DVから身を守る「接近禁止命令」を出すには?手続き方法・注意点・離婚の方法を詳しく解説

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  • 「DV夫と離婚する前に、接近禁止命令を出したい…」
  • 「接近禁止命令の手続き方法は?」

暴力をふるう配偶者から身を守る方法として有効な手段の一つに「接近禁止命令」があります。では接近禁止命令はどのようなときに出され、どのような行為を阻止できるのでしょうか。こちらではDVから身を守るために有効な、接近禁止命令について詳しく解説していきます。

今まさに夫からの暴力で苦しんでいる方は、自分自身や子どもの身の安全を確保する必要があります。そのためにも接近禁止命令の手続きを行っていきましょう。接近禁止命令を夫に出した後の離婚方法についても解説していくので、今後どのような手順で離婚したらいいかの参考にしてください。

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接近禁止命令とは

ではまず、「接近禁止命令」とはどのような制度なのかについてから解説してきます。そもそも接近禁止命令は、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」いわゆる「配偶者暴力防止法(DV防止法)」という法律に基づく制度です。2001年4月に制定され、同年10月から施行されました。

配偶者やパートナーからの暴力の防止、被害者の保護・支援を目的とした法律で、保護命令制度の制定や相談できる公的機関などの仕組みを設けているのが特徴となっています。

保護命令の一種

接近禁止命令は、DV防止法に基づく保護命令の一種です。接近禁止命令とは具体的に、加害者側の配偶者が、申し立てた側の身辺の付きまといや住まい周辺、勤務先周辺の徘徊を禁止する命令のこと。裁判所への申立てにより、裁判所から上記のような命令が出されます。保護命令には接近禁止命令を含む以下の5つの種類があります。

接近禁止命令 申し立てた人の身辺の付きまとい、住まい周辺や勤務先周辺の徘徊を禁止する命令
電話等禁止命令 申し立てた人への面会要求や緊急性のないFAXの送信、無言電話や行動の監視を告げる行為などを禁止する命令
子への接近禁止命令 申し立てた人の子どもの連れ去り、身辺の付きまとい、学校周辺など子どもがいる場所の徘徊を禁止する命令
親族への接近禁止命令 申し立てた人の親族に対する身辺の付きまとい、住まい周辺や勤務先周辺の徘徊を禁止する命令

親族等が15歳以上の場合は本人の同意が必要、15歳未満の場合は法定代理人の同意が必要

退去命令 申立時点で生活の拠点を同じにしている場合は、相手に住まいから2カ月間退去し、付近を徘徊しないように命じる

なお電話等禁止命令・子への接近禁止命令・親族への接近禁止命令は、申立て本人に対する接近禁止命令が出ている場合にのみ発令されます。子どもや親族への接近禁止命令を出してもらいたいときには、まずは自身の手続きから始めましょう。

直近の発令件数

令和2年における接近禁止命令の発令件数は以下の通りです。

内訳 件数(割合)
接近禁止命令のみ 383件(26.1%)
接近禁止命令と子への接近禁止命令及び親族への接近禁止命令が同時に発令 306件(20.9%)
接近禁止命令と子への接近禁止命令の発令 592件(40.4%)
接近禁止命令と親族等への接近禁止命令の発令 184件(12.6%)

参考:配偶者暴力等に関する保護命令事件の処理状況等の推移|男女共同参画局

申立人のみの接近禁止命令は26.1%にとどまりますが、申立人と子への接近禁止命令の発令は40.4%と最多です。全体としての件数は少ないものの、やはり守るべき子どもがいる場合には、申立人と子どもへの接近禁止命令を出すケースが多いようです。

