うつ病で離婚するときに慰謝料は発生する?状況別の相場や請求方法、条件を解説

うつ病で離婚するときに慰謝料は発生する?状況別の相場や請求方法、条件を解説
うつ病で離婚するときに慰謝料は発生する?状況別の相場や請求方法、条件を解説
  • 「うつ病の相手に離婚慰謝料を請求できる?」
  • 「自分がうつ病になったときの離婚方法が知りたい」

うつ病はストレスや脳機能の変化などで発生する病気で、だれにでも起こりえます。ただ自分の配偶者や自分自身がうつ病になってしまうと、「離婚」の二文字が頭をよぎる方も多いのではないでしょうか?そこでこちらの記事では、うつ病による離婚や慰謝料について詳しく解説。

相手がうつ病になった場合だけでなく、自分がうつ病になり離婚を考えている場合の慰謝料請求方法についても紹介します。さらに子どもの親権や養育費問題にうつ病がどう影響してくるかも知っておきましょう。近年の社会状況などから、うつ病になる人が増えています。自分事として、うつ病と離婚について考えていきましょう。

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目次

相手のうつ病で離婚したい場合

夫や妻がうつ病になったとき、離婚や慰謝料請求は可能なのでしょうか?

慰謝料は請求できる?

配偶者のうつ病が原因で離婚となった場合、慰謝料を請求できるかどうかの判断について詳しく解説していきます。

慰謝料請求が難しいケース

配偶者がうつ病になったというだけで、離婚を希望しても慰謝料請求できる可能性は限りなく低いでしょう。相手も望んでうつ病になったわけでなく、うつ病になったことに本人の責任はないからです。調停や裁判などで離婚を望んだとしても、慰謝料を請求することは認められないと考えます。

慰謝料請求が認められるケース

一方で、うつ病が原因で性格が変わりDVをするようになったり、不貞行為に及んだ場合は慰謝料請求が認められる可能性が高いです。病気以外に相手に不法行為があれば、合意なしに離婚が認められる「法定離婚事由」に該当するため。

法定離婚事由は5つあり、民法第770条に次のように定められています。

  1. 配偶者に不貞な行為があったとき
  2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき
  3. 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき
  4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
  5. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

参照:民法|e-GOV法令検索

うつ病とは関係なく不貞行為があったり、うつ病が原因のモラハラやDVがあれば「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」と認められて慰謝料を請求できる可能性が。また理由もなく同居を拒んだり、生活費を入れないなどの理由があると「悪意の遺棄」が認められ、慰謝料請求に該当する離婚事由となります。

慰謝料の請求方法

では実際にうつ病を発症している配偶者に慰謝料を請求するには、どのような方法を取ればいいのでしょうか。

うつ病以外の原因で証拠を確保

離婚慰謝料を請求するには、うつ病以外の離婚原因となった証拠の確保が欠かせません。相手の不貞行為やモラハラ、DVなどの証拠はしっかりと押さえましょう。法的に有効な証拠があれば、話し合いがまとまらず裁判に発展しても、勝てる確率が高まります。

また離婚や慰謝料請求の話し合いの場で、証拠があることを匂わせることができると、離婚にすんなり合意してくれたり、慰謝料の支払いを認める可能性があります。

協議での解決を目指す

法的に有効な証拠が得られない場合は、調停や裁判を避けて協議による離婚を目指しましょう。どんな理由があるにしろ、夫婦間で合意ができれば離婚は可能です。また相手が承諾すれば慰謝料を受け取ることもできるからです。

ただし相手はうつ病を患っていることを忘れずに。離婚を切り出したことでうつ病が悪化してしまうことも考えられるので、離婚を切り出すタイミングや話し合う時間などに気を付けましょう。離婚の合意が得られれば、子どもの親権や財産分与についても協議が必要です。

第三者に交渉を任せる

当人同士では話し合いにならないという場合は、第三者に交渉を任せることも考えましょう。相手が弁護士を立ててきたときは、こちらも離婚問題に詳しい弁護士に依頼すると、離婚や慰謝料請求の交渉がまとまりやすくなります。

双方とも弁護士が代理人となれば、冷静な状況で話し合いができます。また専門家の立場で妥当なラインで交渉がまとまる可能性が高まります。

子どもの親権や養育費の問題

離婚時に問題になるのは慰謝料についてだけではありません。夫婦間に未成年の子どもがいる場合は、子どもの親権や養育費についても決める必要があります。

親のうつ病が子どもに与える影響

親のうつ病といった精神疾患は、子どもに重大な影響を与えます。うつ病になったのが父親だろうが母親だろうが、それは変わりません。実際に親がうつ病の子どもを調査した結果では、一定数「親がうつ病になったのは自分のせいだ」という自己非難感情が生じるとしています。

