- 「依頼した弁護士が合わない。他の弁護士に変更はできる?」
- 「弁護士を変えると、支払った費用がどうなるか心配…。」
離婚問題を弁護士に依頼することにより、相手との交渉や調停の申し立てを任せることができます。しかし弁護士と契約をしたは良いものの、弁護士の対応に満足ができず不安やストレスを感じることもあるかもしれません。
この記事では離婚問題を依頼した弁護士を変える方法について解説をしています。変更の際の注意点や新しい弁護士の選び方についてもまとめていますので、弁護士を変更すべきか考えている方、具体的な手続きの方法を知りたい方はぜひ参考にしてください。
弁護士を途中で変えることは可能
弁護士に問題解決や手続きを依頼する際は委任契約を締結します。締結後に契約を解除することは可能であり、法的に問題が生じることはありません。弁護士との契約を解除し、新たに別の弁護士に依頼しなおすことで弁護士を変更できます。
弁護士も人間である以上、依頼人と相性が合わないことはあります。信頼関係をうまく築けず途中で解約する事例はゼロではなく、弁護士に「弁護士を変更したい」と伝えても契約解除を反対されることはありません。
ただ委任契約締結後に解約をすると支払ったお金が一部返還されないだけでなく、新しい弁護士に再度着手金を支払う必要があり、手続きに日数もかかります。そのため「弁護士を変更したい」と感じた場合、安易には判断せず本当に変更が必要なのかを慎重に考えましょう。
法テラスでは弁護士変更は難しい
法テラス(日本司法支援センター)を介して弁護士と契約している場合、弁護士の変更は法テラスの承認が必要です。そのため法律事務所ではなく法テラスに確認をしましょう。
法テラスは弁護士料金を立て替えてもらえるのが長所ですが、法テラスと契約している弁護士しか利用できません。同じ法律事務所でも全ての弁護士が法テラスと契約している訳ではないため、新しい弁護士の選択肢も極めて限られる点に注意してください。
弁護士の変更を検討すべきケースとは
先にお伝えした通り、弁護士の変更は安易に行うべきではありません。ではどのような時に弁護士の解任を検討すべきなのでしょうか?具体的なケースを挙げ、それぞれについて解説をしていきます。
- 弁護士の連絡や対応が遅すぎる
- 弁護士と方針・考え方が合わない
- 弁護士と相性が合わず、相談がしにくい
- 相手の言いなりで依頼者の意見を主張しない
- 弁護士が業務停止処分を受けた
弁護士の連絡や対応が遅すぎる
離婚問題を弁護士に委任した場合、相手とのやりとりや手続きは全て弁護士に任せることになります。弁護士の対応が遅い場合は問題解決までに時間がかかってしまう恐れがあります。そのため自分の問題が後回しにされていると感じた場合やなかなか手続きが進めない場合は弁護士の変更を視野に入れるべきです。
ただ連絡や対応が遅いからといって、即座に変更を決断するのは早計です。例えば相手からの連絡を待っている状況の場合、時間がかかっても弁護士には非はありません。また弁護士が依頼人に連絡をする頻度は個々によって異なり、中には大きな動きがあった時にのみ報告をする弁護士もいます。
もし連絡がなく不安だと感じた場合は弁護士にこまめに報告してほしい旨を伝えてみてください。弁護士との信頼関係はコミュニケーションによって成り立つため、要望を積極的に伝えることも大切です。それでも解決しない場合は弁護士の変更を検討しましょう。
弁護士と方針・考え方が合わない
依頼した弁護士の方針や考え方が合わず、自分の目的や希望から遠のく恐れがあるパターンです。具体的には以下のような事例が当てはまります。
- 相手と交渉をしたいのに連絡をとってくれない
- 離婚したくないのに離婚の方向へ話を進められている
- 自分の希望を伝えても取り合ってもらえず、無理の一点張りである
弁護士にはさまざまな人が存在しますので、問題に対する方針が異なることがあります。また早く業務を進めたいと考え、手間のかからない手段を優先的に選ぶ人も。
