- 「DVの証拠にはどんな種類がある?」
- 「離婚時に必要なDVの証拠の残し方が知りたい」
配偶者のDVでお悩みの方の中には、離婚を考えているケースは少なくありません。そのような状況で離婚を有利に進めたり慰謝料請求をするには、DVの証拠の確保が欠かせません。ではDVの証拠にはどのような種類があり、どのように証拠を残せばいいのでしょうか?
そこでこちらの記事では、10あるDVの種類ごとの証拠の取り方や残し方について詳しく解説していきます。さらに証拠を集めるときの注意点や、よくある疑問・質問にもお答えしていきます。DVする相手に気づかれないようにDVの証拠を取るのは簡単ではありません。細心の注意を払って、離婚に有利な証拠を確保しましょう。
DVの種類とDVの証拠が必要な理由
証拠の残し方について解説する前に、まずはDVの種類とDVの証拠が必要な理由について解説していきます。
DVの種類
DVとは英語の「domestic violence(ドメスティック・バイオレンス)」の略で、直訳すると「家庭内暴力」という意味です。DVというと体への暴力というイメージがありますが、実はDVには次のような種類があります。
身体的DV
もっとも典型的なDVが身体的DVです。直接相手を殴ったり蹴ったりして身体に暴力を加えることをいいます。具体的には次のような行為です。
- 顔や身体を殴る
- 蹴る
- 付き飛ばす
- 物を投げつける
- 髪を引っ張る
- 首を絞める
- 押し倒す
文字通り身体への暴力なので、被害を受けた場所や程度によっては、周囲に気が付いてもらえる可能性があります。一方で最悪のケースでは、生命を脅かす事態になる恐れもある行為です。
DV夫と早く安全に離婚する方法は、こちらの記事を参考にしましょう。
DV夫と離婚したい…早く安全に離婚するための手順・相談先・気になるポイントを徹底解説
精神的DV
精神的DVとは、直接身体に暴力を加える行為でないものの、次のような行為で相手を精神的に追い込むことを指します。
- 怒鳴る
- 無視する
- バカにする
- 人前で侮辱する
- 脅迫する
- 人格を否定する
- 物に当たる
- 子どもに悪口をいう
- 交友関係や行先の監視
- メールや電話の監視など
このような精神的DVは、「モラルハラスメント(モラハラ)」と呼ばれる場合もあります。このような精神的DVは、身体に危害を与えられる訳でないため、周囲に気が付かれにくいという特徴があります。
モラハラで慰謝料請求するときの相場は、こちらの記事を参考にして下さい。
夫婦や恋人間のモラハラで慰謝料請求できる?相場や方法を知って有効な証拠を確保しよう
性的DV
夫婦間であっても片方の同意がないまま性行為を強要すると、性的DVとなります。性的DVには、次のような行為が該当します。
- 性行為を強要する
- 性行為を拒否すると不機嫌になる
- 避妊に協力しない
- 中絶を強要する
- 見たくもない性的な写真や動画を見せる
- 望まない妊娠・出産を繰り返す
- 短期間で妊娠・出産を繰り返す
最近SNS等で話題になっている「多産DV」も性的DVの一種です。性的DVは性行為や妊娠、出産に対して女性の意思を無視する行為と認識しましょう。
多産dvの対処法について知りたい方は、こちらの記事を参考にして下さい。
「多産dvの対処法&見分けるポイント|dvから身を守る方法や多産dvで離婚する方法を知ろう
経済的DV
経済的DVとは、文字通り金銭的な自由を奪うことで相手を支配しようとする行為。法律用語ではありませんが、最近よく耳にする言葉です。具体的には次のような行為が経済的DVに当たります。
- 生活費を渡さない
- 家計を厳しく管理する
- 勝手に借金や浪費をして返済を強要する
- 仕事に出ることを認めない
- お金の使い方を極端に制限する
- 自分の収入や貯金額を教えない
- お金に関する暴言がある
経済的dvに当たる行為や具体的な仕返し方法は、こちらの記事を参考にしましょう。
「経済的dvの仕返しがしたい…dvに当たる行為と離婚を含む具体的な仕返し方法とは
DV加害者の共通点
