- 「不貞行為と不倫との違いが知りたい」
- 「どんな証拠があれば不貞行為を証明できる?」
自分の夫や妻が不倫して慰謝料請求や離婚を考えたとき問題になるのが「不貞行為」の有無です。不貞行為は民法上の不法行為に該当するため、様々な法的責任が生じますが、どこからどのような行為が不貞行為に該当するか知らないという方も多いのではないでしょうか。
そこでこちらの記事では「不貞行為はどこから?」という疑問を中心に、不貞行為に当てはまる・当てはまらないケースについて詳しく解説。また実際に慰謝料請求や離婚手続きをするときのポイントも紹介していきます。不貞行為には明確な線引きがあります。不貞行為の内容を知って、今後の人生のために役立てましょう。
「不貞行為」とは?
まずは不貞行為の定義や浮気・不倫との違い、法的責任について見ていきましょう。
民法に規定されている法定離婚事由
不貞行為とは「夫婦・内縁・婚約関係にある男女が、自由意思の下で配偶者以外の異性と性的関係を持つ行為」のことをいいます。民法第770条では、この不貞行為を貞操義務違反として、法的な離婚理由である「法定離婚事由」の一つとしています。
貞操義務とは夫婦が互いに不貞してはならないという義務のこと。この貞操義務に違反すると、裁判で双方の同意がなくても離婚が認められます。
不貞行為の定義
不貞行為は上で説明した通り「配偶者以外の異性と性的関係を持つこと」です。不貞行為の定義は、昭和48年11月15日に最高裁判所で出た判決の内容に基づいています。
民法七七〇条一項一号の不貞な行為とは、配偶者のある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいい、相手方の自由な意思にもとづくものであるか否かは問わない。
参照:最高裁判所判例集|裁判所
基本は婚姻届けを提出した夫婦が前提となりますが、夫婦同然の内縁関係や結婚の約束をした婚約関係にある男女も該当します。内縁関係や婚約関係の定義は次の通りです。
内縁関係(事実婚)の定義 | 婚約関係の定義 |
---|---|
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これらの関係の男女の片方が、配偶者以外の異性と性的関係を持つと不貞行為に該当します。ただ最近では、同性同士の性的関係も不貞行為と認められる裁判判決が出たため、同性との行為も不貞行為とみなされる可能性が。
参照:<独自>同性との不倫も「不貞行為」妻の相手に賠償命令|産経新聞
自由な意思に基づいてとある通り、無理やり脅されて性的関係を持った場合や強姦などの犯罪は不貞行為に該当しません。また相手に自由意志があるかどうかは問題になりません。
結婚前の相手の浮気で慰謝料請求したいという方は、こちらの記事を参考にしてください。
「結婚前の浮気で慰謝料請求するには…できる条件や請求の手順、慰謝料の相場を解説」
浮気や不倫との違い
では一般的に使われている言葉、浮気や不倫と不貞行為とはどのように違うのでしょうか。不貞行為は法律用語であるのに対し、浮気や不倫は法律用語ではありません。
浮気は結婚前の男女の心変わりをいうこともあり、不倫は性的関係がない間柄で「心の不倫」などと使われることもあります。浮気や不倫という言葉は、人によって定義があいまいなのが特徴です。しかし不貞行為は上で説明した通り明確な定義があるため、人によって解釈の仕方が異なるなどということはありません。
浮気と不倫の違いや不貞行為との区別、相手が不倫しているかもと思ったときの対処法は、こちらの記事を参考にしましょう。
「浮気と不倫の違いはある?法律上の不貞行為の定義や『不倫しているかも』と思ったときの対処法」
回数に規定はない
