- 「離婚時の財産分与にかかる弁護士費用が知りたい」
- 「なるべく弁護士費用を安くする方法はある?」
結婚してすぐの離婚以外は、夫婦の共有財産があるため離婚時の財産分与が欠かせません。そこで気になるのが弁護士に依頼したときの費用です。こちらの記事では財産分与にスポットを当てて、手続きにかかる弁護士費用の相場やその他の費用を詳しく解説。
さらに弁護士費用が変動する要素が知れるので、自分のケースでは弁護士費用が高く(低く)なるかが判断できます。一般的に弁護士費用は数十万円と高額です。少しでも費用を抑えるポイントが分かると、弁護士費用を安くできます。これから離婚をお考えの方は、弁護士費用の相場を知って、弁護士を探すときの参考にしましょう。
財産分与にかかる費用相場と支払うタイミング
こちらでは離婚時の財産分与にかかる弁護士費用の相場や支払うタイミング、平成16年までの旧報酬基準について解説していきます。実際に弁護士事務所の料金を比較するときの参考にしましょう。
内訳別費用相場
弁護士費用には依頼前の相談時に発生する相談料や依頼前に支払う着手金、事件が終わったときの報酬金や弁護士の日当、実費などがあります。こちらでは内容別の費用相場について見ていきます。
相談料
相談料は最初に弁護士に相談するときにかかる費用です。本来は1時間当たり5,000円~10,000円の費用がかかり、延長する度に30分当たり数千円と加算される仕組みです。ただ最近では多くの弁護士事務所で初回相談料を無料にしています。何件か事務所を周って対応を確認したい場合や、なるべく弁護士費用をかけたくないという方は、初回相談料無料を活用してみては?
相談前におおよその財産目録や疑問質問等をまとめておくと、相談時間を有効に使えます。「いくら程の財産を獲得できるのか?」や「これは財産分与対象の財産なのか?」など、分からないことは相談時に遠慮せず質問しましょう。
着手金
着手金は弁護士に事件(案件)を依頼した時点で発生する費用です。財産分与での着手金の相場は30万円からですが、財産の額に応じて10~20%という具合に、着手金を割合で決めている事務所もあります。支払った着手金は、たとえ交渉がまとまらなくても希望の金額が手にならなくても戻ってくることはありません。
また後で出てきますが交渉から調停へ、調停から裁判へと交渉の場が移行するごとに着手金がかかる可能性も。弁護士事務所によって料金体系は様々で、着手金の後払いに対応している事務所もあります。相談時は着手金の金額や支払うタイミングなど、費用については詳細に確認するようにしましょう。
報酬金
報酬金は弁護士が動いた結果、事件が成功したときに支払う費用です。財産分与では得られた経済的利益の金額に応じて報酬額が決められることがほとんど。獲得した経済的利益の10~20%の報酬を設定しているところが多く、得られた金額によって次のように決めている事務所もあります。
- 300万円以下…15%
- 300万円~3000万円…10%+α
- 3000万円~3億円…6%+α
報酬金は依頼した問題が解決したときに弁護士に支払う費用ですが、どのような結果を「成功」とするか事前にすり合わせしないとトラブルの元に。報酬金の計算方法や成功の定義については、依頼前に弁護士にしっかり確認することをおすすめします。
日当
日当は弁護士が裁判所に出廷したときや、出張が必要な場合に請求される費用です。費用の相場は1日当たり3万円~5万円前後。弁護士事務所から遠い裁判所に行く場合は弁護士が半日~1日その事件に拘束されてしまい、事務所で他の仕事ができなくなるので、そのための費用と考えましょう。
実費
実費は実際にかかった経費です。具体的には次のような費用を指します。
- 調停・訴訟申し立て手数料
- 収入印紙代
- 書類作成費用
- 弁護士の交通費や宿泊費
財産分与だけでなく養育費や年金分割、慰謝料なども同時に依頼すると、その分実費がかさみます。概算でどのくらいの実費がかかるのかも、あらかじめ確認すると安心です。
平成16年以前の旧報酬基準
現、弁護士に支払う費用は事務所ごとに自由に設定できますが、平成16年以前までは日本弁護士連合会で決めた報酬基準に基づいて弁護士報酬が決められていました。今でもこの報酬基準をベースに料金を決めている事務所もあるため、参考程度に覚えておきましょう。
日本弁護士連合会の旧報酬基準では、一般法律相談料は30分ごとに5,000円~25,000円の間で決めるようになっています。そして財産分与訴訟での着手金と報酬金は民事事件の訴訟事件と同様、経済的利益の金額によって次のように設定されています。
経済的利益の金額 | 着手金(最低額10万円) | 報酬金 |
---|---|---|
300万円以下 | 8% | 16% |
