50代からの離婚準備|準備に必要なポイントと生活に必要なお金について徹底解説

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  • 「50代の離婚で必要な準備とは?」
  • 「50代の離婚問題で相談できるところが知りたい」

人生80年時代となった今の日本で、50代はまだまだ現役世代といっても過言ではありません。離婚件数が増加傾向にある中で、50代の離婚率も増えつつあります。そこでこちらでは、50代の離婚にスポットを当てて、必要な準備や離婚で後悔しないためのポイントを詳しく紹介。

50代の離婚というと、結婚期間が20~30年という方も少なくありません。そのような状況で離婚後の生活を充実させるには、離婚後の生活にかかる費用や、離婚時にもらえるお金の計算が欠かせません。しっかりと準備をしたうえで、第二の人生をスタートさせましょう。

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50代の離婚に必要な準備・気になる点とは?

50代で離婚する場合、その後の生活のためにも事前の準備は必須です。こちらを参考にしながら、どのような準備が必要か参考にしましょう。

50代の離婚の実態

まずは、50代の離婚の実態について見ていきましょう。政府が行った人口動態調査によると、別居時の年齢別(50~59歳)に見た夫・妻の年次別離婚件数と離婚率は以下の通りです。

調査年

年齢

夫 離婚件数(人口千対の離婚率)
50歳~54歳 55歳~59歳 50歳~54歳 55歳~59歳
1950年 1,534件(0.89%) 845件(0.61%) 641(0.38%) 333(0.24%)
1970年 1,250件(0.58%) 962件(0.47%) 946(0.36%) 493(0.21%)
1990年 6359件(1.59%) 3,504件(0.93%) 4,238(1.04%) 2,094(0.53%)
2010年 14,131件(3.71%) 10,262件(2.39%) 9,672(2.54%) 5,916(0.36%)
2022年 13,784件(2.94%) 8,439件(2.12%) 12,205(2.67%) 6,263(1.58%)

参照:別居時の年齢(5歳階級)別にみた夫-妻・年次別離婚件数・離婚率(人口千対)(各届出年に別居し届け出たもの)|e-Stat

夫・妻ともに調査年を経るごとに離婚件数が増加しています。夫の離婚件数では2010年がピークで減少傾向ですが、妻の離婚件数は右肩上がりです。全年代的に離婚件数が増加しているということもあり、50代の離婚件数も増加していると考えます。

専業主婦だけど離婚を考えている方は、こちらの記事を参考にしましょう。

「専業主婦だけど離婚したい!離婚後に成功するための準備と注意点」

スムーズに離婚できそうか

50代で離婚を考えたとき、スムーズに離婚できそうかという点に注意が必要です。

相手が離婚に応じない可能性

50代の離婚の場合、相手が離婚に応じない可能性が高いでしょう。夫婦としての生活が数十年と長いため、その長く続いた結婚生活をリセットするのに抵抗を感じる方が多いためです。また長い結婚生活で互いの認識のズレが大きくなり、理解し合うことが難しくなるのも理由の一つです。

仕事一筋でやってきた夫の場合、妻に家事や育児をまかせっきりにしていた人もいるでしょう。そのような夫は離婚後に自分のことを自分でするのに大きな抵抗を感じます。また夫の収入で生活のほとんどを賄ってきた妻の場合、離婚後の金銭的な不安から離婚に踏み切れないケースがあります。

離婚理由の有無

相手が離婚に応じない場合、最終的には離婚裁判で決着をつける他ありません。離婚裁判で離婚が認められるためには、民法第770条で規定されている「法定離婚事由」が必要です。自分が離婚したい理由が該当するかチェックしましょう。

(裁判上の離婚)

第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

一 配偶者に不貞な行為があったとき。

二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。

三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。

四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。

五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

引用:民法|e-GOV法令検索

1番目の不貞な行為とは、配偶者以外の異性との性交渉やそれに類する行為など。2番目の悪意の遺棄とは、正当な理由なく夫婦の同居・協力・扶助の義務に反する次のような行為です。

  • 収入があるのに生活費を渡さない
  • 不倫相手と同棲して帰ってこない
  • 理由を告げずに一方的に家出する
  • 専業主婦なのに家事をしない
  • 健康で働けるのに働かない
  • 配偶者を家から追い出して帰宅を認めない

また5番目の「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」は、具体的に次のような理由が該当します。

  • DV(家庭内暴力・虐待)
  • モラハラ
  • 長期間の別居
  • 多額の借金やギャンブルなどの金銭問題
  • 過度な宗教活動
  • 配偶者の親族との不和
  • 犯罪による服役
  • 性の不一致など

