- 「離婚したいのにできない…どうすればいい?」
- 「離婚したいのにできないとどのようなことが起こるか知りたい」
いずれは離婚したいと思っているのに、なかなか実行に移せないという人は多いのではないでしょうか。このように離婚したいのにできないというケースで、スムーズに離婚するためには理由に応じた対処法が必要です。こちらの記事では、理由ごとの対処法を詳しく解説するので参考にしてください。
さらに「どうせ離婚できないから」と我慢し続けると、様々な影響があります。スムーズに離婚するためのポイントをおさえ、自分の人生を立て直していきましょう。
離婚したいのにできない主な理由
こちらでは、離婚したいのにできない主な理由を紹介していきます。自分のケースはどれに当てはまるのか、確認していきましょう。
相手が離婚を拒否している
協議離婚や調停離婚では、相手が離婚を拒否し続けている限り離婚できません。離婚する夫婦の約9割が協議離婚を選択していますが、離婚するためには夫婦の合意が必要です。協議離婚で離婚できない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てるケースが多いのですが、調停では夫婦間の意見を出し合って話し合いが進められるため、双方が離婚に合意しないと調停は「不調」となり、離婚に至りません。
相手が離婚を拒否する理由は様々ですが、主に次のような理由が考えられます。
- まだやり直せると思っている
- あなたへの愛情を持っているから
- 離婚したい理由が正確に伝わっていない
- 世間体を気にして
- 今までの自分を否定されたように思っているため
- 相手の思い通りになるのが嫌だから
- 離婚に同意すると負けた気がするから
- 子どもがまだ小さいから
相手によっては離婚の話をしようとすると無視したり、逆上するケースも。話し合いを続けても相手が離婚に応じない場合には、離婚までの道筋は容易ではないと覚悟が必要です。
子どものため
子どものために、離婚を躊躇している人もいるでしょう。小さい子どもがいる家庭では、夫婦仲が悪くなっていたとしても片親と離れて生活させるのが忍びないと、離婚を踏みとどまっている人が少なくありません。また引っ越しや転校などによる子どもへの負担を考えて、今の生活を続けているという人もいるでしょう。
とくに子どもがもう一方の親をしたっている場合には、離婚により親子を引き離してしまってもいいのかと迷いや不安が生じることがあるかもしれません。
経済的理由から
離婚後の経済的な不安から、離婚したいのにできないと思っている人がいます。専業主婦やパート勤めで、生活費は主に相手の収入で賄っている人の場合、離婚後に十分な収入が得られずに生活が苦しくなる恐れがあります。とくに子どもを連れて離婚する場合、子どもにかかる教育費や生活費に不安を感じ、離婚に踏み切れない人も。
実際、シングルマザーなどのひとり親家庭では、働き方が制限されるために生活が困窮しやすいという現状が。厚生労働省による2022年の調査では、父子家庭の平均年収が496万円に対して母子家庭では236万円と、シングルマザーの過程で相対的に厳しい経済状況にあると言わざるを得ません。
参考:令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果の概要|厚生労働省
一人になるのが何となく不安
一人になるのが何となく不安に感じ、離婚を決断できない人もいるでしょう。離婚して一人暮らしの生活に戻ると、配偶者がいた生活を思い出して少なからず孤独を感じるでしょう。「ずっとこのまま一人なのか?」「もう誰とも結婚することがないかもしれない」と感じ、孤独感を募らせる人も。そのような思いをするくらいなら、嫌だけど離婚しない方がいいと考えても無理はありません。
離婚の話し合いができない
相手のモラハラやDVで離れたいと思っている場合、離婚したいと口に出すと相手が何をするか分からないので、離婚を切り出せないという人もいるでしょう。とくに長年苦しんできた人の中には、マインドコントロールにより「自分さえ我慢すれば」「自分が悪いから暴力を振るわれる」などと考えるケースが少なくありません。
