- 「悪意の遺棄ってどんな行為?」
- 「悪意の遺棄で離婚するために必要な証拠が知りたい」
離婚裁判で離婚が認められるためには、民法で定められている5つの「法定離婚事由」が必要です。法定離婚事由の中に「悪意の遺棄」という項目がありますが、悪意の遺棄とはどのような行為なのでしょうか?こちらの記事では離婚における悪意の遺棄とはという点を詳しく解説。
具体的な内容や認められる証拠のほか、該当しない行為についても紹介するので、離婚裁判になりそうという方や悪意の遺棄で慰謝料請求を考えているという方は参考にしましょう。
悪意の遺棄とは?離婚の可否や慰謝料との関係
まず「悪意の遺棄」の言葉の意味やその詳しい内容、慰謝料請求の可否について見ていきましょう。
言葉の意味
「悪意の遺棄」という言葉の意味を知る上で、「悪意」と「遺棄」に分けて考えてみましょう。こちらは離婚原因となる悪意の遺棄の言葉の意味です。
悪意 | 民法における悪意とは、社会的・倫理的に非難に値する要素を含むもので、ある事柄について「知っていた」ことを意味する。
積極的に婚姻・共同生活の継続を破綻させる意思や、破綻しても構わないとする意志のこと。 一方で「夫婦関係の継続を望んでいる」という意思を示していた場合には、「悪意」は否定される。 |
遺棄 | 正当な理由なく、民法に規定された夫婦間の「同居義務」「協力義務」「扶助義務」を履行せず、婚姻費用負担義務違反の状態を一定期間継続させること。 |
これをまとめると、悪意の遺棄とは「社会的・倫理的に非難されるような婚姻生活の継続を破綻させる意思もしくは、破綻しても構わないという意思を持ち、正当な理由なく夫婦間の同居・協力・扶助義務を継続的に履行せず、共同生活の維持を拒否すること」をいいます。
夫婦間の義務違反
上で説明したように、悪意の遺棄とは民法第752条に規定されている、夫婦の同居・協力・扶助義務を破棄するような行為です。それぞれの義務についての詳しい内容はこちらです。
同居義務 | 単身赴任などの正当な理由がある場合や、相手の同意がある場合を除き、夫婦は同じ家に住み同居をすべきという義務 |
協力義務 | 収入の獲得や家事、育児などについて、夫婦は互いに協力すべきという義務 |
扶助義務 | 配偶者に対して、自分と同程度の生活を保障しなければならないという義務
夫婦の一方が扶助を必要としているときには、もう一方が自分と同程度の生活水準を保てるように金銭の援助を行わなければならない |
正当な理由なく、夫婦の一方が同居・協力・扶助義務を果たさなければ、悪意の遺棄となる可能性があります。
「悪意」と「遺棄」の関係
二つの言葉の意味が分かったところで、「悪意」と「遺棄」の関係について見ていきます。裁判で「遺棄がなされた」というケースでは、「悪意」もあると判断されることが多くあります。一方で「遺棄」が認定されるケースで、「悪意」が否定されるということもあるものの、何か積極的に悪意がないと認められるだけの特別な事情がある場合に限られます。
というのも、夫婦の一方が正当な理由なく同居・協力・扶助義務を果たしていないというケースでは、一般的に「それは夫婦関係が壊れても仕方ない」という気持ちがあったからなのではという推測ができるため。裁判で悪意の遺棄が認められるかに関しては、「遺棄」が認定されるかどうかに大きなウエイトが置かれています。
正当な理由があるときには、悪意の遺棄とならない
ただし「正当な理由」があるときには、悪意の遺棄とはなりません。ここでいう「正当な理由」とは、義務違反の違法性を否定するような事情のことです。確かに行為だけを見るとどちらか一方の義務違反はあるものの、「そうするのも仕方がない」「だからといってひどい配偶者とはいえない」という事情があれば、正当な理由があると判断され、悪意の遺棄が否定されます。
離婚裁判における悪意の遺棄の認定では、簡単にいうと「夫婦の一方の義務違反の継続の有無」と「ひどい配偶者だ」といえるだけの事情にあるかがポイントになります。
悪意の遺棄が認められると離婚が可能
悪意の遺棄が認められると、裁判で離婚が認められます。冒頭で紹介したように、悪意の遺棄は民法第770条に定められている5つの「法定離婚事由」のうちの一つだからです。
