- 「不倫相手と結婚を考えているけど、慰謝料をどれくらい払うことになるか心配」
- 「相手の元奥さんから慰謝料を請求された!どうしよう…」
略奪婚とは既婚者と交際を行い、相手が離婚した後に自分が結婚をすること。相手の配偶者から略奪するという意味を持つ言葉ですので、不倫が前提となる結婚になります。そのため相手から慰謝料を請求される可能性が高い傾向が。
略奪婚には慰謝料を請求される以外にもさまざまなリスクがあります。また状況によっては慰謝料が減額もしくは増額されるケース、支払わなくてよいケースもあることはご存知でしょうか。今回は略奪婚を考えている人が知っておきたい慰謝料に関する知識を中心に解説します。
略奪婚のリスク
略奪婚とは既婚者との交際を前提としているため、状況によっては慰謝料を請求される可能性があります。しかし略奪婚のリスクは慰謝料だけではなく、以下のような社会的もしくは金銭的なデメリットに見舞われる恐れがあります。略奪婚をしたいと考えているのであれば必ず把握しておきましょう。
- 金銭面での負担が大きい
- 人間関係・家族関係が悪化する
- 仕事を失う可能性がある
- 周囲から白い目で見られる
- 略奪婚後に別れることも多い
- 略奪婚後も相手の子との関係は変わらない
金銭面での負担が大きい
略奪婚による金銭的な負担は慰謝料だけではありません。相手に子がいる場合、養育費の支払いも続きます。養育費の目安は裁判所によって定められていますが実際の養育費は離婚時の協議によって決定するため相場より高くなることは珍しくありません。
大学卒業まで養育費を支払う、大学の学費を負担する等といった条項が別途定められることもあります。そうなった場合、この先自分の子ではない子どものために金銭的な負担を強いられ続けることになります。
財産分与で貧乏になることも
婚姻中に夫婦が築いた財産は、離婚時に財産分与によって分割することになります。現在は経済的余裕があったとしても実際には財産分与を行った上で慰謝料を支払うため、金銭的な負担は想定以上に大きくなりがち。
また本来であれば夫婦へ財産が均等に分けられますが、不倫した側が離婚をする場合は財産分与において相手から不利な条件を提示されやすい傾向があります。離婚の原因である不倫をした側、すなわち有責配偶者からの離婚の請求は認められていないためです。
不倫された側がそれを利用し「離婚したいなら財産を多めに分割してほしい」「財産を放棄してほしい」と交渉してくることは珍しくありません。略奪婚に成功しても、金銭的に苦しい生活を強いられるかもしれません。
人間関係・家族関係が悪化する
両親や家族、親友など、あなたとどれほど親しい間柄であっても、不倫に賛成する方はほぼいないでしょう。不倫を経た略奪婚は世間的には歓迎されることではなく嫌悪感を抱く方が大半です。略奪婚の結果、親しい人全てから縁を切られることも覚悟しなくてはいけません。
また略奪婚によって離婚する家庭もほぼ確実に崩壊します。略奪婚は子や妻(夫)を捨てる行為です。「話し合えば理解してもらえるかもしれない」「円満に離婚できるかもしれない」という考えは捨てたほうがよいでしょう。子どもから軽蔑もしくは失望の目で見られることも覚悟すべきです。
周囲から白い目で見られる
先に述べた通り、不倫や略奪婚の世間の印象は大変悪いものです。そのため近所の人や友人にそのことが知られた場合白い目で見られ挨拶もままならない可能性があります。
なおそれは相手方の家族との付き合いの場でも同様です。挨拶に行っても無視をされる、親戚の集まりの際にヒソヒソ噂されるということも実際にあります。義実家が元配偶者を可愛がっていた場合、離婚が原因で孫(配偶者の子)に会えなくなった場合は尚更風当りが強くなるでしょう。
仕事を失う可能性がある
メディアでは不倫がバレた芸能人のニュースが報道されることがあります。結果として仕事が激減し、復帰をしても叩かれるといった光景をご存知の方もいるでしょう。不倫をきっかけに仕事を失うことは芸能人に限ったことではありません。
社内の同僚や部下、仕事関係者と不倫関係になった結果、会社にそれが知られ左遷、退職に追い込まれるという事例が実際にあります。会社による明確な処分は何もなかったとしても他の社員から白い目で見られることは確実であり出世に影響を及ぼす可能性が高いです。
