- 「熟年離婚したい…後悔しないためのポイントは?」
- 「熟年離婚のメリット・デメリットが知りたい」
夫が定年を迎え、子どもが独立し、これから新しい夫婦の形となるにあたって離婚を考える人がいます。いわゆる「熟年離婚」です。この記事を読んでいる方の中には、熟年離婚をしようか悩んでいる人もいるのではないでしょうか。
そこでこちらでは、熟年離婚の実態と熟年離婚しやすい夫婦の特徴、離婚を考えるようになるきっかけなどを詳しく解説。後悔せず熟年離婚するには、事前にメリットやデメリットを良く考え、お金に関することなど注意すべきポイントをおさえること。第二の人生を幸せなものにするため、もう一度夫婦のことや自分自身を振り返りましょう。
熟年離婚の実態とは
まずは熟年離婚の定義と実態から解説していきます。
熟年離婚の定義
「熟年離婚」に明確な定義はありません。具体的に結婚何年目の離婚かという明確な定義はないものの、おおよそのイメージとして「長年連れ添った中高年の夫婦の離婚」という意味合いで使われます。一般的に夫婦の年齢が50歳以上、結婚20~25年以上連れ添った夫婦の離婚を「熟年離婚」といいます。
熟年離婚は増加傾向
厚生労働省「平成30年(2018) 人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、熟年離婚の件数は年々増加傾向にあります。
同居期間/調査年 | 昭和60年 | 平成7年 | 平成17年 | 平成27年 | 平成28年 | 平成29年 | 平成30年 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
総数 | 166,640 | 199,016 | 261,917 | 226,215 | 216,798 | 212,262 | 208,333 |
20年以上 | 20,434 | 31,877 | 40,395 | 38,644 | 37,601 | 38,286 | 38,539 |
離婚件数の総数は平成17年をピークに減少傾向にあります。一方で同居期間20年以上の夫婦の離婚は、右肩上がり。増加傾向にあることが分かります。同居期間別でみると、同居25年~30年未満の夫婦の離婚件数は、昭和60年に比べて5,422件、同居30年~35年の夫婦は3,237件、同居35年以上の夫婦でも5,026件も増加しています。
また令和4年度「離婚に関する統計の概況」を見ても、同居期間5年未満の離婚は調査を開始した昭和25年から減少傾向にある一方で、同居期間が20年以上の離婚は、昭和25年以降上昇傾向となっていて、令和2年には21.5%にまで増加。離婚件数のおよそ2割が、同居20年以上の熟年離婚だということが分かります。
熟年離婚となりやすい8つの原因
熟年離婚に至るにはいくつかの原因があるからと考えます。こちらでは熟年離婚になりやすい8の原因と、離婚を決意するきっかけについて紹介していきます。
性格・価値観の違い
性格の不一致や価値観の違いは、全世代の夫婦にとって離婚原因となります。価値観とは、何に優先順位があるかやそれぞれが大切にしている考え方など。例えば仕事に関してある人は「お金を稼ぐ手段」と考えていて、またある人は「自己実現のために欠かせないもの」と考えていれば、その二人は仕事に対する価値観が違いということに。
とくに熟年夫婦の場合は、結婚当初から気が付いていながらも、ずっと我慢していたというケースが見受けられます。子どもが独立したり、それぞれが定年を迎えたりで一緒に居る時間が増えるにつれ、相手の性格と相いれない、相手の価値観に合わせることにつかれたと感じ、老後を一緒に暮らしたくないと思い離婚を考え始めます。
夫が嫌いでたまらないという方は、こちらの記事を参考にして離婚の可否や対処法を知りましょう。
金銭感覚のズレ