接近禁止命令が出る条件

では接近禁止命令は、どのような条件があると出せるのでしょうか。上で紹介したDV防止法第10条によると、

  1. 配偶者からの身体に対する暴力
  2. または生命、身体、自由、名誉、財産等に対して害を加える旨を告知して脅迫を受けた者に限る

としています。身体的な暴力だけでなく、自由や名誉、財産等に対して危害を加えると脅迫を受けた場合も、接近禁止命令の対象となるという訳です。

接近禁止命令の申立てが可能な範囲

接近禁止命令に申し立てが可能な範囲は、DV防止法には「配偶者」とありますが、結婚している人の他に次のような相手にも申立てが可能です。

  • 離婚した元配偶者
  • 事実婚の相手
  • 内縁関係の相手
  • 同棲している恋人

接近禁止命令の申立てができるのは、現在婚姻関係にある配偶者や離婚した元配偶者、事実婚や内縁関係の相手です。元配偶者への申立てができるのは、結婚していた時期にDVを受けていたケースに限られます。男女問わず発令することが可能ですが、次のような相手を対象とした申し立てはできません。

  • 職場の同僚
  • 友人
  • 見ず知らずのストーカー
  • 同棲していない恋人

DV方が制定された当時、恋人間の暴力は適用対象外でしたが、法改正により平成26年1月からは、「生活の本拠を共にする交際相手」からの暴力も適用範囲となりました。これによって恋人間の暴力であっても、共に暮らしている場合は保護命令を出せるようになりました。

申立てが可能なケース

具体的に申立が可能なのは、次のような行為があったときです。

身体的暴力 殴る、ける、髪を引っ張るなど直接的な身体への攻撃
精神的暴力 暴言、脅迫、侮辱、無視など精神的な苦痛を与える行為
経済的暴力 生活費を渡さない、仕事をするのを制限する、経済的自立を妨げる行為
ストーカー行為 待ち伏せ、付きまとい、SNSでの誹謗中傷など執拗な行為

上記以外にも、子どもに対する虐待や性的暴力に関しても申立てが可能です。接近禁止命令が発令されるのは、現在もしくは近い時期に上記のような行為が行われた事実があり、保護すべき緊急な危険性があるケース。該当する状況にある方は、早急に申立を検討しましょう。

精神的DV・モラハラも新たな対象に

接近禁止命令は配偶者からの暴力等によって、生命や身体に危険が及ぶことを避ける目的で発令されるため、改正以前のDV防止法では、相手からのモラハラなど精神的DVのみでは申し立てを行えませんでした。しかし2024年4月に施行された改正DV防止法では、精神的なDVに対しても接近禁止命令の対象としています。

接近禁止命令の発令には精神的DVの加害行為自体の立証をしなければならず、精神的DVにより「生命や身体に危険が及ぶ恐れが大きいとき」ということを証明する証拠が必要です。具体的には配偶者の精神的DVによって次のような精神的症状が出て、医療機関への通院加療を要すると認められたときです。

  • うつ病
  • 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
  • 適応障害
  • 不安障害
  • 身体化障害など

しかしながら精神的DVそのものを証明するのは困難で、親権者争いで不利にならないよう精神的不調があっても精神科等への受診を避けている人も多いのが実情です。そのため現在では、精神的DVのみでの接近禁止命令の発令は難しいと言わざるを得ません。

うつ病で離婚するのに慰謝料が発生するかについては、こちらの記事を参考にしてください。

「うつ病で離婚するときに慰謝料は発生する?状況別の相場や請求方法、条件を解説」

代理の申立ては原則不可

接近禁止命令の申立てができるのは、被害者本人に限られ、親族や友人などが申立てることは原則としてできません。ただしDVを受けたり危害を加えられる恐れがあるときには、弁護士に依頼した場合は代理による申立てが可能になります。

相手が違反したときの罰則について

接近禁止命令が発令されたにもかかわらず、相手がそれに従わないときには、「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」という刑事罰に処せられる可能性があります(DV防止法第29条)。