このようなケースは、自分が「この状況から抜け出したい」と思うようになるしか方法がありません。また離婚したいという気持ちになっても、直接相手と離婚の話し合いができない点も要注意です。
(裁判で)離婚理由が認められない
裁判で離婚理由が認められそうもないから、離婚したいのにできないという場合があります。協議離婚や調停離婚ができないケースで、それでも離婚するには離婚裁判を起こすしか方法がありません。しかし離婚を裁判で訴えるためには、民法第770条に規定されている「法定離婚事由」が必要です。
(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
引用:民法|e-GOV法令検索
これらの民法で定められた離婚理由が認められない限り、裁判離婚できません。また法定離婚事由があったとしても、裁判所が「婚姻の継続が相当である」と判断した場合には、離婚が認められない可能性があります。
自分が有責配偶者
婚姻関係の破たんの原因が自分にある場合、いわゆる「有責配偶者」だった場合、離婚したいのに裁判で離婚が認められない可能性が高いです。例えば不貞行為やモラハラ、DVをした側の有責配偶者が離婚を希望している場合です。
自分から夫婦関係を破綻させておきながら、一方的に離婚を求めるような自分勝手な行為は認められないと判断されるため。有責配偶者からの離婚は全く認められないという訳ではありませんが、相当に高いハードルをクリアする必要があります。
離婚条件が折り合わない
離婚すること自体は相手と合意が取れているものの、離婚条件が折り合わずに離婚できないというケースがあります。離婚するときには、次のような条件を決める必要があります。
- 子どもの親権
- 養育費
- 面会交流
- 慰謝料
- 財産分与
とくに争いのもとになりやすいのが子どもの親権と財産分与です。どちらも親権を希望している場合や、財産分与の分け方などで争いがある場合には、協議や調停で話がまとまらないと離婚できません。
速く離婚したい人が取るべき方法は、こちらの記事を参考にしてください。
「早く離婚したい人が取るべき7つの方法|スムーズに有利に離婚するためのポイントとは?」
できない理由ごとの離婚する方法・対処法
離婚したいのにできないという場合には、それぞれに理由があります。まずはその理由を明らかにして、それでも離婚を希望する場合は理由ごとの対処法や方法を取っていきましょう。
離婚を拒否されている
相手に離婚を拒否され続けていて離婚できないという方は、まず相手がなぜ離婚を拒否しているか知る必要があります。具体的には離婚自体を拒否しているのか、それとも条件が折り合わないため離婚したくないと言っているのかを見極めてください。それぞれに応じた対処法を取る必要があるからです。
①時間をかけて説得する
まずは相手が離婚に応じるよう、時間をかけて説得してください。なぜ相手が離婚を居しているかという理由を知ることで、理由に応じた説得の仕方があるからです。相手がまだやり直せると思っている場合には、修復の可能性がないという現実を伝え、離婚に対する本気度を見せることで離婚に応じる可能性が出てきます。
また離婚条件で納得できていないというケースでは、相手の希望に沿うような離婚条件を提案したり、自分が考える離婚条件を飲んでもらえるよう説得する必要が。子供と会えなくなることがネックで相手が離婚を拒否している場合には、養育費の支払いを通じて子どもの支えとなれることや、面会交流の頻度を高めて親子の絆を保持する方法があることを伝えましょう。
相手が経済的不安から離婚を拒否している場合には、慰謝料として当面の生活費を支払う、財産分与を多めに渡すなどの約束をすれば、離婚に応じてくれる可能性があります。
②別居する
時間をかけて説得しても相手が応じないときには、離婚を前提とした別居をすべきでしょう。別居期間が長引けば、それだけで法定離婚事由の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」となるからです。ただし別居をするときには、相手に事前に了承を取ってください。