金銭感覚のズレもまた、熟年離婚の原因です。こちらも価値観の違いの一種といえるでしょう。とはいえ夫婦の間ではお金の問題が付きまといます。例えば夫がお金に細かいケースでは、「食料品を買い物する度にレシートを夫に渡しお金を受け取るというやり方に耐えられない」「夫から渡される少ない小遣いでは、美容院も気軽に行けない」という不満が生じます。
その逆に妻の金遣いが荒いケースでは、「いくらお金を渡してもすぐに使い果たしてしまう…自分の年金や退職金までなくなってしまうのでは」と怖くなり、離婚を考えるようになるという場合も。いずれの場合も、「これからはお金に関して我慢や苦労をしたくない」と考え、離婚を検討するようです。
モラハラやDV
熟年離婚を考える人の中には、相手からのモラハラ(モラルハラスメント)やDV(ドメスティックバイオレンス:家庭内暴力)が原因でというケースもあります。DVは身体や物に暴力をふるうことで、モラハラとは言葉や態度、無視などで相手に精神的な暴力を加えること。
長年このような行為を繰り返していた夫は、今さら変わるのは難しいでしょう。「子どものため」と離婚を耐えていた女性は、子供の独立をきっかけとして離婚に踏み切る場合があります。
無視する夫と離婚したいとお考えの方は、こちらの記事を参考にしましょう。
「無視する夫と離婚したい!離婚するための条件や慰謝料請求について解説」
(過去の)異性関係や性的不満
配偶者の過去の異性関係や性的不満が原因で、熟年離婚を考える人もいます。不倫によって夫への信頼を失ったものの、子どものために離婚をせずに我慢しているという妻は多いもの。しかしそうした妻が、子どもの独立をきっかけに熟年離婚を決意する場合があります。
また長年セックスレスが続いている夫婦の場合も、熟年離婚へつながる可能性があります。夫婦のどちらも性交渉を望んでいないケースは問題ないのですが、夫婦のどちらかが望んでいる場合は、スキンシップが減ることで相手への愛情が薄れてしまう原因に。このような問題からも熟年離婚に至る夫婦がいます。
浮気と不倫の違いや、不貞行為の定義については、こちらの記事を参考にしましょう。
「浮気と不倫の違いはある?法律上の不貞行為の定義や『不倫しているかも』と思ったときの対処法」
義家との関係
嫁姑問題など配偶者の親や親せきとの人間関係が原因で、熟年離婚を決意する場合もあります。義理の両親や親族との関係が悪化した場合、その長年たまった不満が熟年離婚という形で爆発してしまうことが考えられます。とくに夫婦の年齢が50歳を超えると出てくるのが、それぞれの親の介護問題です。
自分の親ですら介護するのは大変なのに、長年の確執がある義理の両親を介護するとなると、もっと苦労することは目に見えています。「嫌いな舅(姑)の介護なんてしたくない」と考え、離婚さえすれば介護をしなくてもいいという一心で熟年離婚へ舵を切ります。しかしそこには長年親を任せっきりだった夫への不満や怒りもあるようです。
嫁姑問題で離婚をお考えの方は、こちらの記事を参考にしてください。
「嫁姑問題を理由に離婚や慰謝料請求をしたい!離婚を決断する前にすべきことは」
高齢化による介護の問題
夫婦が高齢化すると、親だけでなく夫婦自身の介護の問題も出てきます。昔は今よりも寿命が短く、離婚を考える前にどちらかがなくなるというケースも多かったはずです。しかし寿命が延びたことで、高齢になってもなお夫婦が健在のケースが増加し、夫婦どちらかに介護が必要になる状況も大いにあります。
円満な夫婦なら「これまで支えてもらったのだから」と介護を受け入れるでしょうが、これまで何度も離婚を考えたことのある夫婦の場合「今まで苦しめられてきたのに、介護までは耐えられない」と離婚を考えるようになります。介護保険制度によって家族だけが介護をするという慣習がなくなったのも、離婚しやすくなった一因です。
配偶者の認知症を理由に離婚ができるかについては、こちらの記事を参考にしてください。
「配偶者の認知症を理由に離婚は認められる?認知症の度合に応じた対処法も紹介」