弁護士は依頼者の要望を確認し、優先しながら業務を進めていきます。しかし中には自分の都合や方針を押し付ける弁護士がいるのも事実です。自分の意見が蔑ろにされていると感じた場合は依頼者の希望を親身になって聞いてくれる弁護士を探すことをお勧めします。
弁護士に関係なく法的に困難なケースも
ただ依頼者が「こうしたい」と思っていても法律上困難であるケースもあります。例えば相手に不貞行為の証拠を握られているにも関わらず離婚を回避するのは、法律で離婚事由が定められている以上厳しいと言えます。
そのため弁護士の方針や対応を理由に弁護士を変更したい場合、まずは弁護士の主張の根拠や意図を確認することが大切です。専門知識がない方は弁護士の方針が正しいか判断ができませんので、他の弁護士からのセカンドオピニオンも視野に入れましょう。
弁護士と相性が合わず、相談がしにくい
弁護士の年齢や性別・性格は多種多様です。そのため普段の人間関係と同様に弁護士と相性が合わない可能性もあります。
ストレスなく相談ができ信頼関係が築けるのであれば、多少「性格が合わない」と感じても目をつぶることができるはずです。しかし相性が合わず、以下のように弁護士とのコミュニケーションに支障が出ている場合は弁護士を変えたほうがよいでしょう。
- 弁護士に言いたいことを言えない
- 自分の方針や気持ちを理解してもらえない
- 弁護士とのやりとりが大きなストレスになっている
離婚問題は解決までに大きなストレスがかかるものです。本来なら弁護士に依頼することで相手との交渉や調停・裁判への負担を軽くできるはずが、弁護士が原因で余計にストレスがかかっては意味がありません。弁護士と信頼関係が築けず、最良の成果を得られない可能性もあります。
相手の言いなりで依頼者の意見を主張しない
離婚協議や調停、裁判の場で依頼者の意見を主張せず相手側や調停委員、裁判官の言いなりになっているケースです。
相手の言いなりになっていれば確かに問題は早く解決します。しかし依頼人にとって納得のいかない結果になる可能性が極めて高いです。最良の結果を目指すのであれば弁護士の変更を考えるべきです。弁護士が相手の言いなりになっていると感じる原因には、以下の2パターンがあります。
業務の効率化を優先している
弁護士の中には依頼者の案件を事務的に扱う人もいます。時間をかけすぎたくないと考え、できるだけ短い時間での解決を優先するパターンです。
離婚問題は弁護士にとって数多くの依頼の一つに過ぎないかもしれませんが、依頼者にとっては人生に関わる大きな問題です。自分の依頼がいい加減に扱われていると感じた場合は弁護士を変えたほうがよいでしょう。
離婚問題の解決実績が乏しい
弁護士は法律事務全般を扱っています。業務範囲は非常に幅広く、離婚問題以外にも債務整理や相続問題、交通事故被害の相談等も請け負っています。そのため弁護士全員が離婚問題に詳しいとは言い切れません。
離婚問題の解決実績が豊富な弁護士は、様々な交渉のパターンや事例を知り尽くしており、調停委員や裁判官とのやりとりも慣れていますので、よい結果を引き出せる可能性が高いです。自分に有利な条件を目指すのであれば、離婚問題の実績が豊富な弁護士への変更を視野に入れることをお勧めします。
弁護士が業務停止処分を受けた
弁護士や法律事務所は、弁護士法や所属弁護士会、日本弁護士連合会の会則に違反した場合、戒告もしくは2年以内の業務停止処分を受けることになっています。業務停止中は委任されている依頼に携わることはできません。弁護士が業務停止になる具体的な行為は、以下の4つが挙げられます。
- 過大広告、虚偽の広告を出した
- 反社会的勢力とのつながりがあった
- 弁護士の資格がない人に弁護士の業務をさせた(非弁連携)
- 弁護士が当事者双方の代理行為を行った(双方代理)
業務停止が解除された後であれば、再度同じ弁護士に委任することは可能です。しかし業務停止期間が長い場合、案件の解決がその分先延ばしになるため注意が必要です。
弁護士を変更したら支払った費用は返金される?
