- 「父親が親権を取れる確率が知りたい」
- 「父親の親権獲得のためにできることは?」
今や3組に1組が離婚する時代。子どもを持つ父親の中には、自分が親権を獲得して子どもを育てたいと考える人も多いでしょう。では実際、父親が親権を取れる確率はどのくらいあるのでしょうか。こちらでは父親が子どもの親権を取れる確率や取りにくい理由、親権についての基礎知識や重視される点を詳しく解説。
またどうしても親権を取りたいという方のために、獲得のポイントについて紹介します。どうしても子どもの親権を取りたいと考えている方は必見です。最後まであきらめることなく、取りうる手段はすべて取っていきましょう。
父親が親権を取れる確率と取りにくい理由
こちらでは政府統計による父親が親権を取れる確率と、取りにくい理由について解説していきます。
統計によると親権を取れる確率は11%~13%
政府統計によると、2015年~2019年まで5年間の、子どもの人数ごとの親権者の割合は以下の通りです。
子どもの人数 | 子ども1人 | 子ども2人 | ||||
親権者 | 総数 | 父親(%) | 母親(%) | 総数 | 父親(%) | 母親(%) |
2019年 | 55,251 | 7,283(13.2) | 47,968(86.8) | 44,566 | 4,962(11.1) | 37,347(83.8) |
2018年 | 55,682 | 7,218(13.0) | 48,464(87.0) | 45,644 | 5,255(11.5) | 38,097(83.5) |
2017年 | 57,166 | 7,307(12.8) | 49,85(87.2) | 47,173 | 5,339(11.3) | 39,497(83.7) |
2016年 | 58,029 | 7,516(13.0) | 50,513(87.0) | 48,281 | 5,438(11.3) | 40,348(83.6) |
2015年 | 60,767 | 7,856(12.9) | 52,911(87.1) | 51,068 | 6,007(11.8) | 42,480(83.2) |
子ども1人では、父親が親権を取れる割合は12.8~13.2%、子ども2人では11.1~11.8%ほどとなっています。ただし子ども2人の場合は、それぞれの親で親権を1人ずつ分けるケースもあるため、実際に父親が親権を取れる割合は上にあげた数字よりも高くなると考えられます。
参照:親権を行う子をもつ夫妻の親権を行う子の数・親権者(夫-妻)別にみた年次別離婚件数及び百分率 |政府統計
父親が親権を取りにくい理由
母親が8割以上親権を取れるのに対し、父親は1割強の割合しか親権が取れません。どのような理由から親権が取りにくくなっているのでしょうか。
子どもの面倒を見る時間が取りにくい
父親はどうしても、子供の面倒を見る時間が取りにくいという傾向があります。共働き世帯が増えたとはいえ、メインとなって家計を支えているのは父親という家庭が多いため。時短勤務やパートで働く母親の一方で、父親はフルタイムで仕事をしているのでどうしても子どもの面倒を見る時間が取れません。
通勤時間などを含めると、子どもが起きている時間に家に帰れないことも多く、家庭に居られる時間は限られます。どうしても子どもの緊急事態に即座に対応できないケースが多く、親権獲得に不利になりやすいのが理由です。
子ども自身が母親を選ぶ傾向がある
子ども自身が、母親と一緒に居ることを希望する傾向があります。子どもと接する時間が父親より多いという理由もありますが、子どもにとって母親というのは特別な存在です。とくに子どもの年齢が小さいうちは、母性が不可欠といえるでしょう。
子どもの年齢が一定以上に達すると、子どもの意見が親権獲得に影響を与えます。具体的には15歳以上からとなりますが、それ以下の年齢の子どもの意見はあくまで参考程度にとどめ、親権について子どもに選択させることは避けるべきというのが一般的です。
「母性優先」の原則があるため
親権者決定においては「母子優先」の原則があるため、父親が不利になりやすいでしょう。とくに乳幼児の場合は特別な事情がない限り、母親が親権を持つべきという考え方があります。子どもが小さいうちは母親によるきめ細かな養育が不可欠で、子どもの幸せのためになるとみなされているからです。
現在共働き世帯が増え、父親の育児休暇制度が浸透しつつあります。しかし子育てに関しては父母の役割分担が変わるという過渡期においてなお、母性優先の考え方が親権者決定に残っているのもまた現状です。