相手への不満の積み重ね
熟年離婚と結婚間もない夫婦の離婚との大きな違いは、相手への不満の積み重ねがあるということに尽きるでしょう。「自分だけが家事を負担している」「妻がセックスに応じてくれない」という不満やストレスが、この20年以上の結婚生活の間に積み重なり、何かのきっかけやタイミングで離婚を決意します。
また今までは子育てや仕事などでよく考えることもしていなかった違和感でも、子どもの独立や定年により嫌でも向き合わなければならなくなり、夫婦で過ごす時間が増えたことでことさらに目に付いてストレスとなるという場合も。今まで大きな喧嘩をしてこなかった夫婦でも、ある日突然離婚を切り出される恐れもあります。
離婚へのハードルが下がった
離婚に対してハードルが下がったことも、熟年離婚が増えた原因です。一昔前までは世間体などを気にして離婚を我慢する人も多くいました。しかし今は離婚件数自体が昭和に比べて倍増しています。さらに熟年世代の離婚は珍しくなく、世間的にもなじみが出てきています。
そのため「熟年離婚」が恥ずかしいことでなくなり、世間体を気にして離婚を躊躇する人も減ってきています。そればかりか「第二の人生をより良いものとするための方法」というプラスイメージで受け止められるようになったのも、熟年離婚へのハードルが下がった要因です。
熟年離婚する夫婦の特徴やきっかけ
熟年離婚する夫婦には、よくある特徴やきっかけがあります。もう一度自分たち夫婦に当てはまるのかチェックしてみましょう。
夫婦の特徴
熟年離婚へと向かいがちな夫婦には、次のような特徴があります。
- 夫婦間での会話があまりない
- 相手に感謝や謝罪の言葉を伝えない
- パートナーに対する悪口や不満が多い
- 一緒に出掛けたり時間を過ごすことが少ない
- 定年後も家事を手伝わない
- 共通の趣味がない
- 妻が仕事をしていて自由になるお金がある
夫婦一緒に出掛けたり趣味をしたりすることがないと、夫婦間での会話が生まれません。相手に対する悪口が多かったり、それとは逆に感謝の言葉を口にしないでいると、心まで離れてしまうでしょう。一般的な離婚同様、妻が新たに仕事をはじめたりして、自由になるお金が増えると離婚しやすい環境といえます。
とくに今まで専業主婦やパート勤めだった妻が、本格的に仕事を始める、1人での外出が増えるようになると、熟年離婚の準備の可能性も。
きっかけ①夫の定年退職
熟年離婚のきっかけとして多いのが、夫の定年退職です。夫との結婚生活に嫌気がさしている中、夫が仕事をしているうちはまだ我慢できたかもしれません。しかし定年退職を控え、毎日朝から晩まで顔を突き合わせることを考えると、熟年離婚の文字が頭をよぎるという人もいるのでは?
きっかけ②子どもの独立
子どもがいると、離婚は夫婦二人だけの問題ではなくなります。「子どものために」と離婚を我慢していた人もいるでしょう。しかし子どもの結婚や就職など独立に伴い、離婚を考えるようになります。この場合も夫婦間に問題があり、どちらかが不満を抱えている、または夫婦の両方がそれぞれに不満があるというケースがほとんど。
また子育てがようやく終わり、夫婦2人だけになって一息つき、一緒の時間を過ごすようになって「もうこの人とは暮らせない」離婚を考えるようなケースもあります。「離婚を切り出されるのでは?」と心配な方は、定年退職と子どもの独立という二つのタイミングに注意が必要です。
きっかけ③老後資金の見通しが立った
老後資金の見通しが立ったときも、熟年離婚を考えるタイミングです。とくに夫が定年し、退職金が入ることをきっかけに離婚に踏み切る妻がいます。退職金はたとえ夫の会社から支給されるものであっても、離婚するときの財産分与の対象となります。
分与の対象となるのは、夫が働いていた期間と結婚期間が重なる部分に応じた金額のみ。といっても熟年離婚の場合は、結婚期間が長いほど分与される退職金の金額も増えます。それにプラスして夫が積み立てた年金の一部を妻が受け取ることができる「年金分割」という制度もあります。