300万円~3000万円以下 | 5%+9万円 | 10%+18万円 |
3000万円~3億円以下 | 3%+69万円 | 6%+138万円 |
3億円~ | 2%+369万円 | 4%+738万円 |
裁判外の和解交渉や調停の場合も上記内容に準じますが、それぞれの額を2/3まで減額することが可能です。交渉から調停へ、交渉または調停から訴訟へと進む場合の着手金は、上記金額または(旧)日本弁護士連合会報酬等基準の「手形・小切手訴訟事件」の1/2としています。
費用ごとの支払うタイミング
弁護士費用は費用の種類によって支払うタイミングが異なる場合があります。一般的に支払うタイミングは以下の通りです。
- 相談料…相談後
- 着手金…依頼時
- 報酬金…事件終了後
- 日当・実費…事件終了後またはその都度
複数の調停や訴訟を提起している場合は、着手金や報酬金の支払いがそれぞれで発生します。いつどのような費用がいくらかかるのか、あらかじめ弁護士に確認するとお金の準備に慌てずに済みます。
一般的な離婚時の弁護士費用は、こちらの記事を参考にしてください。
「離婚時の弁護士費用を徹底解剖!費用をおさえるコツや注意点を紹介」
弁護士費用が変動する要素
財産分与の弁護士費用は、次に紹介する様々な要素によって変動します。自分のケースに当てはまるかを確認しましょう。
離婚の方法
離婚の方法によって弁護士費用は変わります。というのも離婚の方法に応じて、かかる手間や時間が変わってくるためです。離婚方法には、話し合いで決める協議離婚、裁判所に調停を起こして意見をすり合わせる調停離婚、訴訟を起こして裁判官に判断してもらう裁判離婚の3種類があります。段階が進むにつれ準備する書類や資料が必要になり、何度も裁判所に出廷するなどの手間もかかります。
こちらは単に調停や訴訟を依頼したときにかかる弁護士費用です。
離婚の方法 | 着手金 | 報酬金 |
---|---|---|
協議離婚 | 30万円~ | 獲得金額の10~20% |
調停離婚 | 40万円~ | 獲得金額の10~20% |
裁判離婚 | 50万円~ | 獲得金額の10~20% |
協議離婚できないときは調停へ、調停が不調に終わると裁判へと進んでいきます。それぞれで着手金が必要になりますが、上記金額の半額程度で抑えられる場合も。詳しくは相談時に弁護士にお問い合わせください。
離婚の種類ごとの手続きの流れや条件、期間についてはこちらの記事を参考にしましょう。
「離婚前・離婚後の手続きの流れを解説!離婚の条件や種類別の期間、注意点とは」
事務所の料金体系
弁護士事務所の料金体系によっても、費用の相場が変動します。現在ではそれぞれの事務所で自由に価格や料金体系を決められるためです。報酬金を固定で設定しているところもあれば、経済的利益の額に応じてパーセンテージで設定している事務所もあります。
得られる財産が少ない場合はパーセンテージで設定している事務所の方が安く済みますが、数千万円もの財産が得られるようなときは、固定料金の方が安く依頼できるでしょう。実際に弁護士に依頼するときは、料金体系やシステムをしっかり確認して、弁護士費用の見積もりを出してもらうことをおすすめします。
財産の金額
財産の金額が高くなるに従って弁護士費用も上がる可能性があります。上で説明した通り、財産分与事件での報酬金はパーセンテージで設定している事務所が多いためです。着手金なども含めた弁護士費用をトータルで見ると、経済的利益の20~30%前後が弁護士費用になると考えた方がいいでしょう。
財産隠しが疑われる
相手に財産隠しが疑われると弁護士費用が上がりがちです。すでに相手の財産のほとんどを把握している場合に比べて、財産の調査が必要になるためです。財産隠しは実に様々な手法で行われます。隠し口座に現金を移しているようなケースは比較的調査しやすいですが、現金を自宅や他の場所に隠していたり、複数の電子マネーに分散させるような手を使われると調査も難しくなります。
また調査の結果、まとまった財産があると判明したときは、「仮差押え」という手段がとれます。仮差押えとは裁判所に申し立てて、銀行口座を凍結したり不動産の登記変更をさせないようにする手法です。共有財産を勝手に処分させないために有効な手段ですが、裁判所に申し立てる手数料や実費などが余分にかかることを覚えておきましょう。
財産分与の弁護士費用を抑える秘訣
財産分与の弁護士費用の相場や変動する要素が分かったところで、なるべく弁護士費用を安くする秘訣をお教えします。財産分与で得られたお金は、離婚後の生活の原資になります。なるべく支出をおさえて手元に残るお金をキープしましょう。
相談料・着手金無料の事務所を選ぶ
