですが、「住宅ローンが残っている状態で離婚に踏み切りにくい」と考える人も少なくありません。住宅ローンが残っている状態で離婚を急いでしまうと、後に様々なトラブルが起きる恐れがあるため。

というのも住宅ローンというのは、一般的に非常に多額で、その負担は長期に渡るからです。離婚時に住宅ローンが原因で生じるトラブルを防ぐためには、離婚と住宅ローンについて正しく理解するのが重要。さらに離婚前には住宅ローンや不動産の名義などをどうするか、夫婦間で話し合い、はっきりさせておくことが大切です。

新築の家を建てたけど離婚をお考えの方は、こちらの記事を参考にしてください。

「新築を建てたけど離婚したい!新築離婚の原因や選択肢・注意点を知って最善の選択を」

離婚前に確認するべき事項

住宅ローンが残っているマイホームをお持ちの方は、離婚前に次のようなことを確認してください。

不動産の名義

まずは不動産の名義がどうなっているか確認してください。不動産の名義が夫の状態で、名義変更をしないまま離婚後も妻が住み続けていると、大きなトラブルに発展する可能性が高いからです。また売却を考えた場合でも、売却できるのは基本的に名義人に限定されます。共有名義の場合は、名義人全員の同意が必須です。

不動産の名義を確認するには、登記簿謄本(登記事項証明書)を取得するのがいいでしょう。登記簿謄本は最寄りの登記所および法務局の窓口で交付請求できるほか、郵送やオンラインでの請求も可能となっています。

夫名義の家に離婚後妻が住み続けたいと思ったら、名義変更するのがベスト。離婚後も夫の名義のままにしておくと、家を売却されてしまっても文句は言えません。また夫にもしものことがあったときには、夫の再婚相手などに家を相続されてしまうケース。離婚後も安心して住み続けるためには、家の名義は妻単独に変更しておきましょう。

金銭的な価値

財産分与の方法を検討するときには、家の金銭的な価値も重要な判断材料となります。売却するのかしないのか、いつ売却すればいいのか検討する場合の参考になります。家の金銭的な価値を知るには、不動産会社に査定してもらう方法があります。できれば複数の不動産会社に査定してもらい、相場や平均価格を出しましょう。

住宅ローンの契約内容

マイホームに住宅ローンが残っている場合には、住宅ローンの契約内容も今一度確認してください。確認すべき内容は次の通りです。

  • 主債務者は誰か
  • 連帯債務者の有無
  • 連帯保証人の有無

こちらについては、金融機関と住宅ローンの契約をしたときの「金銭消費貸借契約書」を確認してください。もし契約書が見つからないときには、夫と妻両方の個人信用情報を取得して確認する方法があります。

信用情報機関名 加盟業種 請求方法
株式会社シー・アイ・シー(CIC) クレジットカード会社・信販会社
  • インターネット
  • 郵送
  • 窓口
株式会社日本信用情報機構(JICC) 消費者金融・街金融
  • スマホ
  • 郵送
  • 窓口
全国銀行個人信用情報センター(KSC) 銀行・信用金庫・信用組合・労働金庫など
  • 郵送

婚姻期間中に住宅ローンを利用して家を購入した場合、次のような契約内容になっていることが多いです。自分たちのケースがどれに当てはまるのか、契約書や信用情報をもとにして確認してください。

  • 夫が主債務者(名義人)・妻はなし(単独名義)
  • 夫・妻とも主債務者(ペアローン)
  • 夫(妻)が名義人・妻(夫)が連帯債務者
  • 夫(妻)が名義人・妻(夫)が連帯保証人
夫(妻)の単独名義

住宅ローンが夫もしくは妻の単独名義だった場合、夫(妻)が1人で住宅ローンを返済している状態です。夫(妻)が住宅ローンを返済できなくなった場合でも、妻(夫)には返済の義務はありません。

夫婦それぞれが名義になっているペアローン

夫婦それぞれが住宅ローンの名義になっているいわゆる「ペアローン」では、夫婦が別の住宅ローンを契約しているという状態です。それぞれがそれぞれの住宅ローンの主債務者となっていて、お互いが相手の連帯保証人となっているのが通常です。