上記のような離婚原因がある場合、離婚裁判で離婚が認められる可能性があります。そうでなければ離婚を認めてもらうことは難しいでしょう。そのような場合は3~5年の別居期間があれば、婚姻生活の破たんが認められる可能性があります。

証拠をそろえる

法定離婚事由がある場合には、最悪裁判になったときのことを考えて、法的に有効な証拠を確保しておきましょう。裁判では具体的に離婚原因が相手にあることを証明しなければなりません。また相手に慰謝料を請求するときにも証拠は必須です。相手の不倫が原因で離婚を希望するときには、次のような証拠が必要です。

  • ラブホテルや自宅に2人で出入りしている写真・動画
  • ラブホテルの領収書やクレジットカードの明細書
  • 本人が不貞を自白している音声や動画
  • 性行為があったことが分かる写真や動画
  • 性行為があったことを匂わせるやり取り
  • 探偵事務所や興信所の調査報告書

DVやモラハラがあるときには、次のような証拠を確保しましょう。

  • ケガやPTSD、その他心身症になったときの診断書・受診歴
  • 暴力によるケガや壊されたものの写真
  • 警察や公的機関への相談履歴
  • 暴行や暴言を記録した音声・動画・メッセージ
  • 配偶者の言動を記録した日記やメモ

浮気調査で証拠が出なかったときの対処法は、こちらの記事を参考にしてください。

「浮気調査で証拠なかった…どうしたら?自分で証拠を集めるときのポイントと注意点とは?」

離婚後の生活をシミュレーション

次に離婚後の生活を具体的にシミュレーションしましょう。参考までに最新(2023年)の単身世帯の消費支出は、1世帯当たり16.8万円です。年間で計算すると201.6万円。人によって必要な生活費はことなるものの、まずは年間200万円程で生活できるか検討してみましょう。

次に生涯通して必要な生活費を見ていきましょう。最新の統計によると男性は81歳、女性は87歳が平均寿命です。仮に50歳で離婚したとすると、男性は201万×31年=6,231万円、女性は201万円×37年=7,437万円の生活費が亡くなるまで必要な計算に。

参考:家計調査(家計収支編)調査結果|e-Stat主な年齢の平均余命|厚生労働省

お金のこと

上で計算したように、50歳で離婚した場合30年近い生活費を一人で賄っていく必要があります。具体的には離婚後の収入(給与・年金等)とあなた名義の財産ということになります。

とくに女性の場合、外で働いていてもパート勤めという方も多く、いきなり離婚後に正社員になるというのは難しい現状があります。これを防ぐためには、できるだけ手に職を付けておくのがいいでしょう。離婚前からハローワークの職業訓練校に通ったりするのも一つの方法です。

もらえる年金については、日本年金機構の「ねんきんネット」で簡易的に調べられます。離婚時には財産分与の一つとして、年金分割という制度があります。現在夫に扶養されている方は「3号分割」、それ以外の方は「合意分割」という方法で年金分割を行います。婚姻期間中に支払った年金保険料に応じて将来貰える年金を配偶者と分割するという制度で、厚生年金部分が対象です。

離婚したいけどお金がない…という方は、こちらの記事を参考にしましょう。

「離婚したいけどお金がない方必見!我慢せず離婚できる方法と対策を紹介します」

別居後にかかる費用について

離婚するにあたり、引っ越し費用や新居の敷金、家具や家電の購入費などの費用がかかります。また離婚直後の生活費も何カ月分か貯めておくのが賢明です。50代で離婚した場合、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産は、財産分与として原則1/2ずつ受け取れますが、離婚前に別居を希望する場合は、自分で貯めたお金でこれらの費用を賄わなければならないことも。

事前に離婚してどのくらいのお金が入ってくるかや、離婚後の生活にどのくらい必要かを計算しておきましょう。

住む家のこと

離婚したら今住んでいる家を出る予定という方は、住む家の確保も必要です。実家に帰れるという方はいいのですが、自分で賃貸物件を借りる場合は費用の問題の他に審査に通るかといった問題も。とくに正社員としての収入が無かったり、高齢であればある程賃貸物件の審査に通りにくくなります。

今住んでいる家が持ち家で財産分与の必要がある場合は、家を処分するのかどちらかの名義にするのかといった問題も生じます。住宅ローンが残っている場合は、売却してローンを完済できるのか、どちらかがローンを引き継ぐのかも悩みのポイントに。自分が家を引き継ぐ場合は、管理費や維持費、固定資産税や地震保険などの費用がかかることも忘れずに計算しましょう。