弁護士を変更する上で気がかりなことの一つは既に支払った費用の扱いです。弁護士を変更した場合、支払った費用はどうなるのでしょうか。
原則として着手金は返金されない
弁護士に支払うお金は、一般的に以下の二つがあります。
- 着手金
- 事件を依頼したときに支払う
- 報酬金
- 案件が成功したときに支払う
弁護士と契約している方は、委任契約時に着手金を支払っているはずです。着手金はその名称のとおり、弁護士が案件処理に着手するための代金です。そのため契約後に弁護士を変更する場合、着手金は原則として返金されません。
弁護士に事件を依頼するときは委任契約書を作成します。委任契約書には、解約時に弁護士費用をどう清算するかについて記載がありますのでよく確認をしましょう。
着手金を分割払いしていた場合
法律事務所の中には、着手金の支払いを分割できるところもあります。分割払いの途中で弁護士との契約を解除した場合、未払い分がどうなるかは事務所によって方針が異なるため一概には言えません。
着手金という性質上、残りの支払を請求される可能性もある点に留意してください。逆に未払分は払わなくてよいとする事務所もあります。
一部費用を請求されることがある
弁護士を変更する時期によっては、ある程度業務が進んでいることがあります。交通費や印紙代など、弁護士が事件解決のために用いた経費については依頼者が支払うことになります。
解約の段階における手続き・交渉の進捗状況によっては報酬金の全額もしくは一部を請求されるケースもあるため、委任契約書の記載事項をよく確認しましょう。
弁護士を変える手順と進め方
ここからは実際に一度契約をした弁護士を変更する具体的な方法を紹介していきます。手順に沿って詳しく解説をしていきますので、ぜひ参考にしてください。
- 依頼中の弁護士の対応を改善できないか確認する
- セカンドオピニオンを求める
- 依頼中の弁護士を解任する
- 新しい弁護士と契約する
- 弁護士同士で引継ぎをしてもらう
依頼中の弁護士の対応を改善できないか確認する
弁護士との契約を途中で解除した場合、原則として着手金は返ってきません。さらに新しい弁護士と契約する際に再度着手金を払わなければならず金銭的な負担は避けられません。
また解約や契約手続きを行う分日数がかかるため、その分問題の解決が先延ばしになります。そのため弁護士の変更は慎重に行うべきです。弁護士を変更したいと思った具体的な理由を改めて考え、改善の余地がないかどうかを検討しましょう。
例えば弁護士の対応が遅い、連絡が少ないことを不満に感じている場合、自分の希望を弁護士に伝えてみてください。弁護士も人間ですので、信頼関係を築くためには対話が不可欠です。遠慮なく要望を伝えることによってお互いに歩み寄ることができ、状況が改善できる可能性があります。
セカンドオピニオンを求める
弁護士の変更を考えている方の中には、以下のように弁護士の方針や主張に納得ができない方もいると思います。
- 今の状況では離婚は難しいと言われた
- 慰謝料や養育費が安い気がする
- 親権は取れないと言われた
- 話し合いが自分に不利に進んでいる
弁護士は離婚問題以外にもさまざまな業務に携わっているため、全員が離婚問題の解決実績が豊富だとは限りません。業務の効率化を優先する弁護士も中にはいます。しかし弁護士の方針や主張が本当に誤りなのかどうかは、専門知識がないと判断ができません。
親権獲得の可否や慰謝料の相場の目安についてはインターネットでも紹介されていますが、実際には個々の家庭事情で判断がされるため、自己判断は禁物です。そこで他の弁護士にセカンドオピニオンを求めることをお勧めします。
セカンドオピニオンの依頼方法
セカンドオピニオンは医療の場でよく使用される言葉ですが、本来は医療に限らず他の専門家に意見を求めることを指します。弁護士にセカンドオピニオンに際し、既に依頼している弁護士に承諾を得る必要はありません。
セカンドオピニオンを求める際は法律事務所の無料相談を活用しましょう。簡単な相談であれば無料の範囲で対応してもらえる可能性があります。ある程度の資料で判断が必要な場合、事務所によっては料金がかかる場合があるため、相談の際に確認をしてみてください。
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依頼中の弁護士を解任する
新しい弁護士に依頼することを決めたら、現在の弁護士に別の弁護士へ変更することを伝えます。新しい弁護士と契約してから依頼中の弁護士を解任するとトラブルの元となるため、必ず先に弁護士の解任を行います。
