- 「1年別居すると離婚できる?」
- 「なるべく早く別居するための秘訣が知りたい」
別居は離婚への大きな一歩となりますが、別居を経て離婚したいと考えている人の中には「1年程度別居すれば離婚できるのでは?」と浅慮している場合も。果たして1年程度の別居で、本当に離婚できるのでしょうか。
そこで「1年の別居期間で離婚できるのか?」という疑問を中心に、離婚に必要な別居期間や離婚にまつわる期間を詳しく解説。別居が長引く原因や別居が短くても離婚が認められるケースなども紹介するので、なるべく早く離婚したいと考えている方は参考にしましょう。
別居期間が1年あると離婚できる?
まずはこの記事を読んでいる方の一番の疑問点であろう「別居期間が1年あると離婚できるのか」という疑問について、詳しく解説していきます。
実態では1年以内の離婚が多数
厚生労働省が発表した統計(平成20年度)によると、同居をやめたときから離婚届けを出すまでの期間(別居期間)の割合を見ると、1年未満というケースが8割を超えています。実態では別居期間1年以内の離婚が最も多いことが分かります。
というのも日本では、双方の話し合いのみで離婚する「協議離婚」の割合全体の9割近くと最も多いため。裁判を経て離婚する「裁判離婚」では下記のように、別居1年未満の割合が協議離婚と比べて2割以上減少します。
離婚の種類/別居期間 | 1年未満 | 1年~5年 | 5年以上 |
---|---|---|---|
協議離婚 | 85.1% | 10.6% | 4.3% |
裁判離婚 | 64.4% | 28.6% | 7.0% |
合計 | 82.5% | 12.8% | 4.7% |
裁判の目安となるのは3年以上
協議や調停で離婚の話し合いがまとまらないと、離婚裁判へと進むことになりますが、離婚裁判で離婚が認められる別居期間の目安は3年~5年となっています。これは裁判で「婚姻関係の破綻」を示す客観的な事情として、相当の別居期間が必要となるため。
3年以上別居しているという事実は「これだけ別居が続いているのであれば、夫婦としてやり直すのは不可能だろう」と裁判官が類推できる理由となります。婚姻関係が破綻しているかどうかは、第三者が知ることは難しいため、別居期間の長さという物差しで婚姻関係が破綻していると判断するという訳です。
ただ、3年以上で必ず離婚が認められるかはケースバイケースで、夫婦の年齢や同居期間、別居の理由なども考慮して総合的に判断されます。
離婚裁判の手続き方法や、裁判が長引くケースについては、こちらの記事を参考にしましょう。
「離婚裁判の期間を手続きの流れごとに解説!長引くケース・期間を短縮する秘訣とは?」
別居から裁判までの最短期間
裁判で離婚が認められるのは、3年~5年が目安だということが分かったところで、実際に別居から裁判の判決が出るまでどのくらいの期間がかかるのでしょうか?こちらは、別居から離婚裁判控訴審決定までの最短期間を示す一覧です。
離婚までの流れ | 最短期間 |
---|---|
別居開始から離婚交渉開始まで | 1カ月前後 |
離婚交渉開始から交渉決裂まで | 2~4カ月 |
離婚調停開始から離婚調停不成立まで | 6~9カ月 |
離婚裁判開始から離婚裁判判決まで | 1年前後 |
離婚裁判控訴審開始から離婚裁判控訴審決定まで | 6~8カ月 |
かかる期間の目安によると、離婚調停開始から離婚訴訟が終わるまでは最低でも2年以上かかることが分かります。仮に別居開始から半年で離婚交渉を始めたとすると、離婚裁判控訴審で決定が出るまで3年以上の別居期間ということに。よって別居期間が半年程度でも、将来裁判で離婚判決となる可能性は高まります。
裁判で別居が認められるには最低でも3年かかると言いましたが、これは離婚裁判で判決が出るまでの間です。調停や裁判手続きの間も別居期間とみなされるため、別居から離婚までのハードルは相当低くなるでしょう。
離婚前・離婚後の手続きの流れと離婚種類別の期間について詳しくは、こちらの記事を参考にしてください。
「離婚前・離婚後の手続きの流れを解説!離婚の条件や種類別の期間、注意点とは」
別居期間が短くても離婚が認められるケース
別居期間が3年に満たなくても、場合によっては1年程度でも裁判で離婚が認められるケースがあります。
相手が有責配偶者