健康面について

50代の離婚はお金の問題以外にも、健康面について不安が生じてくる時期でもあります。離婚してすぐは元気でも、いつ病気やケガで健康を損なってしまうかは誰にもわかりません。そのようなときの準備も必要でしょう。また熟年離婚をすると孤独感を感じる人も多く、精神的なダメージを引きずらないための対策を取っていきましょう。

周囲に頼れる人がいるか

自分が病気になったときに頼りになり、孤独感を感じないようにするためには、周囲に頼れる人を作っておきましょう。交流する機会を増やして、離婚後も自分の居場所を作っておくと安心です。また子どもが同意するのであれば、子どもの家の近くに引っ越すという方法が。

その場合にも町内会などに参加して、近隣の人とつながりを持つようにしましょう。

やりがいや目標を見つける

離婚後に打ち込めるやりがいや目標を見つけることも、50代の離婚では必要です。熟年離婚は育児が終わったり、退職したり、親の介護が終わったりといった人生の節目で考えることが多いです。離婚後にいざ時間が手に入ると、何をしていいか分からなくなり、かえって無気力になる人も少なくありません。

そうならないために、離婚後の第二の人生でやりたいことや目標などを決めておきましょう。

熟年離婚を後悔しないためには、こちらの記事を参考にしてください。

「熟年離婚の実態|8つの離婚原因と夫婦の特徴とは?メリットデメリットを知り後悔しない第二の人生を!」

離婚へのステップ

スムーズに離婚できそうか検討し、お金や住まいなどの離婚準備が整ったら、相手に離婚を切りだします。

離婚を切り出す

離婚を切り出すのは落ち着いて話ができそうな時間がいいでしょう。冷静に切り出すタイミングを見極め、感情的にならずに「離婚を考えている」と伝えてください。

離婚を切りだす方法には、口頭での他に電話や手紙、メールやSNSのメッセージという方法があります。面と向かってはうまく自分の気持ちを言葉にできないという方は、離婚したい理由をまとめた文書を相手に渡すといいでしょう。

離婚を切り出すベストなタイミングについては、こちらの記事を参考にしましょう。

「離婚を切り出すのに適したタイミングは?切り出す前の注意点とケース別対処法」

話し合う

離婚を切り出したら、冷静に向き合って話し合いができる環境を整えます。いきなり離婚を突き付けられた側は、驚き「どうして離婚したいのか」「今後の生活はどうするのか」などと反論してくるでしょう。まともに取り合ってくれなかったり、感情的になって話し合いにならないときには、話し合いに時間をかける必要も。

離婚を切り出した後の生活について不安がある方は、こちらの記事を参考にしましょう。

「離婚を切り出した後の生活はどうなる?別居の判断とお金、相手が離婚に応じないときの対処法を解説」

別居する

時間をかけても相手がまともに離婚の話し合いに応じてくれないようなときには、別居して離れて生活することを考えましょう。別居することで離婚への本気度が伝わり、相手も冷静になって話し合いに応じてくれる可能性が出てくるからです。

ただし別居するときには、なるべく相手の同意を得たうえで家を出ましょう。相手に理由を告げずに黙って家を出てしまうと、場合によってはあなたが夫婦の同居義務に違反したとみなされ、離婚調停や離婚裁判で不利になる可能性があるからです。

別居から離婚が成立するまでの期間については、こちらの記事を参考にしてください。

「別居からの離婚が成立する期間はどれくらい?必要な期間や別居する際の注意点」

話し合いがこじれたときは離婚調停を検討

別居後の話し合いでも離婚に同意してもらえないときには、離婚調停を申し立てる準備が必要です。離婚そのものへの同意は得られたが、財産分与などの離婚条件で折り合いがつかないときも、離婚調停は有効です。離婚調停では、家庭裁判所の調停委員が夫婦双方の話を聞き、夫婦問題の解決を目指す制度。

離婚調停にかかる期間は半年から1年ほどで、裁判所に支払う費用は数千円程度。弁護士に依頼する場合は弁護士費用がかかります。調停は弁護士に依頼しなくても手続きできますが、スムーズに離婚したい場合は弁護士に依頼するのがベスト。離婚調停を考えている方は、弁護士への依頼も検討しましょう。

