- 「女性が離婚するときに必要な準備が知りたい」
- 「離婚前の準備と離婚後の必要な手続きには何がある?」
離婚をより有利に、スムーズ進めるためには事前の準備が必須です。とくに女性が離婚をする場合、離婚後の生活や子どものことについての準備が欠かせません。そこでこちらの記事では、女性のための離婚準備マニュアルとして、女性が離婚後の生活にスムーズに移行できるようにするための準備を7つご紹介。
さらに離婚準備に必要な期間や、有利に離婚する方法などについても解説していきます。離婚すると決意するまでは悩み苦しんだ人も多いと思いますが、離婚すると決めた後は気持ちを切り替えて自分と子どものための離婚準備を始めましょう。
女性が離婚するときに必要な7つの準備
女性が離婚する場合、次に紹介する7つの準備が必要です。夫に離婚を切り出す前に、これらのことをしっかりと考えたうえで一つずつ行動に移していきましょう。
①スムーズに離婚できそうか
まずは夫とスムーズに離婚できそうかについて、しっかりと考えてください。
離婚しても後悔しないか
離婚を決意した後は、離婚をしても後悔しないかについて自問自答してみましょう。一度離婚を切り出してしまうと、元のような関係に戻るのが難しくなる可能性が高いです。離婚準備期間中に、本当にこの人と離婚した方がいいのかについてしっかり考えておいた方がいいでしょう。
具体的には次のチェックリストを参考にして、後悔しないかどうかを確認してください。
- 夫婦関係が改善することはこれ以上望めないか
- 夫に対して未練はあるか
- 離婚について子どもの同意が得られそうか
- 離婚後の子どもの精神的ケアはできそうか
- 離婚後の生活を維持するための収入や蓄えはあるか
- 離婚後の住居を確保できているか・又はできそうか
- 離婚後困ったときに相談できる人がいるか
- 離婚後に生じるストレスを乗り越える覚悟はあるか
- 離婚後のライフプラン(子どもの教育・老後資金など)を立てているか
離婚を迷う理由や決断した理由を知りたい方は、こちらの記事を参考にしましょう。
「離婚を迷う人必見!迷う理由や離婚を決断した理由を知って、未来のために正しい行動を」
先に別居が必要か
夫の対応や性格次第では、離婚前に別居が必要になる可能性があります。また夫に離婚を切り出したものの、いつまで経っても応じてもらえなかった場合、別居が離婚への近道になることも。離婚前の別居が避けられないだろうというときには、離婚準備を早める必要があります。
別居後に住む住居や生活費、子どもの準備や精神的ケアなどです。とくに離婚後に子どもの親権を持ちたいと考えている場合は、必ず子どもを連れていくようにしましょう。というのもどちらが親権を持つかの判断要素として、子どもと一緒に暮らした期間が長い方を優先するという原則があるため。
別居をするときには夫にDVやモラハラがある場合を除き、夫の同意が必要です。できる限り話し合いを穏便に行い、自分が子供を連れて別居することに納得してもらってください。
別居に必要な準備については、こちらの記事を参考にしてください。
「別居に必要な準備をシチュエーション別に解説!別居に関する注意点とは?」
夫に離婚原因がある場合
夫に不貞行為などの離婚原因がある場合、夫に離婚を切り出す前に言い逃れができないような決定的な証拠を集める必要があります。不倫の事実を知って感情的になるのは避けられませんが、感情のままに夫に問い詰めるのは得策ではありません。
大きな精神的ダメージを負うことは避けられないでしょうが、その気持ちはひとまず心にとどめ、不倫の証拠を集めることが重要になります。
離婚準備はひそかに進める
離婚をより有利に進めるために、離婚準備はひそかに進めてください。つまり夫に「離婚したい」「離婚を考えている」と伝える前に、資料・証拠集めや弁護士への相談をおすすめします。というのも夫に離婚の意思や希望の離婚条件を伝えてしまうと、有利に離婚できなくなる恐れがあるため。
「離婚するときには不倫の慰謝料を請求する」と夫に伝えてしまうと、浮気の証拠を隠したり消去されるリスクが高まります。離婚をより有利に進めたいというときには、夫に知られないようにひそかに準備を進めるのがポイントです。
②離婚手続き・流れについて理解する