夫(妻)が名義人、妻(夫)が連帯債務者

連帯債務者とは、主債務者と同様の返済義務を負う人のこと。一つの債務(住宅ローン)を複数の債務者がそれぞれ全額返済する義務を負うという関係になります。住宅ローンでは、夫婦や親子などの2人が、連帯債務者となるケースが多いです。

夫(妻)が名義人、妻(夫)が連帯保証人

夫(妻)が住宅ローンの名義人になっていて、妻(夫)が連帯保証人になっているケースでは、名義人が返済できなくなった場合に返済義務が生じます。連帯債務者や連帯保証人はあくまで金融機関との契約においてなので、夫婦が離婚したからといって自動的に連帯債務者(保証人)から外れるというものではありません。

そのため夫が住宅ローンの返済ができなくなったときには、離婚後でも妻側に返済の請求が来ます。後々トラブルになる可能性が高いので、離婚前には必ず連帯保証人をどうするかについて話し合っておきましょう。

住宅ローンの残債

離婚する前には、住宅ローンがいくら残っているかも調べる必要があります。というのも住宅ローンの残債と売却価格のどちらが高いのかによって、財産分与の方法が変わってくるため。また離婚後に住み続ける場合でも対処法が変わってくるので、必ず住宅ローンの残債は確認してください。住宅ローンの残債を調べるには、次のような方法があります。

返済予定表 住宅ローンを借り入れたときに金融機関が発行する書類
残高証明書 金融機関から1年に一度、年末の残高を証明する書類が送られてくる

金融機関によっては発行以来手続きが必要な場合があるので問い合わせる

アプリ・インターネットバンキング パソコンやスマホから、ローン残高を確認することができる

サービスを導入しているかどうかは、借入先の金融機関に確認

窓口で確認する 金融機関の窓口で直接ローン残高を確認できる

身分証明書などが必要になるほか、ローン契約者以外には教えてくれない可能性がある

住宅ローンの残債が確認できたら、不動産の金銭的な価値と比較してみましょう。どちらの金額の方が高いのかによって、「オーバーローン」と「アンダーローン」に分けられます。それぞれの注意点や財産分与の方法についてはこちらを参考にしましょう。

オーバーローン
  • 不動産の価値が住宅ローンの残債を下回る
  • 不動産を売却しても住宅ローンが残る
  • 離婚後も住み続ける場合は、誰がどのようにローンを支払っていくかという点が問題になりやすい
アンダーローン
  • 不動産の価値が住宅ローンの残債を上回る
  • 売却して残った利益をそれぞれ分け合うという方法が最もスムーズ
  • 売却せずに住みたい場合には、家を去る側に現金をいくら渡すべきかや、不動産の所有者や住宅ローンの名義を誰にするかが問題となる

離婚後に住宅ローンがある家に妻が住む方法

では離婚後も住宅ローンが残った家に妻が住み続けるためには、どのような方法があるのでしょうか。こちらでは妻が住宅ローンの「主債務者であるケース」と「主債務者でないケース」に分けて解説していきます。

主債務者がローンを返済し、住み続ける場合

妻が住宅ローンの主債務者で、その妻が離婚後も住み続けるためには、住宅ローンの内容に応じて次のような方法があります。

単独名義

住宅ローンが妻の単独名義で離婚後もその家に住み続ける場合には、不動産の金銭的価値とローン残債の差額が、財産分与の対象となります。具体的にはローン残債よりも不動産の価値の方が高いときには、その差額分を家に住まない側に支払うのが一般的。

なお不動産の価値よりもローン残債の方が多い場合は、住み続ける妻が住宅ローンをそのまま支払うことにすれば、自分の住居費を自分で支払うことになるため、それほど大きなトラブルにはなりません。

連帯債務者・連帯保証人がいる場合

妻が主債務者で、家を出る夫が連帯債務者や連帯保証人になっている場合、金融機関と交渉して連帯債務者や連帯保証人から外してもらう必要があります。離婚後に主債務者のみがローンの支払いをすると取り決めしていたとしても、金融機関から返済を求められたら応じなければならないからです。