夫婦の形はそれぞれで異なり、DV加害者について一口でこんな人と定義することはできません。そして配偶者に対して、明確に傷つけようとする意志を持ってDVをする人もあまりいません。一方でDV加害者なりに自分の理想とする夫婦・家族を作りたいと思っていて、次のような気持ちからDV行為に及んでいるケースが多いです。
- 自分は正しいと思っている
- 「相手のためを思ってやっているのに分かってくれない」
- 「普段から頑張っているのだから少し位いいだろう」
- 「自分はこんなにも頑張っているのに家族は分かってくれない」
そしてDV行為というのは一種の対人依存でもあり、家族を支配したい・自分の思うようにしたいという気持ちの表れでもあります。
DVの証拠はなぜ必要か
配偶者のDVでお悩みの方に対しては、「DVの証拠を確保しましょう」というアドバイスがよく聞かれます。ではなぜDVの証拠が必要なのでしょうか。
スムーズに離婚するため
DV加害者と離婚を考えている方は、スムーズに離婚するためにDVの証拠が必要です。DV加害者との離婚は、そうでないケースと比較してこじれがちです。DV加害者は被害者である配偶者に依存しているため、離婚について前向きな話し合いをするのは非常に困難。
またDV加害者は往々にして自尊心が高いため、離婚を切り出されたことに対して強い抵抗感を持ち、それを暴力という手段で示します。一方の被害者側も直接の話し合いの場を持つのが恐怖で、そもそも離婚の話し合いができないケースが少なくありません。そのようなときにDVの証拠は有効です。
離婚調停で離婚が認められやすくなる
DVの証拠を確保すると、離婚調停で離婚が認められやすくなります。離婚調停は、離婚の話し合いを家庭裁判所で行う法的手続き。調停委員という第三者が間に入るので、相手と直接顔を合わせることなく離婚についてや離婚条件についての協議ができます。調停は離婚したいDV被害者に適した方法です。
離婚調停の場でDVがあったことを客観的に示せれば、離婚や慰謝料を求める気持ちを調停委員に理解してもらいやすくなります。調停委員からDVの事実について相手に確認を取ることも可能。場合によってはDVの証拠を元に、相手に離婚する方向で説得してくれることも。
一方で離婚調停では、双方の合意がないと離婚できないので、相手が離婚を拒否し続ける場合は離婚することができません。
離婚調停の期間を短くする方法については、こちらの記事を参考にしましょう。
「離婚調停の期間を短く有利にするには?長引く原因や疑問を解決して新たな一歩を」
離婚裁判で離婚が認められる
DVの客観的な証拠があると、離婚裁判で離婚請求が認められる可能性が高まります。というのもDVは離婚裁判で必要な法定離婚事由の一つ「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当すると解釈されているため。離婚裁判では必ず離婚事由について、証拠を元に立証する必要があるので、DVが原因で婚姻関係が破綻したと証拠を用いて立証しなければなりません。
一方で夫婦喧嘩の勢いで一度だけ平手打ちをされた、口論の最中に突き飛ばされたといった軽度の暴行があっただけだと「これ以上は夫婦として生活することができない」とまでは言えず、裁判で離婚が認められないことがあります。DVを理由に離婚するには、裁判所や裁判官が「法律の定めに照らしても婚姻関係を継続するのは難しいだろう」と判断できるような証拠が必要です。
離婚裁判でかかる費用については、こちらの記事を参考にしてください。
「離婚裁判の費用を徹底解説!金額の相場や払えないときの対処法、注意点とは?」
刑事罰を科せられる
DVの証拠があると、相手に刑事罰を科すことができます。夫婦間であっても夫婦喧嘩の最中に相手に手を出した場合でも、刑法上の暴行罪(2年以下の懲役または30万円以下の罰金)や傷害罪(15年以下の懲役または50万円以下の罰金)が適用される可能性があります。
最近では警察でもDV被害を看過せずに関係機関と連携し、対処する体制が強化されています。夫婦喧嘩の延長であっても、DVとみなされる行為は警察の厳しい対応を受ける恐れがあることを覚えておきましょう。
保護命令を出せる
DVの証拠があると、上で説明した刑事罰以外にもDV防止法による保護命令を出すことができます。DV防止法とは配偶者やパートナーからの暴力を防止したり、被害者の保護や支援を目的とした法律で、保護命令には次のような種類があります。