過去の実績による誤解から
日本の裁判所は過去の判例に基づいて判断する「判例法主義」を取っているため、子どもの親権が母親側に行きやすくなっています。そのため父親が親権を獲得できる確率は、11~13%と低い結果に。
自然に「親権は母親が持つのが当然」という考えになっているため、父親側が激しく親権獲得を主張すると「跡継ぎが欲しいだけなのでは?」「本人というよりも祖父母が孫を引き取りたいだけでは?」という誤解を生みやすくなります。
実際にこのような理由から親権を獲得したいと考える人もいますが、心から子どもの親権を獲得したいと思っている方は、調停や裁判の場で事実ではない誤解を受けないよう、自身の発言には十分注意することを心がけましょう。
親権の基礎知識と重視されるポイント
日本では「単独親権」となっているため、夫婦の間に未成年の子どもがいる場合、離婚時に父母のどちらが親権者となるか決めなければなりません。ここでは親権についての基礎知識や、親権獲得時に重視されるポイントを見ていきましょう。
親権とは未成年の子どもに対する権利義務のこと
親権とは、未成年の子どもに対して行使する権利義務のこと。親権と書くので「権利」のように思えますが、社会的に未成熟な子どもを保護し、心身共に成長を図る親の「義務」としての意味合いの方が強いです。そして親権には「財産管理権」と「監護権」の二つの内容があります。
財産管理権
財産管理権とは、子どもの預貯金や不動産などの財産を維持管理する義務のこと。具体的には財産の保存、利用、改良、処分といった財産の管理が含まれます。子ども自身が財産を持っているというケースは稀ですが、祖父母からの贈与や相続、子どもに支払われる養育費などが子の財産として想定されます。
財産管理権を持つ親は、子の代理人となって財産を管理できるように決められています。ただし子どもの行為を目的とする債務を生ずべき場合は、本人の同意が必要です。
身上監護権
身上監護権とは、子どもと一緒に暮らして子どもの身の回りの世話をしたりしつけをする義務のこと。その内容は多岐にわたり、次のような内容があります。
- 監護・教育権
- 子どもを保護して適切な教育を行う
- 居所指定権
- 子どもが住む場所を指定する
- 懲戒権
- 子どもに対してしつけを行う
- 職業許可権
- 未成年の子どもの労働を許可もしくは制限する
上記にプラスして、身分法上の行為を行うに際しての代理権や同意権も含みます。これは、親権者が子どもの代理として特別な手続きなしに手続きを行える権利(身分行為の代理権)と、未成年者の婚姻時に必須である親権者同意(身分行為の同意権)の二つです。
二つの権利義務の関係
上で説明した通り、親権には財産管理権と身上監護権の二つが含まれていますが、一般的にはそれらをひとまとめにして親権と呼びます。ただし例外的に身上監護権のみを取り出して、親権と「監護権」とを分ける場合も。
例えば財産管理権は父親がふさわしいが、海外赴任などで子どもと一緒に暮らせないケースなどが該当します。このような場合は親権者を父親として、監護権者を母親とすることがあります。ただこのケースでは、子どもの財産に関する法的手続きのたびに父親に連絡をして同意を求める必要が。そのため手続きの煩雑さなどをよく考えたうえで、親権者と監護権者を分けるようにしましょう。
親権で重要視されるポイント
親権者を決めるときには、重要視されるいくつかのポイントがあります。
子どもの利益と福祉に反していないか
親権者を決めるときに一番重要なのが、子どもの利益と福祉に反していないかです。父母の都合や希望ではなく、子どもにとってどちらが親権者にふさわしいかで親権者を決める必要があります。例えば親の心身の健康状態が悪く入退院を繰り返していたり、精神的に不安定だったりすると子どもを養育するのにふさわしくないと判断される可能性が。
また子どもに精神的・肉体的虐待をしていた場合も、親権者としてふさわしくありません。必ずしも経済的に豊かな必要はありませんが、ギャンブル等で借金を繰り返していたり財産管理能力に問題があるとみなされると、親権者として不利になります。
これまでの監護実績
離婚前までの監護実績が、子どもの親権で重要視されます。これまで適切に子どもの世話をしてきたという実績は、離婚後の監護能力や引き続き子どもの監護に対する意欲が期待できるためです。これまで子どもの監護を母親に任せてきた場合は、この点において親権獲得に不利になる可能性があります。