(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
引用:民法|e-GOV法令検索
従って、裁判で配偶者による悪意の遺棄が認められた場合には、相手が離婚に合意していなくても、最終的に裁判で離婚請求が認められます。
女性側の離婚理由の2位
実は「悪意の遺棄」は、妻側の離婚理由の第2位にランクインします。また男性側でも「同居に応じない」「家庭を捨てて省みない」といった悪意の遺棄とみなされる理由がランクインしています。こちらは令和2年度の婚姻関係事件の申立ての動機別の男女別ランキングです。
順位 | 男性(件数) | 女性(件数) |
1位 | 性格が合わない(9,240) | 性格が合わない(16,304) |
2位 | 精神的に虐待する(3,159) | 生活費を渡さない(13,236) |
3位 | 異性関係(2,132) | 精神的に虐待する(10,948) |
4位 | 家族親族と折り合いが悪い(1,964) | 暴力を振るう(8,576) |
5位 | 浪費する(1,883) | 異性関係(6,505) |
6位 | 性的不調和(1,749) | 浪費する(4,020) |
7位 | 暴力を振るう(1,454) | 家庭を捨てて省みない(3,013) |
8位 | 同居に応じない(1,359) | 性的不調和(2,806) |
9位 | 家庭を捨てて省みない(764) | 家族親族と折り合いが悪い(2,647) |
10位 | 生活費を渡さない(686) | 酒を飲み過ぎる(2,618) |
参考:婚姻関係事件数―申立ての動機別申立人別―全家庭裁判所|裁判所
過去の判例では別居わずか2カ月であっても「悪意の遺棄」に当たると判断されたケースも。別居期間の長さよりも遺棄の意思が明確化どうかに重点が置かれています。
民法上の不法行為
悪意の遺棄は民法上の「不法行為」となります。不法行為とは、民法第709条で規定されているもので「他人の権利や義務を違法に侵害する行為」のことを指します。つまり悪意の遺棄は、夫婦間の同居・協力・扶助義務を果たさず、配偶者に対して違法に精神的損害を与える不法行為に該当するという訳です。
悪意の遺棄で慰謝料を請求できる可能性
不法行為をしたものは、それにより生じた損害を賠償しなければなりません。悪意の遺棄やそれによる離婚で生じた精神的損害に対しては、慰謝料(損害賠償)という形で賠償するのが一般的。つまり悪意の遺棄を受けた場合やそれにより離婚した場合は、加害者である配偶者に対して慰謝料を請求できます。
悪意の遺棄に関する慰謝料は、離婚協議の中で請求するのが通常です。離婚協議で双方の合意が得られなければ、離婚調停で請求していきます。調停が不成立となれば、離婚裁判において請求します。また離婚した後で別途、悪意の遺棄の慰謝料を請求することもできます。ただし後述する慰謝料請求の消滅時効に注意が必要です。
慰謝料相場
悪意の遺棄による慰謝料の相場は、50万~300万円が一般的。ただし次のような事情があれば、慰謝料は高額になる傾向があります。
- 悪意の遺棄が長期間または多数回に及ぶ
- 悪意の遺棄に該当する行為が著しく悪質
- 悪意の遺棄をした側に反省の態度が見られない
- 婚姻期間が長い
- 未成熟の子どもがいる
- 不倫相手と同居するために家を出ていった場合
離婚慰謝料の相場については、こちらの記事を参考にしましょう。
「離婚慰謝料の相場が知りたい!離婚理由や婚姻期間による相場・金額をアップさせるポイントを解説」
慰謝料請求には時効がある
離婚慰謝料の請求には時効があります。これを消滅時効といい、原則として離婚が成立した日から3年となっています。ただし離婚後に配偶者の不貞を知った場合は、「不貞の事実を知った日から3年」もしくは「不貞行為があったときから20年」のどちらか早い方が慰謝料請求の時効となります。
離婚そのものの慰謝料ではなく、離婚の原因となった悪意の遺棄について慰謝料請求する場合も、「不法行為があったときから20年」が経過すると、消滅時効が成立し慰謝料を請求できません。離婚後に慰謝料を請求しようと思っているときには、消滅時効について注意が必要です。
悪意の遺棄とはどのような行為?