欧米であれば、子ども自身に何らかのケアの必要があると判断されるレベルです。あなた自身も、うつ病の配偶者に寄り添うことができないと考えた結果から離婚へと舵を切ったわけで、子どもの負担はそれ以上の可能性も。子どもは親のために存在しているのではないため、子ども自身が心身ともに成長できる環境づくりを最優先にしていく必要があります。

親権者の決め方

うつ病の相手と離婚する場合、子どもの親権をどちらが持つかも問題です。これについてはうつ病の重症度や父母の別、夫婦の役割関係によって異なります。母親が主に育児をしているケースでは、父親がうつ病になったことによる離婚では、基本的に親権は母親が持つことになります。

母親がうつ病になった場合は、母親のうつ病の状態によって変わってきます。うつ病の度合いが悪く、到底子どもを養育できないようなケースでは、母親が親権を主張しても認められない可能性が。一方でうつ病の度合いが軽度で十分子どもを養育できると判断されれば、母親が親権を持つことも十分に考えられます。

養育費はもらえる?

親権を持たない側の親は、法律上は慰謝料を支払う義務があります。しかしこれは養育費の支払い義務者自身の生活ができることが前提です。うつ病によって休業せざるを得なかったり、失業状態で収入が全くない場合は、実際問題として養育費をもらうことは難しいでしょう。

ただし相手に財産や資産がある場合、そこから養育費を支払ってもらうことは可能です。養育費の支払い額や支払い時期については、双方が話し合って決めていくことになります。

相手のうつ病で離婚すべきタイミング

相手がうつ病になったからといえ、すぐには離婚を考えられないという人もいるでしょう。しかし次のようなことが起こった場合は、離婚を考えるタイミングかもしれません。

収入が途絶え生活できなくなったとき

夫婦のうち収入の多い方がうつ病になり、仕事を辞めたりして収入が途絶えた結果、生活ができなくなる程困った場合は離婚を考える時期かもしれません。完全に途絶えなくても、最低限の収入しかなくなり、生活費が足りなくなるケースがあります。しかし借金してまで家族の生活を続けていくべきではありません。

うつ病はいつ良くなって仕事に復帰できるか予測が立てにくく、借金の返済が滞るとさらに状況は悪化するだけです。借金が膨らんで生活がままならなくなり、家族が路頭に迷う可能性も。それならば早めに見切りをつけて、離婚した方が家族みんなのためになる場合があります。

子どもに影響が出たとき

子どもに悪影響が出たときも、離婚を考えた方がいいタイミングです。子どもは親が思っているよりも、ずっとよく親のことを見ています。親がうつ病で会社に行けなくなったり、夫婦仲が悪くなると、どれだけごまかしていても子どもはすぐに気づきます。

中には親がおかしくなったのは自分のせいだと思い込み、自分を責めて苦しむ子どもも。食欲がなくなったり無口になる、チック症状が出る、おねしょをするなどの行動が現れたら、子どもが不安に思っている証拠です。このような異変が現れたら、離婚を考えた方がいいかもしれません。

自分が耐えられないと思ったとき

自分自身が「これ以上耐えられない」と感じたら、離婚を決意すべきです。うつ病の配偶者がいると、1人で家計を支え、家事や育児もすべて自分でしなければならず、大変な負担がかかります。先の見えないトンネルを何年も一人で背負って進んでいかなければならないと考えると、こちらもうつ病になる可能性が。

夫婦そろってうつ病になってしまうと、たとえ離婚できたとしてもその後の生活に大きな影響を及ぼします。もちろん子どもにも負担を強いることに。結婚生活を続けることに疲れたら、無理をせず離婚を考えてもいいのではないでしょうか。

うつ病の相手と離婚できる条件

うつ病の相手と離婚したくても、夫婦間の協議で話がまとまらないと、調停や裁判で離婚を求めることになります。裁判で離婚を争う場合、次のような条件を満たさないと離婚は認められないでしょう。

長期間にわたって別居している

長年に割ったって別居していると、裁判でも離婚が認められやすくなります。長期間の別居は法定離婚事由の「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」とみなされる可能性があるため。うつ病の配偶者に離婚を切り出しにくい場合は、まず別居することから検討してみましょう。