弁護士なしで離婚調停できるかについては、こちらの記事を参考にしましょう。

「離婚調停は弁護士なしで対応できる?依頼したほうがよいケースとメリット・デメリット」

50代の離婚を成功させる準備のポイント

50代の離婚を成功させるために、次のようなポイントをおさえて離婚準備を進めましょう。

①財産分与の請求

50代の離婚では、財産分与で今後の生活の原資を確保するのが極めて重要になります。財産分与は、夫婦が婚姻期間中に共同で築いた「共有財産」を離婚時に分け合うこと。通常夫婦は助け合って生活しているため財産の維持形成における貢献度も同程度と考えられています。そのため特別な事情がない限り、双方が1/2ずつの権利を有しています。

財産分与の対象となるもの

財産分与の対象となるのは、以下のような財産です。夫婦どちらかの名義であっても、結婚後に購入したものは財産分与の対象です。

  • 不動産
  • 預貯金
  • 退職金
  • 有価証券(株式・手形・小切手・商品券など)
  • 年金
  • 保険等の解約返礼金
  • 動産(貴金属・絵画・骨とう品など)
  • へそくり

へそくりも財産分与の対象です。必ずしも申告しなければならない訳ではありませんが、相手が弁護士に依頼して調査されたときには、へそくりの存在がバレてしまう可能性があります。

退職金を分与するときの計算方法や請求方法は、こちらの記事を参考にしてください。

「退職金も離婚時の財産分与になる!金額計算から請求方法まで解説します」

借金も財産分与の対象

婚姻生活を継続するためにした借金もまた財産分与の対象です。住宅ローンや子どもの教育ローン、生活費が足りないときに借りたお金の返済義務もまた、財産分与で折半しなければならないでしょう。一方でギャンブルや浪費など、相手が個人的なことのためにした借金は財産分与の対象にはなりません。

住宅ローンや車のローンの場合、単純に借金の負担を折半するということではなく、分与対象財産の算定時に資産額から負債額を控除するという方法を取ります。

財産分与の対象とならないもの

一方で財産分与の対象とならないのは、次のような財産です。

  • 相続などで得た財産
  • 結婚前から保有していた財産
  • 別居期間中に得た財産
  • 結婚中に個人で作った財産

別居期間中に得た財産は、基本的に共有財産に該当しません。専業主婦でできるだけ多くの財産分与を受けたい場合は、別居しない方が得られる財産が多くなる可能性も

財産の調査

離婚時の財産分与で損しないためには、財産の調査をしっかりと行ってください。自分名義の財産はもちろん、相手名義の財産を調べる必要があります。財産の種類ごとの調査方法は、以下の通りです。

不動産 最寄りの法務局で登記事項証明書を取得し、権利部(甲区)の「権利者その他の時効」に記載がある所有者を調べる
預貯金 預貯金通帳の名義を調べる
自動車検査証(車検証)の「所有者の氏名又は名称」に記載されている所有者を調べる

扶養的財産分与という考え方

長年妻が専業主婦として夫を支えてきたケースでは、通常の財産分与で離婚後の生活に不安がある場合に「扶養的財産分与」という方法がとられます。財産分与は法律上「一切の事情」を考慮して定めるものとされているので、単純に半分に分ければいいというものではありません。

通常の財産分与や慰謝料を受け取ってもなお生活に困る場合には、多めの分与を求めることができるというのが扶養的財産分与の性質です。

財産分与の方法

財産分与は収入の多寡にかかわらず、半分ずつに分けるのが基本。預貯金などは単純に2で割れば半分になりますが、車や不動産、退職金などは単純に半分という訳にいきません。次の方な方法で分与するのが一般的です。

車・不動産 売却して出た利益を分割する

売却金を想定して、その半分を所有しない方に現金で渡す

財産全てを譲り受ける代わりに、ローンを一人で負担する

退職金 退職金でもらえる予定の金額を勤続年数で割り、婚姻期間に該当する年数分の半分を受け取る

退職前の離婚では、退職金が支給された段階で離婚条件に応じて支払う

解約返戻金 離婚時に解約した場合の返戻金を計算し、その半分を現金で渡す

以下では財産の種類ごとに、詳しく財産分与の方法を見ていきましょう。

貯金使い込みで離婚を考えたときの財産分与で損しない方法については、こちらの記事を参考にしてください。

「夫や妻の貯金使い込みで離婚できる?別居時に気を付けたいこと&財産分与で損しない方法」

不動産の財産分与

住宅など不動産の財産分与では、実際にその不動産を半分に分けるということが難しいため、どちらか一方が不動産を受け取り、そしてもう片方に不動産の価値の半分を渡すという方法が取られます。またどちらもその住宅に住まないというときには、不動産を売却してその売却益を分けるという方法が。

