DV夫と離婚したい…早く安全に離婚するための手順・相談先・気になるポイントを徹底解説

DV夫と離婚したい…早く安全に離婚するための手順・相談先・気になるポイントを徹底解説
DV夫と離婚したい…早く安全に離婚するための手順・相談先・気になるポイントを徹底解説
  • 「DV夫と一日も早く離婚したい」
  • 「DVする配偶者と安全にしかもスピーディに離婚する方法は?」

暴力や暴言を日常的に繰り返す夫とはもうこれ以上やっていけない、と思っている方はいませんか?DVを背景には育った環境や性差別の意識などがあるため、そう簡単に改善できるものではありません。そしてDV加害者と離婚するのは容易ではないというケースも。

そこでこちらの記事ではDV夫との離婚にスポットを当てて、DVになりやすいタイプやDV夫と安全に離婚するための手順などを紹介します。たとえ夫婦間といえ、DVは許されるべきものではありません。まずはDVについての認識し直し、この辛い状況から逃れる準備をしていきましょう。

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DVとはどんな行為?DVの種類・なりやすい人

まずはDVの定義やDVの種類、DVしやすい人について見ていきます。「自分がされているのはDVなのか分からない」という方は、判断の参考にしましょう。

DVとは?

DVとは「domestic violence(ドメスティック・バイオレンス)」の略で、直訳すると「家庭内暴力」になります。一般的には夫婦間の暴力だけでなく、内縁関係や婚約関係、交際相手から振るわれる肉体的・精神的な暴力という意味でも使われています。

DVは受けた本人のケガや傷といった肉体的な影響だけでなく、精神的な影響も受けることに。また父親が母親に対して暴力をふるっている現場を目撃した子どもにも、さまざまな悪影響を及ぼします。子どもが見ている前で行われるDVは「面前DV」とも言われ、子どもへの心理的虐待に該当します。深刻な心の傷となり、子どもの心身の成長過程に大きな影響を与えてしまうことを覚えておきましょう。

4つあるDVの種類

DVには次の4つの種類があるとされています。DVの定義は「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(以下DV防止法)」で明らかにされていて、次の4つの種類に含まれる行為が該当します。

DVの種類 内容
身体的暴行 直接身体を殴る・蹴る・突き飛ばす・ものを投げつけるなどの行為
心理的攻撃
  • 人格を否定するような暴言
  • 交友関係・行き先・メール・電話の監視
  • 長期間の無視
  • 自分や他の家族に危害を加えるといった脅迫
経済的圧迫
  • 外で働くことを妨害される
  • 生活費を渡してくれない
  • 貯金を勝手に使われる
性的強要
  • 嫌がっているのに性行為を強要する
  • 避妊を拒否する
  • 見たくない性的映像を見せられる

このように、DVの内容や程度は様々です。命にかかわる深刻な身体的暴行があれば、モラハラのような精神的・心理的攻撃のことも。ここでは自分が配偶者から受けている行為が、DVに該当するか確認してください。

DVは犯罪行為

DVは法律で定義されていることが示すように、立派な犯罪行為です。とはいってもDV防止法が施行されたのは平成13年10月。このときは法律婚と事実婚の相手に対しての行為が対象でした。平成16年12月の改正で、元法律婚や元事実婚の相手にも適用となりました。

そして平成26年1月の改正で、生活の本拠を共にする(元)交際相手からの暴力も含まれるように。DV法では、警察がDVを防止、被害者を保護するための必要な援助を行うように定められています。またDV行為は、民法で定める法律上の離婚理由「法定離婚事由」にも当たります。ということは、加害者が離婚を拒んだとしても裁判で離婚が認められ、慰謝料請求も可能だということです。

参照:配偶者からの暴力防止にかかわる関連法令・制度の概要|男女共同参画局

DVの相談件数からみる実情

では実際にDVの現状はどうなっているのでしょうか。こちらでは内閣府男女共同参画局がまとめた「DVの現状について」という資料を参考に解説していきます。

こちらの資料によると、暴力のいずれの種類の行為も、女性の方が被害者経験の割合が高いということが分かります。全国の20歳以上の男女5,000人を対象としたアンケート調査によると、配偶者から暴力を受けたことがあるという被害経験の有無で女性の31.3%、男性の19.9%があったと回答。