親権者の健康状態
親権者の心身の健康状態も、親権獲得に左右します。子どもを適切に養育するには、親の健康状態が安定している必要があるからです。重い病気を抱えて入退院を繰り返しているようなケースや、精神疾患のために精神が不安定なケースは、子どもを適切に養育できる状態でないと判断されます。
子育てをするには体力が必要で、経済的な安定のためには仕事ができる健康状態でないといけません。母親に心身の病気がある場合は、子どもの福祉や利益の観点から父親が親権獲得に有利になる可能性があります。
子どもの養育環境「継続性の原則」
子どもの養育環境で判断するにあたって「継続性の原則」が重視されます。継続性の原則とは、子どもの養育環境に大きな変化がないことが望ましいという考えです。ただでさえ親の離婚は子どもの精神状態にダメージを与えます。それにプラスして引っ越しや転校などの環境変化が加わると、一層心理的なダメージが大きくなるため。
このような理由から、なるべくこれまで育ってきた環境を変えないで済む方の親が親権獲得に有利になる可能性が。離婚前に別居していた場合は、子どもを連れて家を出たとしても、安定して暮らしていたと判断されれば別居後の生活を維持する方が子どものためになるとみなされます。
ただし子どもの親権を取りたいからと勝手に子どもを連れて家を出た場合は、身勝手な行動とみなされて親権獲得に不利になるので注意しましょう。
子どもの年齢
子どもの年齢も、父母のどちらが親権者になるかに影響します。というのも日本では母性優先の原則があるため。子どもの年齢が小さければ小さいほど、母親が親権を持つにふさわしいとされます。
ただ最近では裁判所も母性優先の原則をそれほど重視しなくなりました。父親がこれまでの母親の役割を立派に果たしているというケースでは、子どもの年齢が低くても父親に親権を認める判例が出ています。
きょうだいの有無「兄弟姉妹不分離の原則」
子どもが複数いる場合は、「兄弟姉妹不分離の原則」が親権に影響します。これまで一緒に育ってきた兄弟姉妹は、離婚後も一人の親権者が一緒に育てることが望ましいという考えです。これは子どもの心理面への影響に配慮した考えで、兄弟姉妹がバラバラにならないよう、一緒に引き取って育てることが可能な親が親権獲得に有利になります。
子どもの意思
子どもの意思も親権に影響します。日本では15歳以上の子どもがいる場合、必ず裁判所はどちらの親と一緒に暮らしたいかを確認します。この年齢の子どもは自我や価値観がある程度確立しているとみなされ、親権獲得においても子どもの意思が尊重されます。子どもの年齢ごとの親権者の決め方については、以下の通りです。
子どもの年齢 | 親権者の決め方 |
---|---|
0歳~10歳 | 子どもの年齢が小さいほど、母親側に特段の理由がない限り母親が親権者になる |
10歳~15歳 | 母親が親権者になるケースが多いが、裁判所によっては子どもの意思を確認する場合も |
15歳以上 | 必ず裁判所が子どもの意思を聞き、子どもが望む方に親権者を決めることができる |
裁判所によっては、15歳未満でも10歳前後の子どもなら自分の意思を表現できるとして、どちらと一緒の暮らしたいかを聞き子どもの心身状態などを客観的に見て、その意思を尊重する傾向があります。
面会交流についての寛容性
面会交流への寛容性も、親権に影響します。面会交流とは、離婚後に親権を持たない方の親と子供が定期的に会い交流すること。「別居親と会いたい」という子どもの気持ちを尊重し、面会交流により協力的な親の方を親権者と決める傾向があります。
子どもにとっては、親が離婚していても親子であることに変わりありません。一方の親の「離婚後まで関係を持ちたくない」という気持ちも分からないではありませんが、別居親からの愛情を確認できる面会交流は、子どもの心身の成長においてとても重要です。
ただし別居親が子供を虐待するなど、面会交流を拒否できる正当な理由があれば、親権には影響しません。
離婚時の親権者の決め方
離婚時の親権者の決め方には、次のような順序があります。
親権者の決め方 | 内容・注意点 |
---|---|
① 夫婦間の協議 | 話し合いが困難な場合を除き、親権・養育費・面会交流について協議して決定 まとまった内容は「離婚協議書」として作成し、公正証書にするのがおすすめ |
② 調停で話し合い | 家庭裁判所の「夫婦関係調整調停」で双方の意見をすり合わせ