ただし金融機関と交渉しても、連帯債務者や連帯保証人から外してもらうのはそう簡単ではありません。金融機関によっては許してくれない場合や、一定額を入金しなければならない、別の連帯保証人を準備するといった条件を提示されるケースも。保証人の代わりに保証協会の利用を求められる場合もあります。

ペアローンの場合

住宅ローンがペアローンになっている場合には、家を第三者に売却しない限りは、離婚後もローンの支払いが続きます。家に住んでいなくても、離婚後も今まで通り返済義務が残るのはペアローンの注意点です。ペアローンで住宅ローンを組んでいる場合には、単独名義に変更できないか相談することをおすすめします。

とはいえペアローンは夫婦2人で返済していくのが前提となっているので、単独名義よりも大きな金額を借りているケースがほとんど。審査次第で認められる可能性もありますが、単独名義への変更が難しいことが予想されます。とはいえ、収入次第では名義変更が可能な場合もあるので、まずは金融機関に相談してみましょう。

主債務者でない側が住み続ける場合

夫がローンの名義人で、離婚後は妻が住み続けたいというケースは少なくありません。しかしローンの主債務者でない側が離婚後も住み続ける場合には、様々なトラブルが生じやすくなるので注意が必要です。もし夫が住宅ローンの返済をしなくなってしまったら、妻はその家に住み続けられなくなってしまうため。

主債務者でない側が家に住み続けるには、次のような方法があります。注意点もあわせて紹介するので、参考にしましょう。

財産分与として受け取る

離婚後も住み続けるためには、離婚時の財産分与として家を受け取るという方法があります。夫婦で分割すべき不動産の価値と住宅ローンの残債を確認し、家の金銭的価値相当分の半分の金銭を夫に渡すことで、自分のものにできるという方法です。

また財産分与には「慰謝料的財産分与」という方法があります。夫の不倫やDVなどで離婚を余儀なくされたときなどは、離婚原因を作った側に慰謝料を請求できる可能性があります。金銭で慰謝料を受け取る代わりに、今住んでいるマイホームを受け取るという方法です。

この場合にも、住宅ローンの残債がいくらあるのか確認し、残債分をどうするか夫婦で話し合う必要があります。

(元)夫にローンを支払ってもらう

離婚した後でも(元)夫にローンを支払ってもらって、その家に妻が住み続けるという方法があります。住宅ローンについては離婚前と同じ状態にするという方法です。離婚後も夫と連絡がつくのであれば、できない方法ではありません。面倒な手続きが必要ないので一番楽な方法に思われますが、自分が住んでいない家のローンを支払い続けてくれるかについては、大きなリスクとなります。最悪の場合には、住む家を失うことにも。

また住宅ローンというのは、借り入れた人が住むための家を購入するために利用できるローンです。ローンを利用した金融機関に無断で主債務者が家を出てしまうと、契約違反と判断される恐れがあります。場合によっては一括返済を請求される可能性があるので、事前に金融機関許可を得ておいた方がいいでしょう。

離婚後も夫にローンを支払ってもらいたいという場合には、完済まできっちり返済を継続してもらえるような対策を取る必要があります。またローンが支払われなくなった場合に備える必要も。同時に金融機関にもきちんと許可を得るようにしましょう。

ローン名義を変更する(借り換え)

離婚後も家に住み続けるためには、住宅ローンの名義を妻に変更するという方法があります。離婚に伴うローンの名義変更では「借り換え」をするのが一般的。借り換えとは妻が新しくローンを組み、それで得た資金で返済中の夫のローンを一括返済するという方法です。借り換えの方法は金融機関によって異なるものの、基本的には次のような方法のどちらかを選択します。

夫婦間売買
  • 住宅ローンの残債分を、家に住む側に売買したことにする方法
  • 離婚後も家に住みたい妻が新たにローンを組み、夫が組んでいたローンを完済させる
負担付き贈与
  • 住宅ローンの返済負担付きで、夫婦間で家を贈与する方法
  • 家を贈与してもらう代わりに、住宅ローンも負担するという贈与契約を結ぶ

いずれの方法を選んだにしろ、借り換えをするときには金融機関の審査を受けなければなりません。そのため妻に安定した収入があることが前提となっているのが一般的。離婚時に無職やパート・アルバイト程度の収入しかない場合は、借り換えが難しいでしょう。

