死後離婚をするには?配偶者と死別後の手続きや注意点をすべて解説

死後離婚をするには?配偶者と死別後の手続きや注意点をすべて解説
死後離婚をするには?配偶者と死別後の手続きや注意点をすべて解説
  • 「夫と死別したら自動的に離婚したことになる?
  • 「死後離婚を検討しているが、遺産相続や子どもへの影響が心配」

夫婦のどちらかが死亡し、婚姻関係が解消されることを死別と呼びます。死別は離婚とは異なり、義実家との関係(婚族関係)が切れるわけではありません。そのため配偶者が亡くなっているにも関わらず、相手の両親の世話をするケースが少なくありません。

しかし近年では義実家との親族関係を切る「死後離婚」を選択する人が増えています。この記事では死後離婚のメリットや具体的な手順、注意点についてまとめています。

また死後離婚によって遺産相続や遺族年金はどうなるのかについても解説をしていますので、これから死後離婚を検討している方はぜひ参考にしてください。

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配偶者との死別後に行える死後離婚とは?

配偶者と死別した後に行える「死後離婚」は、正式には「姻族関係終了届」と呼び、配偶者の親族との姻族関係を終わらせる手続きのことを指します。

配偶者と死別すると婚姻関係が終了するため、そこから離婚すること自体はできません。死後離婚といっても夫婦間の離婚手続きとは異なり相手の親族と縁を切るための手続きであると考えましょう。

死後離婚については近年さまざまなメディアで取り上げられるようになり、それに伴い姻族関係終了届を提出する人の数は少しずつ増えつつあります。政府統計によると2007年の届出数は1832人でしたが2022年は3065人と、15年間で2倍近くに増えています。

参考:e-Stat 統計で見る日本

配偶者との死別=離婚ではない

配偶者と死別すると、相手との婚姻関係が自動的に終了します。しかし離婚とは異なり相手の戸籍から抜けるわけではないため、配偶者の遺産を相続でき、遺族年金を受け取れます。

配偶者の親族との姻族関係も終了しないため、配偶者側の親族との縁を切ることはできず、扶養義務が発生することもあります。

なお配偶者が生きている間に離婚した場合、相手の戸籍から抜けて配偶者とは全くの他人になります。そのため遺産相続はできず、遺族年金も受け取れません。

死後離婚の手続き方法

死後離婚の手続き方法は、姻族関係終了届を提出するだけで終わります。前もって配偶者側の親族の同意や承諾を得る必要はなく、一人で一方的に配偶者の血族との姻族関係を終了できます。必要書類や提出先について、さらに具体的に見ていきましょう。

必要書類

姻族関係終了届を提出する際に必要となるものは以下の通りです。

  • 姻族関係終了届
  • 配偶者が亡くなった事実が記載されている戸籍(除籍)謄本
  • 届出人の戸籍謄本(提出先が本籍地でない場合)
  • 届出人の本人確認書類
  • 届出人の印鑑

姻族関係終了届の用紙は市区町村役場に用意されています。自治体によってはホームページからダウンロードできる場合もあります。戸籍謄本は遠方の場合、郵送でも取り寄せが可能です。

提出先

自分の住所地、もしくは本籍地のある市区町村役場に届出を行います。詳しくは後の項目で説明をしますが、苗字を婚姻前の苗字(旧姓)にする場合は復氏届の提出が必要ですので、苗字を戻したい方は一緒に手続きをすることをお勧めします。

提出期限

姻族関係終了届には提出期限はありません。配偶者の死後であれば何年経過していても届出ができます。

死後離婚を行う理由とメリット

最初にお伝えした通り、死後離婚を行う人、すなわち姻族関係終了届を提出する人の数は増えつつあります。届出をする人数が増加するのには、当然何らかの理由があるということです。では提出によってどのようなメリットを得られるのか、具体的に解説をしていきます。

配偶者の実家との関係を断つことができる

死後離婚により配偶者側の親族との関係を完全に断つことができます。

もともと配偶者の親族との関係がうまくいってなかった方は、結婚しているからこそ親族とも仕方がなく付き合っていた方が大半でしょう。配偶者が死んだあとは付き合いを続ける理由がなくなるため、相手の家族とは関わりを持ちたくないと思うのは不自然ではありません。

しかし配偶者が死去しても姻族関係が継続している限りは全く関わりを持たないというわけにはいきません。配偶者の法事の際には顔を合わせたり、挨拶や打合せが必要になったりすることもありません。