黙って家を出てしまうと、こちらも法定離婚事由の一つ「悪意の遺棄」に該当する可能性が。どうしても相手が首を縦に振らない倍は、別居の意思を伝えた旨をメールして、記録に残すようにするのがポイント。「無断で家を出た」と判断されないように気を付けましょう。
「別居からの離婚が成立する期間はどれくらい?必要な期間や別居する際の注意点」
③弁護士を通して交渉
当事者同士の話し合いで結論が出ないときには、弁護士などの専門家に交渉を依頼するのも一つの方法です。今まで離婚の話し合いを無視し続けていた相手でも、弁護士からの連絡に応じないわけにいかなくなります。また相手の性格上弁護士との話し合いも素直に応じないと考えられるときには、早い段階で離婚裁判を視野に入れて法的手続きを進められます。
とくにこちらの離婚の意思を本気にしていない相手にとって、お金を払ってまで弁護士に依頼したという姿勢に、離婚への強い意思を感じる可能性が高いでしょう。親族や友人でない第三者に間に入ってもらうことで、冷静に離婚の話し合いを進められるようになります。
④離婚調停
離婚の話し合いでも決着がつかないときには、離婚調停の場で話し合いをしていきます。離婚裁判を視野に入れている場合でも、裁判を起こす前には必ず調停を経る必要があります(調停前置主義)。家庭裁判所を話し合いの場に変え、男女2名の調停委員を仲介役として双方の意見や希望をすり合わせていきます。
調停委員は双方の意見を伝達するメッセンジャーの役割があるとともに、夫婦それぞれに離婚に関する合意を形成するよう説得します。離婚調停では離婚する・しないについてだけでなく、子どもの親権や養育費、財産分与など離婚条件について争いがある場合に話し合いが進められます。
別居中に夫から生活費をもらえずに困っているときには、離婚調停と同じタイミングで婚姻費用分担調停を起こすことで、その問題を解決できます。
離婚調停にかかる期間については、こちらの記事を参考にしましょう。
「離婚調停の期間を短く有利にするには?長引く原因や疑問を解決して新たな一歩を」
⑤離婚裁判
離婚調停で結論が出ない場合には、最終手段である離婚裁判を申し立てます。こちらでは相手の意向にかかわらず、裁判官が夫婦間における事実や証拠をもとに離婚すべきかについて判断を下します。そこで上に挙げた法律上の離婚理由があると判断すれば、判決により離婚が決定します。
離婚裁判にかかる費用に関しては、こちらの記事を参考にしてください。
「離婚裁判の費用を徹底解説!金額の相場や払えないときの対処法、注意点とは?」
子どものため
子どものために離婚したいのにできないと考えている場合、次のような方法を取っていきましょう。
①相手とよく話し合う
相手に離婚したい理由がある場合、離婚を切り出す前に一度相手と親権に話し合いを持つべきでしょう。とくに男性に対しては、より具体的に何が問題でどのように改善して欲しいかについて、具体的な言葉や数字を使って話をしないと、理解されない可能性があります。
2人だけで話し合いが難しいときには夫婦カウンセリングなどで、カウンセラーを交えて話す機会を設けてみてください。それでも話し合いに応じてくれなかったり真剣に取り合ってくれないときには、改めて離婚を検討しても遅くはありません。
②離婚前からことものケアをする
離婚は子どもにとって大きな影響を与えます。しかし両親が揃ってさえいれば、子どもが幸せだという訳でもありません。実際仲の悪い両親の元で育った子どもの中には、「喧嘩をしている様子や仲が冷めきっているのを見るのは耐えられなかった」「自分を離婚しない理由にしないで欲しい」という本音を抱くケースが少なくありません。
そのため、離婚前から子どもに十分な説明をするなどのケアを怠らず、離婚しても親であることに変わりがないということを伝えれば、離婚への悪影響は最小限に抑えられるかもしれません。離婚前後で子どもへの影響が心配な方は、子どもへの接し方をしっかりと知っておきましょう。
子どものために離婚しないという選択は正しいかどうかは、こちらの記事を参考にしてください。
「『子どものために離婚しない』は本当?離婚の判断基準や子どもの本音を知って後悔しない生き方を」
一人になるのが何となく不安