いずれの場合でも、住宅ローンが残っていると問題は複雑になります。住宅ローンの名義は不動産の名義と同じになっているのが原則のため、ローン名義でない側が住宅の所有者になるときには、金融機関の許可が必要だからです。場合によっては所有者になる側がローンを引き継ぐ必要があり、新たなローン審査が生じる可能性が。

また不動産の名義変更には、税金がかかることも忘れずに。毎年かかる固定資産税だけでなく、不動産取得税がかかることも。代償金として現金を受け取る側に譲渡所得税が課税されるケースもあります。

また離婚時の財産分与では贈与税や相続税がかかりませんが、財産分与の額が大きすぎて実質的な贈与に該当する場合や、相続税を逃れる目的で離婚をした場合には例外的に税金を課せられることがあります。

財産分与でかかる税金について詳しくは、こちらの記事を参考にしてください。

「財産分与でかかる税金について|種類別・ケース別の税金計算方法や節税対策とは?」

年金分割

50代で離婚するときには、年金の分割請求も忘れずに。年金分割とは、婚姻期間中に納付した厚生年金を離婚時に夫婦で分割する制度。将来受け取る年金額を増やすことができるので、老後の貴重な財産となります。年金分割ができるのは、会社員や公務員で働いてきた方が納付している厚生年金(共済年金)部分のみ。自営業者で国民年金しか支払っていない場合には年金分割を受けることができません。

また年金分割の請求には、離婚後2年という期限があります。この期限を過ぎると請求できなくなるので、手続きはお早めに。年金分割には、3号被扶養者のみを対象にした「3号分割」と、双方の合意が必要な「合意分割」の二種類があります。それぞれで条件等が異なるので、注意が必要です。

3号分割 会社員や公務員の妻など、国民年金の第3号被扶養者だった人が離婚後に年金を分割する方法

  • 2008年5月1日以降に離婚をした
  • 2008年4月1日以前の婚姻期間中に、国民年金第3号被保険者であった期間の厚生年金記録がある
合意分割 夫婦間の合意によって分割割合を決める方法で、通常は1/2で分割する

  • 2007年4月1日以降に離婚した
  • 婚姻期間中の厚生年金記録がある
  • 当事者双方の合意がある(合意できない場合は法的手続きにより按分割合を決定している)

詳しい手続きについては、日本年金機構のホームページを参考にしてください。年金事務所の年金分割を希望するときには、事前に年金事務所で「年金分割のための情報通知書」を入手しておきましょう。

②慰謝料の請求

相手に離婚原因がある場合、離婚時に慰謝料請求できる可能性があります。慰謝料とは配偶者の不法行為によって精神的苦痛に対する損害賠償です。例えば次のようなケースで離婚時の慰謝料請求できる場合があります。

  • 相手の不倫で離婚に至った
  • 暴力や暴言があり離婚を決意した
  • 収入があるのに生活費を入れてくれない

離婚原因によって慰謝料の金額が変わってくるものの、100万~300万円が相場です。慰謝料を請求するには、相手の不法行為を証明できる証拠が必要です。相手に客観的な証拠を提示して慰謝料について話し合ってください。話し合いがまとまらないときには、離婚調停や離婚裁判で慰謝料を請求していきます。

話し合いで合意した内容は、合意書や離婚協議書などの書面に残しておきましょう。慰謝料請求にも期限(消滅時効)があり、配偶者の行為を知ったときから3年、もしくはその行為があったときから20年が時効です。多くの場合は3年で時効を迎えるので、離婚後なるべく早いタイミングで慰謝料を請求しましょう。

離婚慰謝料の相場が知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

「離婚慰謝料の相場が知りたい!離婚理由や婚姻期間による相場・金額をアップさせるポイントを解説」

③婚姻費用の請求

離婚前に別居を経た場合には、別居中の生活費として収入の多い側に婚姻費用を請求できます。婚姻費用は夫婦の生活扶助義務が根拠になっていて、双方の収入や子どもの人数、子どもの年齢などによって相場が変わってきます。裁判所の「婚姻費用算定表」を参考に算出できるので、いくらもらえそうか確認しておきましょう。

婚姻費用は原則として、請求した時点から発生するため、過去にさかのぼって請求できないのが原則です。そのため別居を開始したらすぐに相手に婚姻費用を請求することをおすすめします。相手が支払を拒否したときには、離婚調停と別に「婚姻費用分担調停」を申し立てて婚姻費用を請求してください。