不貞行為には回数に規定はありません。たった一度きりでも不貞行為は成立します。ただし裁判で不貞行為として慰謝料請求や離婚を求めるケースでは、「継続的に」不貞行為があったという証拠が必要に。したがって一度入りの不貞行為では離婚が認められなかったり、慰謝料の金額が相場よりも低くなる可能性があるでしょう。
不貞行為に関する法的責任
不貞行為をした場合、法律のうえでは一定の責任が生じます。具体的には次のような理由で法的責任があるでしょう。
民法の不法行為に該当
不貞行為は民法第709条の「不法行為」に該当します。というのも夫婦には、民法第752条で定める「同居、協力及び扶助の義務」があるため。
夫婦は同居して互いに協力しながら助け合わなければならないという内容で、ここに貞操義務も含まれると解釈されています。つまり貞操義務に違反する不貞行為は、夫婦の権利を侵害するとして民法上の違法行為とみなされます。
裁判上の離婚理由になる
民法第770条では法律上の離婚事由として、一番目に「配偶者に不貞な行為があったとき」と定めています。離婚には話し合いで離婚する「協議離婚」、家庭裁判所の調停を経て離婚する「調停離婚」、裁判を申し立てて離婚を求める「裁判離婚」の3つの方法があります。
このうち協議離婚や調停離婚では、双方が合意すれば離婚理由を問わずに離婚できますが、裁判離婚では民法が定める法定離婚事由がないと離婚が認められません。逆に言うと法定離婚事由さえあれば、片方が離婚を拒んでいても最終的には離婚できるという訳です。
妻の浮気で離婚を決意した方は、こちらの記事を参考にして親権や慰謝料請求について学びましょう。
「妻の浮気で離婚を決意したら…親権・慰謝料など損をしないために取るべき行動」
慰謝料請求が可能
また不貞をされた側は、不法行為に基づく慰謝料請求をすることができます。慰謝料は損害賠償金のことですが、損害には目に見えるケガや障害だけでなく、精神的な苦痛も含まれます。不貞行為の慰謝料は下で詳しく説明しますが、配偶者とその相手の2人とも、配偶者か不貞相手のどちらか一方に請求できます。
刑法に規定がないため犯罪ではない
ただし不貞行為は刑法に規定されていないため、犯罪でないので逮捕されることはありません。
明治23年に公布された旧民法には「姦通罪」という犯罪があり、結婚している女性が夫以外の男性と姦通(性的関係)することで、妻とその相手方に2年以下の懲役に処すると定められていましたが、戦後の刑法改正によって昭和22年に廃止。現在、不貞行為は犯罪には当たりません。
不貞行為はどこから当てはまる?
では不貞行為は、具体的にどのような行為が当てはまるのでしょうか。
不貞行為に当てはまるケース
まずは不貞行為に当てはまるケースからみていきましょう。
異性(同性)との性交渉
不貞行為は異性との性交(性器を結合させる行為)のことをいいますが、現在の判断では同性同士の性交渉も不貞行為とみなされる可能性があります。
というのも2019年9月18日に宇都宮地裁真岡支部で出た判決によると、同性カップルの片方がパートナー以外の人と性交渉を持ったという事案で、この行為を不貞行為による関係破局とみなし損害賠償請求が認められ、不貞行為をした側に慰謝料の支払いを命じました。
行為の回数は問題でなく、1回でも配偶者以外の人と性交渉を持つと不貞行為とみなされます。
性交渉に類似した行為
性交渉に類似したこれらの行為(性交類似行為)も、不貞行為とみなされる可能性が高いでしょう。
- オーラルセックス(口腔性交)
- 射精を伴う行為
- ホテルなどの密室で裸で抱き合う行為
- 一緒に風呂に入る
ラブホテルに2人で入った事実
性交渉があったと明らかに分かるときはもちろんのこと、「性交渉があったと推認できる十分な状況」と認められると不貞行為とイコールとして考えられます。具体的にはラブホテルに不貞の相手と2人で入った事実などです。
ラブホテルは一般的に性交渉をするための場所として認知されているため、ラブホテルに2人で入り長時間一緒に過ごした証拠があれば、確実に不貞行為と認められます。
