- 「住宅ローンを組んだばかりなのに離婚することになった。家と住宅ローンはどうしよう」
- 「新築がもうすぐ完成するけど離婚したい!」
夫婦が離婚するきっかけはさまざまですが、マイホームを建てる計画がきっかけで夫婦仲に亀裂が入り離婚する夫婦もいます。夫婦の間に新しい家や住宅ローンを残したままで離婚をすることになるため、完成した家や住宅ローンをどうするかについて話し合わなくてはいけません。
今回は「新築離婚」の原因と注意点について解説を行います。家を売却する場合や夫婦いずれかが住む場合など、いくつかのパターンに分けて詳しく解説を行いますので今後住宅やローンをどうすべきか迷っている方はぜひ参考にしてください。
新築離婚に至る原因
マイホームを建てることが原因で夫婦仲が悪化し、離婚に至ることを新築離婚と呼びます。マイホームの建築は夫婦の未来を見据えた前向きな選択であり、自分たちの家を持つという充実感に満ちているはずです。それにも関わらず、なぜ新築がきっかけで離婚に至るのでしょうか。具体的な原因を3つ解説していきます。
価値観の違いが露呈する
マイホームを建てる際には、場所や予算、デザインや間取りなどさまざまなことを決めなくてはいけません。夫婦で話し合っているうちにお互いの価値観の違いに気づくことがあります。他人である以上、価値観の違いは仕方がないことです。しかし価値観の違いが理由で関係に亀裂が入り、新築離婚へ発展する場合があります。
またマイホームに対する熱意の差が原因で関係が悪化することも。例えば妻がマイホームに対する情熱が強く夫がそうでない場合、夫は妻に家づくりに関する事柄を妻に任せてしまいがちです。妻の立場からすると「夫婦の家なのに非協力的だ」「自分ばかりが舞い上がっている」等と夫に対しマイナスの感情を抱くようになり、関係に亀裂が入ることもあります。
家づくりに対する情熱に差がある場合でも、お互いにコミュニケーションを取りマイホーム計画を一緒に建てていこうという気持ちが不可欠です。
経済的な負担が増える
マイホーム建築時にかかる費用は立地条件、住宅の大きさやデザインによって異なりますが、大半の人が住宅ローンを組むことになるでしょう。その住宅ローンによる経済的な負担が原因で離婚に発展するケースです。
住宅ローンの支払いを抱えた状態で予定外の大きな出費があった場合、もしくは収入が変化したとき、子どもが生まれたときは家計が圧迫されることがあります。すると経済的に切羽詰まった状況が夫婦間のストレスとなり、二人の関係に亀裂が入るきっかけになります。
義両親との距離の変化
マイホームの計画を立てる中で義両親が干渉をしてくることがあります。よくあるのは義両親が自分たちと同居するよう要求するパターンです。自分の親であれば同居を受け入れられるとしても、相手の親と暮らすことは抵抗があるという方が大半です。
義両親との同居について夫婦間の意見が合わなかったり、相手が自分の親の味方をするような態度を見せたりすることにより、夫婦としての愛情が薄れ離婚に至ることがあります。
新築離婚におけるマイホームの選択肢
もし新築離婚をすることになった場合、すでに建築されたマイホームをどうするのかが焦点になります。マイホームの扱いについて取り得る選択肢は以下の4つです。
- 家を売却する
- 名義人がそのまま住む
- 名義人でないほうが住む
- 賃貸として貸し出す
家を売却する
夫婦いずれも新築に住まず、家を売るパターンです。離婚に際しては夫婦間の財産を分け合う財産分与を行うことになりますが、それはマイホーム含む不動産も対象です。家を売却すれば不動産を現金化できるため、財産分与で揉める心配がなくなります。
ただ売却した時の価格が住宅ローンの残高を上回るかどうかで、その後の対応が変わります。売却価格が住宅ローンより高かった場合、売却によって得られたお金で住宅ローンの返済に充て、残りを夫婦で分割します。
もし売却価格がローン残高よりも低かった場合、いわゆるオーバーローンの場合、住宅ローンの残額は契約者が支払います。ローンは財産分与の対象ではないため、ペアローンの場合を除き債務の半分を相手に払ってもらうことはできません。
ただ財産分与はお互いの同意があればどのように決めても差し支えないため、実際にローンが残った場合は残債を折半することが一般的です。片方のみがローンを支払うことになった場合でも、他の財産の分配の際にローンの負担は考慮されます。スムーズに財産分与を進めるためには、住宅の価値が落ちない新築の状態で売却することが一番です。