女性の3人に1人にDVの被害経験があり、そのうち7人に1人は何度も受けているという結果に。そして約21人に1人の割合で、命の危険を感じたことがあると回答しています。では配偶者暴力相談支援センターにおける相談件数の推移を見てみましょう。

年度 平成15年 平成20年 平成25年 平成30年
相談件数(電話・来所・その他) 43,225件 68,196件 99,961件 114,481件

平成15年~右肩上がりに増加しています。平成30年のデータを見ると、相談者のうち女性の割合が98.2%、男性が1.8%と女性が圧倒的に多くなっています。次に警察における配偶者からの暴力事案等の相談等件数の推移はこちらです。

平成15年 平成20年 平成25年 平成30年
相談件数 12,568件 25,210件 49,533件 77,482件

警察への相談件数も平成15年からわずか15年の間に、6倍以上に増加しています。

参照:DVの現状等について(令和2年11月27日)|内閣府男女共同参画局

当てはまる?DV夫の特徴

夫婦の形はカップルごとに異なり、一口にDVする夫はこんな人物と定義することはできません。しかし最も身近な配偶者に暴力ふるってしまう人には、次のようないくつかの特徴が当てはまります。自分の夫が以下の特徴にいくつも当てはまる場合には、注意が必要です。

  • 感情の起伏が激しい
  • 酒癖が悪い
  • 嫉妬深い
  • 束縛が激しい
  • トラウマを抱えている(アダルトチルドレン)
  • 外では人当たりがいい
  • 社会的信用がある
  • 目上の人には腰が低い
  • 自分が正しいと思っている
  • 店員に横暴な態度を取る
  • DVをした後は一転して優しくなる・反省のそぶりを見せる
  • 妻を悪者に仕立て上げる

DV加害者になるタイプには年齢や学歴に関係なく、貧富の差も関係がありません。また外面がよく、社会的信用が高い場合も多いため、外から見分けるのは大変困難です。

DV夫との離婚が難しい理由

DV夫との離婚は難しいとよく言われます。それはどうしてなのでしょうか。加害者側・被害者側・その他の理由に分けて解説していきます。

加害者側の理由

DV加害者との離婚が難しい理由は主に二つ、DVの事実を素直に認めたがらないということと、離婚することに同意しないという理由からです。というのもDV加害者は自分がDVをしているという自覚がなく、むしろ自分は被害者だという意識を持っているため。

DV加害者の頭の中では、自分の言っていることが正しく、それに従わない相手が間違っているため怒るのは仕方がない、相手が自分を怒らせたから仕方がなく暴力が出ただけで、悪いのは被害者だという理論になっています。

さらに加害者には、配偶者は自分と一心同体、すなわち自分のものであるという意識があります。自分を愛しているのなら自分の思い通りにしてくれるはずという歪んだ思い込みがあるケースも。そのため、被害者が離婚したいと訴えても一向に離婚に応じてくれないばかりか、逃げようとすると態度をより硬化させ、状況が悪化してしまいます。

被害者側の理由

DVを受けている被害者側にも、離婚がスムーズにいかない理由があります。前提として被害者には、加害者から「暴力をふるったのはお前のせいだ」と責任を押し付けられた結果、「自分にも責任がある」と罪悪感を絶えず抱いています。

DVには周期があり、怒りの感情を蓄積させる「緊張期」→怒りの感情を暴力として被害者にぶつける「爆発期」→暴力によってストレスが発散された「ハネムーン期」を繰り返します。ハネムーン期にやさしくされると「この優しさこそ本当の姿だ」と思い込みたくなることも。このような背景から、被害者は次のような理由で離婚を躊躇する傾向にあります。

  • 相手が変わってくれると思った
  • 相手には自分が必要だと思った
  • これ以上はひどくならないと思った
  • 逆らうともっとひどいことをされると思った
  • 別れると寂しいと思った
  • 何をしても無駄だと無気力になる