また借り換え時には、次のような諸費用がかかる場合があります。

  • 事務手数料
  • 繰り上げ返済手数料
  • 保証料
  • 印紙税

住宅ローンを借り換えるということは、住宅ローンに係る抵当権の登記手続きも必要です。こちらの手続きは法務局で行うため、次のような手数料もかかってきます。

  • 抵当権抹消費用
  • 抵当権設定費用

上記の他に場合によっては、火災保険料や地震保険料、団体信用生命保険料などの費用がかかります。そのため、借り換えに伴う費用がいくらかかるのか、入念な資金計画が必要です。

財産分与に伴う弁護士費用については、こちらの記事を参考にしましょう。

「財産分与に関する弁護士費用|内訳別相場や変動する要素、安くする秘訣を解説」

住宅ローンの残債分を夫に支払う

住宅ローンの残債が残り少ない場合には借り換えなどを行わずに、夫に対して住宅ローンの残債分を渡すという方法で、離婚後も家に住み続けられる可能性があります。妻が家の評価額の1/2を夫に支払うことができ、ローンを完済できれば、妻の単独名義にできます。このとき、登記上の名義も忘れずに変更しましょう。

妻が家賃として夫に支払う

離婚後も家に住み続ける方法として、妻が家賃として夫にローン分を支払うという方法があります。夫とは物件(家)のオーナーと借主との関係になります。きちんと賃貸借契約書を交わしていれば、夫が住宅ローンを支払わずに競売にかけられたとしても、借主としての立場は保護されます。

なおこの方法は離婚後も定期的に連絡を取り合わなければならないため、精神的なハードルが高いと思う人もいるかもしれません。しかし離婚後も夫との関係がある程度続くことを我慢出来れば、住み慣れた家で今まで通りの生活を送ることが可能です。

リースバックを利用する

夫との関係を離婚後も続けたくないという方は、リースバックを利用するという方法があります。リースバックとは、ローンが残っている家を不動産会社などの第三者に売却し、改めてその家を賃貸物件として借りるという方法です。リースバックは住宅ローンが残っていても、売却価格で一括返済できる場合に利用可能です。

そのため、オーバーローンであれば売却しても住宅ローンの残債を一括返済できないため、原則としてリースバックは利用できません。ただし独身時代からの貯金や自分の親から借りたお金で一括返済できるような場合は、抵当権を抹消できるので、リースバックを利用できます。

共有持ち分があれば居住権が保護される

ペアローンを組んでいるなどで、不動産の共有持ち分が妻にある場合は、離婚後も一定期間は居住権が保護されます。これは夫との話し合いにより実現できるだけでなく、2020年4月の民法改正でも保護されるようになりました。

(共有物の使用)

第二百四十九条 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。

(共有物の分割請求)

第二百五十六条 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。

引用:民法|e-GOV法令検索

つまり妻が不動産の共有持ち分を持っていれば、共有者(夫)の同意を得て共有物(家)の占有を継続している場合、5年を超えない範囲で共有物の分割(売却)が禁止されています。この規定により、離婚後も一定期間(5年以内)は妻の居住権が保護されるという訳です。

離婚時の財産分与で家を売りたくないという方は、こちらの記事を参考にしましょう。

「離婚時の財産分与で家を売らない方法はある?ケース別の方法と注意点、スムーズに分与するポイントとは」

住宅ローンが残った家に離婚後も住み続けるときの注意点

住宅ローンがある家に離婚後も住み続けたい場合には、次のような注意点があります。後のトラブルを防ぐためにも、気を付けましょう。

住宅ローンと家の名義が同じとは限らない

住宅ローンと家(不動産)の名義は、必ずしも同じとは限りません。そもそも住宅ローンの名義と、不動産の名義とは意味が違うので注意しましょう。住宅ローンの名義とは、家を購入したときに金融機関からお金を借りた人のこと。つまり金融機関と金銭消費貸借契約を結び、署名捺印した人のことを指します。