例えばこれがビジネスホテルやシティホテルだと、「体調が悪くなったので介抱してもらった」と言われれば言い逃れができてしまう可能性が。また他人に聞かれたくない悩みを相談していたなどと言い逃れされる恐れもあるでしょう。ラブホテル以外の宿泊施設への滞在だと、1回きりの証拠では不貞行為と認められない可能性があります。
他の異性との同棲
配偶者以外の異性と同棲していると、不貞行為に該当すると認められるでしょう。男女が一緒に暮らしている場合、性交渉を伴うのが通常とみなされるため。
同棲はしていなくとも、不貞相手の自宅に複数回出入りしている証拠を掴めれば不貞行為があったと認められます。ただし最低でも3回、可能なら5回出入りしている証拠がないと不貞行為とは認められないようです。
買春・売春・風俗
買春や売春、風俗店通いも不貞行為に当たります。「恋愛感情がないのに不貞行為になるの?」と疑問を持たれるかもしれませんが、相手に恋愛感情があってもなくても、性交渉を持てば不貞行為になるということです。配偶者が風俗通いをしているのではと思ったら、店に出入りしている証拠を複数回分集めておきましょう。
ただし1度しか利用していない場合は、基本的に離婚や慰謝料請求は認められません。また相手が風俗店の従業員の場合、不貞行為の慰謝料請求はできないので気を付けましょう。
不貞行為に当てはまらないケース
次に紹介するようなことをしていても、不貞行為に当てはまらない可能性が高いでしょう。
性交渉がない浮気や不倫
性交渉を伴わない浮気や不倫は、たとえ恋愛感情があっても不貞行為には該当しません。相手に本気にのめりこんでいたとしても、下半身を伴わない交際では不貞行為とは認められないという訳です。具体的には次のような行為が不貞行為となりません。
- 親密なメールやLINEでのやり取り
- プラトニックな交際
- 片思い
- 食事やデート
- 合コンや婚活パーティーへの参加
- キスをする
- 手をつなぐ
ただしラブホテルが立ち並ぶ道端で熱烈なキスをする、ワンルームしかない部屋に数日間一緒に泊まり外出時に身体を密着させるといった場合には、性交渉を推認できる可能性があります。
婚姻関係が破綻した後の不倫
婚姻関係が破綻した後の不貞行為は、離婚理由や慰謝料請求の対象とはなりません。別居や家庭内別居により夫婦関係が冷え切っている状況では、配偶者の不貞行為が原因で婚姻関係が破綻したとはみなされないため。
裁判で離婚が認められるには不貞行為によって婚姻関係が破綻したという事実が必要で、慰謝料請求する場合も円満な夫婦関係が破綻したことによる精神的苦痛が認められないといけません。すでに婚姻関係が破綻しているような状態では、不貞された側に何ら権利侵害がないと考えられます。
ただし会社都合の単身赴任や親の介護のための別居は、正当な理由があるので婚姻関係が破綻していると判断されることはほぼないでしょう。
強姦や強制的な性交渉
配偶者以外と性交渉を持ったとしても、強制的な性交渉は不貞行為とは認められません。不貞行為の定義に「自由意志に基づく」という前提があるためです。強姦やレイプをされた側は、自分の意思に反して無理やりされたので不貞行為には当たりません。
判断が分かれるケース
不貞行為になる・ならないについての判断が分かれるケースがあります。
しつこく誘われて性交渉を持った場合
配偶者にはその気がなかったものの、相手にしつこく言い寄られて断り切れずに性交渉を持った場合は不貞行為に当たります。たとえしつこかったとしても脅迫行為や暴行が伴うような状況でない限り、断ろうと思えば断ることができたからです。
ただしそのしつこさの度合いや状況によっては不法行為に当たらないとされ、離婚請求や慰謝料請求が認められない可能性があります。
酔っぱらったうえでの不貞行為