相手が有責配偶者と認められると、別居直後でも離婚が認められる可能性があります。有責配偶者とは、離婚原因となる婚姻関係を破綻させるような行為をした配偶者のこと。離婚裁判では、民法第770条1項に規定されている「法定離婚事由」があると、離婚の判決が出されます。
法定離婚事由と認められるものは主に5つあり、それぞれの詳細はこちらです。
- 不貞行為
- 性交渉を伴う浮気・不倫
- 悪意の遺棄
- 生活費を渡さない、理由がない別居など夫婦としての義務を故意に果たさないよう行為
- 3年以上の生死不明
- 事故や災害に乗じて故意に行方をくらました状態が3年以上続いたとき
- 回復の見込みがない強度の精神病
- 統合失調症・認知症・双極性障害・偏執病など治る見込みがない精神病に
- その他婚姻を継続しがたい重大な事由
- DV・モラハラ・性的不一致・配偶や親族との不仲・過度な宗教活動など
相手の不貞行為やDV、モラハラなどが裁判で認められると、別居期間が短くても、もしくは別居していなくても裁判で離婚が認められます。
同居期間が短い
そもそもの同居期間が短いと、裁判で認められる別居期間の目安よりも短くても離婚が認められます。上で説明したように別居期間の目安はケースバイケースで、結婚して同居を開始してからの期間が半年程度だと、その後の別居期間が2年に満たなくても離婚が認められます。
というのも裁判で離婚が認められる別居期間は、婚姻期間との比較で判断されるためです。同居期間30年以上の夫婦にとって3年の別居は短い期間ととらえられますが、同居1年の夫婦にとっては相当長い期間といえるでしょう。別居期間の目安は、同居期間との比較による相対的な長さということを覚えておきましょう。
離婚の意志が固く修復が困難
離婚を求めている側の離婚の意思が固く、夫婦関係の修復が難しいと判断されると、別居期間が短くても離婚が認められるでしょう。例えば別居以前から分かりやすい形で離婚の意思を相手に伝え続け、関係の修復を期待できないと裁判所の目から見ても明らかだと、別居期間が3年に満たなくても離婚が認められる可能性が。
離婚を前提とした別居に必要な準備や注意点については、こちらの記事を参考にしましょう。
「別居に必要な準備をシチュエーション別に解説!別居に関する注意点とは?」
離婚までが長引く・離婚が認められないケース
離婚までの別居期間が長引いたり、離婚が認められないケースというのも存在します。
離婚までの期間が長引くケース
離婚までの別居期間が長引くのは、次の3つのケースです。
別居原因がどちらにもない
別居の原因が性格の不一致や単なる夫婦喧嘩、政治や宗教に対する考えの違いなど、どちらかに責任があるといえないようなケースでは、別居期間が相当長くても離婚が認められない可能性があります。というのも性格の不一致や価値観の違いは、当人同士にとって離婚のきっかけになりやすいものですが、それだけを理由に離婚が認められるものではないためです。
前出の通り、裁判で離婚が認められるためには法定離婚事由が必要です。性格の不一致などで別居を始めた場合、その理由が「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するかの判断に、5年程度の別居期間が必要となります。そのため、上記のような理由で離婚したいと思ったら、5年ほどの別居期間を経てから裁判所に夫婦関係の破綻を認めてもらうようにしましょう。
有責配偶者からの離婚請求
浮気やDVをした側からの離婚請求では、相当の別居期間がないと離婚が認められません。自分が婚姻関係を破綻させるような理由を作っておきながら、相手に離婚を求めるような行為は、民法の「信義誠実の原則」に反するため。基本的に有責配偶者からの離婚請求は認められませんが、例外的に次のような条件を満たせば離婚が認められる可能性があります。
- 10年程度の長期間の別居
- 未成熟子がいないこと
- 離婚により相手配偶者が社会的・精神的・経済的に過酷な状況に置かれないこと
過去の判例からみると、有責配偶者からの離婚請求では、少なくとも10年程度の別居期間が必要になる可能性があります。また長期間の別居の他には、夫婦の間に扶養しなければならない子どもがいないことや、財産分与等による経済的援助、精神的な支援も必須です。
中には別居期間が20年以上でも離婚が認められない例もあるので、有責配偶者からの離婚請求が認められるのは、相当ハードルの高いものといえるでしょう。
相手が離婚に応じてくれない