精神的に不安定な相手と物理的に離れられれば、ストレスから解放され、看病などに使っていた時間は仕事や家事に充てられます。具体的に何年別居していれば離婚が認められるかはケースバイケースですが、別居期間が長引き、夫婦間のやり取りがない期間が長いほど、夫婦関係が破綻しているとみなされ、離婚が認められやすくなります。

離婚に向けて別居を考えているという方は、こちらの記事を参考にしましょう。

「別居に必要な準備をシチュエーション別に解説!別居に関する注意点とは?」

献身的に支えていたという実績

うつ病の相手と離婚するには、離婚までの間、献身的に支えてきたという実績が必要です。夫婦には協力して助け合いながら夫婦関係を維持・継続する義務があるためです。夫婦の片方がうつ病で働けなくなったり、家事ができなくなっても、夫婦で協力して乗り越えられるように努力しなければなりません。

そのうえで離婚が認められるには「うつ病の配偶者をできる限り支えてきたが、これ以上どうにもならなくなった」ということを証明する必要があります。具体的には次のような事象を示す証拠が求められます。

  • 相当の期間を看病に充ててきた(日々の生活や出来事を看病日記として残す)
  • 看病しても尚よくならない状態である(医師の診断書)
  • うつ病により夫婦の共同生活を維持することが難しい(日々の出来事を記した日記や別居を証明できるもの)
  • 夫婦関係の維持を求めることが酷である(相手の暴言や暴力の証拠や自身の体調を崩したという診断書)

このような証拠を裁判所に提出し、いくら頑張っても婚姻の継続は難しいと判断できれば、ようやく離婚が認められるようになります。

「回復の見込みがない強度の精神病」と認められること

配偶者のうつ病が、法定離婚事由の一つ「回復の見込みがない強度の精神病」と認められれば、相手の同意がなくても離婚できます。ここでポイントになるのは、うつ病が強度の精神病に該当するかということ。過去の判例で離婚が認められた精神病には、次のような病気があります。

  • 統合失調症
  • 双極性障害
  • 偏執病
  • 老人性精神病
  • 認知症

上のような精神病のうちでも、病状が重いものが該当します。反対にノイローゼやアルコール依存症、薬物中毒などでは離婚は認められません。またうつ病も、回復の可能性がある病気との認識から、離婚が認められることはほぼありません。

婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき

うつ病が強度の精神病と認められない場合でも、うつ病以外に「婚姻を継続しがたい重大な事由」があるときは離婚が認められます。具体的には次のような理由が該当します。

  • 暴言や暴力がある
  • 働かず家計を維持できない
  • 理由も言わず家を飛び出した
  • 度重なる自殺未遂
  • 性交渉を拒否される

セックスレスで離婚したいという場合の認められる条件は、こちらの記事を参考にしてください。

「セックスレスで離婚する方法|認められる条件や有利に離婚する4つのポイントとは」

離婚後も生活を送れること

うつ病の配偶者との離婚が認められるためには、離婚後も相手が問題なく生活を送れることが条件となります。裁判所では、自身で生活を成り立たせられない精神病の患者を、社会に放り出すことができないと考えるからです。離婚後もうつ病の配偶者の面倒を見てくれる人がいるという証拠が求められます。

具体的には相手の両親と同居することが確認できる書類や、離婚後に介護施設に入所できる証拠などです。そのためには、離婚後の面倒を見てもらえるように頼んだり、金銭的な負担をしてでも面倒を見てもらえる所を探す必要があります。

うつ病の配偶者が離婚後も安心して生活できる場所を作り、離婚しても問題ない状況だとみなされれば、調停や裁判でも離婚が認められやすくなるでしょう。

うつ病の相手との離婚に関する問題点

うつ病の相手と離婚するのは、上記以外にも様々な問題点があります。

協議(話し合い)が難しい

相手がうつ病だと、そもそもの話し合いが難しいという問題があります。離婚したいと言っただけで気分が落ち込んで寝込んだり、正常な判断能力を失って離婚の条件など何も決められないという状態になることも。そもそも口を利くことすらできない状態になる場合もあるため、離婚を言い出すタイミングにも気を付けましょう。

相手の状態が悪そうだと思ったら、離婚の話は無理に進めたりせず、まずは別居を目指すという方法もあります。うつ病には波があるので、相手が聞けるような状態になるまで待つことも大切です。