その他の理由

上にあげた加害者側・被害者側の心理的理由以外にも、次のような理由から離婚を踏みとどまる人がいます。

  • 子どもに経済的な苦労をさせたくない
  • 子どもに心配をかけたくない
  • 1人で働きながら子供を育てる自信がない
  • 周囲に頼る親類や知人がいない
  • 世間体が気になる

とくに夫に経済的に依存している場合は、なかなか離婚に進めない状況があります。また子どもへの経済的・心理的負担を気にして、離婚すべきではないと考える人も。

DV夫と安全に離婚するための手順

では、こちらの記事を読んでいる人が一番知りたいであろう、DV夫と安全に離婚するための手順を詳しく解説していきます。

DVを受けていることを自覚する

まずは被害者であるあなたが、「自分が受けているのはDVなのだ」と自覚することが重要です。DVは近い関係である夫婦(カップル)間で行われるため、加害者も被害者もDVだと気づいていないケースが多くあります。「本当の夫は優しい」「夫がキレるのは私のせい」と、被害者がDV夫に洗脳されてしまっている場合も。

一方でDV夫は暴力で被害者をコントロールすることで依存し、被害者も「夫には自分が必要なんだ」という「共依存関係」に陥っているケースもあるため、まずはDVを受けている現状が異常だと認識してください。そしてDVから抜け出すためには、自分が夫から受けているのはDVだと自覚することが最も大切になります。

第三者に相談する

DVは閉じた家庭の中で起こるため、自分が受けているのがDVだと客観的に分からなくなります。そのため、第三者に相談することも有効です。またスムーズに離婚するためにも、次のようなところに相談するのは、あなたにとって大きな助けになるでしょう。

配偶者暴力相談支援センター

DVを受けていることを相談すると心配をかけるのではという思いから、身近な人に相談しにくい側面があります。相談できる人が身近にいない方は、国が運営している「配偶者暴力相談支援センター」に相談することをおすすめします。こちらの施設は全国308カ所(うち市町村設置173カ所)あります(令和4年9月1日現在)。

配偶者暴力相談支援センターでは、主に次のような支援を行っています。

  • DVに関する相談
  • 相談機関の紹介
  • カウンセリング
  • 緊急時の安全確保・一時保護
  • 自立生活促進のための情報提供や援助
  • 保護命令制度の利用についての情報提供や援助
  • 保護施設(シェルター)利用についての情報提供や援助

参照:都道府県及び市町村における配偶者暴力相談支援センター数|男女共同参画局

その他の相談窓口

配偶者暴力相談支援センターの他にも、次のような公的機関でDV相談を受け付けています。

24時間対応している窓口もあるため、相談したいと思ったときにす相談が可能。まずは誰かに相談することで、離婚への一歩を踏み出しましょう。

警察

地元の警察や、都道府県警が設置している犯罪被害者支援室などでもDVの相談ができます。直接出向く場合は、最寄りの警察署の「生活安全課」に相談するといいでしょう。とくに暴力などを受けたという場合は、緊急性が高いので迷わず警察に連絡してください。

直接警察署に行くのは…と抵抗がある方は、「けいさつ総合相談センター」に相談できます(問い合わせ先:#9110)。自動的に最寄りのセンターにつながるようになっていて、24時間受付しているので安心です。

弁護士事務所

気持ちが離婚に向かっているときは、なるべく早い段階で弁護士事務所に相談に行きましょう。裁判で離婚が認められるためには、暴力の頻度や程度がある程度重くないといけませんが、その判断も弁護士がしてくれます。直接夫と顔を合わせて離婚の話し合いができないという方でも、弁護士が代理人として交渉することが可能です。

また夫が離婚を拒否している場合、調停や裁判の手続きを任せられます。さらに弁護士を通して、配偶者暴力相談支援センターを紹介してもらったり、警察への届出もアドバイスもらえることも。初回の相談を無料で受け付けている弁護士事務所もあるので、積極的に利用してみては?