酔った勢いでの関係も、通常は自由意思があったとみなされるため不貞行為となります。ただし酩酊状態で抵抗できなかったとなると、たとえ性交渉があっても自由意思が認められないので、不貞行為には該当しないという訳です。
性的な関係がなくても不貞行為と認められるケース
性交渉や性交類似行為がなくても、例外的に不貞行為が認められる場合があります。例えば夫が不倫相手に入れあげるあまり生活費をすべてその女性に貢いだり、妻との性交渉を拒んだ上に家事や子育てを手伝わず、少しでも時間ができると不倫相手のところに通い詰めるようなケースです。
過去の裁判例では、性交渉の有無にかかわらず婚姻関係を破綻させるような異性との交際も、不貞行為とみなすとしています。
参照:「プラトニック不倫」でも賠償命令…肉体関係「回避の努力」認めず一蹴の判決理由|産経新聞
不貞行為を証明できる証拠の種類
では不貞行為を証明するには、どのような証拠が必要になるのでしょうか。こちらでは不貞行為を証明できる証拠について解説。これから慰謝料請求をしたいと考えている人や、有利に離婚を進めたい人は参考にしましょう。
性交渉中の写真や動画
性交渉中の写真や動画は、それだけで不貞行為の証拠となります。決定的なのは配偶者と不貞相手が裸でベッドの上にいることが分かるもの。行為の最中やその前後だと思われる写真や動画が有効です。配偶者のスマホなどに証拠になるようなものがないかチェックしましょう。
ただしバレないように行動している配偶者も多いため、極力証拠を残さないようにしている場合もあります。勝手にスマホのロックを解除したりすると、プライバシーの侵害になる恐れがあるため、十分に注意しましょう。
ホテルに2人で入るところを撮影した写真や動画
上で説明した通り、ラブホテルに2人で出入りしている写真や動画は不貞行為の証拠と認められます。顔がはっきり分かるような状態で、出入りした時間や滞在時間が分かるような証拠を取りましょう。ビジネスホテルや旅館、相手の家にしか出入りしていない場合は、複数回分の証拠が必要です。
またホテルの滞在時間は、一般的に40分以上ないと不貞行為の証拠となりにくい可能性があります。どのような証拠が有効なのかは、男女問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
性的関係を匂わせるメールやLINE
性交渉があったことを匂わせるメールやLINEのやり取りも証拠として有効です。例えば「私たちセックスの相性がいいね」「そうだね」というやり取りや、「この前行ったラブホテルにまた行こう」「楽しみ」などというやり取りです。
証拠を取るときは改ざんが疑われるスクショではなく、自分のスマホで動画を撮影しながら配偶者のスマホを操作して証拠となる文言の前後のやり取りまで保存することをおすすめします。動画や写真を撮るときは配偶者の持ち物だということが分かるよう、画面だけでなくスマホケースなども一緒に撮るといいでしょう。
当人が不貞行為を認めている音声データ
配偶者や不貞の相手が、不貞行為を認める音声データも証拠となります。実際の裁判では証拠の音声再生は行われないため、音声を文章に書き起こして証拠として提出します。
ただし不貞行為を認めるよう強要したり、相手を脅して自白させたようなケースでは証拠として認められない可能性が高いです。というのも証拠を入手する手段が違法行為のため。逆に相手から強要罪や脅迫罪などで訴えられてしまう恐れがあるため注意が必要です。
既婚者だと知っていることが分かるやり取り
不貞の相手が既婚者だと分かっていて付き合っているやり取りも、不貞の証拠となります。例えば「奥さんは気づいていない?」というLINEでのやり取りや夫婦の結婚式に不貞相手が出席した事実、同じ職場で働いている間柄で結婚していることは周知の事実になっていることなど。これらの証拠は、不貞の相手に慰謝料を請求するときに有効です。