成年後見人の申し立てが必要になる

正常な判断力がない場合は、「成年後見人」を付ける必要があるかもしれません。成年後見人とは意思表示ができない人に代わって、財産の管理や身上監護をしたりする人のこと。本人に正常な「意思能力」がないと、離婚の裁判を進めることができないためです。

「意思能力」は自分の行為の性質について、法律上の判断ができる能力のこと。分かりやすく言うと「自分のしたことでどのような結果になるか理解できるか」という能力を指します。通常、成年後見人は親族などのほか、弁護士や行政書士などが候補に挙がります。

家庭裁判所に「成年後見開始の申立」を申し立て、審査をして認められれば成年後見人が付きます。成年後見人が付いたら、その後見人を代理人として離婚や慰謝料請求の訴訟を起こすことが可能になります。うつ病の配偶者との離婚にはこのような問題も浮上します。相手に成年後見人を付けるべきか迷ったら弁護士に相談しましょう。

自分がうつ病になって離婚したい場合

自分がうつ病になって離婚したい場合、慰謝料や子供の親権はどうなるのでしょうか。

慰謝料を請求できる?

自分がうつ病になって離婚する場合、相手に慰謝料を請求することはできるのでしょうか?前提として、うつ病になったという理由だけでは慰謝料請求は認められないのは、先述した通りです。慰謝料が発生するためには、相手に不法行為を犯したという有責性が必要になります。

うつ病になった原因によっては請求可能

自分のうつ病の原因が相手の不法行為によるものの場合は、慰謝料請求が可能です。例えば配偶者の不倫によって精神的苦痛を受け、結果としてうつ病になったようなケースです。また相手のモラハラやDVが原因でうつ病になったときにも、離婚慰謝料を請求できます。

とくに離婚慰謝料を請求する場合、相手の行為が原因でうつ病などの精神疾患になったと認められれば、請求できる金額が増額します。うつ病になったことで精神的苦痛の度合いが大きいと判断されるためです。ただし性格の不一致や義理の親と合わないというだけでは、慰謝料は認められません。

また、相手が不貞行為をしたとしても、こちらにも不貞の事実があったり理由もなく性交渉を拒否した結果の場合は、慰謝料を減額されるか相殺される可能性があります。

原因別の慰謝料相場

慰謝料を請求できる原因によって、請求できる相場金額は変わってきます。こちらは離婚や慰謝料請求の原因となりやすい理由ごとの慰謝料の相場です。

慰謝料を請求できる原因 相場金額
不貞行為(浮気や不倫) 100万円~300万円
モラハラ 50万円~300万円
DV(暴言や暴力) 50万円~300万円
悪意の遺棄 50万円~300万円
性行為の拒否 0円~100万円

上記の金額はあくまで目安で、子どもの有無や悪質度合い、相手の支払い能力や婚姻期間などによって変動します。また結果として離婚に至ったかどうかや行為があった回数・期間などによって、事案ごとに細かく金額が決められます。

離婚慰謝料の相場について、もっと詳しく知りたいという方は、こちらの記事を参考にしてください。

「離婚慰謝料の相場が知りたい!離婚理由や婚姻期間による相場・金額をアップさせるポイントを解説」

慰謝料請求に必要な証拠

話し合いのみで慰謝料を支払うことを相手が合意してくれれば問題ないのですが、相手が不倫していないと言い張っている場合や、慰謝料を支払うことを拒否している場合は、その証拠が必要になります。とくにモラハラなどの精神的な暴力の場合、傷など目に見える証拠が得にくいため、相手が否認すると立証が難しくなります。

具体的には、次のような方法で証拠を確保していくことになります。

慰謝料請求に必要な証拠 証拠の詳細
医師の診断書 うつ病になる程、心身に悪影響があったという証拠になる
DVでケガをしたときの診断書も有効
病院の通院歴が分かるもの 病院の診療明細書・処方された薬の内容が分かる書類
通院時期や通院回数が分かるもの
医師やカウンセラーに相談したことが分かるもの
写真 DVを受けたときのあざや傷の写真
浮気相手とホテルを出入りしているところが分かる写真
音声や動画データ DVやモラハラを受けたことが分かるもの
不貞行為を認めた内容の音声
不貞行為していることが分かるもの
性交渉を拒否されたことが分かるもの
LINEやメールの内容 不貞行為を裏付ける内容のもの
性交渉を拒否されたことが分かるもの
日記やメモ 日頃の相手の言動が分かる内容
自分の気持ちを綴ったもの
警察や相談センターへの相談履歴 DVを受けて警察に相談したこと
相手のことで悩んでいるという相談をした履歴
離婚を考えていることを相談した内容

日記やメモに日頃の精神的な暴力を残す場合は、このような状況で「だからお前はダメなんだ」と言われたなどのように、なるべく具体的かつ詳細に記しましょう。行為があった日だけのことではなく、継続的に記録を続けていくと、どのくらいの頻度でどのくらいの期間行われたのかが明らかになります。

うつ病が子どもの親権に不利になる?