退職金の財産分与や年金分割により、離婚後の生活が老後まで問題なさそうだという計算ができた時点で、離婚を切り出すという計画的なケースもよくあります。
熟年離婚のメリット・デメリット
「離婚を後悔するのは?」という考えから、熟年離婚を迷っている人がいます。こちらでは熟年離婚のメリットとデメリットを紹介するので、本当に離婚したいのかを考えるヒントにしましょう。
メリット
熟年離婚のメリットは、何といっても「自由になれる」ことではないでしょうか。夫からの縛りや妻からの小言がなく、義理の両親に気を使う必要がなく自分の好きなことだけができます。何を食べてもいつ家に帰ってきても、それをとがめる人がいません。昔からやりたいと思っていた趣味や習い事に没頭することもできるでしょう。
とくに夫婦関係や義理の親族との関係に長年悩んできた方は、熟年離婚によって不満やストレスから解放されます。夫婦間のみならず家族や親族間での悩みがすべて解消されるのが、熟年離婚の大きなメリットです。
デメリット
何事も良い面があれば悪い面があります。こちらでは熟年離婚のデメリットについて紹介していきます。
淋しさや孤独を感じる
熟年離婚のデメリットに、淋しさや孤独を感じることがあります。とくに病気や体の具合が悪いときなどに「あんな夫(妻)でもいてくれたら…」と不安に駆られることがあるかもしれません。離婚当初は楽しくても、長年一人で生活するにつれ、次第に寂しさや孤独を感じることも。
どの世代でも感じる感情なのかもしれませんが、年齢が上がるにつれてできないことが増えたり淋しさが増していって、離婚を後悔することもあるようです。
家事の負担
とくに男性に多いのが、離婚後の家事問題です。今までは妻に家事をすべて任せきりにしていた人は、離婚により一人で生活せざるを得なくなると、毎日の食事作りや掃除、洗濯などの家事が負担となるのは避けられません。このようなときに「離婚しなきゃよかった」と後悔するケースがあります。
相続権がなくなる
熟年離婚の大きなデメリットが、配偶者が亡くなったときの相続権が失われること。相続の場面では、配偶者は税金の面でも優遇されています。しかし離婚すれば配偶者でなくなるので、当然相続とは関係なくなります。しかし配偶者なら、1億6千万円までの財産を相続した場合の相続税がかかりません。
相手が財産を持っている場合には、亡くなるまで離婚を避けた方が得になる可能性があるでしょう。
老後資金への不安
熟年離婚した場合、とくに女性側は老後資金面での不安が付きまといます。年金分割しても老後の生活に十分な金額を確保できる訳でなく、働けるうちは働かないと、生活ができない人もいるでしょう。とくに結婚期間中専業主婦だった人やパートでしか働いていなかった人は、離婚後に就職活動をしても年齢や長年のブランクにより、思うような仕事に就けずに生活に困窮する人がいます。
子どもや親族に迷惑をかける可能性
熟年離婚すると、子どもや親族に迷惑をかけてしまうかもしれないというデメリットがあります。離婚時には自分一人だけでも生活できると思っていたのに、実際に生活することができず、子どもや親族に金銭的な援助を求めるケースも。
また病気やケガ、加齢などで一人で生活できなくなり、介護が必要になった場合も子どもや親族に頼らざるを得ません。このようなときに離婚を後悔する可能性があります。
熟年離婚を後悔しないための注意点
熟年離婚を後悔しないためには、離婚前の準備がポイント。こちらでは、熟年離婚を考えている人のために、後悔しないために注意すべき点について解説していきます。
本当に離婚すべきか考える
熟年離婚を後悔しないために大切なのは、「本当にもう離婚しか方法がないのか」を考えること。新しい相手を見つけて気持ちが浮き上がり、一時の感情で離婚を考えていませんか?「どうせ言っても直らないからと、ぼんやりと離婚したいと思っていませんか?