近禁止命令 | 申し立てた人の身辺の付きまとい、住まい周辺や勤務先周辺の徘徊を禁止する命令 |
電話等禁止命令 | 申し立てた人への面会要求や緊急性のないFAXの送信、無言電話や行動の監視を告げる行為などを禁止する命令 |
子への接近禁止命令 | 申し立てた人の子どもの連れ去り、身辺の付きまとい、学校周辺など子どもがいる場所の徘徊を禁止する命令 |
親族への接近禁止命令 | 申し立てた人の親族に対する身辺の付きまとい、住まい周辺や勤務先周辺の徘徊を禁止する命令 |
退去命令 | 申立時点で生活の拠点を同じにしている場合は、相手に住まいから2カ月間退去し、付近を徘徊しないように命じる |
保護命令を出してもらうには、裁判所への申立てが必要です。このとき保護命令の審理に必要な証拠となるものの提出が求められます。
DVから身を守る「接近禁止命令」を出すには?手続き方法・注意点・離婚の方法を詳しく解説
慰謝料が請求できる
DVの証拠があると、離婚時の慰謝料請求にも有利になります。婚姻期間中に配偶者からDVを受けていた方は、DVによる精神的苦痛の保障として、離婚時に慰謝料の請求ができます。慰謝料の金額は婚姻期間の長さや受けた精神的苦痛の大きさなどによって決まります。
DVによってケガを負った回数や症状の程度を、医療機関からの診断書で証明できれば、慰謝料の請求が認められやすくなるだけでなく、悪質性が高いと認められるときには増額の可能性も。DVを原因とした慰謝料の相場は50万~300万円です。
具体的な慰謝料請求方法や金額については、離婚問題に詳しい弁護士に相談しましょう。
離婚慰謝料の相場を知りたい方は、こちらの記事を参考にしましょう。
「離婚慰謝料の相場が知りたい!離婚理由や婚姻期間による相場・金額をアップさせるポイントを解説」
子どもの親権への判断
夫婦の間に未成年の子どもがいる場合は、子どもの親権への判断にも影響します。DVの証拠などから「子どもの心身に悪影響がある」「子どもへの虐待がある」と認められれば、DV被害者が子どもの親権獲得に有利になる可能性が高いです。
親権を決めるにあたって最も重要視されるのは、子どもの幸福です。どちらの親と一緒に生活した方が子どものためになるかという点が考慮されます。基本的に夫婦の問題と親子の問題とは別物として考えられるので、離婚原因は親権に影響しないのが原則です。しかし子ども自身に危害を加えていたり、子どもの目の前で配偶者にDV行為をしていた(面前DV)場合には、子どもに悪影響を与える恐れがあるとしてDV被害者の方が親権獲得に有利になります。
父親が親権を取れる確率について知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
「父親が親権を取れる確率は?重視されるポイント・親権獲得のためにすべきことを解説」
証拠の種類別|証拠の確保の仕方や残し方
では実際にどのようなものがDVの証拠となり、その証拠の確保方法や残し方はどうしたらいいのでしょうか。こちらでは10種類の証拠について詳しく見ていきます。
①医師の診断書
DVの証拠として有用なのが、医師の診断書です。配偶者からDVを受けたときには、必ず医療機関を受診して、診断書を取るようにしましょう。診断書は後からでももらえるので、初診時にもらえなくても心配いりません。そして傷害を負ったときには、一度の通院でやめずにその傷害が治るまで継続して通院してください。
また精神的に辛い方は、精神科や心療内科にも通院することをおすすめします。診断書の作成には料金がかかりますが、相手にはそれ以上の慰謝料を請求できます。躊躇せずに医療機関を受診して、診断書を作成してもらいましょう。
診断書の取り方
DVの診断書は、受診した医療機関で取得します。ただし受信時に何も言わないと、診断書には「傷害を負った事実」だけが記載されるので、「傷害を負った原因がDVである」と証明するためには「夫に殴られた」など正確な事情を話してください。
どの診療科に受診したらいいか分からないという方は、こちらを参考にしてください。
切り傷 | 皮膚科・整形外科・形成外科 |
あざや火傷 | 皮膚科・形成外科 |
打撲や骨折 | 整形外科 |
抑うつ症状・不安症・PTSDなど | 精神科・心療内科 |