必要に応じて調査を行いながら親権者を選択、合意に至れば離婚調停が成立 |
③ 離婚裁判 | 調停で合意に至らない場合は離婚訴訟へと進む
調停段階で行った調査をもとに、裁判所が親権者を決定 |
基本的には、夫婦間の協議で親権者を決めます。話し合いでまとまらない場合は、家庭裁判所の調停や離婚裁判を通して親権者を決めることになります。
父親が親権を取りやすいケース
父親は、母親に比べると親権獲得の面ではどうしても不利になりがちです。しかし母親に次のような問題行動があれば、子どもの監護に問題があるとみなされて父親が親権を獲得しやすくなるでしょう。
- 子供を虐待している
- 子どもの世話をせず育児放棄している
- 家事を全くしない
- 子どものことより不貞行為相手との関係を優先している
- 薬物依存などの犯罪歴がある
- 重度の精神・身体の病気がある
- 家出して行方不明になっている
また上で説明した通り、15歳以上の子どもの場合は子ども自身が父親と暮らしたいと望めば、子どもの要望が尊重されます。
父親が親権を取るためのポイント
父親が子どもの親権を獲得するためには、いくつかのおさえておくべきポイントがあります。
離婚問題に詳しい弁護士に相談
子どもの親権を獲得したい場合は、離婚問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。既出の通り、父親が親権を獲得できる確率は低く、法的な知識や裁判所での手続きの進め方、経験に基づいた交渉術などが欠かせないため。
子どもをどちらが手元で育てるかという極めてデリケートな問題を扱うため、親権問題に精通した弁護士に早めに依頼するのが親権交渉を有利に進めるコツです。
離婚時に依頼したい弁護士に選び方については、こちらの記事を参考にしてください。
「離婚時に依頼したい弁護士の選び方|相談前・相談時のポイントと費用に関する注意点を解説」
別居時は子どもを連れて出る
別居のために家を出るときは、必ず子どもを連れて出るようにしましょう。上で説明した通り、親権の判断には「継続性の原則」が考慮されるためです。裁判所や調停で親権者を決める場合、現状維持が優先されます。
この点をクリアするためには、別居時は子どもを連れて出て、その後子どもと安定して生活できているという実績が必要。実績を作っておけば、調停委員や裁判官が無理に現状を変更してまで母親を親権者とするという判断は回避できるでしょう。
別居時は面会交流を継続
やむを得ない事情により子どもを連れて別居できない場合は、子どもとの面会交流を継続するようにしましょう。子どもとの面会すらろくにしていない状況だと、監護の意欲や子供への愛情に疑問符がついてしまうため。面会交流への積極性は「育児に携わりたい」という意思表示になります。
- 面会交流以外にも、次のようなことを積極的に行うことをおすすめします。
- 面会予定はキャンセルしない
- 面会頻度を増やしたいという希望を書面で送付
- 子どもの養育費や学費を積極的に負担する
- 子どもに自分の気持ちを手紙などで伝える
ポイントは「子どものために親としてできることを考え、それを実践すること」です。面会交流を実施した場合は、日付や時間、回数やその内容などを記録すると証拠となります。
調停委員を味方につける
離婚調停の場で親権が判断される場合は、調停委員を味方につけることをおすすめします。いくら裁判所から任命されているといえ、調停委員も人間です。より印象が良い方の親に親権を渡したいと考えるのが当然でしょう。
調停委員は家庭訪問をして親と子どもの様子をチェックしたり、通っている学校に赴いて担任の先生から話を聞いて子どもの生活環境や子ども自身の意思を確認します。また親に子どもの過去から現在までの日常の様子を質問し、どの位養育にかかわってきたか判断します。そのため、最低限次のようなことに気を付けて、大人として子どもを養育するのにふさわしいふるまいを心がけましょう。
- 約束の時間を守る
- 家庭訪問の前は部屋をきれいにする
- 礼儀正しく接する
- 質問されたら嘘をつかない、明確に回答する
長期間の育児実績を作る
父親が親権を取るためには、長期間の養育実績を作ることが必須です。子どもの親権で重要視されるのが「きめ細かな監護養育ができるかどうか」だからです。生物学的な母親である必要はありませんが、愛情をもってスキンシップを図りながら、子どもに食事をさせお風呂に入れ、トイレの世話や寝かしつけをし、身支度を整えるなどの日常的な育児を行っていることが重要。