相談料や着手金無料の弁護士事務所を選ぶと費用を抑えられます。相談料無料のところは随分増えているので、事務所の雰囲気や弁護士との相性を見る上でも積極的に活用しましょう。相談料だけでなく着手金が無料の事務所もあります。ただ着手金無料の弁護士事務所の場合、報酬金や日当が相場よりも高く設定されている可能性が。
着手金無料で顧客の目を引き、着手金以外のところでしっかりと利益を確保しようとしているという訳です。もちろん自由に料金を設定できるため問題はありませんが、結果的に着手金ありのところよりも高い費用を支払うことになりかねません。着手金無料の事務所を選ぶときは、事前に全体でかかる金額を確認するようにしましょう。
複数の事務所の料金を比較
複数の弁護士事務所の費用を比較すると相場が分かり、結果的に費用を抑えられます。弁護士費用は事務所によって料金体系や設定金額がまちまちです。一つの事務所にこだわっていると、知らずに相場よりも高い費用を支払うハメに。費用の面でもそうですが、弁護士との相性や解決方法など、依頼する弁護士や事務所によって変わってきます。
時間に余裕がある場合は2~3の事務所に相談して、弁護士費用やその他の対応を比較しましょう。離婚時の財産分与は今後の人生を左右しかねない問題です。また弁護士費用は決して安い出費ではありません。自分の目で見て比較して、納得できる弁護士に依頼することをおすすめします。
なるべく早めに弁護士に相談する
なるべく早い段階で弁護士に相談するのも、費用を抑える秘訣です。当人同士の話し合いがこじれてから弁護士に依頼したり調停から裁判に進むタイミングで弁護士を付けると、事情を把握するのに時間がかかるだけでなく、早期の決着が難しくなります。結果的に解決まで長引いてしまうとそれだけ費用が高くなることにつながります。
なるべくなら相手に離婚を切り出す前に弁護士に相談するのがおすすめ。相手の財産を把握する方法や離婚の切り出し方などのアドバイスが受けられれば、スムーズに離婚へと進めるはずです。相手との交渉が難航しそうなときは、弁護士に交渉を任せるのも無駄に交渉を長引かせない秘訣です。
別居前に相手の財産を調査する
離婚を想定した別居に入る前に相手の財産を調査すると、財産分与にかかる弁護士費用を抑えられます。相手が故意に財産を隠す前に財産の存在に気が付ければ、財産を調査する手間が省けます。また財産隠しを想定した対抗策もスムーズに取ることができるので、一石二鳥です。
まず持っているであろう財産を全てリストアップし、それぞれの財産に関する書類を全てコピーしておきましょう。預貯金なら通帳のコピーや源泉徴収票、証券会社からのDMなどです。とくに自宅に届く郵便物から財産の存在が明らかになることがあるので、郵便物は同居中に欠かさずチェックしましょう。
離婚問題に詳しい弁護士に依頼
離婚問題に詳しい弁護士に依頼するのも、弁護士費用を安くできるポイントです。離婚問題に詳しい弁護士だと離婚調停や離婚裁判を進めるコツがわかるということももちろんですが、離婚問題の実績な豊富な事務所は一般的に利用しやすい料金体系にしていることが多いからです。
離婚問題に力を入れている弁護士事務所ほど、離婚問題で悩んでいる人の力になりたいと考えています。多くの人に利用してもらうには、依頼しやすい料金にするのが鉄則。利用しやすい料金にすると多くの依頼があり、それがまた事務所の実績になるという図式です。離婚問題に詳しく実績のある弁護士事務所をいくつか選び、その中から料金面などで選ぶといいでしょう。
離婚時に依頼する弁護士の選び方が分からない!という場合は、こちらの記事を参考にしてください。
「離婚時に依頼したい弁護士の選び方|相談前・相談時のポイントと費用に関する注意点を解説」
その他財産分与に関する費用相場
離婚時の財産分与では、次のような弁護士費用やその他の費用がかかるケースがあります。
離婚後の財産分与にかかる弁護士費用
離婚後の財産分与にかかる弁護士費用は、一般的に調停から申し立てて合意に至らない場合は訴訟へと進みます。調停からの依頼だと着手金が30万円からで報酬金は経済的利益の10~20%、訴訟へと進むとさらに費用がかかります。財産分与の請求には時効があり、離婚後2年経過すると請求できないので注意しましょう。
何らかの事情で急いで離婚する必要があり財産分与していなかったという方は、なるべく早めに請求することをおすすめします。ただし財産分与する側は、離婚が成立した時点で離婚に関するすべての問題が解決したと思っているので、離婚後に財産分与を請求しても応じない可能性が高いです。またすでに財産を処分していたり連絡が取れなくなっていると、余計に手間や費用がかかります。
強制執行に必要な弁護士費用
財産分与の強制執行を行う場合の弁護士費用は、着手金15万円プラス報酬金が経済的利益の5~10%ほどかかります。財産分与の強制執行は、離婚裁判の手続き内や公正証書で定めた内容に相手が従わず払わなかったときに行われます。強制執行は裁判所に申し立てて、財産の種類に応じた手続きが必要です。