略奪婚後に別れることも多い
略奪婚が成功したとしても、その後の関係がうまくいくとは限りません。相手は一度不倫をしている人だという事実を忘れてはいけません。お互いの関係が安定しマンネリ化した途端、再び他の人と不倫に走ることは充分にあり得ます。
また不倫中に略奪婚を考えている人は、相手との結婚をゴールと思ってしまいがちです。目標が達成できた瞬間気持ちが冷めてしまう可能性があります。不倫中は相手のよい面しか見えないことも多いため、いざ夫婦として過ごしてみたら「こんなはずではなかった」と後悔する人もいます。
略奪婚後も相手の子との関係は変わらない
相手に子どもがいる場合あなたの結婚相手と子の関係は略奪婚後も続くことも忘れてはいけません。離婚の際には子との面会頻度や面会時間など、子との接し方を夫婦で話し合い決定します。
一般的に月1回程度の面会を定めることが多いですが、入学式や卒園式、運動会、誕生日などのイベントへの参加を求められることも。二人の間に子ができた場合子どものイベントの日が被り、相手との子を優先されるという事例も実際にあります。
略奪婚をする前に考えるべきこと
以上のように略奪婚にはさまざまなリスクがあります。それでも相手と結婚をしたいと考えている方は、以下のことを冷静に考え直してみてください。
金銭的な負担は軽減できるか
慰謝料や養育費、財産分与の影響については先に解説したとおりです。略奪婚では相場より遥かに高い慰謝料や養育費を請求されたり、財産分与において不利な条件を提示されたりすることも。
離婚を条件に財産を全て手放すよう要求されるといった極端な事例も存在します。略奪婚をした後に気づいても、原則として一度定めた財産分与は変更ができません。相手が元の配偶者と離婚交渉を行う前に、新しい家庭のためにどれくらいの財産を主張するかを話し合いましょう。
結婚後の生活をイメージできるか
略奪婚は不倫関係を伴います。違法で公にできない関係を続けていることで結婚が非常に眩しい存在に見えるようになり結婚を最終ゴールとして考えてしまいがちです。
しかし結婚はゴールではなく、結婚した後は長い間一緒に過ごしていくことになります。いざ一緒に住んでみたら相性が合わなかった、相手のよくない面が見えて冷めてしまったということも実際にありえます。実際に結婚後の生活をイメージできない場合は注意してください。
また相手に子どもがいた場合、相手は親としての責務を果たしながらあなたと生活することになります。あなたは相手との子どもがほしいと思っていても、相手はもう子どもはいらないと考えている可能性もあります。お互いどのような結婚生活を送りたいかについても話し合っておくとよいでしょう。
別れることは考えられないか
繰り返しになりますが、略奪婚はリスクが大変高い行為です。社会的制裁を受けることになったり、家族や友達と縁を切られたりする可能性もあります。今は経済的な余裕があっても慰謝料や養育費の支払で貧乏になり、結婚後みじめな生活を強いられることも。
また略奪婚は相手の家庭を壊した上での結婚です。結婚できた後は幸せでいっぱいでも、しばらくして罪悪感に苛まれるかもしれません。少しでも迷いが生じたのであれば、相手と別れることも視野に入れるべきです。
略奪婚で慰謝料を支払う条件と相場
略奪婚を決断する上で、慰謝料の有無や金額は考慮すべき事柄のひとつです。慰謝料とは相手を傷つけたことに対する損害賠償ですので既婚者と分かった上で交際をしていた場合、不貞行為をしていたという証拠がある場合は慰謝料を請求されます。
既婚者であることを知りながら交際していた
相手が既婚者であるという認識を持ちながら交際をしていた場合相手の家庭を意図的に壊そうとしていたとみなされ、慰謝料の請求対象になります。既婚者であることを認識していなかったとしても、既婚者であることを推測可能であった場合や自己の過失によって認識できなかった場合は慰謝料の請求対象になります。
実際に不倫相手が既婚者だと知らなかったという証明は大変難しいのが現状です。客観的に「独身だと思い込んでやむを得ない」と判断できるケースでないと、過失がなかったと認めてもらえません。