弁護士に支払うお金がないという方は、国が設置している司法支援センター「法テラス」を利用する方法があります。条件を満たすと、弁護士への相談が3回まで無料になったり、弁護士費用を立て替えてもらったりすることが可能になります。

離婚時に依頼したい弁護士の選び方については、こちらの記事を参考にしましょう。

「離婚時に依頼したい弁護士の選び方|相談前・相談時のポイントと費用に関する注意点を解説」

DVの証拠を集める

DV夫とスムーズに離婚するためには、DVの証拠を集めるのが必須です。相手が離婚に応じない場合、最終的には離婚裁判となる訳ですが、裁判ではDV行為が法定離婚事由の一つである「婚姻関係を継続し難い重大な事由」に該当しないと、離婚が認められないため。

裁判で認められるためには、客観的にDV行為が日常的にあったことを証明する必要があります。そのためにもDVの証拠の確保は欠かせません。別居してしまうと証拠が取りにくくなるため、なるべく同居している間に証拠を確保するようにしましょう。DVの証拠となるのは、次のようなものです。

病院の診断書

身体的暴行を受けてケガをしたときは、なるべく早めに病院を受診して診断書を取りましょう。さらに治療を受けてケガの程度を病院のカルテに残してもらうのも有効。病院を受診するときには、次のようなことを病院側に伝えるようにしましょう。

  • 原因がDVであること
  • 目に見えない痛みや小さな傷も申告する
  • 要治療期間を記載して欲しいということ

一番大切なのは、原因がDVだということを申告すること。患者から申告されれば診断書に記載してもらえます。また目に見えない箇所の痛みや、ほんの小さな傷でも隠さずに申告してください。身体的暴行以外に暴言やモラハラが原因で、不眠やパニック障害、うつ症状が出た場合でも精神科や心療内科を受診して診断書を取るようにしましょう。

ケガや壊れた物の写真

ケガをした部位や投げつけられて壊れた物の写真も、DVを証明する証拠となります。身体に受けたケガや傷を写真に収めるときには、ケガの部分を写したものと、自分の顔と傷が一緒に写ったものも撮影してください。顔と一緒に撮った写真は、誰が受けた被害か明らかにするために必要です。

ただし、これらの写真は単独ではDVの証拠とならないことも。医師の診断書やこれから紹介する日記やボイスレコーダーの音声など、他の証拠と組み合わせて裁判所に提出するようにしてください。

夫からのメール・電話の記録

夫からのメールや電話の記録も証拠となります。「また殴られたいのか」というメールや、「もう暴力は振るわないから」という謝罪の内容もDVを証明する証拠です。また電話越しに怒鳴られたり、暴言を吐かれたりした電話の音声も証拠になり得ます。これらメールや通話の録音データは、絶対に消さずに持っておくようにしましょう。

毎日記した日記

毎日の出来事を記した日記やメモも、DVの証拠として作成することをおすすめします。単独でDVの証拠となる可能性は低いものの、他の証拠を補う役割があります。DV被害を受けた日だけでなく、何もない日のことも記録しておくと、DVの頻度や継続性が分かります。

文字で起こすときには、「いつ・誰が・どこで・だれに・何をした」という、5つのポイントを押さえるようにしましょう。また言われた内容はなるべく詳細に記し、そのときの夫と自分の状態も具体的に書くといいでしょう。

ボイスレコーダーの録音

暴力を受けていたり物を壊したりというDVの様子、怒鳴り声や暴言の内容をボイスレコーダーで録音することをおすすめします。写真や日記だけだと、「捏造した」と反論される可能性が高いため。相手の音声が入っているデータが証拠として提出できれば、総合的にDVの証拠として認められやすくなります。

最近ではネット通販でも手軽にボイスレコーダーが購入できます。スマホの録音機能を使うという方法もありますが、ペンやキーホルダーなどの日用品にカモフラージュできる商品もたくさんあります。事前に録音状態にしてリビングなどにセットしておけば、相手も録音されていることに気づきにくいでしょう。

第三者に相談したという記録

自分の親や友人に、夫のDVについて相談したメールは証拠になります。こちら側のデータを夫に消去されてしまう可能性があるため、メールを送った相手にも内容を保存しておいてもらえるよう依頼しましょう。