よりスムーズに離婚するためには、離婚手続きの種類や流れについての知識を頭に入れておきましょう。離婚方法には主に協議離婚・調停離婚・審判離婚・裁判離婚の4種類があり、それぞれの手続きの流れや注意点はこちらです。
協議離婚
協議離婚は裁判所を通さずに、夫婦間の話し合いにより離婚に合意し離婚届を提出することで、離婚が成立する手続き。厚生労働省の調査によると、令和2年の協議離婚の割合は88.3%です。約9割の人が協議離婚で離婚していることが分かります。
双方の合意さえあれば裁判所を通さずに離婚できるので、スムーズに離婚するためにもまずは協議離婚を目指しましょう。話し合いでは離婚する・しないだけでなく、財産分与や慰謝料、子どもの親権や養育費についても夫婦間でしっかりと話っておきましょう。離婚することに異論がなくてもこれらの条件で意見が一致しないときには、無理に離婚届を提出するべきではありません。次に紹介する離婚調停で話し合いを継続してください。
協議離婚の慰謝料相場が知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
「協議離婚の慰謝料相場が知りたい!増額・減額できる秘訣や慰謝料の決め方を解説」
調停離婚
調停離婚は、離婚や条件についての話し合いがまとまらなかったときに、家庭裁判所に調停を申し立てて双方の合意を目指す手続きです。男女2名の調停委員が間に入り、それぞれの意見を聞きアドバイスを行いながら離婚成立に向けての話し合いを進めます。
離婚調停で合意ができれば調停が成立し離婚に至ります。合意に至らなければ、家庭裁判所の職権で調停に代わる審判を行わない限り、不成立(不調)により終了します。また夫が家庭裁判所に出頭しないときも、調停が不成立となってしまいます。
離婚調停の期間を短くする方法は、こちらの記事を参考にしましょう。
「離婚調停の期間を短く有利にするには?長引く原因や疑問を解決して新たな一歩を」
審判離婚
離婚調停が不成立となった場合、裁判所の判断で審判が行われることがあります。裁判所が離婚の決定を下せば、審判離婚で離婚できます。ただしこの方法は離婚そのものは合意できていて、些細な条件面で合意できていないような場合にのみ行われます。実務としては、裁判所を通す手続きの中でも1.2%程度にとどまります。
審判離婚になる条件や流れは、こちらの記事を参考にしてください。
「審判離婚とは?審判離婚になる条件や離婚までの流れを知ろう」
裁判離婚
裁判離婚は調停が不成立になった場合に、家庭裁判所に訴えを起こして離婚を目指す手続きです。裁判離婚では、民法で定める「法定離婚事由」が立証できないと離婚は認められません。
① 不貞行為 | 夫婦間の貞操義務に反して、配偶者以外の異性と性交渉やそれに類する行為に及ぶこと(浮気や不倫) |
② 悪意の遺棄 | 民法第752条の夫婦の義務に正当な理由なく違反し、婚姻生活を破綻させる行為のこと
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③ 3年以上の生死不明 | 最後に消息を絶った日から、3年以上その人が生きているか死んでいるのか分からない状態のこと |
④ 回復の見込みがない強度の精神病 | 配偶者が夫婦の協力義務を果たせないほどに重度で、回復の見込みがない精神病にかかっている |
⑤ その他婚姻を継続しがたい重大な事由 | 婚姻関係が破たんし、回復の見込みがないこと
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単に性格や価値観が合わないというだけでは、裁判離婚は認められません。離婚について夫ともめそうなときには、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
離婚裁判にかかる費用については、こちらの記事を参考にしましょう。
「離婚裁判の費用を徹底解説!金額の相場や払えないときの対処法、注意点とは?」
③離婚時のお金について
離婚して新しい生活をスタートさせるためには、お金はとても大切です。離婚時に不利にならないよう、夫と取り決めるお金にはどんな種類があるか知っておき、どのくらい得られるのか予測をしておきましょう。
婚姻費用
離婚までに別居する場合、夫よりも収入が少ない方は別居中の生活費を「婚姻費用」として受け取れます。また収入は同程度でも、別居中あなたが子どもを養育する場合にも夫に婚姻費用の分担を請求できます。婚姻費用とは夫婦と未成熟の子どもが生活を維持するために必要な生活費のことで、民法でも定められています。