離婚に際する財産分与の基礎知識については、以下の記事で詳しくまとめています。財産分与を有利に行う方法についても解説していますので、ぜひお読みください。
離婚時に貯金を隠すことは可能?財産分与の基礎知識と不利にならない方法
新築物件として売却できる条件
住宅の性能や品質について定めた住宅の品質確保の促進等に関する法律によると、マイホームを新築物件として扱える条件は以下の両方に当てはまる場合に限ります。
- 建築から1年以内
- 人が一度も住んだことがない
つまりどれほど新しい物件でも、一度でも人が住めば中古物件として扱われることになります。地価の変化によっては新築より中古のほうが価値が上がることもごく稀にありますが、一般的に住宅は新築のほうが価値が高いです。そのため売却を検討しているのであれば一度住んでから考えるのではなく、別のところに住みながら話を進めることをお勧めします。
マイホームが建築中の場合、工事を中断すること自体は可能です。しかし注文住宅では契約解除をすると高額な違約金が発生する点に注意。工事が途中であれば家を完成させた後で新築物件として売るほうがよいでしょう。
契約解除のほうが適していることも
個々の状況によっては、家が完成した後に売却の手続きをするのではなく、契約解除のほうが経済的負担が軽い、もしくは手間がかからないこともあります。
まず、マイホームの契約は状況によってクーリングオフの対象になります。買主の申出で本人の自宅もしくは勤務先で契約手続きをした場合を除き、契約から8日以内であればクーリングオフの手続きが可能です。また新築を購入した際に住宅がまだ完成していない場合は引き渡しの期間までに契約を放棄することで契約が白紙になります。
ただ注文住宅の場合、顧客に合わせて材料や人員を確保するため、契約を結んだあとの契約解除は高額の違約金を課されることになります。マイホーム完成後に新築として売り出したほうがよいでしょう。
不動産会社に相談をする
家の売却金額は、不動産の知識がない人が簡単に判断できるものではありません。住宅は建物の値段だけでなく土地の値段も考慮されますので、地価の変化によって売却価格が大きく変動することもあります。具体的な査定額が知りたい場合は不動産会社に確認をするようにしてください。
名義人がそのまま住む
住宅の名義人、住宅ローンの返済義務がある人が住み続けるパターンです。この場合特に手続きは必要ありませんが、自宅の評価額がローンの残高を上回っているかどうかで財産分与の手続きに違いが生じます。
自宅の評価額よりローンの残高のほうが高いオーバーローンの場合、自宅は財産分与の対象になりません。名義人が自宅に住みながら、そのまま住宅ローンを支払っていきます。
逆に自宅の評価額のほうがローン残高よりも高い場合、すなわちアンダーローンの場合は評価額とローン残高の差額が財産分与の対象になります。例えばローン残高が2000万円、評価額が3000万円だった場合は1000万円が財産分与の対象となり、名義人でない人は1000万円の半分の500万円を請求できます。
名義人は住宅に住み続ける場合はローンの支払いだけでなく、状況によっては財産分与によって生じる金額を相手に支払わなくてはいけません。
名義人でないほうが住む
夫婦間に子供がいる場合、子供に引っ越しの負担をかけたくないなどの理由から夫が名義の住宅に妻と子が住み続けるケースも多いです。名義人でない側はローンを支払わずに家に住めますが、名義を変更しないことによるデメリットがあります。
また相手名義の家には住みたくない、名義を自分に変更したいと考える方もいるでしょう。そこで以下の3パターンにわけ手続きの可否や問題点、注意点を解説していきます。
- 家とローンの名義を変更しない
- 家とローンの名義を変更する
- 家の名義だけを変更する
家とローンの名義を変更しない
離婚に際し不動産の名義変更は義務ではありません。そのため名義人でない人がマイホームに住み続けること自体に問題はありません。ただし名義変更をせずにいた場合、以下のようなトラブルが発生する可能性があります。
名義人がローンを支払えなくなったときは家を失う
住宅ローンの返済を滞納し続けると、住宅が差し押さえられ競売にかけられます。競売とは裁判所の権限で不動産を強制的に売却し、その代金を債権回収に充てる手続きのこと。競売は名義人や住んでいる人の意思は一切考慮されず強制的に手続きが進むため、ある日突然引っ越しを求められるケースも実際にあります。