そのようなとき姻族関係終了届を提出することにより、相手側の親族とは縁が切れることになります。他人であるときっぱりと線引きができるため、無理に付き合いを続ける必要がなくなります。

義理の父母などに対する扶養義務がなくなる

死後離婚の手続きを取ることで相手側の両親と縁が切れるため介護や扶養を求められる心配がなくなります。介護を施設に頼る人は増えつつありますが、それでも将来の介護を自分の子や配偶者に期待する人は決して珍しくありません。特に女性の場合「介護は女がやるもの」というひと昔前の考えを押し付けられるケースも。

しかし姻族関係終了届を提出し、義両親と縁を切ることによって「扶養義務はない」と突きつけることができ義両親に何があっても関与せずに済みます。配偶者が亡くなったにも関わらず義両親との同居を強いられている方も、死後離婚によって同居の解消が期待できます。

扶養義務が発生する姻族の範囲

配偶者と結婚することで配偶者の血族は「姻族」となります。そして、民法において3親等以内の姻族は親族であると定められています。

第七百二十五条 次に掲げる者は、親族とする。
一 六親等内の血族
二 配偶者
三 三親等内の姻族
引用元:民法|e-Gov法令検索

すなわち結婚することで以下の人物が自分の親族としてみなされるようになり、配偶者が亡くなったあとも姻族関係が解消されない限りは親族であり続けます。

  • 配偶者の両親
  • 配偶者の祖父母
  • 配偶者の兄弟
  • 配偶者の叔父・叔母・甥・姪

親族である以上、扶養が必要になった際にはあなたに扶養義務が発生します。民法においては3親等以内の親族に扶養義務が発生することがある旨が明記されています。

第八百七十七条 
(中略)
家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
引用元:民法|e-Gov法令検索

実際に裁判所が扶養義務を定めることは稀ですが、絶対に無いとは限りません。しかし姻族関係終了届を提出することによって扶養義務が発生することを事前に防げます。

配偶者の親族の介護義務については、以下の記事でさらに詳しくまとめていますので、気になる方はぜひお読みください。
親の介護で離婚できる?介護離婚の現状&離婚の可否、決断すべきか迷ったときの対処法

配偶者と不仲だった場合は関係を断てる

死別した夫婦の中には、生前から離婚を検討していた、もしくは仲が良くなかった夫婦もいるはずです。死別は離婚とは異なり、完全に相手と縁が切れるわけではありません。しかし死別離婚を選択することで相手ときっぱりと縁を切ることができます。

亡くなった人を弔う気持ちは大切ですが、生前の夫婦関係が原因で法事やお墓参りを苦痛に感じる方はゼロではないはずです。実際に「配偶者と同じ墓に入りたくない」というように、亡くなった配偶者と完全に縁を切ることを目的に死別離婚を選ぶケースも珍しくありません。

祭祀承継者にならなくてよい

祭祀承継者とは、お墓や仏壇、位牌などの祭祀財産を受け継ぎ、先祖の祭祀(仏教における法要・供養など)を主催する人を指します。親族のうち誰が祭祀承継者になるかは法的に規定はありませんが、夫婦いずれかが亡くなった場合はその配偶者が祭祀承継者になるケースが多いでしょう。

祭祀承継者となった場合、配偶者が死んだ後に法要をしなくてはなりません。あなた自身は必要がないと思っていても、配偶者の親族側が法要を開催するように要求してくる可能性も。死後離婚をすることによって配偶者側の家族とは他人になれるため、祭祀継承者の重圧から解放されるというメリットがあります。

死後離婚は相続や年金、苗字に影響する?

死後離婚には義実家と縁を切れる、扶養義務がなくなるなどのメリットがあります。しかし実際に届出をするとなると、遺産の相続権や遺族年金がどうなるのかが心配な方も多いでしょう。

配偶者の苗字を名乗っている方は、死後離婚によって苗字が戻るのか気になるかもしれません。結論から述べると死後離婚によって相続や遺族年金、苗字に影響が及ぶことはありません。

遺産相続の権利は消滅しない

「死後離婚」は、姻族関係終了届によって亡くなった配偶者の親族との姻族関係を終了することを指します。影響が及ぶのはあくまでも配偶者の親族であり、亡くなった配偶者と自分との関係は変わりません。したがって配偶者の財産はそのまま相続することができます。