また前出の、婦人相談所や配偶者暴力相談支援センターに相談した事実についても、「配偶者からの暴力の被害者に係る証明書」を発行してもらうことで証拠にすることができます。

警察への被害届

警察への被害届もDVを証明する証拠となるので、ひどい身体的暴行を受けたときは警察に被害を申告してください。警察が被害届を受理した後の捜査は警察の判断になりますが、被害届はDV被害を受けたという事実を証明する証拠になります。受理された被害届は、離婚および保護命令の申し立て時に証拠として提出可能です。

別居する

DVの証拠を確保したあとは、なるべく早めに家を出て別居に踏み切ってください。DVによる離婚では、被害者が直接相手に離婚を切り出してしまうと、加害者が逆上して暴れだしひどいケガを負ってしまう場合も。そのため、DV加害者に離婚を切り出すときには、必ず相手と別居してからにしましょう。

さらに別居後に新居を探し出されたりしないよう、DV等支援措置の「秘匿制度」を利用することをおすすめします。この制度は、住民票の交付に制限をかけるなどで、被害者の居所を相手に知らせないという効果があります。

別居に必要な準備や注意点については、こちらの記事を参考にしてください。

「別居に必要な準備をシチュエーション別に解説!別居に関する注意点とは?」

場合によってはシェルターも検討

相手に気づかれないうちに別居の準備をすることが難しいという人もいるでしょう。また自由になるお金がないために、別居に踏み切れないという人がいるかもしれません。そのような方は、保護施設(シェルター)への入所を検討しましょう。シェルターの場所をはじめとする詳しい情報は、非公開となっているため安心です。

事前に婦人相談所や配偶者暴力相談支援センターに相談し、シェルターを希望したいと申し出ると、民間が運営しているシェルターに一時的ではありますが保護してもらえます。シェルターの数は平成30年11月現在、全国に107カ所。子どもを連れての利用も可能で、2週間前後そこで生活した後、優先的に割り当てられた公団などで生活していくことになります。

裁判所に保護命令を申し立てる

別居と同字タイミングで、裁判所に「保護命令」を申し立てることをおすすめします。保護命令とは、相手方(加害者)に対し、申立人(被害者)に近寄ったり危害を加えたりしないように命じる決定のこと。DV夫があなたに執着するタイプで、あなたの別居先を探し始めるような場合に効果があります。

保護命令は基本的に、DVを受けた本人しか申し立てすることができません。地方裁判所に備え付けられている申立書に記入し、必要書類を添付すればだれでも手続きが可能です。申し立てが受理されてからの審理期間は約10日と、他の案件に比べて速やかに処理されます。保護命令には原則として、次の5つの種類があります。

命令の種類 内容
接近禁止命令
  • 被害者の身辺のつきまとい
  • 被害者の住居や勤務先周辺のはいかい
  • 発令から6カ月間有効
退去命令
  • 夫を申立人の家から退去させる命令
  • 有効期間は2カ月
電話等禁止命令
  • 次の行動が禁止される
  • 面会の要求
  • 監視していることを知らせる
  • 著しく乱暴で粗野な言動
  • 無言電話や緊急性のない連続した電話
  • 緊急性のない深夜早朝(午後10時~午前6時)の電話・FAX・メール
子への接近禁止命令
  • 15歳未満の子どもへのつきまといや学校等のはいかい
  • 15歳以上の場合は子ども自身の同意が必要
親族等への接近禁止命令
  • 親族・友人・知人・勤務先の人が対象
  • 身辺の付きまといや住居、勤務先のはいかいを禁止

もしもDV夫が保護命令に反した行為をした場合には、相手方は逮捕されて刑事罰(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)を受けることに。令和3年中で見ると、保護命令違反で検挙された件数は0件となっており、DV加害者からの被害を未然に防止できていることが分かります。

参考:警視庁・配偶者からの暴力事案の概況

第三者を通して離婚交渉

離婚の話し合いは、必ず間に第三者を入れて行いましょう。夫婦間での話し合いで離婚が決まるケースはまれで、DV夫が興奮して逆上したりすることがほとんどのため。できれば弁護士が代理人となると、相手も冷静に話し合いに応じる可能性があるでしょう。