婚姻費用をもらい続ける方法があるか知りたい方は、こちらの記事を参考にしましょう。

「婚姻費用をもらい続ける方法は?損しないための対抗策とよくある質問に答えます!」

50代の離婚準備で困ったときは…専門家に相談

50代で離婚した後後悔しないか心配、お金の面で離婚を躊躇しているという方は、専門家に相談しましょう。離婚について相談できる先はいくつかありますが、悩みの種類や聞きたいことによって、相談すべき専門家が次のように変わってきます。

相談の種類/専門家 カウンセラー 司法書士 ファイナンシャルプランナー 弁護士
夫婦間の悩み相談 ×
離婚後のお金について × ×
離婚協議書の作成 × ×
離婚調停・離婚裁判 × ×

カウンセラー

「夫と離婚すべきか迷っている」など、夫婦間の悩み相談については離婚カウンセラーに相談しましょう。NPO法人日本家庭問題相談連名が認定しているカウンセラーなら、安心して相談できます。カウンセラーは夫婦間の悩みなどを聞き出し、カウンセリングを通してアドバイスやサポートを行います。

カウンセラーは離婚を迷っている方にとって最適な相談先ですが、具体的な離婚の手続きを行うことはできません。

司法書士

司法書士は離婚協議書の作成や、家庭裁判所の調停手続きに必要な申立書やその作成の相談に応じてくれます。これらの書類の書き方が分からないという方にとっては最適な相談相手となるでしょう。ただし離婚調停に代理人として出席したり、離婚裁判を起こす場合の代理人になることはできません。

ファイナンシャルプランナー

離婚後のお金について相談したいときは、ファイナンシャルプランナーが適任です。ファイナンシャルプランナーは暮らしとお金に関する専門家として、次のような相談に応じています。

  • 離婚後の家計管理
  • 老後の生活設計
  • 年金・社会保障
  • 資産運用
  • 税金
  • 保険
  • 介護・医療費
  • 相続・贈与

相談者の現在の経済状況や社会的立場に応じて最適なプランを提案し、プラン実行のためのサポートを行っています。とくに専業主婦の場合、50代での離婚ではお金に関する悩みがつきもの。今後の暮らしに必要なお金についてのアドバイスが受けられれば、離婚後の不安が解消できるかもしれません。

弁護士

50代の離婚準備で不安や悩みがあったときには、離婚問題に詳しい弁護士に相談するのがベストです。弁護士は法律の専門家として、あなたに有利な離婚へのアドバイスをしてくれるでしょう。また交渉のプロとして、相手との離婚交渉も任せられます。

さらに財産分与や慰謝料請求の交渉の場面でも、法的に有効な証拠の取得方法について教えてもらえるだけでなく、相手が隠している財産を調査したり相手との交渉も依頼できます。交渉成立後は法的効力がある公正証書の作成も依頼できるので安心。

さらに離婚や離婚条件で争いになったときには、離婚調停や離婚裁判の対応を任せられます。とくに離婚裁判では、法律に関する知識や裁判手続きの経験が欠かせません。離婚の手続きやそれに関連する離婚条件などまとめて相談したい方は、弁護士に相談しましょう。

離婚時に依頼したい弁護士の選び方は、こちらの記事を参考にしましょう。

「離婚時に依頼したい弁護士の選び方|相談前・相談時のポイントと費用に関する注意点を解説」

まとめ

50代の離婚は年々増えつつあります。離婚を後悔しないためには、離婚理由の有無や離婚後の生活についてなど事前の準備が必須です。相手に離婚を切り出す前に、証拠を確保したり離婚後の生活をシミュレーションして、安心して離婚後の生活を送れるような準備をしましょう。

とくに熟年離婚では、お金に関する準備がその後の生活に欠かせません。年金分割を含む財産分与では、相手の財産についてもしっかり調査し、財産の種類に応じて適切な分与方法を選びましょう。相手に離婚理由がある方は慰謝料請求を検討してください。離婚前に別居期間がある方は、別居後すぐに婚姻費用を請求すべきでしょう。

50代の離婚で悩んだときには、悩みごとに応じた適切な相談先を見つけてください。離婚問題に詳しい弁護士なら、様々な相談に対応しています。法律事務所のホームページを参考にして離婚問題を扱っているかチェックし、無料相談を利用して不安に思っていることや疑問点などを相談してください。

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