(同居、協力及び扶助の義務)
第七百五十二条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
(婚姻費用の分担)
第七百六十条 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
引用:民法|e-GOV法令検索
婚姻費用の金額は、夫婦の収入や子どもの人数、年齢などを総合して月額○○円という決め方をします。実際には裁判所の「婚姻費用算定表」を使用して具体的な金額を算出します。婚姻費用の請求ができるのは、請求した時点から離婚成立までの期間と決まっています。さかのぼって請求できないので、別居したらすぐに請求するのがポイントです。
ただし次のようにあなたに別居の責任があるときには、婚姻費用の請求が認められない恐れがあるので気を付けましょう。
- 別居の原因があなたにある場合(あなたの不倫など)
- やむを得ない事情もなくあなたが勝手に別居した場合
婚姻費用をもらい続ける方法が知りたい方は、こちらの記事を参考にしましょう。
「婚姻費用をもらい続ける方法は?損しないための対抗策とよくある質問に答えます!」
財産分与
財産分与とは、夫婦が結婚期間中に協力して形成してきた財産を離婚時に公平に分ける制度。一方が専業主婦(主夫)であっても、家事や育児を担っていたことで財産を形成・維持できたとみなされるため、原則1/2ずつとなります。離婚前に別居した場合は、別居までに得た財産が対象です。
分与対象の財産は、財産はプラスの財産(資産)だけでなく、マイナスの財産(負債)も対象になります。
プラスの財産(資産) | マイナスの財産(負債) |
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ただしマイナスの財産の場合、婚姻生活を継続するために必要な住宅ローンや教育ローン、生活費のための借金が対象です。結婚前からの借金や浪費のためのキャッシング、自分一人が楽しむためのローンは財産分与の対象になりません。
マイホームの財産分与
離婚時にマイホームを財産分与で取得したいと考えている人は、住宅ローンがいくら残っているのか確認が必要です。一人でローン返済ができないような場合は、取得を諦めた方がいいかもしれません。返済してでも自分のものにしたい方は、ローンを借りている金融機関への相談が必須です。
特に不動産の名義もローン名義も夫になっている場合、妻名義に変更するときには金融機関の承諾が必要になります。妻の収入が不安定だったり少なかった場合、名義変更が認められない場合があるからです。夫との交渉次第ですが、住宅ローン返済は夫に続けてもらい、妻が家に住み続けるというケースもあります。
離婚時の財産分与で名義変更な必要なものについては、こちらの記事を参考にしてください。
「離婚時の財産分与で名義変更が必要?必要な財産ごとの手続き方法・必要書類・期限を詳しく解説」
扶養的財産分与という考え方
財産分与には、離婚後の生活に困る側をバックアップするという役割もあります。これを扶養的財産分与といいます。例えば専業主婦が病気や年齢、障害などの理由で働けないときなどは、離婚後に経済的に困らないように扶養的財産分与が認められる可能性があります。
ただし離婚してから亡くなるまでずっとという訳でなく、離婚後の一定期間、生活が安定するまでの助けとしてという役割があります。
請求期限
財産分与の請求には期限があるので気を付けましょう。離婚した後でも請求できますが、離婚成立から2年以内に請求しないと請求権利がなくなります。夫婦間の協議で財産分与の取り決めをしたのに財産を渡してくれない場合、5年以内に請求しないと消滅時効にかかります。裁判で取り決めをした場合でも、10年で消滅時効となります。
年金分割
年金分割は財産分与の一種で、婚姻期間中納めた保険料額に応じて将来貰える厚生年金を分割する制度。婚姻期間中に夫婦が協力して納めた年金保険料は、夫婦の共有財産として扱われるため。なお年金分割の対象となるのは「厚生年金」だけです。国民年金や国民年金基金、確定給付企業年金は分割の対象となりません。
方法は2種類