一度相手の嫌なところが目に付くと、全てが嫌に見えがちですが、良いところを見る努力を怠っている場合も。維持時の感情や自分のことを棚に上げて相手の嫌な点ばかり見て離婚してしまうと、後から後悔する可能性が高いです。離婚を後悔しないためには、本当に離婚すべきかもう一度じっくり考えてからにしましょう。
離婚で受け取れるお金について考える
離婚時に受け取れるお金について考えるのも、熟年離婚を後悔しないため大切。とくに女性は一人になった後のお金に苦労しがちです。受け取れるものはもれなく受け取れるよう、事前準備や計算は念入りに行いましょう。
財産分与
結婚20年以上の夫婦であれば、2人で築いた財産も多いはずです。まずは離婚後に受け取れる財産分与はどれくらいになるのかをしっかり算出して、離婚後の生活設計のための資金にあてましょう。財産分与の対象になるのは、結婚後に購入した不動産や預貯金、株式や退職金などです。
独身時代に貯めていた預貯金や親族からの贈与、相続した財産は分与の対象とはなりません。まずは夫婦の財産をピックアップして、分与の対象になる・ならないで仕分けしましょう。相手に隠し財産がありそうなときは、別居前に調べておくことをおすすめします。
財産分与でかかる税金に関しては、こちらの記事を参考にしましょう。
「財産分与でかかる税金について|種類別・ケース別の税金計算方法や節税対策とは?」
年金分割
婚姻期間中に納付していた年金保険料は、年金分割として(元)配偶者と分割可能です。専業主婦や扶養の範囲内でパート勤めしていた第3号被保険者の方は、相手の同意なく年金分割を請求できます(3号分割)。原則離婚後に第3号被保険者側から「標準報酬改定請求書」と添付資料を年金事務所もしくは年金相談センターに提出することで手続き可能。
一方、夫婦共働きで年金を納めていた場合は、納付額の多い側から少ない側に年金の分割を請求できます(合意分割)。こちらは請求された側の合意が必要となるため、場合によってはトラブルに発展することも。離婚前に年金分割についての合意を取っておく必要があるでしょう。
いずれの手続きも、離婚した翌日から起算して2年以内に請求しなければなりません。年金分割で合意できたら、忘れずに手続きをするようにしましょう。
慰謝料請求の可否
熟年離婚の原因が相手の不倫やDVなどの場合、離婚時に慰謝料を受け取れる可能性があります。相手が合意すれば任意での交渉で受け取れますが、相手が認めず争う姿勢を見せれば最終的には裁判にまで発展する可能性が。裁判では慰謝料請求の根拠となる不法行為があったかを証明しなければなりません。
不倫相手と性交渉があったことが分かる証拠やDVでケガをしたときの写真、診断書などの証拠を集めておくことをおすすめします。
離婚慰謝料の相場については、こちらの記事を参考にしましょう。
「離婚慰謝料の相場が知りたい!離婚理由や婚姻期間による相場・金額をアップさせるポイントを解説」
受け取り前の退職金
前出の通り受け取り前の退職金も、離婚時に受け取れる可能性があります。退職金はあくまで働いてきた個人に支払われるものですが、「給与の後払い」との性質を持つ以上財産分与の対象となります。このとき離婚時にすでに退職金を受け取っているか、まだ受け取っていないかで分与の方法が変わってきます。
すでに退職金を受け取っている場合、実際に受け取った金額をもとに分配します。具体的には働いていた期間のうち婚姻期間に応じた分の退職金が分与対象です。例えば勤続年数40年、結婚期間30年、受け取った退職金2000万円とします。
財産分与の対象額:2000万円×30年÷40年=1500万円
受け取れる金額:1500万円÷2=750万円
退職金が離婚時にまだ支払われていない場合、現時点で自己都合により退職したと仮定して、退職金額を算出して財産分与の対象額を計算します。計算して出た金額の1/2が財産分与で受け取れる金額です。尚、離婚前に別居していた場合は、別居した時点の退職金額をもとに計算するのが一般的です。
退職金を財産分与として受け取る方法や計算の仕方については、こちらの記事を参考にしましょう。