保護命令が発令されると、裁判所書記官から警察や配偶者暴力相談支援センターに対し、保護命令が発令されたことやその内容について通知されます(DV防止法第15条)。保護命令の違反があった場合には、警察や配偶者暴力相談支援センターに通報し、速やかに対応を依頼してください。それと同時に一層の身の安全をはかるようにしましょう。

申し立ての有効期間

接近禁止命令の有効期限は、「命令の効力が生じた日から起算して1年間」です。2024年4月に施行された改正法以前の有効期限は6カ月間でしたが、それでは短いとして1年に伸長されました。申立から効力が生じるまでには1週間ほどの期間がかかります。

その期間は申立人身辺の付きまといや申立人の住居、勤務先その他通常所在する場所の付近の徘徊を禁止する命令が出されます。そのためこの期間を利用して、相手が知らない場所に引っ越すなどの対策を取りましょう。

延長の手続きが可能

上で紹介した有効期限が切れる前に、引き続き保護が必要と判断された場合は、延長の手続きが可能です。延長といっても以前の申立てが引き継がれるわけではないので、再度裁判所に申し立てを行う必要があります。延長が必要となるケースは以下のような場合です。

  • 加害者の態度が改まっておらず、以前として嫌がらせや脅迫などの行為が続いている
  • 新たに暴力行為があったり、期間中に再び暴力行為を受けた
  • 加害者が精神的に不安定で、再び被害に遭う恐れがある

こちらも申立てから効力が生じるまでに1週間ほどの期間がかかるので、その期間を考慮して早めに手続きを行いましょう。

接近禁止命令の申立て方法・手順

では実際に、接近禁止命令を発令するための申立て方法について解説してきます。

1-1.警察や配偶者暴力相談支援センターへの相談

接近禁止命令を含む保護命令を出してもらうには、先に警察や配偶者暴力相談支援センターに相談に行く必要があります。電話等で相談しただけでは足りず、援助又は保護を求める必要があります。相談時には「援助や保護を希望します」と伝えましょう。

なおお住いの地域によっては、配偶者暴力相談支援センターが福祉事務所や女性センター、男女共同参画センターなどの中に併設されていることがあります。まずは市区町村役場にお問い合わせください。

警察に相談する場合には局番なしの「#9110」に電話すると、最寄りの警察署につながります。これらの職員に対して、夫や元配偶者からDVの被害にあっていることを相談しましょう。

1-2.相談に行っていない場合は公証人の認証を受ける

警察や配偶者暴力相談支援センターに事前に相談に行くのが前提ですが、相談に行っていない・行けない場合は公証人役場に「公証人面前宣誓供述書」を提出して公証人の認証を受ければ、保護命令の申立てが可能です。公証人面前宣誓供述書には、配偶者から暴力を受けたなどの状況を詳しく記載して公証人役場に提出ます。

そして記載内容が真実であると公証人の前で宣誓し、署名捺印するという流れです。作成するにあたり1万円程度の費用がかかり手続きも複雑なため、どうしても相談に行けないという方以外は、警察や配偶者暴力相談支援センターに相談に行くことをおすすめします。

2.裁判所に申し立てる

警察や配偶者暴力相談支援センターに相談に行った後は、裁判所に保護命令の申立てをします。

申し立てに必要なもの

申立時には、次のようなものを裁判所に提出します。

  • 申立書2通
  • 戸籍謄本(申立人・相手方・子)
  • 住民票の写し(申立人・相手方・子 ※マイナンバーの記載がないもの)
  • 接近禁止の対象となる子の同意書2通(子への接近禁止命令の申立てをする場合で子が15歳以上の場合)
  • 接近禁止の対象となる親族等の同意書2通(親族等への接近禁止命令の申立てをする場合)
  • 親族等の戸籍謄本や住民票など申立人との関係を証明する資料(親族等への接近禁止命令の申立てをする場合)
  • 同意書の署名捺印が子、親族等のものと証明できるもの(印鑑証明・学校への提出物など)
  • 保護命令の審理に必要な証拠となるもの(写真・診断書・説明を書いた陳述書など)
  • 公証人に認証を受けた書面(警察や相談センターに相談しない場合)
  • 過去に申し立てた保護命令申立書の写し2通、すでに発令された保護命令謄本(過去に申し立てたことがある場合)