一人になるのが何となく不安と感じて離婚に踏み切れない方は、まず自分の気持ちと向き合うことから始めましょう。「なぜ離婚したいのか」「離婚をすれば幸せになれるのか」を考え、離婚すべきか夫婦関係を修復する方に力を入れるべきか検討しましょう。
結婚や離婚はあくまでも通過点であり、ゴールではありません。大切なのはその先に続く人生が幸せで満足できるかどうかです。そのためにも離婚を選択しようとしまいと「自立して生きる」ことが重要に。二人でいても一人でいても「自分は何を幸せと感じるのか」を突き詰めていけば、おのずとどちらを選択すべきか分かるはずです。
経済的不安から
経済的な不安から離婚したくてもできないと考えている方は、事前の準備をしっかりすることでその不安を解消できる可能性があります。
①離婚後の生活をシミュレーションする
まずは離婚後の生活をシミュレーションし、何にいくらかかるかを計算してみましょう。そうすれば毎月必要な収入が把握できます。計算するときには現在の収入にプラスして、次に紹介するようなお金も含めてください。
②離婚時にもらえるお金を把握する
離婚後の生活をシミュレーションする場合、離婚時にもらえるお金を計算する必要があります。
財産分与 |
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慰謝料 |
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養育費 |
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婚姻費用 |
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貯金ナシで子連れ離婚を考えている方は、こちらの記事を参考にしましょう。
「貯金なしでも子連れ離婚できる?必要な離婚準備と手順、ひとり親家庭向け公的支援制度とは」
③実家を頼る
離婚するときに頼れる実家が近くにある方は、一時的でもいいので迷わず頼りましょう。子どもを実家で預かってもらえるのであれば、再就職や転職にも有利になります。親子で生活できるお金が貯まるまで、実家で暮らせないか離婚前に確認しておきましょう。
④収入アップを目指す
現在専業主婦やパート・アルバイトで働いている方は、離婚前から収入アップを目指した準備を進めてください。離婚前から仕事を増やしたり転職活動したりして、離婚後の生活ができるようにしましょう。子どもが小さくてすぐに働けないという方は、就職に有利な資格取得を目指したり、パソコン一つでできる仕事を始めるのもいいでしょう。
何から始めればいいか分からない方は(マザーズ)ハローワークに相談してください。履歴書の書き方や給付を受けながら職業訓練できる制度を紹介してもらえます。
パート主婦の離婚に必要な準備については、こちらの記事を参考にしましょう。
「パート主婦の離婚に必要な準備とは?お金・公的支援制度、注意すべきポイントを詳しく解説」
⑤公的支援について調べておく
離婚してひとり親になる場合、どのような公的支援制度が受けられるか調べておくことも重要です。まずはお住いの市区町村窓口や福祉事務所に問い合わせ、どのような支援制度があるかや受給資格条件などを確認してください。離婚後引っ越しを予定している方は、居住予定の自治体に問い合わせてください。
離婚の話し合いができない
相手のDVやモラハラが怖くて離婚の話し合いができないときには、次のような対処法で離婚を目指しましょう。
①別居する
DVする相手と一緒に住みながら離婚の話し合いをするのは、大変危険です。相手が逆上して暴れだす可能性が高いので、必ず別居してからにしましょう。離婚の話し合いができずに、離婚裁判にまで発展することが少なくないので、別居するまでにDV(モラハラ)の証拠を確保するようにしてください。
またこの場合、相手に黙って別居しても離婚時に不利に扱われることはありません。DV(モラハラ)する配偶者から逃れるための別居は正当な理由があるとみなされ、悪意の遺棄に該当しないからです。