性的DV(性感染症・望まぬ妊娠・性的DVによるケガなど) | 婦人科・産婦人科 |
口内のケガ・鼓膜の損傷 | 耳鼻咽喉科 |
子どもへの虐待 | 小児科 |
記載内容
医療機関では診断書に記載する内容がおおむね決まっています。可能であれば医師に相談したうえで、次のような内容を記載してもらってください。
- 初診日・受診日
- 怪我や病気の経緯
- 怪我や病気の名称(切り傷や打撲のような軽度の怪我でもできるだけ詳細に記載してもらう)
- 怪我や病気の程度
- 治療期間
②検査結果のデータなど
診断書と併せて、医療機関を受診したときの検査結果のデータもDVの証拠となります。具体的には次のようなものです。
- 診療記録(カルテ)
- レントゲン
- CT、MRIなどの画像データ
- 診療報酬明細
診療記録(カルテ)には受傷の経緯や経過、検査記録や処方薬などが詳細に記録されています。DV被害を証明するために有用です。カルテは受診する度に追記されるので、DVが継続的であることを証明するのにも有効。自分のカルテであれば、後々開示請求も可能です。
③写真
DV被害によって負傷した部位やDVによって壊された物、荒らされた室内の写真もDVの証拠となります。暴力を振るわれて負傷したら、相手がいなくなった好きにスマホやデジカメなどで撮影しておきましょう。自身で撮影するのではなく、親族や友人に撮ってもらうのもいいでしょう。
写真の撮り方
DVの証拠を写真に収める場合、いくつかのポイントがあります。こちらを参考にして、証拠として有用な写真を撮ってください。
- 身体のどの部位を負傷したか分かるように全身写真・負傷部位の全体・負傷箇所のアップを複数枚撮影する
- 誰が怪我をしたか分かるよう、怪我をした部位と顔が一緒に写るようにする
- DVを受けた日時と撮影した時間を一緒にメモする・新聞の一部を一緒に撮影する
- 編集を疑われないように加工やトリミングはしない
- 画像のフィルター機能は使用しない
- モザイクや黒帯などを使用しない
- 室内の散乱や壊された物なども全体から詳細へと複数枚撮影する
証拠の残し方
DV加害者は、配偶者のスマホなどを厳しく管理している可能性があります。証拠の残し方にも十分注意が必要です。撮影した写真や動画は、親族や信頼できる友人に送信して保管してもらいましょう。その後自分のスマホのデータや送信履歴は削除してください。
DVを他人に知られたくない人や信頼できる人がいないときには、Yahooメールやgmail といった無料でアカウントを取得できるサービスを利用して、証拠保存用の専用フォルダを作る方法もあります。
④録音・録画データ
DV行為や相手の怒鳴り声、物を壊す音などが録音・録画されたデータも、DVの証拠となります。できればDV行為前後を含めた全体の流れが分かるようにすると、証拠能力が高まります。
DVには一定のサイクルがあり、被害者にやさしくなるいわゆる「ハネムーン期」があります。そのハネムーン期に加害者が謝罪してきた場合は、いわば自白といえるので有用なDVの証拠となります。また精神的DVにおいては、電話で脅されたときの録音なども証拠となります。
証拠の残し方
メッセージや録音データなどは間違って削除しないように保護した上で、定期的にUSBなどの外部媒体やクラウドにバックアップを取ってください。そうすることで相手にスマホを壊されて証拠がなくなったという万が一の事態を防げます。また使わなくなった昔のスマホを隠して録音する、親族に頼んで録音してもらうといった方法も検討しましょう。
⑤LINEやメールでのやりとり・着信履歴
精神的DVや経済的DVなど、言葉での攻撃を受けている方は、暴言を含むメッセージややり取りの証拠としてLINEやメールの内容を残しておきましょう。手紙やSNS上のやり取りも証拠になります。また執拗な電話の着信履歴や連投されるメッセージなども、有用なDVの証拠です。
証拠の残し方
やり取りした日時や前後の会話が分かるよう、できるだけ全ての内容をスクリーンショットや動画で撮影しておきましょう。DVの頻度や回数も重要になるので、日常的に記録を取っておくといいでしょう。