彼氏が既婚者だと知らなかったケースで、慰謝料請求されたときの対処法は、こちらの記事を参考にしてください。
「彼氏が既婚者だと知らなかった…慰謝料請求されたときの対処法や減額方法を解説」
上記以外で認められる証拠
上で示した証拠以外にも、どれか一つだけで有効な証拠にならないものの、前後の状況によっていくつかの証拠を組み合わせることで不貞行為と認められる可能性があります。「これって証拠になる?」と思うようなものでも、合わせ技で不貞行為になる場合があるので、できるだけ多くの証拠を集めることをおすすめします。
- 不貞相手からのメール・LINE・手紙・SNSのやり取り
- 電話中の音声を録音したもの
- 浮気現場の写真や動画
- 口紅やファンデーションが付いた衣服
- 不貞相手からのプレゼント
- 友人や職場関係者など第三者からの証言
- ラブホテルの領収書
- クレジットカードの利用明細
- 配偶者の行動を記した日記やメモ(帰宅時間・外泊・休日の外出)
拝具者の行動を記した記録は、日記とともにつけるといいでしょう。帰ってきた時間や帰ってきたときの様子、その他家族の状況などが分かるよう、なるべく詳細に記録しましょう。
慰謝料請求や離婚を失敗しない注意点・ポイント
不貞の証拠を確保した後は、実際に慰謝料請求や離婚要求へと行動を移します。このような場面で失敗しないためのポイントや注意点を紹介します。
慰謝料請求について
不貞行為をした配偶者とその相手に対しては、当然ですが慰謝料請求できます。基本的には離婚する・しないにかかわらず請求できます。
慰謝料を請求できるケースか確認
まずは慰謝料を請求できるケースか確認が必要です。慰謝料は民法では「不法行為による損害賠償」といい、次のように定めています。
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
参照:民法|e-GOV法令検索
不貞行為で慰謝料を請求する場合は、その行為自体が「故意」または「過失」によるものであることを証明する必要があります。故意や過失について、言葉の意味は次の通りです。
- 故意
- 自分の行った行為が他人に損害を与えることを知りつつあえてその行為をすること
- 過失
- 他人に損害を与えることを知らないまでも、その知らないことに対して注意を怠ったこと
例えば不貞相手が、既婚者だと知りつつ夫に近づいて性交渉を持った場合は「故意」が認められ慰謝料請求ができます。さらに既婚者だと知り得る状況やきっかけがあったにもかかわらず、あえて知ろうとしなかったケースは「過失」と判断されると、慰謝料請求が可能です。
逆に夫が既婚者だということをひたすらに隠し、不貞相手も独身だと思っていて、そう思うことに落ち度がない場合は「故意」も「過失」もないため慰謝料請求が難しいでしょう。
慰謝料の相場を知る
慰謝料を請求する前に、慰謝料の相場を知ることも大切です。不貞行為による慰謝料の相場は50万円~300万円となっていますが、婚姻生活へのダメージによって次のように相場が変わります。
婚姻生活へのダメージの大きさ | 慰謝料の相場 |
---|---|
別居も離婚もせずに婚姻生活を継続させた場合 | 50万~100万円 |
別居した場合 | 100万~200万円 |
離婚した場合 | 200万~300万円 |
離婚した場合は、別居も離婚もせずに婚姻生活を継続させた場合と比べて、夫婦関係に与えた影響が大きいため、慰謝料の相場も高くなります。
離婚慰謝料の相場や金額アップのポイントについては、こちらの記事を参考にしましょう。
離婚慰謝料の相場が知りたい!離婚理由や婚姻期間による相場・金額をアップさせるポイントを解説
慰謝料の金額を左右する要素
夫婦関係に与えた影響以外にも、慰謝料の金額を左右する要素があります。
- 婚姻期間の長さ
- 子どもの有無・人数・年齢
- 夫婦の年齢
- 子どもへの影響の大きさ