こちらではより具体的に、悪意の遺棄とはどのような行為なのかについて解説してきます。
悪意の遺棄に該当するケース
悪意の遺棄に該当するケースはこちらです。夫婦間の3つの義務ごとに見ていきましょう。
同居義務違反
同居義務違反に該当するのは次のような行為です。
- 理由もなく同居を拒否している
- 頻繁に家出を繰り返す
- 実家に帰ったまま夫婦の家に戻ってこない
- 何の説明もなく家を出た
- 必要ないのに賃貸で一人暮らししている
- 生活費は送られてくるが、どこに住んでいるか分からない
- 自宅から追い出された
- 自宅のカギを変えられたり、チェーンロックをかけたりして無理やり家に入れなくした
- 不倫相手と同居するために家を出ていった
暴言や暴力、脅迫的な言動で無理やり自宅から追い出した場合や、理由もなく家に帰ってこなくなった場合には、悪意の遺棄が認められる可能性が高いでしょう。
別居後の離婚話が進まないという方は、こちらの記事を参考にしましょう。
「別居後の離婚話が進まない…原因と対処法、スムーズに離婚するためのポイントを解説!」
協力義務違反
夫婦間の協力義務違反に当たるのは、次のような行為です。
- 健康で働けるのに仕事や家事をしない
- 専業主婦なのに家事や育児をしない
- 夫婦の決め事(生活費の折半)を守ろうとしない
- 病気やケガで苦しんでいるのに、必要な看護をしない
夫婦には互いに協力して収入を確保したり、家事や育児行うことで家庭生活を維持する義務があります。しかし健康なのに働こうとしなかったり、専業主婦なのに家事や育児をしない状況であれば、場合によって悪意の遺棄が認められるかの姓があります。
旦那が育児を手伝ってくれないことで育児ノイローゼになった場合には、こちらの記事を参考にしましょう。
「育児ノイローゼが原因で離婚はできる?苦しい理由や対処法を知り後悔しない選択を」
扶助義務違反
夫婦の扶助義務違反に当たるのは、次のような行為です。
- 別居中の婚姻費用を請求したのに負担しない
- 単身赴任の夫が生活費を送ってくれない
- 大きな病気をして医療費がかかるのに負担しない
- 収入があるにもかかわらず生活費を出してくれない
- 生活費を出さないばかりか、自分の遊興や趣味にお金をかける
- 夫婦共有の預金口座やクレジットカードを嫌がらせのため使えなくして、生活費を使えずに生活できない状態にする
上記のようにわざと相手配偶者や子どもに必要な生活費を渡さず、満足な食事ができない状況になったり、適切な医療を受けられない状況である場合には、悪意の遺棄が認められる可能性が高いでしょう。一方で共働き夫婦などで、片方の配偶者が生活費を負担しなくても十分に生活できるようなときには、悪意の遺棄に該当しません。
婚姻費用を払わない方法があるかについては、こちらの記事を参考にしてください。
「婚姻費用を払わない方法が知りたい!未払いで起こることと払えなくなるケースを知り、適切な対処法を」
悪意の遺棄に該当しないケース
悪意の遺棄に該当するかどうかは、正当な理由の有無、どちらか一方に破綻の原因があるかどうかで判断します。次のようなケースでは、悪意の遺棄に該当しない可能性があります。
正当な理由がある場合
同様の行為があったとしても、正当な理由があるときには悪意の遺棄に該当しません。例えば次のようなケースでは、悪意の遺棄には当たらないと考えられます。
- DVやモラハラから逃げるための別居
- 実家の親を介護するためやむを得ず別に暮らしている
- 単身赴任や仕事の都合で同居できない
- 夫婦がお互いの事情により別居している
- 夫婦関係を見直すための別居
- 病気やケガで働けない・家事ができない
- 会社をクビになり失業し、生活費を出せない
- 就職活動中で収入がない
- 専業主婦が生活費を負担しない
- 収入は渡していないが、相続した遺産などから家族が十分に暮らせる費用を負担している