着信履歴は一定数を超過すると上書きされてしまうので、回数を把握できるようにスクリーンショットなどで記録してください。スマホの機種によっては着信履歴の画面に日時が表示されないものもあります。どの電話番号からいつ(○月○日○時〇分)着信があったなどのメモを取っておいてください。
LINEで浮気の証拠を見つける方法については、こちらの記事を参考にしましょう。
「LINEで浮気の証拠を見つける13の方法|見つけた後にすべきことや注意点とは?」
⑥家計簿・通帳など
経済的DVを証明するには、金銭の収支について客観的に把握できる証拠が必要です。具体的には次のようなものが証拠となります。
- 生活費が入金されていないことが分かる通帳・取引履歴
- 日々の家計の収支について記した家計簿やレシート
- 結婚前の貯金からいくら補填したか分かる通帳・取引履歴
- 生活費を渡さずに自分の口座に貯めていることが分かる通帳・取引履歴
証拠の取り方
通帳はまとめて記帳しようとすると、入出金合計がまとめて記帳される場合があるので、定期的に記帳するようにしましょう。取引履歴(入出金明細)は銀行の窓口で取得可能です。ただし最長でも過去10年程度までの明細しか出せないので気を付けましょう。
⑦警察への相談履歴
警察への相談履歴もDVの証拠として有用です。また保護命令を出す場合にも、警察に相談した履歴が必要になります。DV被害を受けたときもしくは、その前段階で警察に行くようにしましょう。近隣の人や知人等からの通報によって、警察が動くケースもあります。
今まさにDVを受けているといった緊急の場合は110番通報するか、最寄りの交番・駐在所・警察署に駆け込んでください。過去にDVを受けていて、また被害を受けるのではと心配なときには、医師の診断書を持参して警察署や警察本部の生活安全課などに設置されている「DV相談窓口」に相談してください。また警察相談専用電話「#9110」も利用可能です。
「警察に相談すると夫が逮捕されてしまうのでは?」と心配な方がいるかもしれませんが、警察に相談しただけでは逮捕されません。被害届を提出しない限りは、刑事事件として捜査しないのでご安心ください。もちろん暴力の程度が大きい場合やDVが繰り返されるようなときは被害届を出すことをおすすめします。
証拠の取り方
警察への相談履歴を証拠とするには、相談カードや相談記録などの書面を取得して、相談日時や内容を証明できます。他の証拠と併せることでDVがあったことを証明可能です。また保護命令申し立ての要件にも含まれています。
⑧専門の相談機関への相談履歴
警察への相談が難しいときには、DV専門の相談機関に相談してください。相談先ではDVを受けた日時や内容を記録しているので、DVの証拠としてこちらの主張を裏付けるのに役立つはずです。DV専門の相談機関には、次のようなものがあります。
配偶者暴力相談支援センター
(DV相談ナビ)電話:#8008
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国が運営していて全国308カ所(うち市町村設置173カ所)の施設がある(令和4年9月1日現在)
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DV相談+(プラス)
電話:0120-279-889 チャット:https://form.soudanplus.jp/ja
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その他各都道府県が設置している女性支援センターや男女共同参画推進センター、福祉事務所等でもDV相談を受け付けています。
証拠の取り方
専門機関に相談した履歴を証拠とするには、婦人相談所の「配偶者からの暴力の被害者の保護に係る証明書」や配偶者暴力支援センターの「配偶者からの暴力の被害を受けている旨を証する書類」を出してもらう必要があります。書類の申請方法は各機関によって異なります。詳しくは窓口にお問い合わせください。
⑨第三者の証言
家族や知人といった第三者の証言も、DVの証拠となり得ます。例えば「暴力を振るっているところを見た」といった内容の証言だと証拠能力が高いものになります。一方で「DVについて相談を受けた」のような内容だと、証拠価値は低くなります。