さらに別居後の住所を知られたりしないよう、DV等支援措置の「住所、氏名等の秘匿制度」を利用することをおすすめします。この制度を利用すると、住民票の交付に制限を付けるなどで相手に自分の住所を知られる心配がありません。
②保護命令の申し立て
別居と同じタイミングで裁判所に「保護命令手続」の申し立てをしてください。保護命令とは相手方に対して、申立人に近づいたり危害を加えたりしないように命じる決定です。DV夫があなたに執着するタイプで、何とか居所を探し出そうという場合に効果があります。
保護命令は基本的に、被害を受けた本人しか申立てできません。弁護士が代理人の場合は弁護士が申立てることも可能です。地方裁判所にある申立書に必要事項を記載し、必要書類を添付すれば受理後約1週間~10日で保護命令が発令されます。
③弁護士を通じた交渉
DVする相手と離婚の話し合いをするときには、弁護士などの第三者を入れるようにしましょう。弁護士が代理人になれば、相手も逆上せずに話し合いに応じる可能性があるからです。また慰謝料や養育費などの離婚条件についての話し合いがスムーズにいくといった効果もあります。
④離婚調停→離婚裁判
弁護士を入れた話し合いでも離婚がまとまらないときには、離婚調停や離婚裁判を検討するべきでしょう。相手がDV夫の場合、協議や調停では離婚話がまとまらないことが少なくありません。そのため初めから離婚裁判を視野に入れて動くといいでしょう。
離婚裁判では、相手がDVしていたという証拠が必須です。次のような証拠を準備して裁判に臨みましょう。
- ケガをしたときの病院の診断書
- ケガをした部位や壊れた物、家の中の写真
- DVやモラハラが原因で精神病になったことが分かる診断書等
- 相手からの電話やメールの記録
- 暴言や暴力の様子を録音した音声データ
- 第三者機関(配偶者暴力相談支援センター)に相談したという記録
- 警察への被害届
- 相手の言動など毎日の様子を記録した日記
DV夫と離婚するための方法は、こちらの記事を参考にしてください。
「DV夫と離婚したい…早く安全に離婚するための手順・相談先・気になるポイントを徹底解説」
裁判で離婚理由が認められない
家庭裁判所での離婚裁判の判決に不服があるときには、その上の高等裁判所に控訴することでもう一度裁判による判断を出してもらえます。さらに高等裁判所でも離婚が認められないときには、最高裁判所に上告するという方法も。ただしこのような法的手段をとると、長期間にわたって争うことになり費用や時間もかかります。
また控訴や上告をしたとしても、確実に離婚ができる訳ではありません。裁判離婚を検討しているのであれば、初めから弁護士に相談し、離婚裁判で離婚ができるのか判断してもらうようにしましょう。
自分が有責配偶者
離婚したい側が有責配偶者だと基本的に離婚は認められませんが、夫婦関係がすでに破たんしている状態だと離婚を認めないことが逆に誤った判断となる可能性があります。そこで有責配偶者からの離婚請求であっても、次のような条件を満たせば、離婚により重大な不都合を生じさせない限り離婚を認めるという判決が出ています。
①相当長期間の別居
離婚原因がどちらにもない夫婦の場合、3~5年の別居期間があれば婚姻関係が破たんしているとして、離婚裁判でも離婚が認められる可能性が高いです。しかし離婚を請求している側が有責配偶者の場合、それよりも長い10年程度の別居期間がないと離婚が認められません。
別居期間はトータルの婚姻期間と比較して判断されるため、10年の別居期間があれば必ずしも認められるという訳ではありません。
②未成熟の子がいない
夫婦の間に未成熟な子どもがいないことも、有責配偶者からの離婚請求を認める条件です。未成熟の子がいる場合、その子の福祉を中心に考える必要があるためです。実際に7歳の子どもがいる有責配偶者からの離婚請求では、配偶者が病気中という状況も併せて信義則に反するとして、離婚が認められませんでした。
参考:判例集検索|裁判所
③離婚した場合に相手が苛酷な状態にない
離婚後に相手が精神的・社会的・経済的に苛酷な状態にないことも、有責配偶者からの離婚請求が認められる条件です。自分が原因で離婚となった場合、残された家族の生活が困窮することになると判断されると、社会正義に反するとして高い確率で離婚が認められません。