「退職金も離婚時の財産分与になる!金額計算から請求方法まで解説します」
子どもや周囲への報告
熟年離婚で後悔しないためには、子どもや周囲への報告も大切です。熟年離婚の場合、子どもは成人して独立していることが多いでしょう。子どもが成人していれば、法律上取り決めする項目(親権など)はありません。
しかし子どもにとってはいくつになっても親は親。離婚を考えていることや、いざというときの連絡方法などをどうするかについて話し合っておくといいでしょう。
生きがいや友人を持つ
熟年離婚を後悔しないためは、生きがいや友人を持つことも重要です。とくに熟年離婚の場合、離婚後に感じる孤独感は若いときの離婚とは比べものになりません。日本人の平均寿命からすると、50代で離婚したとしてもあと30年は人生が残っています。
離婚後の人生を充実したものにするには、生きがいや人生の目標を持ち、一緒に趣味などを楽しめる友人を持って自分の居場所を作るようにしましょう。まだ生きがいを見つけられない方は、興味のある習い事や活動をするのもいいでしょう。生きがいと友人の両方を見つけられる可能性があります。
心身の健康に留意
離婚を後悔しないために大切なのは、自身の心身の健康です。せっかく熟年離婚して夫婦関係の悩みから解放されても、心身の健康を損なわれてしまっては心から離婚後の生活を楽しむことができません。そのためには離婚前から運動の習慣を身に着け食生活を見直し、趣味などで社会との接点を持つようにしましょう。
離婚後の生活設計をする
離婚時に受け取れるお金のシミュレーションをすることで、離婚後の生活設計が可能になります。離婚時に受け取れるお金と毎月の年金、給与などの金額を算出し、離婚後に何にいくらかかるか予測の家計簿をつけてみましょう。毎月の支出が分かれば、生活するためにはいくら必要かが分かります。
もし現時点での収入では生活が難しいようなら、今よりも稼げる仕事を見つける、生活保護の受給を検討する、別居して様子を見るなどの対策が必要です。
困ったら弁護士に相談
熟年離婚を検討している場合は、弁護士に相談することをおすすめします。相手に離婚を切り出す前に弁護士からアドバイスがもらえれば、より有利な離婚交渉が可能です。慰謝料請求や財産分与などでも、請求金額の増額が見込めます。しかし夫婦だけで離婚を決めるようなケースでは、法律的な離婚条件の検討が十分でない場合があります。
本来なら財産分与で数千万円もらえるはずなのに、法律の知識がないために数百万円しかもらえなかった、慰謝料を請求できる状況なのに、請求せずに離婚してしまったなど。離婚後の生活のために、請求できるものはきちんと請求し、請求される側は財産を取られ過ぎないように気を付けなければなりません。「弁護士に相談したいけど、費用が心配」という方は、まずは初回の無料相談を利用してみましょう。
離婚時の弁護士費用について心配な方は、こちらの記事を参考にしましょう。
「離婚時の弁護士費用を徹底解剖!費用をおさえるコツや注意点を紹介」
まとめ
熟年離婚とは結婚20年以上の夫婦が離婚することで、子どもが独立したタイミングや夫が定年を迎えたタイミングで決断する人が多いです。以前に比べて離婚は特別なことでなく、熟年離婚が増えてきている現状から、熟年離婚をしても後ろめたさを感じたり周囲の目を気にする必要がなくなりました。
熟年離婚の原因は金銭感覚を含む価値観の違いや過去の異性問題、義家との不和やモラハラ・DVなど。いずれにしろ長い結婚生活の間で耐えに耐えてきたものが何かのきっかけで噴出したり、すでにゴール(離婚)を決めてタイミングを見計らっていたというケースが少なくありません。
熟年離婚のメリットはズバリ「自由な生活ができること」。一方で孤独を感じることや家事が負担になる、老後の生活が心配というデメリットがあります。熟年離婚を後悔しないためには、離婚で受け取れるお金をもとに生活設計を立て、健康に留意して生きがいや友達を見つけることがポイント。
そのためにはなるべく早い段階で、離婚問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。