どちらか一方に破綻の原因がある
夫婦のどちらか一方に夫婦関係を破綻させた原因があるときには、同居を拒否したり生活費を分担しなくても、悪意の遺棄に該当しないとみなされます。悪意の遺棄とは、婚姻関係を破綻させることになると分かっていながら夫婦の義務を果たさないことをいいます。
しかし自分から夫婦間の義務に違反して婚姻関係を破綻させる原因を作っておきながら、夫婦としての義務の履行を求める行為は、「信義則(信義誠実の原則)」から認められないという訳です。信義則とは、社会の一員として、互いに相手の信頼を裏切らないよう誠実に行動しなければならないという民法の基本原則。
例えば不倫相手と同居するために家を出ていった側が、自分から夫婦間の義務に違反して婚姻関係を破綻させる原因を作っておきながら、生活が苦しいからといって残された側に婚姻費用を請求するのは、信義則から認められません。
悪意の遺棄を証明する証拠
悪意の遺棄を主張して離婚裁判を起こしたり、慰謝料を請求する場合には、悪意の遺棄に該当する行為があったことを証明できる証拠が必要です。裁判では悪意の遺棄があったと認められる事実の証明ができない限り、悪意の遺棄を理由とする離婚成立の判決書を出したり、慰謝料の支払いを命じる判決をかけないからです。
また当事者同士の主張で争いがある場合にも、第三者にも分かる客観的な証拠が必要に。主に次のような証拠で、悪意の遺棄を証明していくことになります。
無断別居・無断外泊・家出の証拠 |
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働けるのに働けないことの証拠 | 就労能力の証明(健康診断の結果・医師の診断書など) |
家事や育児を放棄している証拠 | 家事や育児に関するメッセージのやり取り(全く返信がない、非協力的な返事をしているなど) |
生活費を支払ってこない証拠 |
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上記以外にも、次のようなものが悪意の遺棄を証明する証拠になり得ます。
- 夫婦関係の修復を希望したのに拒否された経緯が分かるメッセージのやり取り
- 電話の着信・発信履歴
- 話し合いの内容を記録した録音
- 配偶者の借金や浪費の内容が分かるキャッシング明細やクレジットカードの明細
- 別居の原因が不貞行為の場合は、肉体関係があることが分かる写真やメッセージのやり取り
もっとも、どのような証拠が必要になるかは、個々のケースによって異なります。また証明の対象となる事実によっても変わってくるので、詳しくは離婚問題に詳しい弁護士に相談しましょう。
悪意の遺棄で離婚する場合のポイント
悪意の遺棄で離婚を希望する場合、次のようなポイントがあります。
「悪意の遺棄」が認められるか
実は悪意の遺棄で離婚が裁判で認められるケースは、それほど多くありません。悪意の遺棄で離婚裁判しようと思っている場合には、次のような点に注意しましょう。
- 夫婦間の同居・協力・扶助義務を放棄していたか
- 正当な理由がないか
- 「悪意」で「遺棄」したか
悪意の遺棄を理由とした離婚裁判を申し立てた側は、夫婦間の同居・協力・扶助義務を果たさなかった事実に正当な理由がないことを証明する必要があります。また積極的に婚姻関係を破綻させるよう画策したり、または容認して夫婦間の義務を放棄したことを証明しなければなりません。
ただし悪意の遺棄に該当しないと判断されたケースでも、その他の事情を総合的に見て法定離婚事由の「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するとして、離婚請求が認められる場合があります。
悪意の遺棄と婚姻関係の破たんとの因果関係
また悪意の遺棄のうちの同居義務違反を主張した場合、その別居や同居義務違反によって夫婦関係が破綻したかどうかという点も争点になり得ます。