まずは代理人として相手方に書面を送ることから協議をはじめ、必要に応じて面談にて離婚条件などを話し合います。あなたは直接顔を合わせる必要がないので、怖い思いをすることもありません。

離婚調停

協議で離婚がまとまらないときは、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることになります。離婚調停では、調停委員を介して話し合を進めるので、相手と顔を合わせずに済みます。また裁判所の行きかえりにも、鉢合わせしないよう配慮してもらえます。もちろん弁護士に依頼した場合は、弁護士が代理人として調停に出席します。

離婚調停にかかわる費用や一括で払えないときの対処法については、こちらの記事を参考にしてください。

「離婚調停にかかる費用とは?裁判所・弁護士費用の詳細や一括で払えないときの対処法も」

離婚裁判

相手がDV夫の場合、協議や調停で離婚の話がまとまらないことがよくあります。その場合は離婚裁判に進むことになります。ただ離婚裁判には、民法にある法定離婚事由が必要になるため、DVを受けていたという証拠が必須です。それら提出された証拠をもとに、裁判官が養育費や財産分与等の条件を整え、離婚が認められます。途中で和解を提案されますが、和解が不調に終わっても判決が下るので、最終的には離婚できることに。

離婚裁判の期間や手続きの流れについて知りたい方は、こちらの記事を参考にしましょう。

「離婚裁判の期間を手続きの流れごとに解説!長引くケース・期間を短縮する秘訣とは?」

DV夫から慰謝料を取れる?

離婚時に発生するお金の一つに「慰謝料」がありますが、DV夫から慰謝料を受け取ることはできるのでしょうか。

法的に有効な証拠があれば可能

離婚裁判と同様、法的に有効なDVの証拠があれば、慰謝料を請求することが可能です。DVは民法上の不法行為とみなされるため、不法行為による精神的苦痛に対する損害賠償請求である慰謝料を請求する権利があるという訳です。

身体的暴力はもちろん、モラハラなどの精神的・心理的攻撃についても、その程度によっては慰謝料請求が可能になります。

DVの慰謝料相場

DVが原因による離婚慰謝料の相場は、一般的に50万円~500万円前後です。実際に裁判で慰謝料請求が認められた統計を見ると、100万円~300万円のケースが全体の3/4を占めています。実際に裁判で慰謝料請求をしない場合でも、この相場を参考にして請求額を決めるといいでしょう。

慰謝料金額を左右する要素

慰謝料の相場に数十万円~500万円と幅があるのは、個々のケースによって状況が異なるため。DV離婚に関しては、次のような要素の有無で離婚慰謝料の相場が変動します。

  • 婚姻期間
  • 子どもの有無
  • DVを受けた回数
  • DVを受けた期間
  • DVによる心身の異常の有無
  • DVによる後遺症の有無
  • DVの原因
  • 子どもの有無
  • 加害者の収入や支払い能力
  • 被害者の落ち度の具合
  • DV以外の離婚原因の有無

DVを受けた期間が長期に及んでいたり、DVの程度がひどかったりすると金額が高額になります。また婚姻期間が長いケースや養育が必要な未成年の子どもがいるケース、DV以外に相手に離婚原因があるケースでも慰謝料の相場は高額になるでしょう。

離婚理由や婚姻期間別の慰謝料の相場は、こちらの記事を参考にしてください。

「離婚慰謝料の相場が知りたい!離婚理由や婚姻期間による相場・金額をアップさせるポイントを解説」

DV夫との離婚で気になるポイント

DV夫との離婚では、離婚できるかどうかや慰謝料請求以外にも気になるポイントがあります。いざ離婚時や離婚後に困らないよう、疑問点や不安なことは解消しておきましょう。

子どもの親権はどうなる?