一方の家の名義は家の所有者のことで、登記簿謄本の記載されている「権利者その他の事項」の欄の、所有者を表します。土地と建物とで所有者が異なるケースもあり、夫の親の土地に夫名義の家を建てたときには、土地の所有者は親で、建物の名義は夫ということもあり得ます。

財産分与に該当する期間に気を付ける

財産分与の基準となる期間は、婚姻期間中というのが原則です。つまり婚姻届けを提出した時点から、離婚するまでの期間です。ただし離婚前に別居期間がある方は、別居時点までとなります。というのも財産分与というのは夫婦が婚姻期間中に協力して築いた財産が対象となるので、別居により経済的協力関係が消滅した場合は、同居中の共有財産が対象となります。

別居後の離婚話がなかなか進まないとお悩みの方は、こちらの記事を参考にしましょう。

「別居後の離婚話が進まない…原因と対処法、スムーズに離婚するためのポイントを解説!」

不動産の名義変更も忘れずに

住宅ローンの借り換えをした場合や、財産分与で家を受け取ったときには、不動産の名義変更も忘れずに行ってください。不動産の名義変更をするのは、離婚届を提出した後です。不動産の名義変更をする場合には、次のような手続きが必要です。

  1. 離婚届を提出する
  2. 必要書類を集める
  3. 登記申請書の作成
  4. 不動産の所在地を管轄する法務局で登記申請
  5. 登記完了後、登記識別情報などの書類を法務局から受け取る

離婚における不動産の名義変更で必要な書類は、以下の通りです。

  • 財産分与協議書など、財産分与があったことが分かる書類
  • 登記名義人(夫)の印鑑証明書(3カ月以内のもの)
  • 新たな名義人(妻)の住民票
  • 対象となる不動産の登記識別情報または登記済証(権利書)
  • 対象となる不動産の固定資産評価証明書
  • 離婚が分かる戸籍謄本などの書類

離婚における不動産の名義変更にかかる費用や税金、その金額の相場は以下の通りです。

登録免許税 固定資産評価証明書の評価額の2%
印紙代 財産分与契約書作成のため

不動産の価額に応じて200円~48万円

司法書士費用 司法書士に所有権移転登記を依頼する場合

6万~10万円程度

所得税 不動産の時価と購入したときの費用の差額にかかる

離婚後の場合は3,000万円の特別控除がある

不動産取得税・贈与税 財産分与のうち清算的財産分与については課税されない

離婚時の財産分与で名義変更が必要なものについて詳しくは、こちらの記事を参考にしましょう。

「離婚時の財産分与で名義変更が必要?必要な財産ごとの手続き方法・必要書類・期限を詳しく解説」

財産分与の申し立ては離婚後2年以内に

財産分与の申し立ては、離婚成立後2年以内をめどに行ってください。2年を超えてしまうと、家庭裁判所に財産分与の申し立てができなくなるため。ただしこれは財産分与の請求の話です。離婚成立から2年以内に財産分与を完了させなければならないということではないので、実際の財産分与の処理は2年を超えても問題ありません。

夫名義の家に妻が住み続けるのはリスクがある

いくら夫が「離婚後もローンを払い続ける」と約束してくれたとはいえ、夫名義の家に住み続けるのはリスクがあります。完済するまでの間には、夫の気持ちが変わる可能性があります。また妻が住む家を売却して、住宅ローンを完済してしまいたいと考えるようになるかもしれません。病気や失業により、夫の収入が不安定になる可能性もゼロではありません。

夫の住宅ローンの連帯保証人になっている場合には、妻が返済することになります。もし妻も返済できずに滞納すると、家は競売にかけられ立ち退きを余儀なくされてしまうでしょう。もし夫が亡くなると、夫名義の家は相続人が相続することになります。相続人から退去を要求される可能性が高いため、夫名義の家に住み続けるのには様々なリスクがあると自覚しておきましょう。

財産分与の内容は公正証書にする

夫婦の話し合いで財産分与の内容が決まったときには、離婚協議書などを作成したうえで公正証書にすることをおすすめします。公正証書とは、公証人が作成する公文書のことで、公証役場という公共機関で作成してもらえます。作成にかかる費用は数千円~数万円程度。