また年齢が高い子どもに対しては、学校イベントへの参加や塾の送り迎え、休日に遊びにつれていくなど。実際に養育すべき父親が、祖父母やヘルパーなどに子どもの世話を丸投げしているようでは、親権獲得は難しいでしょう。
育児実績の期間は長ければ長いほど親権に有利になります。短くても半年程度は、次のような記録を取りながら養育実績を積み上げていきましょう。
- 子どものごはん作りや着替えの手伝いなど、日常の監護の様子を細かくメモする
- 保育園や学校の連絡ノートをマメに書く
- 通園通学の送り迎えを積極的にする
- 子どもと出かけたり遊んだときは必ず写真を残す
周囲のサポートを得られるようにする
父親が仕事で不在のときなど、代わりに子どもの面倒を見てもらえるよう、周囲のサポート体制を整えることも大切です。父親が親権を獲得したいときにポイントになるのが、「母親と同じように養育できるかどうか」です。兄弟姉妹がいる場合は、一緒に引き取れる環境を維持できるかも重要に。
そのためには実家近くに引っ越して、日常的に祖父母やおじおば、親せきなどに子どもを見てもらえる環境にしましょう。近くに親族がいない場合はシッターやヘルパーなどのサポートを受けられるように準備するのがおすすめです。
転職を視野に入れて子どもとの時間を調整
仕事の拘束時間が長い場合は、転職を視野に入れながら子どもと過ごす時間を長く持つようにしましょう。離婚後父親だけになった場合、子どもの養育に十分な時間が取れるかがポイントだからです。職場に協力を求めて配置移動や勤務調整ができないような場合は、思い切って転職を考える必要があります。
転職までの必要はなくても、休日出勤や残業を控える、不在時は親族に子どもの面倒を見てもらうなどして、子どもに寂しい思いをさせないことが大切です。
母親が親権者に向かない証拠を確保
母親が親権者に向かないと判断されると、父親が有利になります。そのための証拠はキチンと確保するようにしましょう。
- 子どもに大声で怒鳴っているときの音声
- 部屋が散らかっているなど家事を怠っている証拠の写真
- 子どもにケガをさせたときの写真や診断書
- 子どもを家に置いたまま不倫をしていた証拠
- ネグレクトを思わせる周囲の証言
ただし母親が親権者としてふさわしくないというアピールばかりし過ぎると、調停委員や裁判官の心証が悪くなる恐れがあるので、ほどほどにする必要があります。
子どもの意思で選べる年齢まで離婚しない
子どもの意思で一緒に暮らしたい親を選べるまで、離婚をしないのも一つの方法です。15歳以下の子どもの親権は母親が有利になりますが、15歳以上は子どもの意思が尊重されるため。普段から子どもとの関係が良好で、父親と一緒に暮らしたいと子どもが思っている場合は、離婚時期を遅らせるというのも一つの手です。
「子どもの手続き代理人制度」を利用
親権獲得で有利になりたい場合は「子どもの手続き代理人制度」を利用してみてはいかがでしょうか。この制度は調停や審判に参加する子どもに対し、子ども自身の意思表明を弁護士がサポートするというもの。子どもの生活に影響を及ぼす、次のような場面で利用が可能です。
- 両親の離婚調停
- 面会交流
- 監護者指定
- 親権者指定
もちろん子どもの意思を弁護士が代理するという制度なので、母親と暮らしたいと考えている場合は母親に有利となります。
こんなときはどうする?親権獲得についての疑問
両親の離婚や子どもの親権獲得について、よくある疑問や質問にお答えします。
妻の不倫で離婚したら親権は自分になる?
妻の不倫が原因で離婚した場合、親権は父親である自分が有利になるのでは?と考える人も多いのではないでしょうか。しかし相手の不倫で離婚した場合でも、子どもの養育をしっかりしていたと認められれば親権には影響がありません。というのも不倫の行為自体は子どもを養育することに直接悪影響を及ぼさないため。
確かに不倫(不貞行為)は不法行為として、慰謝料の支払い義務や離婚の請求が可能です。しかしながら不倫したからといって子どもを養育するのに適していないとは言い切れません。不倫以外に育児放棄などの事情がある場合は親権獲得に影響しますが、残念ながら「不倫=親権獲得に不利」とはなりません。
妻の浮気で離婚を決意した方は、こちらの記事を参考にして親権や慰謝料獲得を有利に進めましょう。
「妻の浮気で離婚を決意したら…親権・慰謝料など損をしないために取るべき行動」
離婚前に子どもを連れ去られたときの対処法は?