夫婦に未成年の子どもがいる場合、「経済的に不安だし、離婚したら子どもの親権があちらに行くのでは?」と心配になる方がいるかもしれません。しかしメインで子育てをしているのがあなたの場合は、それほど不安に思う必要はないでしょう。

というのも親権者を決定するときには、子どもを養育できる経済的なことよりも、子どもの利益にかなうかが重要になるため。子どもの監護や教育にとって、どちらの親と一緒に暮らすのがいいかが最も重視されます。子どもとの関係が良好で主として子どもの面倒を見てきた側なら、たとえ経済力に不安があっても、今後も子どもとの良好な関係を築けるなら、親権が認められる可能性は十分にあるでしょう。

「父親に親権が行くのでは?」と心配な方は、こちらの記事を参考にしましょう。

「父親が親権を取れる確率は?重視されるポイント・親権獲得のためにすべきことを解説」

モラハラは離婚が認められにくい?

夫が身体的暴行のないモラハラタイプの場合、それだけが原因で離婚が認められるのは難しいと言わざるを得ません。身体的な暴力ならケガの写真や診断書が証拠となりますが、モラハラは言葉や態度による暴力なため、目に見える証拠が確保しにくいため。

単発で発せられた言葉そのものには意味がない場合でも、それが繰り返し行われると精神的ダメージが蓄積されます。またモラハラする相手はプライドが高く、自分が正しいことをしていると本気で考えています。実際にモラハラ相手に離婚を考えたときは、それだけで離婚原因となりうる(長期の)別居をするようにしましょう。

モラハラが理由で離婚したときの慰謝料相場や請求方法については、こちらの記事を参考にしてください。

「夫婦や恋人間のモラハラで慰謝料請求できる?相場や方法を知って有効な証拠を確保しよう」

離婚後の生活が不安なときは?

DV夫と別れられないと思っている方の中には、離婚後の経済面が不安で踏み切れないという人もいるでしょう。まずは離婚時に受け取れる養育費や慰謝料、子どもの養育費や年金分割などの金額を計算してみましょう。収入を増やす必要がある方は、ハローワークで職業相談や就職のための訓練について確認することをおすすめします。

毎月の生活費が足りないときは、児童手当や児童扶養手当といった公的支援制度が利用できないかチェックしてください。ひとり親家庭の住居費支援や公営住宅の入居支援など、各自治体で行っている支援制度なども要チェックです。まずは住んでいる自治体の窓口や社会福祉事務所、DV相談窓口などで問い合わせてみましょう。

離婚後の児童手当や児童扶養手当の手続きについては、こちらの記事を参考にしてください。

「離婚後の児童手当・児童扶養手当の手続きについて|ケース別の変更方法と基礎知識」

弁護士に相談したことを知られたりしない?

弁護士に離婚を相談したことを知られると何をされるか分からないと、法律相談を躊躇してしまう人がいます。またモラハラを受けている場合には、自分の行動が絶えず監視されているような感覚になる人も多く、「弁護士に相談したことが夫にバレるのでは」と考えて二の足を踏むケースも。

しかし弁護士には「守秘義務」があるため、相談者の情報や相談内容を第三者に漏らすことはありません。たとえ相手が配偶者であっても同様です。DV夫にバレる心配はないため、まずは無料相談を利用して気軽な気持ちでアドバイスを受けてみてはいかがでしょうか。

まとめ

DV夫は認知のゆがみや生育環境によって、「自分は悪くない、暴力は相手が従わないから」という思考になっています。そのためDV夫との離婚は容易ではありません。まずは自分がDV被害を受けていることを正しく認識し、専門機関への相談やDVの証拠確保という手順を取りながら別居に踏み切りましょう。

離婚の協議は直接顔を合わせてすることが難しいため、第三者とくに弁護士に依頼することをおすすめします。証拠がそろっていれば、離婚慰謝料を請求することが可能です。協議で話がまとまらないときは、調停を経て離婚裁判へと進みます。時間はかかりますが、弁護士に依頼するとそれほどストレスなく離婚できるはず。

子どもの親権に関しては、これまで養育していた側が有利になります。離婚後の生活が不安な方は、DV相談窓口やハローワーク、自治体の窓口などで公的支援がないか確認しましょう。DVを受け続けるとあなただけでなく子どもにも重大な影響があります。なるべく早くその環境から抜け出し、安心して暮らせる生活を取り戻しましょう。

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