年金分割には、「合意分割」と「3号分割」の2つの方法があり、それぞれに手続きの方法などが異なります。
年金分割の種類 | 合意分割 | 3号分割 |
---|---|---|
対象者 | 離婚した夫婦の一方
(被保険者の種別は不問) |
離婚した第3号被保険者 |
夫婦間の合意 | 必要
(合意が得らえない場合は家庭裁判所が分割割合を決定) |
不要 |
対象期間 | 婚姻期間全体 | 平成20年4月1日以降の婚姻期間のうち、第3号被保険者であった期間 |
分割割合 | 報酬比例部分の1/2を上限とする範囲内 | 報酬比例部分の1/2 |
どちらも方法も対象となっている方は、どちらの分割方法があなたにとってお得かを考えたうえで、必要な手続きを取りましょう。
請求期限
年金分割の請求期限は、離婚が成立した翌日から起算して2年以内に行う必要があります。離婚したからといって自動的に年金分割が行われるわけではなく、分割を希望する側が自分で手続きをしなければなりません。請求期限を過ぎてしまわないよう、離婚したら速やかに手続きを行ってください。
慰謝料
慰謝料とは離婚によって精神的苦痛を受けたことに対する損害賠償金のこと。相手の不倫やDV、モラハラといった不法行為があり、それが原因で離婚した利精神的苦痛を受けたときに夫に請求できるお金です。夫の不倫やDVで離婚をお考えの方は、慰謝料請求についても検討しましょう。
慰謝料の相場
受け取れる慰謝料の相場は、受けた精神苦痛の程度や婚姻期間の長さ、悪質度などにより50万~300万円ほどといわれています。こちらは主な離婚理由ごとの、慰謝料相場です。
不貞行為 | 100万~300万円 |
DV・モラハラ | 50万~300万円 |
性の不一致 | 0円~100万円 |
悪意の遺棄 | 50万~300万円 |
婚姻を継続しがたい重大な事由 | 100万~300万円 |
性の不一致の相場金額が0円からなのは、それを証明するのが困難なため。ただし性の不一致にプラスして不貞行為により離婚した場合は、慰謝料金額が増額される可能性が高いです。
離婚慰謝料の相場が知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
「離婚慰謝料の相場が知りたい!離婚理由や婚姻期間による相場・金額をアップさせるポイントを解説」
証拠が必須
離婚慰謝料を請求するのは、夫が上記のような行為を行っていた事実が第三者にでも分かる証拠が必要です。慰謝料を請求したいと考えている方は、証拠の確保に努めましょう。具体的な証拠の種類や集め方については、離婚問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。
LINEで浮気の証拠を見つける方法は、こちらの記事を参考にしましょう。
「LINEで浮気の証拠を見つける13の方法|見つけた後にすべきことや注意点とは?」
請求期限
夫に対する離婚慰謝料の請求にも期限があります。原則として離婚が成立してから3年経過すると慰謝料を請求できなくなります。ただし不倫した夫に対する慰謝料請求は、不倫の事実があったことや不倫の相手が誰かということを知ってから3年が請求期限です。離婚時には不倫のことが分からない場合でも、不倫の事実を知った時点から3年以内であれば、慰謝料を請求できます。
養育費
未成熟の子どもを連れて離婚する場合、親権者として子どもの養育費を受け取れます。養育費は文字通り、子どもを養育するために必要な費用のことで、食費や医療費、教育費や衣服代などが含まれます。それ以外にも夫婦間で合意があれば、特別費用として大学進学のための学費や病気やケガによる高額な医療費なども支払ってもらえます。
養育費の相場
慰謝料の相場は婚姻費用と同様に、夫婦の収入と子どもの人数、年齢によって算出できます。裁判所が公表している「養育費算定表」を目安にすると、相場が分かるでしょう。例えば14歳未満の子どもが1人いる場合で、夫(義務者)の給与年収が700万円、妻(権利者)の給与年収が200万円の場合の養育費は「6万~8万円」が目安となります。
養育費の算定表が高すぎるとお悩みの方は、こちらの記事を参考にしましょう。
「養育費の新算定表が高すぎる…改定の理由と従来との変更点、支払えないときの減額方法とは?」
④離婚後の生活について
女性が離婚する場合、離婚後の生活についてもよく考える必要があります。具体的には次のような項目を検討してください。