離婚協議書作成費用
離婚協議書の作成のみを弁護士に依頼する場合は、1件当たり10万円前後が相場です。夫婦間の話し合いのみで離婚の条件がスムーズに決まった場合は、離婚協議書の作成だけを弁護士に依頼するという方法もあります。ただし協議離婚全般を依頼した場合、離婚協議書の作成や公正証書の作成(実費を除く)は費用に含めている事務所が多いのが一般的です。
弁護士照会にかかる費用
弁護士照会では弁護士会に対する手数料や切手代など、1件当たり8千円~1万円ほどの実費がかかります。弁護士照会とは弁護士が訴訟や裁判所の手続きに必要な証拠や資料を収集するための調査制度で、弁護士法第23条に基づいて行われます。もちろん財産分与に必要な相手の財産を調査する場合にも、弁護士照会は有用です。
具体的には相手の財産調査に関して、次のようなことが調べられます。
- 勤務先からの給与額や現住所
- 銀行から預金残高の情報
- 証券会社から保有している株式の情報
- 保険会社から加入している生命保険の情報
調査嘱託にかかる費用
調査嘱託にかかる費用は、基本的に郵便切手代などの実費のみです。調査嘱託とは裁判所に申し立てることで、財産など様々な情報を開示させる制度です。例えば相手が自分名義の預貯金や退職金の金額を明かさないときなど、裁判所が直接銀行や勤務先に必要な調査の回答を求める手続きを取ります。
もっとも調査嘱託の手続きをするのは、財産分与を弁護士に依頼した流れの一環としてなので、弁護士費用や裁判所に財産分与を申し立てたときの費用は別でかかります。
財産分与にかかる税金
財産分与によって得た財産や分与する財産に税金がかかる場合があります。財産分与でかかる可能性のある税金の種類と、その内訳はこちらです。
税金の種類 | 詳細 |
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贈与税 | 財産分与で手にした財産には基本的に贈与税はかからない 婚姻期間が短いにもかかわらず、高額な財産を分与されると贈与と認定され贈与税がかかる |
譲渡所得税 | 不動産・自動車・船舶・宝飾品・書画骨董・ゴルフ会員権などの財産を分与する側に課税されることがある 金銭は対象外で、分与時点の時価が取得したときよりも下がっていると課税されない |
不動産取得税 | 財産分与として不動産を取得した場合は、分与された側に不動産取得税がかかる |
税金がかかる可能性のある財産を分与する・される場合は、納税の義務があることを覚えておきましょう。
名義変更・登記に必要な費用
分与する財産に名義変更や登記が必要な場合は、そのための費用も必要です。こちらは不動産以外の名義変更が必要な財産ごとの手続きにかかる費用です。
財産の種類 | 名義変更費用の相場 |
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自家用車 | 4,000円~5,000円程度 |
船舶 | 名義の書き換え:1万円前後 登録変更:8,000円~ |
ゴルフ会員権 | 10万円~(ゴルフ場によって異なる) |
不動産の名義変更・登記の場合、自分で手続きすることは可能ですが、作成内容に間違いがあると修正が必要になるため、司法書士にお願いするのが賢明です。こちらは不動産を分与されたときにかかる費用の一覧です。
費用内訳 | 費用の相場 |
---|---|
司法書士報酬 | 5万円~8万円 |
登録免許税(財産分与の場合) | 不動産評価額×2% |
実費(印鑑証明・住民票・評価証明書・切手代など) | 2,000円~ |
登録免許税は名義変更の理由によって税率が異なります。評価額が2000万円の不動産の場合だと40万円の登録免許税が必要になるため、分与時の話し合いの中で注意が必要です。また遠方で手続きが必要なケースでは司法書士の日当や交通費が加算されることがあります。
まとめ
財産分与にかかる弁護士費用の相場は、着手金が30万円から報酬金は得られた経済的利益の10~20%が相場です。費用を少しでも安く抑えるには、相談料や着手金無料の事務所に依頼したり、複数の事務所の料金を比較するのがポイント。またなるべく早い段階で、離婚問題の実績が豊富な事務所に依頼するのも有効です。
弁護士費用は離婚の方法や事務所の料金体系、財産の金額で変わってきます。財産隠しが疑われると調査に費用が余分にかかるので、できる範囲で相手の財産を把握するようにしましょう。財産の調査ができなくても弁護士に依頼すれば、弁護士照会や調査嘱託によって分かる場合があります。財産分与にかかる弁護士費用やその他の費用について知って、後悔しない財産分与を目指して下さい。