相手がなかなか離婚に応じてくれないと、別居期間が長期に及ぶ可能性が高いです。そもそも離婚するかどうかを相手との話し合いで合意できないと、離婚調停や離婚裁判といった裁判所の手続きが必要となるため。離婚調停には半年ほど、離婚裁判には1年以上かかり、その上の控訴審まで行くとさらに別居期間が延びます。
とくに夫婦間の話し合いで離婚できないという場合、法定離婚事由がないことが多いです。法定離婚事由がないと裁判で認めてもらえる可能性が低く、夫婦関係が破綻しているとみなされるためには相当の別居期間が必要となります。
離婚が認められないケース
そもそも離婚が認められないケースもあります。
家庭内別居
家庭内別居は、「別居」という言葉が入っているものの、通常の別居と違って婚姻関係の破綻を示す事実にはなりません。家庭内別居とは、同居しているものの家の中で顔を合わせなかったり、寝室や食事を別にしていたりという状態のことを指します。
家庭内別居の場合、夫婦が同じ家で一緒に暮らしているため、はたから見て夫婦関係が破綻していると分かりにくいからです。家庭内別居の状態で離婚を認めてもらうには、家庭内で顔を合わせていないことや寝室、食事を別にしていることなどを証明しなければなりません。
家庭内別居ではそうした証明が難しいため、家庭内別居で離婚が認められにくいといえます。
単身赴任
家庭内別居と同様、単身赴任も別居期間に含まれないため、それだけで離婚が認められるケースはありません。単身赴任は、会社の命令で労働のために家族と住まいを分けているに過ぎません。単身赴任中でも夫婦仲が円満なことは普通なため、それだけで離婚が認められるのは難しいでしょう。
ただし単身赴任中に別居の意思を表示したり、相手に離婚したいと伝えることで、単身赴任中でも別居期間とカウントされる可能性があります。そのためには、別居や離婚の意思表示を証拠として残せる手紙やメールで自分の意思を示す必要が。
また単身赴任先から「もう自宅には帰らない」という意思をもって別に暮らす状態を続けることで、最後に自宅に帰った日を別居開始日とみなして別居期間を計算できる可能性もあります。
単身赴任中に離婚したいと言われた方は、認められるケースや注意点など、こちらの記事を参考にしましょう。
「単身赴任中に離婚したいと言われたら…認められるケースや離婚方法、注意点とは?」
復縁の余地がある
夫婦関係に復縁の余地があるとみなされると、たとえ5年以上別居していても離婚は認められません。例えば別居しているものの、一緒に遊びに行ったり定期的に性交渉を持っていたりするような状況です。このような場合だと、別居期間の長さのみで婚姻関係が破綻していると判断できないためです。
なるべく早く離婚するためのポイント
別居のまま何年も過ぎてしまっては、子どものためにも自分のためにも良くありません。なるべく早めに離婚するためには、次のようなポイントに気を付けて離婚を進めていきましょう。
なお、早く別居したい人がとるべき行動については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
「早く離婚したい人が取るべき7つの方法|スムーズに有利に離婚するためのポイントとは?」
協議離婚で離婚する
協議離婚を目指すのが、早期に離婚するためのポイントです。協議離婚では夫婦の話し合いのみで離婚に合意し、離婚届けを提出すれば離婚が成立するので、余計な時間や手間がかかりません。法定離婚事由がなくても、自分が有責配偶者でも、相手が応じれば離婚できるので、別居期間を設ける必要もありません。
これから離婚を考えている方は、まずは協議離婚を目指すことから始めましょう。こちらに非があるときは素直に謝罪し、感情的にならずにこれ以上結婚生活を続けられないことを伝えてください。当人同士で話し合いが難しい場合は、弁護士に交渉を依頼するとスムーズに進められるでしょう。
協議離婚で慰謝料をもらえるか知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
「協議離婚の慰謝料相場が知りたい!増額・減額できる秘訣や慰謝料の決め方を解説」
無断で家を出ない
これ以上一緒に暮らせない・暮らしたくないからといって、勝手に家を出ていくのはNGです。DVなどこちらの心身に危害を加えられる恐れがあるケース以外は、「悪意の遺棄」と判断され、こちらが有責配偶者になってしまうリスクがあるためです。悪意の遺棄とは夫婦関係を意図的に破綻させる行為のことで、無断で家を出て別居する行為も該当します。