離婚前に子どもを連れされられたときは、法的に取り戻す手段として家庭裁判所に「子の引渡し請求」を申し立てる方法があります。子の引渡し請求には、調停・審判・審判前の保全処分という手続きがあるため、詳しくは弁護士に相談するといいでしょう。
相手に非があるからといって「連れ去り行為だ」「未成年者略取の犯罪だ」と攻撃するような言動は控えましょう。いざ調停や裁判になったときに、その言動が不利になる可能性があるため。勝手に連れ去られたとしても感情的にならず、まずは弁護士に相談して法的な手続きを粛々と進めていきましょう。
親権者でなくても一緒に住む方法はある?
親権者になれなくても、子どもと一緒に暮らす方法があります。その方法とは、裁判所に「監護権者の変更」を申し入れることです。通常は親権の中に監護権も含みますが、両親が合意すれば親権と監護権者を分けて持つことも可能です。
夫婦の話し合いのみで合意できれば変更が可能で、話し合いでまとまらない場合は調停や審判に移行します。例えば親権を持つ母親が病気等で子どもを育てられなくなったという理由があり、父親の方が子の監護にふさわしいと判断されたケースに該当します。
最終的に親権が取れなかったときはどうする?
最終的に親権が取れなくなっても、面会交流権によって定期的かつ継続的に子どもと会うことができます。面会交流の内容は離婚時に決められます。親権を取れなかったからと絶望せず、面会交流のルールを決めることに切り替えていきましょう。具体的には次のような内容を決めます。
- 面会交流の回数や頻度
- 日時や宿泊の可否
- 子どもの引渡し方法(時間・場所)
- 監護権を持つ親の立ち合いの有無
- 第三者機関(自治体・NPO法人)の立ち合いの有無
- 学校行事への参加の有無
- 子どもへのプレゼントの頻度・価格
さらには養育費を毎月きちんと支払うことで、子どもに愛情を示すという方法もあります。養育費の金額も離婚時に決定するのが一般的です。養育費は子どもの成長や教育のために必要なお金です。離婚して時間が経つと支払いが滞るケースがありますが、親としての義務だと思ってしっかり払っていきましょう。
養育費の一括支払いを検討している方は、こちらの記事を参考にしましょう。
「養育費の一括支払い・請求について|メリット・デメリットや計算方法、注意点を解説」
離婚後に親権者を母親変更することはできる?
離婚時に母親が親権者と決定した後で、離婚後に父親に変更することは可能です。家庭裁判所に「親権者変更調停」を申し立てることで認められます。監護権者の変更は当事者同士の合意のみで変更できますが、親権者の変更は家庭裁判所の手続きを経る必要があるので気を付けましょう。
ただし親の都合や「寂しくなったから」などの感情で、親権を勝手に変更することはできません。次のようなやむを得ない事情がない限り、裁判所は変更を認めないと考えましょう。
- 親権者が死亡した
- 親権者が重い病気にかかった
- 子どもが親権者から虐待や育児放棄を受けている
- 子ども自身が親権者の変更を希望している
親権放棄の方法や親権者変更の手続きについては、こちらの記事を参考にしてください。
「親権いらないから離婚したい人向け|可能かどうかや『親権放棄』の方法を詳しく解説」
まとめ
父親が子どもの親権を取れる確率は、11~13%前後と高くありません。仕事で子どもの養育のための時間を取ることが難しく「母性優先の原則」があるため。また子ども自身も母親を選ぶ傾向があるためです。親権の判断は子どもの年齢や兄弟の有無、子ども自身の意思により決定されます。
またこれまでの監護実績や養育環境の継続性なども重要になります。父親が親権を取るためには、監護実績を積み重ねて周囲の協力を得ながら、ときには転職なども考慮に入れて、子どもの福祉や利益を第一に考えることがポイント。
まずは離婚問題に強い弁護士に相談し、どのようなことをすべきかアドバイスをもらいましょう。親権がなくても子どもと一緒に暮らせる方法や離婚後に親権を変更できるケースもあるので、こちらも弁護士に相談することをおすすめします。