具体的にどのようなケースが該当するかについては、以下の記事で詳しくまとめています。交際相手が既婚者だということを知らずに交際していた方もぜひお読みください。
彼氏が既婚者だと知らなかった…慰謝料請求されたときの対処法や減額方法を解説
不貞行為をしていたという証拠がある
相手が配偶者との婚姻中に不貞行為があったという証拠がある場合、慰謝料の支払義務が発生します。法律における不貞行為とは肉体関係のことを指します。以下のように「性交渉があった」ということが客観的に判断可能な証拠があった場合、ほぼ確実に慰謝料を請求されます。
- ホテルの領収書やクレジットカードの明細
- 探偵事務所による報告書
- 本人が不貞行為を認める録音データ、誓約書
- 二人でホテルに入る動画
- 不貞行為そのものの写真や動画
- 肉体関係をほのめかすLINEやメールのやりとり
略奪婚で慰謝料を支払わなくてよい条件
略奪婚であっても、以下のケースに該当する場合は慰謝料の支払いを免れる可能性があります。それぞれの項目について、詳しく具体例を解説していきます。
- 消滅時効を迎えている
- 離婚協議中から交際が始まった
消滅時効を迎えている
消滅時効とは、一定期間権利が行使されない場合にその権利が消滅する制度のこと。不倫に対する慰謝料の請求権利の消滅時効は相手が不貞行為の事実を認識したとき、および不倫相手を特定したときから3年です。不倫がバレただけでは消滅時効は起算されない点に注意しましょう。
なお不倫した側が支払う不倫慰謝料とは別に、離婚の際に有責配偶者が支払う離婚慰謝料もあります。離婚慰謝料の消滅時効は起点が異なり、離婚した日から3年です。支払義務があるのは離婚の当事者(配偶者)のみですが、新しい夫婦生活を始める前後に出費を強いられる可能性を視野に入れてください。
離婚協議中から交際が始まった
不倫の際に支払う慰謝料は、相手の夫婦関係を破綻させたことに対する慰謝料です。すでに相手夫婦が離婚協議中だった場合は不倫をせずとも夫婦関係が破綻していたとみなされるため、慰謝料を支払う義務は生じません。
略奪婚による慰謝料の相場
略奪婚による慰謝料の相場は50万~300万円程度と幅が広いことが特徴。実際には不貞行為の長さや悪意の有無、夫婦の状況によって決定します。具体的にどのようなケースで慰謝料が増額・減額されるのかについて解説をしていきます。
慰謝料が増額されるケース
略奪婚において慰謝料が増額されやすい主なケースは以下の通りです。一般的な離婚裁判において、慰謝料は最大で500万円ほど。増額に相応しい要因が複数あった場合はその分慰謝料も高額になっていきます。
- 婚姻期間が長い
- 不貞行為の期間が長い
- 被害者の精神的苦痛が大きい
- 不貞行為が判明するまで夫婦関係が良好だった
婚姻期間が長い
婚姻期間が長いということは、それだけ夫婦の仲が安定していることに他なりません。婚姻期間が長い夫婦を離婚させるということはそれだけ不貞関係が悪質なものであり、配偶者の精神的苦痛も大きいとみなされるため慰謝料が高額になる傾向が。
具体的には婚姻期間が5年以内であれば短期間、5年~10年は中期間、それ以上は長期間とされ、期間が長ければ長いほど慰謝料金額が高額です。
不貞行為の期間が長い
慰謝料請求の場では、不倫行為は相手の夫婦関係を壊す悪意のある行為です。そのため期間が長いほど悪質とされ、相手に与える精神的苦痛も大きいとされます。
具体的には不倫関係にあった期間が数カ月程度であれば短いとみなされ、1年以上であれば長いと判断されます。また不貞行為の回数の多さも慰謝料に関係し、回数が多いとその分悪意があったとみなされ慰謝料が増額されます。
被害者の精神的苦痛が大きい
不倫によって被害者が大きな苦痛を負ったケースです。不倫によって心身に影響がおよび通院をするようになった場合は慰謝料が増額されます。また夫婦間に子どもがいた場合、子どもにも苦痛が及んだとしてさらに増額されることも。
不貞行為が判明するまで夫婦関係が良好だった