- 不貞行為以前の夫婦関係
- 不貞行為の回数・期間
- 相手の認識や意図の有無
- どちらが主導的だったか
- 配偶者と不貞相手の社会的地位や収入
- 不貞行為の悪質度
- 精神的苦痛の度合い
当事者間のみで慰謝料を請求する場合は任意で金額を決められますが、当事者同士で話がまとまらず裁判所が間に入る場合は、これらの細かい事情を判断材料として慰謝料を算定します。ここでは不貞期間の長さや損害の大きさ、悪質度の高さがポイントになります。
慰謝料請求の時効に注意
不貞が分かってしばらくしてから慰謝料を請求する場合は、時効に気を付けましょう。不貞行為による慰謝料請求では、次のような時効があります。
- 不貞の事実と不貞の相手を知った日から3年
- 不貞の関係が始まった時点から20年
上記1.2のうち、どちらか短い方の期間で時効が完成します。時効が完成しても請求相手が時効を援用しない限り慰謝料請求権は消滅しませんが、慰謝料請求を考えているのなら早めの行動がおすすめ。
ただ時効が迫っていても内容証明郵便を送るなどの対策で、6カ月間時効の到来を中断することができます。「時効がいつになるか心配」「時効を中断したい」という方は、早めに弁護士に相談しましょう。
離婚しない場合は不貞の相手にのみ請求
離婚しないと決めたら、慰謝料請求できるのは一般的に不貞の相手にのみです。というのも生計を一つにしている夫婦の場合、配偶者に慰謝料請求しても実益があまりないため。ただし夫婦で生計を別にしているケースや、配偶者が共有財産以外の財産を持っているケースでは、慰謝料を請求することが可能です。
双方に請求する場合は慰謝料の二重取りができない
配偶者と不貞相手の両方に慰謝料を請求する場合は、慰謝料の二重取りはできません。例えば慰謝料金額が300万円が相当であるというケースで、次のように慰謝料を請求することができます。
- 配偶者に100万円、不貞相手に200万円
- 配偶者に150万円、不貞相手に150万円
- 配偶者に300万円、不貞相手に300万円
ただし一番下のケースでは、それぞれに300万円ずつの慰謝料を請求できる(不真正連帯債務)ものの、それぞれから300万円の慰謝料を受け取ることはできません。この場合、配偶者か不貞相手のどちらかから300万円に達するまでの慰謝料を受け取ると、その時点からは300万円以上の請求はできないので注意しましょう。
一般的には半額(150万円)ずつで負担するのが通常ですが、不貞相手が自分の負担金額を超えて(200万円)慰謝料を支払った場合、配偶者に対して超えた部分(50万円)の支払いをするように請求することができます。これを「求償権」といい、法律で認められた権利となっています。
ダブル不倫で離婚したい場合の慰謝料請求の方法については、こちらの記事を参考にしてください。
「ダブル不倫で離婚したい!離婚の方法や気になる慰謝料請求について解説」
離婚について
配偶者の不貞行為が原因で離婚する場合は、次のようなことに気を付けましょう。
法定離婚事由に該当するか確認
まずは配偶者の行った行為が、民法で定められている法定離婚事由に該当するか確認しましょう。プラトニックな浮気やデートするだけの関係、性交渉がない異性関係は不貞行為と認められません。また裁判で離婚が認められるためには、証拠の提出が必須です。
1度の不貞行為では離婚が認められない可能性
1度きりの不貞行為では、離婚が認められない可能性が高いでしょう。例えば酔った勢いで、もしくは魔が差して1度だけ配偶者以外の人と性交渉をしたとしても、不貞行為には該当しますが、離婚裁判で離婚を認めてもらうのは難しいです。風俗店通いも同様です。
というのも裁判は過去の判例に基づいて決定することが多く、これまで1度きりの不貞行為では離婚が認められないことがほとんどだからです。1度だけではまだ夫婦の関係が修復可能で、婚姻関係を継続させる意味があると判断するため。不貞行為で離婚が認められるためには、ある程度継続的もしくは反復した証拠がないと難しいでしょう。