自分がうつ病になって離婚すると、子どもの親権を取れないのでは?と心配になる方もいるでしょう。結論からいうと、うつ病だからといって親権が取れないということはありません。世間には、うつ病だけでなく双極性障害や統合失調症など、様々な精神疾患を抱えながらも親権者になって、子どもを育てている人はたくさんいます。

具体的にどのような判断基準で親権を決めているかについて知れれば、自分のケースではどうなのかが分かるようになります。

子どもと親の具体的事情によって決められる

親権は子どもと親両方の具体的事情によって、どちらにするか決められます。もちろんうつ病の人よりはうつ病でない人の方が親権には有利になります。しかし親権を判断する場合は、その他の事情も含めて総合的に判断されます。こちらは、親権を判断する親側の事情です。

  • これまでの養育実績
  • 子どもとの関係
  • 子どもと同居しているか
  • 離婚後子どもと長い時間を過ごせるか
  • 子どもを育てる意欲があるか
  • 面会交流に対する考え方
  • 居住環境
  • 教育環境
  • 経済状態
  • 健康状態
  • 実家の親の資産
  • 親族や友人等の協力の有無

子ども側の事情には、次のようなものがあります。

  • 子どもの年齢
  • 子どもの性別
  • 兄弟関係
  • 心身の発育状況
  • 環境への適応状況
  • 子ども自身の意思

子どもの年齢が低ければ低いほど、これまで主として子どもの養育を行ってきた側が親権に有利になります。あなたが子どもの食事の世話や風呂に入れる、日々の健康管理をしていたなどの事情があると、うつ病でも親権を獲得できる可能性は高まります。

うつ病の程度によっては獲得できる

うつ病の程度によっても、親権を獲得できるかが変わってきます。一口にうつ病と言っても、その度合いは人それぞれだからです。うつ病の度合いが軽度で、普段の生活を支障なく遅れるようなら親権を認めてもらいやすいでしょう。また近くに頼れる親がいるなど、サポート体制が整っているのも有利に働きます。

しかしうつ病が重度で、子どもの養育に支障がある場合は、親権は配偶者の方に行く確率が高いでしょう。もしも自分から離婚を切り出そうと考えているなら、子どもの親権を欲しい方は、うつ病の程度が上向きになってからにしましょう。

自分がうつ病になった場合の離婚について

自分がうつ病になって離婚したいと思ったとき、どのような方法で離婚を目指せばいいのでしょうか。

相手が合意すれば離婚できる

まずは夫婦の話し合いだけで離婚できる「協議離婚」を目指しましょう。裁判所などを通さずに離婚できるので、時間やお金をかけずに済みます。協議離婚では離婚するかしないかだけでなく、財産分与や親権、養育費などの条件を決める必要があります。

お互いが合意できたら、決めた内容を離婚合意書にまとめることをおすすめします。離婚届けを役所に提出すれば離婚が成立となります。

合意に至らなければ調停→裁判へ

話し合いで合意に至らない場合は、家庭裁判所に「夫婦関係調整調停」を申し立てます。調停委員が夫婦の間に入って、離婚についてやその他の条件の話し合いを進めてくれます。お互い調停で合意ができたら、調停が成立して離婚となります。

調停をしても相手が離婚を拒否していたり、離婚条件で折り合いがつかない場合は、調停が不成立となります。それでも離婚したい場合は、今度は「離婚訴訟」を起こす必要があります。

離婚訴訟(裁判)の手続きの流れやかかる期間については、こちらの記事を参考にしましょう。

「離婚裁判の期間を手続きの流れごとに解説!長引くケース・期間を短縮する秘訣とは?」

法定離婚事由があれば認められる

離婚訴訟で離婚を認めてもらうには、冒頭で示した「法定離婚事由」が必要です。もしも該当するような離婚事由がない場合は、しばらく別居しながらうつ病の状態やタイミングを見ながら、再度話し合いをしたり、離婚調停を進めていく方がいいでしょう。