申立書は地方裁判所のHPからダウンロードもしくは、裁判所に直接行って受け取ることができます(こちらでは、東京地方裁判所のHPを案内しています)。裁判所によって書式が若干異なる場合があるので、事前に提出する裁判所の記入例を参考にしましょう。

申し立てにかかる費用

保護命令の申し立てにかかるのは、次のような費用です。(東京地方裁判所の場合)

申立手数料 収入印紙1,000円分
郵便切手 2,310円分(500円×2枚、300円×2枚、100円×4枚、50円×3枚、20円×5枚、10円×5枚、2円×5枚)

参考:ドメスティックバイオレンス(DV)(配偶者暴力等に関する保護命令申立て)|東京地方裁判所

申立書を提出する裁判所

接近禁止命令の申立書は、次のいずれかの地方裁判所に提出します。

  • 相手方の住所地を管轄する地方裁判所
  • 申立人の住所または居住地を管轄する地方裁判所
  • 配偶者からの身体に対する暴力等が行われた地を管轄する地方裁判所

申し立ては被害者本人が行う必要があり、親族や友人が代理で申し立てることができません。ただし弁護士に依頼すれば、代理で申立てが可能です。

3.口頭弁論・審尋

保護命令は原則として、口頭弁論または相手方が立ち会う審尋の期日を経ないと発令ができません。多くの第番所では、申立を受理したその日もしくは申立日に近い日に申立人と面接します。面談では今までの経緯や、どれだけひどい被害を受けていたかの内容を伝えます。

そしてその1週間~10日後に相手方の意見聴取のため、審尋期日を指定することが多いです。審尋では、暴力や脅迫の真偽について、相手から直接意見を聴取します。

口頭弁論での受け答えの内容によっても保護命令を出してもらえるか変わってくるので、相手がどれほど危険か分かりやすく説明してください。ただし身体や生命に危険があるような緊急を要する事情があるケースでは、口頭弁論や審尋を行わずに保護命令を発令させる可能性もあります。

4.接近禁止命令の発令

申立書や陳述書の内容を確認し、口頭弁論や審尋の結果から被害者を保護する必要性があり、接近禁止命令要件を満たしていると認められ場合には、裁判所から接近禁止命令が発令されます。裁判所の決定は、申立書が受理された日から1週間~10に以内に発令されるケースがほとんどです。

なお申し立てに対する裁判所の決定に不服がある場合には、即時抗告ができます。接近禁止命令が発令された後は、相手に命令書が届き、相手は申立人に近づけなくなります。違反して近づいた場合には、逮捕されることになります。

接近禁止命令を取り消す方法

状況が変化した場合には、接近禁止命令を取り消すことも可能です。接近禁止命令を取り消すには、裁判所への申し立てが必要で、接近禁止命令を発令した裁判所に所定の申立書を提出することで、取り消しができます。申立人であればいつでも取り立ての申し立てができますが、相手方が取り消しの申し立てを行うには、申立人に異議がないことや発令から3カ月を経過しているなどの条件を満たさなければなりません。

状況が十分に改善していないまま取り消してしまうと、再び同じ被害にあう可能性があります。取り消しを検討する前には専門家のアドバイスを受けるなど、慎重に手続きを進めましょう。また取り消し後も自身の安全を最優先に考え、必要な対策を取っていきましょう。

接近禁止命令に関する注意点

接近禁止命令の申し立てに関して、次のような点に注意が必要です。

DVの証拠が必須

上で説明した通り、接近禁止命令の申し立てにはDVの証拠が必要です。DVの証拠として有効なのは、次のようなものです。

  • ケガをしたときに受診した医師の診断書
  • ケガの状況や日付が分かる写真や動画のデータ
  • 暴力や暴言があったときの音声や動画のデータ
  • 脅迫や暴言の事実を示すLINEやメールの内容
  • 被害内容や経緯を書いた陳述書