また子どもがDV現場を目撃したというケースも少なくありません。子どもの証言もDVの証拠となりますが、子どもの年齢や関係性などの事情が考慮されるため、場合によっては証拠として重要視されない可能性があります。
証拠の取り方
第三者(証言者)の証言は裁判所に提出する「陳述書」にまとめるのが通常です。証言者が知り得たDVについての内容をまとめて日付を記入し、署名捺印してもらってください。DVがあった日時や場所、暴力の内容や被害の状況などを出来るだけ詳しく書いてもらいましょう。
⑩メモや日記
DV被害についての具体的な内容と一緒に、日常で起きた出来事などもメモや日記に残しておくといいでしょう。暴力や暴言の内容を記録しておけば、DVやモラハラの証拠となります。証拠としての証明力を高めるために、継続的かつ詳細に記載するのがポイント。具体的には次のような内容を記載してください。
- 日時
- 場所
- 時間
- DVの内容(頬を平手で打たれた・足をけられたなど)
- 加害者が発した言葉
- 被害状況
- 暴力後の加害者の言動
- 暴力後の自分の対応
- なぜ通報・相談しなかった(できなかった)のか
「被害者が一方的に書いたものは捏造を疑われるのでは?」と思われるかもしれませんが継続的かつ詳細に書かれたものであれば警察や裁判所では「信ぴょう性がある」と判断してくれる可能性が高いです。
証拠の残し方
日記などが加害者に見つかると、DVがエスカレートする可能性が高いです。保管方法に注意して、絶対に見つからないように気を付けて下さい。
DVの証拠を集めるときの注意点
DVの証拠を集めるときには、次のような点に注意が必要です。
複数の証拠を確保して客観的に示す
DVの証拠は多ければ多いほどいいです。医師の診断書だけよりは、負傷した部位や荒らされた部屋の写真がセットになった方が説得力が増します。さらにその当時の状況を日記などに記録していたり、第三者の目撃証言なども得られれば、客観的にDVを証明できるでしょう。
とくに精神的DV(モラハラ)の場合は、証拠が得にくい傾向があります。一度きりの脅迫的な言葉や暴言では、DVと認められにくくなります。日常的に長期間にわたって暴言や脅しが行われていたという状況を明らかにできるように心がけましょう。
身の安全を第一に考える
日常的に激しいDVを受けているときには、証拠を集める余裕などない場合も少なくないでしょう。身体や生命に危険が及ぶ可能性があるときには、証拠集めよりも身の安全を第一に考えて行動してください。相手から逃げる方法が思い浮かばないときには、警察や専門の相談機関に連絡してください。
確保方法が違法だと証拠と認められない可能性
証拠の集め方が違法かつ悪質性が高い場合には、証拠として認められない可能性があります。DVの証拠を取ろうと思ってこっそり撮影しようとすると、配偶者の同意を得ない違法な隠し撮りとみなされる可能性があります。また相手の暴言を録音しようと思ってこっそりボイスレコーダーを仕掛けるというケースも同様です。
ただし証拠能力が否定されるのはあくまでも悪質性が高いケースに限られます。当事者間のやり取りを自宅で録画・録音しているのであれば、基本的に犯罪にはなりません。証拠の取り方で不安な方は、あらかじめ弁護士に相談するといいでしょう。
集め方が分からないときは専門家に相談
証拠の集め方が分からない、違法な集め方かどうか判断がつかないというときには、法律の専門家である弁護士に相談するのがおすすめです。具体的な証拠の取り方や第三者からの証言の取り方、どの専門機関に相談すべきかなどのアドバイスが得られます。
またせっかく苦労して集めた音声や動画などの証拠が違法と判断されたり、証拠として認められないとみなされないよう、事前に弁護士に相談してください。身体や生命に危険が及ぶ可能性が高いときには、相手から離れた上で集められる証拠の取り方をアドバイスしてくれるでしょう。
離婚時に依頼したい弁護士の選び方は、こちらの記事を参考にしてください。
「離婚時に依頼したい弁護士の選び方|相談前・相談時のポイントと費用に関する注意点を解説」
DVの証拠や離婚に関する疑問・質問
ここまでDVの証拠の集め方や残し方などを解説してきました。こちらではDVの証拠についてや離婚、慰謝料請求に関する疑問や質問にお答えしていきます。
診断書には有効期限がある?