例えば妻が夫からの暴力に耐え切れず家を出たケースで、夫が妻に対して「妻が家を出ていったのは同居義務違反であり、悪意の遺棄だ」と主張して離婚裁判を起こしたとしましょう。この場合妻からは「家を出たことによって夫婦関係が破綻したのではない、その前段階の妻に対する暴力で破綻した」と反論してくることが考えられます。
このような場合、裁判では現に夫からの暴力があったと認められ、それによって家を出る前から婚姻開始が破綻していたと判断できれば、別居に正当な理由があり別居が夫婦関係破綻の原因ではないという結論が出されます。このように夫婦の義務違反によって夫婦関係が破綻したのか、その前からすでに破綻していたので義務が履行されなかったのかという時系列は、裁判の結論を左右するので注意が必要になります。
有責配偶者からの離婚請求
では婚姻破綻の原因を作った側、いわゆる「有責配偶者」からの離婚請求は認められないのでしょうか。過去の判例では、有責配偶者からの離婚請求は認められていませんでした。というのも仮に裁判で自分が有責配偶者と認定された場合、相手が拒否すれば裁判では離婚が認められないため。
一方で有責配偶者からの離婚請求でも、相手が離婚を受け入れれば離婚が可能になります。裁判に至る以前の協議や調停でも、相手が離婚に合意すれば離婚ができます。また離婚裁判になった場合でも、相手の気持ちが途中で変わり、離婚する方向で話し合いに応じてくれたときには、和解して離婚できます。
ここでいう有責配偶者とは、あくまで婚姻関係を破綻させる直接の原因を作った側です。悪意の遺棄に該当する行為をしたとしても、破綻の原因がそれ以外にある場合は、悪意の遺棄をした側は有責配偶者にはなりません。
離婚慰謝料の請求方法
悪意の遺棄で離婚する場合、慰謝料も一緒に請求したいと考える人がいるでしょう。離婚慰謝料は、次のような流れで請求していきます。
① 協議 | 離婚や慰謝料の支払い義務、金額について夫婦で話し合いをする
話し合いにより相手が慰謝料の支払いに応じたときには、金額や支払い方法などを記した合意書を作成する |
② 内容証明郵便を送る | 相手が話し合いに応じないときには、慰謝料請求に関する内容証明郵便を送る
内容証明郵便を送ることで、本気度を示せたり相手に心理的プレッシャーを与えられる |
③ 調停 | 離婚調停の中で、慰謝料請求についても話し合う
調停では直接顔をあわせず、調停委員を介して自分の希望を伝えたり双方の意見のすり合わせを行う |
④ 裁判 | 調停が不成立になった場合は、離婚裁判を起こす
裁判では離婚事由についてや、慰謝料をもらうだけの事実があったことを証明する証拠が必要になる |
離婚慰謝料の踏み倒しが可能かについては、こちらの記事を参考にしてください。
「離婚時の慰謝料踏み倒しは可能?支払えないときの対処法と踏み倒しを予防する対策」
離婚時に請求できるお金
悪意の遺棄で離婚する場合でも、離婚時に請求できるお金は忘れずに請求していきましょう。
婚姻費用
すぐに離婚せず当面の間別居をする場合には、収入の低い側が高い側に対して婚姻費用を請求できます。婚姻費用は毎月支払ってもらえるものなので、金銭面での不安解消に役立ちます。悪意の遺棄は法的に証明するのが難しいのに対して、婚姻費用によって婚姻の事実を証明すればいいという訳です。
婚姻費用は相手に請求した時点からの負担義務が生じます。過去にさかのぼって請求できないので、別居したらすぐに請求することをおすすめします。話し合いによって相手が支払に応じてくれる場合には、すぐに婚姻費用を受け取れます。相手が拒否した場合にはすぐに「婚姻費用分担調停」を申し立ててください。
調停が不成立になった場合には審判に自動的に移行し、裁判官によって婚姻費用の金額が決められます。審判の結果に従わないときには、裁判所から「履行勧告」や「履行命令」が出され、最終的に給与や預貯金などの財産を差し押さえできます。