不貞行為がないときは「婚姻を継続し難い重大な事由」に切り替える
配偶者のした行為が不貞行為に当たらない場合は、離婚理由を法定離婚事由の「婚姻を継続し難い重大な事由」に切り替える必要があります。具体的には次のような事情があると、「婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚が認められやすいです。
- 暴力行為や暴言
- 子どもへの虐待
- 過度な宗教活動
- ギャンブルや浪費による金銭問題
- 多額の借金
- 働けるのに仕事をせず生活費を入れない
- 過度な宗教活動
- 同性愛や性的不能
- 配偶者の親族との不仲
- 犯罪行為による服役
- 回復不可能な心身の病気
- 性格の不一致
- 長期間に及ぶ別居
また1度だけの不貞行為では離婚は認められませんが、これが原因で婚姻関係が破綻したと認められれば「婚姻を継続し難い重大な事由」とできる可能性があります。
早く離婚したい人が取れる方法やスムーズ離婚するためのポイントについては、こちらの記事を参考にしましょう。
「早く離婚したい人が取るべき7つの方法|スムーズに有利に離婚するためのポイントとは?」
不貞行為と親権・養育費に直接の関係はない
不貞行為と離婚時の親権や子供への養育費には、直接の関係がありません。不貞行為した妻でも子どもの親権を取れる可能性が高いという訳です。親権は子どもの養育のために両親のどちらが適しているかを決める問題のため、どちらが有責配偶者でも影響を受けることはありません。
また養育費も子どもが健やかに成長するために必要な費用として、裁判所の算定表をもとに金額が決められます。「旦那の浮気で離婚したのだから、養育費を多めに払って欲しい」と思っても、養育費を増額できません。不貞行為の責任は慰謝料請求で解決すべきだからです。
養育費の一括請求については、こちらの記事を参考にしてください。
「養育費の一括支払い・請求について|メリット・デメリットや計算方法、注意点を解説」
不貞行為した側からの離婚請求はできない
「不倫相手と結婚したいから」と不貞行為した側から離婚請求することは、原則的にできません。とくに小さな子どもがいる家庭や、された側が働いておらず離婚すると経済的に困窮するケースでは、有責配偶者からの離婚請求は認められないので安心してください。
ただしすでに夫婦関係が破綻していて、長期間の別居が続いているようなケースでは、例外的に離婚が認められる可能性があります。裁判で離婚が認められる別居期間の目安は、3年~5年です。別居期間や夫婦の年齢、別居の理由や同居期間なども考慮して、裁判所が総合的な判断を下します。
別居1年で離婚したい方やなるべく早く離婚するコツを知りたい方は、こちらの記事を参考にしましょう。
「別居期間1年で離婚できる?長引く・認められないケースと早く離婚するポイント」
まとめ
不貞行為は法定離婚事由に該当する行為で、裁判で認められれば慰謝料を請求したり相手の同意がなくても離婚が可能です。不貞行為になるのは配偶者以外の異性との性交渉やそれに類似した行為です。ラブホテルへの出入りや同棲、風俗店通いも不貞行為になります。
一方で性交渉を伴わない浮気や強制的な性交渉は、夫婦関係が破綻した後の行為は不貞行為とはみなされません。また1度きりの不貞行為は裁判で離婚が認められない可能性が高いでしょう。
不貞相手に慰謝料請求する場合は、既婚者だと知っていたという「故意」や知らなかったことに不注意だったという「過失」が必須。離婚時は子どもの親権や養育費など決めなければならないことがたくさんあります。慰謝料請求や離婚裁判をする場合は法的な知識が欠かせません。有利にことを進めるためには、なるべく早い段階で男女問題に詳しい弁護士に相談しましょう。