妻が離婚後も家に住み続け、夫が住宅ローンを支払い続ける場合も、その内容を公正証書にまとめると、その後のトラブルを回避できます。また公正証書に強制執行認諾文言を入れておけば、夫が住宅ローンを滞納した場合でも、裁判を提起せずに給与や財産を差し押さえられます。

女性のための離婚準備マニュアルについては、こちらの記事を参考にしてください。

「【完全版】女性のための離婚準備マニュアル|スムーズかつ有利に離婚するために必要なこととは?」

ローンが残っている状態で不動産の名義を変更するのは難しい

不動産の名義についてですが、住宅ローンが残っている状態で、夫から妻に変更するのは難しいでしょう。住宅ローンが残っている段階では、不動産に抵当権が設定されているため、住宅ローンを組んでいる金融機関の承諾が必須です。不動産の名義変更をする場合には、住宅ローンの名義も変更しなければなりません。

とはいえ、住宅ローンを完済した後では抵当権設定が解除されるため、不動産の名義も変更することができます。離婚後に名義変更したいときには、離婚時に住宅ローン完済後の名義変更についても取り交わしておいた方がいいでしょう。

離婚後は必ず金融機関へ連絡を

離婚したこと自体だけでは、住宅ローンの契約に影響はありません。しかしローン契約者である夫が家に住まなくなる場合は、住所や電話番号は変わる旨を金融機関に連絡しなければなりません。このような債務者の義務を怠り契約違反とみなされると、ローン残債を一括請求される可能性があるので気を付けましょう。

児童扶養手当がもらえなくなる可能性

夫名義の家に離婚後も妻が住み続けていると、児童扶養手当がもらえなくなる可能性があります。児童扶養手当とはひとり親世帯の生活の安定のために受給できる公的手当です。しかし夫名義の家に住み続けていると、家賃相当分を夫から援助されているとみなされて、児童扶養手当の支給が止められてしまう可能性があります。

ただし自治体によって条件や対応が異なります。詳しくはお住いの自治体の窓口にご確認ください。

離婚後の児童扶養手当の手続きについては、こちらの記事を参考にしてください。

「離婚後の児童手当・児童扶養手当の手続きについて|ケース別の変更方法と基礎知識」

固定資産税を誰が払うか

夫名義の家に離婚後も住み続ける場合、毎年支払う固定資産税や都市計画税を誰が払うのかも、事前に決めておいた方がいいでしょう。固定資産税・都市計画税は、その年の1月1日時点での所有者が納税義務者になります。名義が夫のままなら、夫宛てに納付書が届きます。

あとでどちらが支払うかトラブルにならないためにも、離婚前にきちんと決めておきましょう。

財産分与でかかる税金について詳しくは、こちらの記事を参考にしましょう。

「財産分与でかかる税金について|種類別・ケース別の税金計算方法や節税対策とは?」

まとめ

離婚後も住宅ローンが残っている家に妻が住むには、ローンの名義が誰になっているか、ローン契約の内容、ローン残債がいくら残っているかで対応が変わります。そのためr離婚前にはこれらについてよく確認する必要があります。そのうえで夫婦間でよく話し合い、合意した内容については離婚協議書にして公正証書を作成することをおすすめします。

夫が住宅ローンの名義人になっているときには、財産分与で家を受け取る方法やローンの借り換え、残債分を夫に支払うという方法があります。さらに離婚後も夫に支払ってもらう方法や夫に家賃として支払う方法、リースバックを利用するという方法も。

財産分与の申立は、離婚してから2年以内と期限があります。また夫名義の家に住み続けるのにはリスクがあり、場合によっては不動産の名義変更の必要も。離婚時にマイホームをどうしたらいいか分からないという方は、離婚問題に詳しい弁護士に相談したうえで、後のトラブルを防ぐ対策を取りましょう。

お住まいの地域で、離婚問題に強い弁護士を見つける>>

離婚・不倫の慰謝料の相談は専門家にお任せください!

  • 離婚したいけど相手が応じてくれない。
  • 離婚後の生活に不安を抱えている。
  • 親権の獲得や養育費をきっちり払ってもらいたい。
男女問題でお困りの方は専門家に相談してご自身の人生を取り戻しましょう。

離婚の基礎知識カテゴリの最新記事

PAGE TOP