このような状態でどうしても離婚したいときには、離婚後の金銭的な援助や相当の財産分与、慰謝料の支払いが必要です。
ダブル不倫したが離婚したいと考えている方は、こちらの記事を参考にしましょう。
「ダブル不倫で離婚したい!離婚の方法や気になる慰謝料請求について解説」
離婚条件が折り合わない
離婚条件が折り合わずに、離婚したいのにできないときには、次のような対処法を取りましょう。
①自分が妥協できるところを検討
相手も離婚したいと思っている場合にできるだけ早く離婚するには、条件を譲歩する必要があるでしょう。そのためには自分が希望する離婚条件を書き出し、妥協できる部分がないか検討しましょう。離婚は相手がいることなので、自分の希望がすべて通るとは限りません。
「ここは譲れない」という条件から優先順位をつけ、妥協できる部分はどの程度まで許容できるか検討しましょう。
②離婚調停→離婚裁判
相手が離婚条件で譲らないときには、離婚調停や離婚裁判を検討しましょう。相手がなるべく早く離婚したいと思っている場合、離婚裁判にまで発展するのは避けたいと思うはずです。離婚裁判する余地があることを念頭において話し合いすることで、相手も条件を譲歩して早めに離婚しようとする可能性が高いでしょう。
離婚できないからと我慢し続けると起きること
離婚したいのにできないからと、我慢して結婚生活を続けていると次のような状況に陥る可能性があります。
自分の人生に対する後悔
離婚したいのに我慢し続けていると、自分の人生に対して後悔するようになります。確かに子どものために我慢して結婚生活を続けるのは、ある意味立派なことなのかもしれません。しかし時間は有限であり、年齢を重ねるほど人生における選択肢が狭まっていくのもまた事実。
年を取って離婚した場合でも、再就職や再婚も可能でしょうが、より不利になるのは否定できません。我慢をし続けた結果離婚すると、「今までよく頑張った」という気持ちよりも「もっと早くに離婚していれば」と後悔する可能性も。
現状によっては離婚を我慢するしかないこともありますが、自分の人生を後悔しないために、早めの決断や準備は必要でしょう。
離婚に悩んでいるときの決め手や後悔しないポイントは、こちらの記事を参考にしましょう。
「離婚に悩む人の決め手は?決断を後押しする理由と後悔しない6つのポイント」
子どもとの関係悪化
子どもの年齢が上がる程、両親の関係性や家庭環境が分かるようになります。夫婦仲が悪いのに仮面夫婦を続けていると、そんな関係を続けている親に失望したり、冷え切った家庭にいたくないと思う子どもも多いはず。結果として親を尊敬できずに良好な関係を持てない可能性も出てきます。
心身へのストレス
離婚したいほどの相手と一緒に暮らし続けると、心身へのストレスは確実に溜まります。とくに「同じ空間にいるだけで体調が悪くなる」「気配がすると動悸が出る」という場合は、間違いなく結婚生活にストレスを抱えているサインです。
このサインを無視し付けていると、回復までより時間がかかるばかりかうつ病などより重篤な病気になる可能性が。心だけでなく身体にも症状が出始めたら、相手と物理的な距離を取るようにしましょう。
夫といるのがストレスと感じたら、こちらの記事を参考にして離婚を検討しましょう。
「夫といるのがストレス!夫源病を理由にした離婚は認められる?」
余計な出費や介護問題
我慢して離婚せずにいると、余計な出費や介護問題が生じる可能性があります。相手が倹約家ならいいのですが、浪費癖や借金癖があったり、お金のかかる趣味を持っていたりすると、あなたが稼いだお金を使い込まれてしまう可能性が。離婚していれば自分のためにすべて使えるお金が無くなってしまうでしょう。
また年を取るごとに相手に大きな病気が見つかったりして、介護問題が生じる可能性があります。そこまで至らなくても義両親の介護の必要が出てくる場合も。相手に嫌気がさして離婚を検討しているのであれば、お互いが元気なうちの離婚がおすすめです。
親の介護が原因で離婚を考えるようになったら、こちらの記事を参考にしてください。
「親の介護で離婚できる?介護離婚の現状&離婚の可否、決断すべきか迷ったときの対処法」