婚姻費用の金額は、裁判所の「婚姻費用算定表」により相場が分かります。早めにチェックしておいて、別居中の生活費の不安を解消しましょう。
婚姻費用をもらい続ける方法があるのかについては、こちらの記事を参考にしてください。
「婚姻費用をもらい続ける方法は?損しないための対抗策とよくある質問に答えます!」
財産分与
離婚時には、婚姻期間中に夫婦が協力して形成した「共有財産」を基本1/2ずつ分ける、財産分与が行われます。どちらの名義になっているかにかかわらず、一方が専業主婦(主夫)やパート勤めなど収入が低かったとしても、半分ずつが原則です。
分与の対象となるのは婚姻期間中の共有財産で、別居した場合は別居時が基準時となります。財産分与の請求にも時効があり、離婚後2年以内に請求しなければなりません。相手の財産調査に手間取っていると、この期間を超えてしまう恐れがあるため、別居を検討している方は同居中に財産調査を行うようにしましょう。
財産分与に関する弁護士費用については、こちらの記事を参考にしてください。
「財産分与に関する弁護士費用|内訳別相場や変動する要素、安くする秘訣を解説」
子どもの養育費
夫婦の間に未成熟の子どもがいる場合、親権を持たない側の親は子どもにかかる費用を親権者に毎月支払うのが原則です。具体的な養育費の金額は、夫婦の年収をもとに子どもの人数や年齢によって算出できます(養育費算定表)。
養育費の支払い時期は、子供が成人になるまでが原則ですが、夫婦の合意があれば大学を卒業するまでなどとすることができます。また臨時費用として大学入学や留学、習い事の費用や学用品費などを請求できる場合も。あらかじめ条件を決めておくか、その都度相手と協議して決めていく方法もあります。
養育費を途中で増額できるかにつては、こちらの記事を参考にしましょう。
「養育費、途中で増額できる?請求できる要件と手続き方法、増額請求を成功させるポイントとは」
専門家による判断が必要
相手の行為が悪意の遺棄に該当するかどうかは、きわめて専門的な法律の知識が必要です。また事前に確実に離婚できるか見通しを立てるのが難しいケースも。そのため離婚問題に詳しい弁護士に相談し、具体的なアドバイスを受けたり、相手との交渉を任せることがポイントになります。
場合によっては悪意の遺棄だけでなく、他の離婚原因の主張を併せて行うことを検討する必要があるかもしれません。また裁判に進む前に相手との交渉で離婚問題や慰謝料請求について合意できた方が、スムーズに離婚できるというメリットも。
その点弁護士なら、個々の具体的な事情を踏まえて確実に離婚できる方法を模索してくれるでしょう。さらに調停や裁判に進んだときでも、あなたと一緒もしくは代理人として裁判所に出廷してくれます。精神的負担が軽減されるだけでなく、経済的・時間的メリットを得られるはずです。
まとめ
法定離婚事由の一つ「悪意の遺棄」とは、夫婦間の同居・協力・扶助義務を正当な理由なく行わない行為のことで、そこに婚姻関係を破綻させる意思があったり破綻しても構わないという意思がある場合に認められます。理由もなく家出を繰り返す、健康なのに働かない、収入があるのに生活費を出してくれないのがその一例です。
それに対して、相手のDVから逃れるための別居や、相手が不倫相手と暮らすために勝手に家を出た場合は、悪意の遺棄に当たりません。離婚裁判で悪意の遺棄が認められたり、離婚慰謝料を請求するには、悪意の遺棄を客観的に証明する証拠が必要です。
悪意の遺棄に該当するかどうかの判断は難しく、離婚できる見通しを立てにくという特徴があります。確実にしかもスムーズに離婚するには、離婚問題に詳しい弁護士に相談するのがおすすめ。悪意の遺棄で離婚できるかの可否が分かるだけでなく、実際に離婚手続きも依頼できます。まずは無料相談を利用して、親身になって力になってくれそうな弁護士を見つけてください。