ただしこれらの証拠があっても、申し立ての数か月前の被害の証拠しかないときには、将来生命や身体に危害を受ける恐れが低いとして、申し立てが却下される可能性があります。また客観的な証拠が不十分なときには、接近禁止命令が発令されないケースも。

子どもへの虐待で慰謝料請求をお考えの方は、こちらの記事を参考にしてください。

「子どもが虐待されたから慰謝料請求したい!配偶者ヘの請求方法を詳しく解説」

発令まで時間がかかる場合も

状況によっては、接近禁止命令の発令まで時間がかかる場合があります。接近禁止命令は基本的に、申立人の生命や身体に危険が及ぶ事態を避けるため優先的に処理されますが、ケガの状況がかすり傷や切り傷、軽い打ち身などの場合には判断が遅くなり、何度か裁判所に呼ばれるなどしてなかなか発令されないケースがあります。

具体的な距離が指定されている訳でない

接近禁止命令は、申立人の住まいや勤務地等の近くでの付きまといや徘徊を禁止しているものですが、具体的に「申立人の住居の○㎞以内に近づいてはならない」「○市・○町には立ち入り禁止」などということが指定されているわけではありません。そのため、自宅や勤務先付近に近づいたり徘徊することが禁止されているだけであるという点を覚えておきましょう。

役所等への手続きを忘れずに

接近禁止命令発令後に引っ越しと共に住民票を異動する場合には、役所への手続きを忘れずに。役所での住民票の転出・転入届出時に、接近禁止命令が出ていることを告げ、新住所を相手に開示しないような手続きを行いましょう。

また中には住民票や戸籍の附票を入手して新住所を突き止めようとする加害者もいるので、役場に「住民基本台帳事務における支援措置申出書」を提示して、住民票や戸籍の附票の閲覧・交付に制限をかける措置を取ってください。

偶然は違反とならない

意図せず偶然に街の中などで会ってしまった場合には、即座に接近禁止命令野違反とはなりません。ただし偶然会ったのをきっかけに付きまとわれたり声を変えられたりした場合には、接近禁止命令に違反したとみなされる可能性も。「偶然だから」などと躊躇せず、警察に相談しましょう。

相手が命令を守るとは限らない

接近禁止命令が発令された後も気を付けるべき理由として、相手が命令を守るとは限らないということを忘れずに。いくら裁判所に命令を出してもらったとしても、相手がやけになって近づいてきては身の安全を守れません。そのため、接近禁止命令が発令された後でも、次のような行動をとるように心がけてください。

  • 相手の居住エリアや行動範囲に近づかない
  • 夜間一人での外出を控える
  • 相手との共通の関係者と接触しない

接近禁止命令と離婚について

配偶者に対して接近禁止命令を出すことを検討している方のほとんどは、離婚を考えているはずです。こちらでは、接近禁止命令と離婚について詳しく解説していきます。

DVする相手と離婚する方法

配偶者のDVを理由で離婚を考えている場合、当事者同士の話し合いによる離婚、いわゆる協議離婚をするのは難しいでしょう。離婚の話をすれば相手が逆上し、余計に暴力を振るわれる可能性があるからです。またDV被害者は言いたいことが言えず、きちんとした離婚の話し合いができないケースがほとんどです。

そのためDVする相手と離婚するときには、直接相手に離婚したいと伝えることはせず、接近禁止命令を発令したうえでシェルターなどに身を隠しながられ離婚の手続きを進めるのが安全です。また弁護士に依頼して相手と交渉してもらうという方法も有効でしょう。