不貞行為が分かるまで夫婦関係が良好だった場合は不貞行為が直接的な夫婦関係の悪化原因とみなされるため、慰謝料が増額されやすい傾向があります。
慰謝料が減額されるケース
逆に慰謝料が減額される事例もあります。夫婦関係が破綻した原因が不貞行為でないことが明らかな場合、もしくは他にも離婚に至る原因がある場合です。
相手の夫婦ともに非がある
不貞行為が発覚する前に夫婦関係において、共に非がある場合は慰謝料が減額される可能性が。具体的には以下のような事例が当てはまります。
- 配偶者にDVがあり、それが原因で不倫に走った
- 夫婦ともに不貞行為があった
不倫が判明する前から夫婦仲が悪かった
不倫発覚前に夫婦仲がよかった場合、不倫が夫婦関係を破綻される直接的原因と扱われます。逆に不倫が判明する前から夫婦仲が悪かった場合は不倫が夫婦関係が破綻する原因になったとは言い切れないため、慰謝料が減額される可能性が高いです。
具体的には以前より家庭内別居をしていた場合、長期間別居をしていた場合などです。夫婦が一緒に生活をしていなかったという客観的な証拠が提出できれば慰謝料の減額材料となるでしょう。
略奪婚で慰謝料を請求された時の対処法
ここまで略奪婚におけるリスク、慰謝料の発生条件や基準について解説をしてきました。しかしこの記事をお読みの方の中には略奪婚をしたが、慰謝料を請求されて困っているという方もいるかもしれません。最後に実際に慰謝料を請求された際の対処法を解説します。
支払義務の有無を確認する
まずはあなたに慰謝料を支払う義務があるかどうかを確認します。具体的には以下のような事柄をチェックしていきましょう。
- 不倫相手を特定されてから3年以上経過していないか?
- 離婚協議書の内容に慰謝料に関する言及があるか?
- 相手に不貞行為などの非はないか?
- 不倫が発覚した時点で別居や離婚協議をしていないか?
先に解説した通り、略奪婚であっても慰謝料の支払い義務が発生しないこともあります。消滅時効や相手の元々の夫婦関係などを確認し、支払義務の有無を確認してください。
金額の相場を確認する
慰謝料の金額は様々な要素が関係するため、金額についても一概には判断できません。しかし今までの判例において不貞行為の慰謝料は最高でも500万円程度です。1000万円もの高額慰謝料を請求されたケースも実際にありますが、今までで数例ほどですので現実的とは言えません。
実際に1000万円の慰謝料を請求されたケースや慰謝料の相場については、以下の記事で詳しくまとめています。慰謝料を請求する側の立場にそった記事ですが、過度に高額な金額を請求されて不審に思った場合はぜひお読みください。
離婚慰謝料で1000万もらえる?高額慰謝料を手にする方法と減額するコツとは
専門家に相談をする
慰謝料の支払い義務や金額の基準を確認したいのであれば専門家に相談をすることを強くお勧めします。慰謝料の金額は状況によって変動しますので、法的知識がない方が基準を判断できるものではありません。離婚問題に強い弁護士に相談することにより本来の慰謝料の相場や支払い義務の有無、慰謝料を減額する手段を提示してもらうことができます。
また弁護士に依頼することで相手の元配偶者とのやりとりを代行してもらうこともできます。あなたの金銭的・精神的負担を軽減できる方法を模索し、最良の手段をとってもらえます。
まとめ
既婚者と不倫をした後に自分が結婚をする略奪婚は、世間的に歓迎される行為ではありません。もし今既婚者と不倫状態にあり略奪婚を考えている方は、今後生じるデメリットについてよく考えることをお勧めします。お金や社会的地位、家族や友人を全て失う恐れもあることを肝に銘じましょう。
既に略奪婚をした後に慰謝料を請求されて困っているという方は、まず慰謝料の支払い義務があるかを確認してください。略奪婚は慰謝料を絶対に支払うというイメージがありますが、実際には慰謝料を支払わなくてよいケースもあります。金額も状況によって増減するため、相手の夫婦関係の状況によっては慰謝料が減額できることもあります。
対処方法に困っている方、慰謝料の相場を確認したい方は離婚問題に詳しい専門家に相談をしてください。あなたの決断と新しいスタートをより良いものにするため、最善の手段を提示してくれるはずです。