また、配偶者の血族の遺産を相続する権利はもともとありません。そのため姻族関係終了届の提出によって本来相続できたはずの遺産が相続できなくなることも一切ありません。

遺族年金も引き続き受給できる

遺族年金は、年金の被保険者だった人が亡くなったとき、その人の収入によって生計を立てていた人が受けとれる年金制度のことです。配偶者が亡くなった後に遺族年金を受け取っている方の中には、年金への影響が心配で死後離婚に踏み切れないという方もいるかもしれません。

しかし姻族関係終了届は亡くなった配偶者との関係には影響を及ぼさないため、遺産相続と同様に遺族年金も受給し続けることができます。

姻族関係終了届の提出だけでは旧姓に戻らない

繰り返しになりますが、姻族関係終了届はあくまでも配偶者の血族との姻族関係を終了する手続きに過ぎないため、亡くなった配偶者とあなたとの関係は変化しません。

そのため、姻族関係終了届を提出しただけでは苗字は旧姓に戻りませんので注意しましょう。婚姻前の姓に戻したい場合は、区市町村役場に「復氏届」を提出することで手続きができます。

なお復氏届と姻族関係終了届はお互いに影響はありません。姻族関係終了届を提出したから必ず復氏届を提出しなくてはいけないというわけではなく、姻族関係終了届を提出せず復氏届を単体で提出することも可能です。

死後離婚による子どもへの影響

死別した配偶者との間の子どもは、配偶者にとっては直系血族にあたります。姻族関係終了届の提出によって関係が切れるのは、あくまでも亡くなった配偶者の家族との姻族関係に限られ、血族の縁が切れることはありません。

そのため姻族関係終了届が子どもに影響を及ぼすことは一切ありません。亡くなった配偶者の父母は子どもにとっては祖父母であることに変わりはありません。

子の戸籍や姓には一切影響がない

死後離婚により、子どもの戸籍に何らかの記載が残るのではないか、と不安になる方もいるかもしれません。実際に姻族関係終了届を提出した場合、届出をした本人の戸籍の身分事項に「姻族関係終了」が追加され、以下の項目が記載されることになります。

  • 死亡配偶者の親族との姻族関係終了日
  • 死亡配偶者氏名
  • 死亡配偶者の戸籍

これらの記録が残るのはあくまでも届出人本人の戸籍ですので、子の戸籍には影響はありません。また姻族関係終了届は姓に影響を及ぼしませんので、子の姓が変わることもありません。

そのため自分が復氏届によって結婚前の苗字に戻した場合、自分と子の苗字が異なることになります。子を自分と同じ姓にするためには、子の居住地を管轄する家庭裁判所で「子の氏の変更許可」の申し立てを行い、許可審判書を得た上で役所で手続きを行いましょう。

子への遺産相続にも影響しない

姻族関係終了届は子どもと死亡配偶者との血族関係には影響を及ぼしませんので、子どもの遺産相続権にも影響はありません。

配偶者の親が死亡した場合、子にあたる配偶者が遺産相続人になりますが、配偶者が亡くなっている場合はその子が代わりに相続人になります。これを代襲相続と呼びます。死後離婚によってこの代襲相続が無効になることもありません。

配偶者親族への扶養義務は継続する

姻族関係終了届の提出により、届出人と配偶者側親族の姻族関係はなくなりますので、扶養義務もなくなります。しかしこれはあくまでも届出人本人に限ります。

子と配偶者側親族に血の繋がりがあることは変わりがなく、法律上では直系血族として扱われることになります。そのため子に配偶者側親族の扶養義務が課せられる可能性があります。

死後離婚を行う際の注意点

死後離婚を行うことによって配偶者側の親族と縁を切ることができ、義両親への介護や扶養の義務がなくなります。さらに遺産や遺族年金の受け取りには何の影響も及ぼさないため、メリットが多い手続きだと考える方もいるでしょう。

しかし死後離婚(姻族関係終了届の提出)は軽い気持ちで行うべきではありません。死後離婚を行う際の注意点を最後にまとめましたので、これから姻族関係終了届を提出しようと考えている方は参考にしてください。

一度提出した姻族関係終了届は取り消せない

姻族関係終了届には提出期限はなく、配偶者の死後であればいつでも提出できます。しかし一度届出を出してしまうと、取消はできません。

姻族関係終了届によって遺産が相続できなくなる等の経済的なデメリットが生じることはありませんが、配偶者側の家族との関係は大きく変わることになります。一時的な恨みや怒りなど感情で決めるのではなく、熟慮した上で手続きをしてください。