住宅ローンの返済は最長で35年にも及びます。現在は元配偶者が問題なく支払ができたとしても、ローン完済まで今の収入が維持できるという保証はありません。相手にローンを払ってもらう場合はあらかじめ相手と取り決めを行い、万が一の時は自分がローンを支払うか家を出ていく心構えも必要です。
知らないうちに家を売却される恐れがある
住宅を売却する権利は、実際に住んでいる人ではなく名義人にあります。そのため名義を変更しなかった場合は相手に勝手に家を売却される可能性があります。実際に住んでいるのは自分なのにおかしい、と主張しても第三者からすれば名義人が家の所有者ですので、売却を止めることはできません。
家とローンの名義を変更する
住宅ローンの名義を変更する場合、新名義人が返済を代わりに行っていくことになります。そのため新名義人が金融機関の住宅ローンの審査を受けなくてはいけません。住宅ローンの審査は銀行の無担保ローンやカードローンより厳しく、安定した収入がなければ審査に通らない可能性が高いです。
名義を変更するのではなく新たに住宅ローンの申込を行い、そのローンで既存のローンを完済する方法(借り換え)もあります。いずれにせよ資産や安定した収入がないとローンの名義変更は難しいといえます。
ローンの名義変更ができない場合は夫婦間で賃貸契約を結ぶという方法もあります。具体的には新築に住む妻が夫に家賃を支払い、その家賃収入で夫がローンの返済を続けていく、というケースです。家に住む側がローンを負担できる点がメリットですが、離婚後は元配偶者と繋がりを持ちたくないという方には向きません。
家の名義だけを変更する
不動産の名義は住宅ローンと直接の関係がありません。そのため家の名義だけを変更すること自体はできます。しかし住宅ローンの多くは住宅の名義を変更する際は銀行の承諾を得るよう規約で定めています。
銀行の承諾を得られれば家の名義だけを変更できますが、名義変更に関しての対応は金融機関によって異なります。金融機関側は返済者が住むことを前提にして低金利のローンを貸付しているため、名義変更の承諾を得られないこともあります。
銀行に確認をしないまま不動産の名義変更は可能ですが、銀行に知られた場合は住宅ローンの規約違反に反するとみなされ、ローンの一括返済を求められることもあります。銀行に無断で名義変更を行うことは避けてください。
賃貸として貸し出す
夫婦いずれもマイホームに住まない場合、賃貸として貸し出すという選択肢もあります。住宅ローンの支払分と同じ家賃で貸すことができれば、負担なしにローンの返済を続けられます。ただローンの名義人が住まないため、銀行からは規約違反とされる恐れがります。また築年数が経過するにつれ賃料が下がること、修繕費用は自分で負担しなくてはいけないことに留意してください。
新居購入後に離婚する際の注意点
ここまで新築離婚後の手続きについて中心に解説を行いました。ここからは新築購入後に離婚する際の注意点を解説します。新築を購入した後に離婚することになった方、もしくは新築購入後に離婚をしようか考えている方は参考にしてください。
- 契約前であれば計画を白紙にする
- 建築中の離婚は避けて時間をとる
- 本当に離婚すべきかを考える
- 住宅ローンの返済義務について話し合う
- 弁護士に相談をする
契約前であれば計画を白紙にする
契約前の段階の場合、もしくはキャンセルによる違約金がかからない段階の場合はマイホームの計画自体を見直しましょう。
マイホームへの憧れが強い方は「早くマイホームに住みたい」と考えがちです。しかし家を建てると後戻りはできません。建てた家に住み続け、住宅ローンを長い期間払っていくことになります。今後の人生を大きく左右しますので、何度も考え直すことは当たり前のことと言えます。
もし家を建てることが原因で夫婦関係が悪化していると感じた場合、新築の計画を白紙にすることをお勧めします。
建築中の離婚は避けて時間をとる
人に対するマイナスの感情は、一度芽生えると簡単に収まるものではありません。新築の計画を立てている際に夫婦仲が悪化した場合、離婚することで頭がいっぱいになってしまうこともあり得ます。
しかし既に新築の建築が始まっている場合、後戻りはできません。建築中のキャンセルは多額の違約金を支払うことになるため避けたほうがよいでしょう。慌てて離婚するのではなくまず新築の完成を待つことをお勧めします。
住宅の完成によって夫婦間のケンカがなくなり、関係が修復できる可能性があります。新築住宅に暮らすことの充実感でお互いに気持ちの余裕ができ、不仲が解消されるかもしれません。
本当に離婚すべきかを考える