うつ病で離婚や慰謝料請求を考えている場合の相談先

うつ病で離婚や慰謝料請求を考えている方は1人で悩まず、次のような相談先に相談するといいでしょう。

病院の精神科や心療内科

まずは精神科や心療内科がある医療機関を受診しましょう。うつ病は早めに適切な治療を行えば治る病気です。次のような症状が現れたら、専門医を受診してください。

  • 一日中気分が落ち込む
  • 何をしても楽しめない
  • 食欲がない
  • 性欲がない
  • 眠れない・寝すぎる
  • 体がだるい・疲れやすい
  • めまい
  • 動悸
  • 口の渇き
  • 頭痛
  • 肩こり
  • 口の渇き

うつ病は気分障害の一つなので、気分の落ち込みなどのほか、食欲減退や睡眠障害といった身体症状にも表れます。また頭痛や肩こりなど、一見うつ病とは関係ないような症状が現れることもあるので、自己診断せず専門の医療機関の診察を受けましょう。

保健所や保健センター

地域の保健所や保健センターでもうつ病の相談を受け付けている場合があります。電話相談の他、面談による相談も受け付けています。所属の保健師や医師、精神保健福祉士といった専門職が対応して、本人や家族の相談を聞いてくれます。

相談者の要望によっては、保健師が家を訪問して相談に応じている自治体も。どうしても家から出られないという方は、電話で訪問面談を希望すると伝えてください。

精神保健福祉センター

各都道府県や政令指定都市に配置されてる精神保健福祉センター(こころの健康センター)でも、うつ病など心の健康についての相談を受け付けています。住んでいる場所から近い精神保健福祉センターを探すには、こちらのホームページ全国精神保健福祉センター長会からご確認ください。

センターの規模によって対応する職員は異なりますが、医師や看護師のほか、公認心理士や精神保健福祉士などの専門職が相談に応じます。電話での相談だけでなく面談(事前予約が必要)での相談も可能。

電話による相談窓口

次に紹介するような電話による相談窓口もあります。

相談窓口 電話番号 詳細
こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556
  • 電話を掛けた所在地の都道府県が実施している公的な相談機関に接続
  • IP電話やLINE電話からは接続不可
  • 対応曜日や時間は都道府県によって異なる
#いのちSOS 0120-061-338
よりそいホットライン 0120-279-338
いのちの電話 0120-783-556
0570-783-556

離婚問題に詳しい弁護士

うつ病による離婚や慰謝料請求に悩んだら、離婚問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。「弁護士に相談したら離婚をすすめられるのでは?」と不安に感じる方がいるかもしれませんが、決してそのようなことはありません。相談者の話をよく聞いて「もう少し頑張ってみては」とアドバイスされることも。

もちろん離婚や慰謝料請求の交渉を任せられ、調停や訴訟を起こすときの代理人としても動いてくれます。弁護士には守秘義務があるので、うつ病で離婚を考えていることを誰かに知られる心配はありません。うつ病で結婚生活に限界を感じたら、まずは離婚問題に強い弁護士に相談してください。

離婚時に相談する弁護士の選び方にはポイントがあります。詳しくはこちらの記事を参考にしましょう。

「離婚時に依頼したい弁護士の選び方|相談前・相談時のポイントと費用に関する注意点を解説」

まとめ

うつ病が原因で離婚したいと思ったとき、配偶者がうつ病の場合はうつ病以外に不法行為などの原因があれば請求が認められるでしょう。自分がうつ病になった場合は、うつ病の原因が相手の不貞行為やDVだと請求する慰謝料の金額をアップできます。

慰謝料の相場は離婚原因や子どもの有無などによって異なり、請求するには行為の証拠や精神的苦痛を受けたという証拠が必要です。子どもの親権は、うつ病であるかだけでなく、親や子供の具体的事情によって判断されます。養育費は、うつ病の配偶者に資産や財産があれば請求可能です。

うつ病で離婚や慰謝料を請求すべきかという判断は難しく、病状を見ながらの対応が求められます。離婚のタイミングやどうすべきか分からない場合は、保健センターや電話相談窓口、離婚問題のプロである弁護士に相談してください。話を聞いてもらうだけでも気持ちが楽になり、自分の進むべき道が見えてくるはずです。

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