医師の診断書には有効期限がありません。しかし受診してから診断書を作成してもらうまでに時間が経ち過ぎていると、証拠能力が低くなる恐れがあります。また診断書の作成に当たってはDV被害を受けてから○日以内に受診しなければならないといった決まりがないものの、被害を受けてから受診までに期間が建ち過ぎていると、DV行為と傷害の因果関係の証明が困難に。
被害を受けたらなるべく早めに医療機関を受診し、受診したら日にちを空けずに診断書を作成してもらうようにしましょう。
少しの傷でも診断書は取れる?
たとえ少しのかすり傷や擦り傷だとしても、躊躇せず医療機関を受診してください。「このくらいの傷やアザで病院に行くのは…」とためらわれるかもしれませんが、DVの客観的な証拠として診断書は必要です。受診時にはDVによって受けた傷であることやその状況、痛みの感じ方などを医師に伝えたうえで、診断書に記載してもらうようにしましょう。
診断書がないと離婚できない?
DVが原因で離婚する場合、医療機関の診断書は強力な武器になりますが、診断書がなくても離婚が成立する可能性があります。夫婦間の話し合いで離婚できる協議離婚や裁判所での法的手続きを利用する離婚調停では、DVの証拠がなくても双方の合意があれば離婚できます。
また離婚裁判でも、写真や日記、録音データなど他の証拠からDV被害を証明できた場合には、離婚が認められる可能性があります。これらの証拠がない場合は、DV以外の原因で婚姻関係が破綻したと主張する方法に切り替えることを検討しましょう。
相手に傷害の前科があると有利になる?
加害者に傷害の前科がある場合は、離婚に有利になるのでしょうか。結論から言うと傷害事件等の前科があっても、それだけでDVの証拠とはなりません。というのも前科がある人全員が、DVを行う訳でないからです。加害者の前科は、「暴力を振るう傾向にある」ということを認識してもらう程度と考えましょう。
ただし自身が過去に受けたDVが傷害事件になったときには、DVの証拠として使える可能性があります。
過去のDVでも慰謝料請求できる?
最近はDVがなくなったが、過去のDVで慰謝料請求したいと考える人もいるかもしれません。過去のDV行為を理由にして警察に訴えたり慰謝料請求は可能ですが、時効に注意してください。DVを刑事事件として暴行罪や傷害罪で訴えたいときには、刑事上の公訴時効が問題となり、暴行罪なら3年、傷害罪は10年で時効となります。
また慰謝料請求に関しては、民事上の消滅時効の規定によって、離婚してから3年以上経つと慰謝料請求ができない可能性が。一方で個別の事情によっては、離婚後3年以上経過した場合でも、慰謝料請求できる場合があります。時効が成立したかどうかは、個別の事案によって専門的な判断が必要です。詳しくは弁護士に相談してください。
離婚慰謝料で1000万円もらえるかについては、こちらの記事を参考にしましょう。
「離婚慰謝料で1000万もらえる?高額慰謝料を手にする方法と減額するコツとは」
まとめ
DVには身体的DV・精神的DV・経済的DV・性的DVなどの種類があります。DVの証拠はスムーズに離婚するのに必要なほか、刑事罰を科すためや保護命令を出すため、慰謝料請求や子どもの親権の判断に必要です。身の安全を第一に考えたうえで、証拠として取れるものは複数確保しましょう。
DVの証拠には医師の診断書、写真や動画、音声データや日記、警察・専門機関への相談履歴などがあります。それぞれにDVの証拠として認められるためには、集め方や取り方に十分気を付けましょう。またDV加害者に絶対に見つからない場所や方法で証拠を残すことも重要です。
証拠の取り方が違法だと証拠として認められない可能性があります。また過去のDVを訴えたり慰謝料請求するには時効が大きなポイントに。証拠の集め方や時効について、離婚方法や慰謝料請求方法が分からない方は、法律の専門家である弁護士に相談したうえで、適切なアドバイスをもらってください。