新築離婚は大変デメリットの多い行為です。もし家の建築を途中でやめた場合、多額の違約金を支払わなくてはいけません。また家が完成した後に離婚したとしても、家や住宅ローンをどうするか夫婦で考える必要があります。不動産を含めた財産分与、名義の変更やローンの負担などが原因でトラブルになるケースも珍しくありません。
子供がいる場合は養育費についても話し合うことになりますが、住宅ローンの負担が重すぎるという理由で充分な金額の養育費を受け取れないこともあります。極端な話ではありますが、そのようなデメリットを避けるためには離婚しないことが一番です。本当に離婚すべきかどうかを今一度考えてみてください。
住宅ローンの返済義務について話し合う
夫婦いずれかが新築に住み続ける場合、もしくは家を売却してもローン残高が残った場合、離婚後も住宅ローンの返済は残ります。新築をどうするかと併せ、ローンの返済をどう行っていくかをよく話し合ってください。
財産分与についても相談する
ローンのような負の財産は、法律上財産分与に含まれません。そのためローンの残高を折半する、もしくは支払の半分を負担してもらうことは原則としてできません。
しかし家を売却する場合は住宅ローンの残債を折半して負担することが一般的です。財産分与はお互いに同意した内容が優先されるため、ローンの残債をどうするかについては夫婦でよく話し合いをするようにしてください。
連帯保証人は辞めることができない
もし住宅の名義人がローンを支払えなくなった場合、連帯保証人は代わりに支払いをしなくてはいけません。払えない場合は財産の差し押さえを受けることになります。連帯保証人は婚姻関係と関係がありませんので離婚を理由に連帯保証人を辞めることはできませんので注意してください。
住宅ローンの連帯保証人の収入条件は大変厳しいため、簡単に変更できるものではありません。どうしても連帯保証人を変更したい場合、名義人に住宅ローンを借り換えてもらうことで新たに別の人を連帯保証人に立てられます。
養育費の支払いも考慮する
夫婦の間に子供がいる場合は養育費のことも考えなくてはいけません。例えば子供の親権を母親が持ち、新築に住み続け、父親が住宅ローンの支払を続けていく場合、父親は住宅ローンと養育費の双方を支払わなくてはいけません。
子の教育のために養育費は不可欠なものですが、父親の経済的負担が大きいと養育費や住宅ローンの支払が滞り、母親と子の生活も破綻する恐れがあります。もし住宅ローンの支払を相手に負担してもらう場合、養育費をどうするかお互いに納得できるまで話し合うようにしてください。
弁護士に相談をする
ここまで解説をした通り、新築離婚はマイホームをどうするか、住宅ローンや養育費をどうするかという問題を避けることができません。本来であれば新築を建てた状態であれば離婚しないことが一番です。しかしもう夫婦仲は修復できない、新築離婚のデメリットを把握した上で離婚したいと考えているのであれば離婚問題に詳しい弁護士に相談をすることを強くお勧めします。
弁護士に相談をすることで、マイホームや住宅ローンについて個々の状況にあわせた最善の方法を提案してもらうことができます。新築離婚は財産分与でトラブルが生じることが多いのですが、弁護士に依頼をすることで相手と交渉をしてもらい、自分に有利な条件を引き出すことが可能です。
また相手方とローンの支払、養育費について取り決めをした後は法的効力が強い公正証書を作成してもらえます。相手が万が一取り決めを反故にした場合も、法律に則り対応してもらうこともできます。まずは法律事務所の無料相談を活用してみてください。
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まとめ
マイホームを建てることは幸せに満ちた出来事です。しかしお互いの価値観の違いが露呈する、将来像の相違が発覚する等が原因で離婚に至ることも珍しくありません。マイホーム契約をきっかけに離婚する新築離婚は、住宅ローンと新築住宅を抱えた状態で離婚することになるためローンの負担や財産分与が原因でスムーズに話し合いが進まないことがあります。
新築がキャンセルできる状態であれば計画を白紙に戻し、本当に離婚が必要なのかどうかを考えることをお勧めします。建築中の場合は完成まで待った後で夫婦の未来のことを考えましょう。それでも離婚を決断するのであれば弁護士に依頼をして話し合いをすることをお勧めします。あなたが安心して離婚し新しい生活を送れるよう、法的な視点から協力にサポートしてくれるはずです。