死後離婚による相続放棄はできない

配偶者の死後、相続できる遺産は不動産や預貯金など利益がある財産だけとは限らず、借金などの負の遺産も含みます。死後離婚を行っても遺産の相続権に影響が出ないというのは先に述べた通りであり、負の遺産も同様です。

仮に亡くなった配偶者に借金があり遺産相続を拒否したい場合、姻族関係終了届では手続きができませんので注意してください。遺産相続を拒否する場合は相続放棄の手続きを行う必要があります。

相続放棄ができる期間

民法において、相続放棄ができる期間は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内」と明示されています。相続の開始とは、被相続人が亡くなったことを指します。

配偶者の場合、亡くなったことをその日のうちに知ることが大半ですので被相続人が亡くなった日から3ヵ月以内と解釈します。3ヵ月を超えた場合は原則として相続放棄の手続きはできません。「期限を知らなかった」というような理由による延長は認められません。

ただし後から借金の存在を知った場合、例外として期限を過ぎていても相続放棄が可能となります。手続きができる期間は借金を知った日から換算し3ヵ月間です。後から発覚した場合でも焦らず、新たな期間内に相続放棄をするか否かを検討しましょう。

相続放棄の手続き方法

相続放棄の手続きは被相続人が生前最後に住んでいた住所を管轄する家庭裁判所で行えます。自分でも手続きが可能ですが、準備する書類が多い上、相続開始後期限内に手続きを行わなければなりません。忙しい方は弁護士に依頼することをお勧めします。

死別した配偶者の家族と関係が悪化する恐れがある

姻族関係終了届は意図的に配偶者の親族と縁を切る行為にあたり、いわゆる絶縁状のようなものですので、義実家との関係が極めて悪化する恐れがあります。これまでは「親戚である」という前提のもと受けられていた援助やサポートが突然なくなったり、万が一の時に頼れなくなったりすることを覚悟しなくてはいけません。

死後離婚によってお墓参りや法要への参加を拒絶される可能性もあります。配偶者の親族は嫌いでも、亡くなった配偶者自身のことは大切に思い続けている方もいるはずです。そのような方は本当に義実家と縁を切ってよいのか、法要への参加やお墓参りが一切できなくなってもよいのかをよく考えましょう。

姻族関係終了届は提出しても通知はない

姻族関係終了届の届出にあたっては親族の許可等は必要なく、自由に提出ができます。提出しても親族への通知等は一切ないため、親族が知らないままになる可能性も十分にありえます。

姻族関係が終了していることを親族が知るためには、以下のいずれかの手段を取る必要があります。

  • 親族があなたの戸籍を見る
  • あなたから報告をする

すぐに同居を解消したい場合、介護を放棄したい場合は自分で報告をしましょう。姻族関係終了届は存在自体を知らない方も多いですので、親族に納得してもらえるよう丁寧に説明するようにしてください。

子どもへの影響もよく考える

死後離婚の手続きをすることにより、「なぜ死後に嫌がらせのようなことをするのか」「両親が仲良かったのは嘘だったのか」等とマイナスに受け止める子も中にはいます。子どもがいる場合は死後離婚と離婚は違うことを伝え、理解してもらってから手続きをするようにしてください。

また自分と義両親との関係はよくなかったとしても、自分の子と義両親の仲が孫と祖父母として良好だった場合は死後離婚による関係の変化で子どもが傷つく恐れもあります。義両親に子どもの送迎や学費などのサポートを受けていた場合、突然打ち切られる可能性があることも覚悟したほうがよいでしょう。

まとめ

死後離婚は夫婦間の離婚とは異なり、姻族関係終了届を提出し配偶者の親族との姻族関係を終了する手続きを指します。配偶者親族との姻族関係を終了することにより、配偶者の親族を扶養する義務を課せられることがなくなります。亡くなった配偶者との関係が変化することはないため遺族年金や遺産は受け取ることができます。

しかし姻族関係終了届は一度提出すると取り消しができない上、義実家との中が極めて険悪になる恐れがあります。子どもがいる場合は子どもへの影響も考慮し、十分に考えた上で手続きを行いましょう。

姻族関係終了届を提出しているか迷っている方は、法律の専門家である弁護士に相談することで助言をもらうことができます。独断で届出を行うのではなく、第三者の意見も仰いだ上で決めるようにしてください。

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