離婚したいのにできないときのポイント
離婚したいのにできないときには、別居や弁護士選びで次のようなポイントに注意しましょう。
別居は慎重に
相手に離婚原因がないときには別居が離婚への近道になりますが、別居にはメリットもあればデメリットもあります。相手からのDVなどで早急に家を出た方がいいケースを除き、離婚前の別居は慎重に判断するようにしましょう。
別居のメリット・デメリット
離婚前の別居には、次のようなメリットやデメリットがあります。デメリットを解消できる対策が取れるか、よく検討しましょう。
メリット | デメリット |
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別居に必要な準備や注意点は、こちらの記事を参考にしてください。
「別居に必要な準備をシチュエーション別に解説!別居に関する注意点とは?」
有利に離婚するためにすべきこと
離婚を前提とした別居前には、相手の不法行為があった証拠を集めるようにしましょう。また離婚時に適切な財産分与を行うために、相手の財産の調査をすることも必須です。相手名義の財産であっても、結婚期間中に形成した財産でもう一方の好憲があったとみなされると、共有財産となる可能性が高いでしょう。
別居後は財産についての調査が難しくなるため、次のような方法で財産を把握することは重要です。
- 預金通帳・保険証券を探して銀行名(保険会社名)・支店名・種類・残高などをメモする
- 証券会社や保険会社からの郵便物がないか探す
- 株を保有している場合は、証券会社からの通知や株主優待、株式配当の通知で保有株式の詳細をチェック
- 勤務先の規定を見て、退職金の有無や支給時期などをメモする
- 不動産の固定資産税の評価額や車の車検証から車種や年式を特定
退職金を財産分与に含めるときの計算方法は、こちらの記事を参考にしましょう。
「退職金も離婚時の財産分与になる!金額計算から請求方法まで解説します」
親権を得るためにすべきこと
子どもの親権を得たいと思っているときには、必ず別居するときに子どもを連れていきましょう。子どもを置いて別居してしまうと、子どもを養育していない時期が生じ、親権者をどちらにするかの判断で不利になる可能性があるからです。
親権者を決める判断基準の一つに「継続性の原則」があります。これは現在の養育環境に問題がない場合、今まで養育していた側が離婚後も養育するのが望ましいという考え方。子どもの生活環境を変えてしまうと、精神状況に不安定さが生じてしまう可能性があるためです。
親権争いで母親が負ける理由については、こちらの記事を参考にしてください。「
「親権争いで母親が負ける理由とは?親権争いを勝ち取る6つの対策も解説」
弁護士に相談
離婚したいのに様々な理由からできないときには、離婚問題に詳しい弁護士に相談してください。DVやモラハラが原因のときには、相手との交渉を任せられます。また別居中の生活費に困っている場合は、離婚の交渉と同時に婚姻費用の請求も行ってもらえます。
離婚調停や離婚裁判になったときには、法的な知識や法的手続きに関する知識が欠かせません。より有利に離婚するためには早期解決を目指すのがポイント。弁護士は依頼者の代理人として、依頼者の利益を第一に考えて行動します。まずは無料相談を利用して、相談してみましょう。
まとめ
離婚したいのにできない理由は、相手が拒否していることや離婚条件が折り合わない、子どものことを考えてや経済的理由など様々。それでも離婚したい場合の対処法は理由ごとに異なるので、離婚調停や離婚裁判など適した方法を取るようにしましょう。
離婚したいのにできないと我慢し続けていると、自身の心身へのストレスが生ずるのはもちろんのこと、子どもとの関係が悪化したり人生を後悔する原因に。余計な出費や介護問題で苦しまないためにも、離婚のタイミングを見極めるべきです。
離婚を前提とした別居をするときには、別居のメリット・デメリットを検討し、離婚すべきか判断が必要です。より有利に離婚するためには、相手の不法行為の証拠を確保したり財産調査を忘れずに。スムーズに離婚するには、早い段階で離婚問題に強い弁護士に相談するのがベストな方法です。