別居を始める場合は、一緒に暮らせない理由や離婚を前提とした別居であることを相手に伝え、LINEやメールなどに内容を残すようにしましょう。また相手が別居に同意したらその内容を書面に残し、双方の署名捺印をしておくと、いざというときに安心です。
別居中は他の異性と交際しない
別居中は、配偶者以外の異性と交際するのはやめましょう。別居理由が他にあっても「別居前からその人と付き合っていて、不倫によって別居することになったのでは」と思われてしまうためです。結果的に離婚の話し合いがまとまらなくなり、不倫の証拠を取られてしまうとこちら側にも法定離婚事由があったことになります。
基本的に不倫関係でない限り証拠は出ないので、慰謝料を払う必要はありません。しかし性的関係がなくても別居中の家に出入りしていると、その写真や動画を証拠として不倫が認められる可能性が。それでなくても余計な対応や口論が増える可能性があるため、離婚までの時間が延びたり精神的な負担が増えるでしょう。
離婚原因となる証拠を確保
離婚原因が相手にある場合は、別居前にその証拠を確保しておくと、離婚がスムーズにできます。証拠を確保できていると離婚協議もスムーズにでき、調停や裁判になってもこちらの有利に進められるため。相手の不倫で離婚したい場合は、ラブホテルに出入りしている画像や、不倫を認めた音声などが証拠となります。
相手のDVやモラハラが原因のときは、医師の診断書やケガをした個所の写真、相手の言動を記録した音声や動画が証拠になります。別居してしまうとこれらの証拠が取りにくくなってしまうため、なるべく別居前に証拠を確保することをおすすめします。
離婚理由ごとの慰謝料相場について知りたい方は、こちらの記事を参考にしましょう。
「離婚慰謝料の相場が知りたい!離婚理由や婚姻期間による相場・金額をアップさせるポイントを解説」
話し合いがこじれたら離婚調停
双方の話し合いがこじれた場合は、速やかに離婚調停を申し立てましょう。離婚調停は調停委員2名を間にして、双方の希望や主張をすり合わせる手続きです。調停の場では協議離婚同様、法定離婚事由がなくても双方が合意すれば離婚が成立します。
離婚調停にかかる期間を極力短くするには、こちらの記事を参考にしてポイントを押さえましょう。
「離婚調停の期間を短く有利にするには?長引く原因や疑問を解決して新たな一歩を」
離婚問題に強い弁護士に相談する
協議離婚にしろ、調停や裁判を経て離婚する場合でも、離婚問題に詳しい弁護士に依頼できると、早めに離婚できます。また自分のケースではどのくらいの別居期間を設ければ離婚できるのかの判断も可能に。弁護士を代理人に立てることで、離婚への本気度を相手に示せるため、これまで離婚について真剣に考えていなかった相手でも、離婚についてまじめに考えるきっかけになります。
離婚調停での離婚成立の割合は5割程度ですが、弁護士が関与しているケースでは、離婚合意の成功率はさらに高まります。さらに弁護士は依頼人の利益になるように動いてくれるため、養育費や財産分与なども有利になるように交渉してくれます。より早くより有利に離婚するには、弁護士の助けが欠かせません。
まとめ
離婚に必要な別居期間は、協議離婚では1年ですが、裁判で認められるには3年~5年必要です。とはいえ同居期間が短かったり、相手に離婚原因がある場合は目安よりも短い別居期間で離婚できることも。別居期間は夫婦の事情によりケースバイケースで、様々な背景を考慮して決められます。
一方で、有責配偶者からの離婚請求や別居理由がどちらにもない場合、相手が頑固として離婚を認めない場合は、離婚までの期間が長引きます。また家庭内別居や単身赴任は別居期間に含めることはできず、復縁の余地がある場合も離婚までの期間が長くなります。
なるべく早く離婚するためには、別居前に証拠を確保し合意の下で別居を開始しましょう。まずは協議離婚を目指し、交渉が行き詰まったら離婚調停を申し立ててください。そして何より重要なのが弁護士に依頼すること。離婚までの期間を短くすることができるのはもちろん、こちらに有利になるように交渉してもらえます。
離婚のためにこれから別居しようと考えている方や、すでに別居を開始している方で早期の離婚を望む方は、ぜひ離婚問題に詳しい弁護士に相談してください。