無視する夫と離婚をお考えの方は、こちらの記事を参考にしましょう。

「無視する夫と離婚したい!離婚するための条件や慰謝料請求について解説」

離婚調停で有利になる可能性

接近禁止命令を発令した後で離婚調停を行う場合、被害者として手厚い対応を受け、調停でも有利に働く可能性が高いです。そのため離婚調停を検討している方は、接近禁止命令が発令された後で申し立てるのがいいでしょう。

誠実に対応する必要がある

ただし調停委員は、必ずしも一方の意見のみを鵜呑みにして交渉を進めるという訳ではありません。相手側が誠実に対応したりすると、心証が揺り戻されてしまう可能性も。慎重に真実を見極めようとする場合が多いので、被害者側は事実や証拠に基づいて丁寧に説明していく必要があるでしょう。

命令を受けた側は感情的にならない

接近禁止命令を受けた側が調停に臨む態度として必要なのが、感情的な態度にならないこと。調停委員が自分の言い分を聞いてくれないからといえ、イライラしたり声を荒らげてしまうのは逆効果です。調停委員は「やっぱり危険な人物なんだ」という印象を持つだけ。

暴力を振るったのが事実なら、真摯にその事実を認めて謝罪の態度を示した方がいいでしょう。一部が間違っている場合には、ここは真実ですがここは誤解ですという説明を冷静に行うことで、少しずつ信頼を得られる場合も。どうしても感情的になってしまうという人は、第三者である弁護士に依頼して、弁護士の口から真実を話してもらうことが大切です。

離婚調停にかかる費用は、こちらの記事を参考にしてください。

「離婚調停にかかる費用とは?裁判所・弁護士費用の詳細や一括で払えないときの対処法も」

DVは離婚理由になる

調停が不調に終わった場合は、離婚裁判で離婚を求めていきます。離婚裁判で離婚が認められるためには民法第770条にある「法定離婚事由」が必要です。配偶者からのDVは、法定離婚事由の5つめ、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性が高いので、裁判所が離婚を認める可能性が高いでしょう。

DV被害を長年受けている人は「被害者となった自分にも落ち度がある」と思いがちですが、暴力は他人の生命や身体を脅かす違法行為で、振るう側が一方的に悪いこと。DVで離婚する場合でも、後ろめたい気持ちになる必要はありません。

DV夫と離婚する方法について詳しくは、こちらの記事を参考にしましょう。

「DV夫と離婚したい…早く安全に離婚するための手順・相談先・気になるポイントを徹底解説」

離婚後の居場所を知られないようにする

離婚後に接近禁止命令の申し立てをした場合、こちらの居場所を知られないようにしましょう。裁判所に接近禁止命令を申し立てると、その写しが相手方に送られることになります。何も対策をしないままだと、書類には申立人の住所が記載された状態に。相手方に今住んでいる住所を知られてしまいます。

居場所を知られないためには、相手方と同居していた当時の住所を記載する等の対策が必須です。また提出した証拠資料は相手も閲覧できるので、現住所や勤務先など居場所が特定できそうなものをマスキング(黒塗り)する等の対応を取るべきでしょう。

まとめ

接近禁止命令とは、DV防止法に基づく保護命令の一種。配偶者や同棲している恋人、事実婚の相手などが対象で、申立人の身辺の付きまといや居住地、勤務先等での徘徊を効力が生じた日から1年間禁止するものです。申し立てには最近暴力等があったことを示す証拠が必要で、場合によっては延長も可能です。

相手が違反したときには「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」といった刑事罰を科すことができます。接近禁止命令を申し立てる前に警察や配偶者暴力相談支援センターに相談に相談したうえで、援助又は保護を求めた上でその内容を申立書に記載してください。

接近禁止命令が発令された後に離婚の手続きをする場合には、離婚調停を申し立てる、弁護士に協議を依頼するといった方法が一般的。離婚裁判にもつれ込んだ場合でも、離婚が認められる可能性が高いでしょう。離婚前後にかかわらず、相手には自分の居所を知られないように十分に注意しましょう。

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