「変更を伝えるのは気がひける」と感じる方もいるかもしれませんが、弁護士変更は決して珍しいことではなく、解任を拒否する弁護士もいませんので安心してください。
弁護士には、依頼者から預かった書類を契約完了時に返還する義務があります。(参考:弁護士職務基本規定)解約手続きの際に使用した書類を返してもらいましょう。自分から言いだしにくい場合や書類を返してもらえない場合は、新任の弁護士に依頼することで弁護士間で書類のやりとりをしてもらえます。
新しい弁護士と契約する
解約手続きが完了したら新しい弁護士と委任契約を結び、着手金を支払います。前任の弁護士から返却された資料や書類を新しい弁護士に渡し弁護士同士で引継ぎをしてもらってください。引継ぎが完了した時点で、正式に弁護士の変更が完了したことになります。
失敗しない弁護士選びのポイント
ここまで弁護士を変更を検討すべき目安、実際の手続き方法について説明をしました。最後に、新しい弁護士を選ぶ際に注意したいポイントを解説します。これから離婚問題を初めて弁護士に依頼する方もぜひ参考にしてください。
離婚問題の実績が豊富な弁護士を選ぶ
まず第一に離婚問題・男女問題の解決実績が豊富な弁護士を選ぶことです。繰り返しになりますが弁護士の業務は多岐に渡るため、全員が離婚問題の解決実績があるとは限りません。個人ではなく法人依頼を中心に請け負う事務所もあります。
「近くだから」「知り合いだから」といった理由ではなく、まずは個人事件を中心に扱っている弁護士を選びましょう。さらに個人事件は家事事件・民事事件の二つに分けられます。
- 家事事件
- 遺産相続、離婚、不倫など家庭に関する争い
- 民事事件
- 損害賠償、不動産、債務整理など、家事事件に該当しない争い
家事事件に特化した事務所であれば、離婚問題の依頼も多く実績も豊富だと判断ができます。事務所によっては実際の解決実績を提示しているところもありますので、参考にしましょう。
費用の説明が分かりやすいか確認する
弁護士費用には着手金・報酬金の2種類である事は先述の通りですが、離婚問題は他の事件に比べ報酬金が分かりにくい点が特徴です。
賠償金訴訟や遺産相続問題など金銭が関係する問題では、報酬金は依頼者が得た経済的利益を基準に計算をします。例えば弁護士に依頼をして200万円の賠償金を勝ち取り、成功報酬が経済的利益の15%と定められていた場合、200万円の16%にあたる30万円を弁護士に支払います。
しかし離婚問題は必ず経済的利益を得られるとは限らないため、上記の計算式では報酬を計算できません。法律事務所の多くは、離婚成立や親権獲得などの成果ごとに報酬を定額で設定し、養育費や慰謝料を得られた場合は金額の10~20%程度の報酬金を加算する形式をとっています。
法律事務所の中には、契約した後に何度も追加で料金を請求する事務所もあります。委任前の段階でかかる費用が不透明な弁護士は契約を控えるべきです。契約の前に必ず費用の算出方法を確認するようにしてください。
離婚時の弁護士費用の仕組み、実際の相場については以下の記事でまとめています。、費用を抑えるコツについても解説していますので、気になる方は参考にしてください。
離婚時の弁護士費用を徹底解剖!費用をおさえるコツや注意点を紹介
無料相談を活用する
どれほど敏腕な弁護士でも、相性が合わず相談がしにくい相手では自分の希望を的確に伝えられず、交渉を有利に進められない恐れがあります。ただ実際に弁護士がどのような人物なのかについては、インターネット等の情報だけでは分かりません。
依頼したい弁護士の目星を付けたら無料相談を活用し、実際に弁護士とやりとりを行うことをお勧めします。すでに契約中の弁護士がいる場合、セカンドオピニオン希望であることも伝えましょう。
離婚問題を依頼する弁護士の選び方、ポイントについては以下の記事でさらに詳しくまとめています。ぜひ併せてお読みください。
離婚時に依頼したい弁護士の選び方|相談前・相談時のポイントと費用に関する注意点を解説
まとめ
一度依頼をした弁護士は変更ができます。弁護士との委任契約を解除し、別の弁護士と契約を結ぶことで変更が可能であり、新旧弁護士同士で依頼の引継ぎも行えます。ただし一度支払った着手金は原則として返還されない上、日数がかかるため弁護士の変更は慎重に判断すべきです。
もし弁護士の方針や態度に納得がいかず変更を考えている場合は離婚問題に詳しい弁護士に相談をし、意見を聞くことをお勧めします。相性の合う弁護士に事件を依頼することで、信頼関係を築くことができ納得の結果が得られるかもしれません。