生活に必要な費用の確認
離婚後に新しく生活を始めるにあたり、生活に必要な費用がいくらかかるのか事前に計算しておきましょう。それにより離婚時に受け取れるお金がどのくらいで、毎月の収入がいくら必要になるか明らかになるからです。具体的には、毎月かかる食費や住居費といった生活費にプラスして、離婚に伴う引っ越し代や賃貸の初期費用、家財道具費用などもシミュレーションしておきましょう。
住む場所
離婚後の住まいについては、実家に戻る、賃貸を借りて引っ越す、今住んでいる家にそのまま残るといった選択肢が考えられます。これからの生活や子どものこと、仕事への利便性などを考えながら、どこに住むのがベストなのかよく検討しましょう。
前出の通り、住宅ローンが残っているマイホームに住み続けたい場合は、ローン支払いが可能かや名義変更に伴い金融機関の承諾が得られるかがポイントに。現在家族で賃貸物件に住んでいる方で離婚後もそのまま住み続けたい場合は、賃貸借契約の変更手続きが必要です。
今の家には住みたくないが賃貸を借りるお金がないという方は、公営住宅への入居を検討しましょう。母子家庭の場合には公営住宅に優先的に入居できる制度があり、初期費用や家賃を安く抑えられます。
離婚で市営住宅の手続きがどうなるかについては、こちらの記事を参考にしてください。
「離婚で市営住宅の手続きはどうなる?離婚前・離婚後の申し込みのポイントを解説」
離婚後の収入
現在専業主婦や夫の扶養の範囲内で仕事をしている方は、離婚後の収入を確保する手段を考えなければなりません。そのためには離婚前から就職先を探しておいたり、働いている間子どもを預かってくれる先を探したりする必要が。
今すぐ離婚して働くのは難しいと判断した場合は、資格を取得したり職業訓練を受けたりして、収入を得るための準備をしていきましょう。離婚後に収入が得られる準備が整うまでは、離婚を保留するのも一つの手です。
周囲の協力体制
離婚後に何かあったときに頼れる人がいれば、1人で子どもを育てる場合にも強い味方になってくれるでしょう。例えば収入が安定するまで実家に戻ってきてもいいと言われているケースや、働いている間に親のサポートを受けられるなどです。そうでなくても友人や職場の同僚など身近に、理解してくれる人がいれば相談してみてはいかがでしょうか。
公的支援・減免制度
離婚後経済的に余裕がなくなりそうなときには、公的支援や減免制度が活用できないか検討しましょう。とくにひとり親世帯の場合には、子どもに関する手当や支援が受けられます。具体的には次のような公的制度があります。
- 児童手当
- 児童扶養手当
- 生活保護
- 児童育成手当
- 母子家庭等の住宅手当
- ひとり親家庭の医療費助成制度
手当や助成制度以外にも、次のような減免制度や割引制度があります。お住いの自治体によって実施状況が異なるので、事前に役所に確認してみましょう。
- 寡婦控除
- 交通機関の運賃割引
- 上下水道の減免
- 粗大ごみ等手数料の減免
- 保育料の減免
離婚後の児童手当等の手続きについては、こちらの記事を参考にしましょう。
「離婚後の児童手当・児童扶養手当の手続きについて|ケース別の変更方法と基礎知識」
⑤子どもの親権・面会交流について
子どもを連れて離婚を希望する場合、親権獲得は必至です。同時に元夫と子どもとの面会交流についても検討する必要があります。
親権
親権は未成熟の子どもの利益のために、子どもに監護・教育を行ったり、子どもの財産を管理したりする権利・義務のことをいいます。婚姻期間中は父母それぞれに親権が認められていますが、離婚するときには父母のどちらか一方を親権者としなければなりません(2024年11月現在)。
夫婦の話し合いで親権者をどちらにするか合意できれば問題ありませんが、親権争いになったときには調停や裁判で親権者を決めていきます。裁判所では離婚時に親権をどちらが持つかについては、子どもの福祉や利益を最優先にして判断されます。
- 監護の実績や意欲があるか
- 監護の継続性(今まで主として監護してきた方が有利)
- 母子優先の原則(子どもが10歳未満の場合は特に)
- きょうだい不分離の原則(きょうだいが2人以上いる場合は同じ親の元で暮らすべき)
- 子ども自身の意思(子どもが15歳以上の場合)
- 周囲のサポートはあるか
その他にも親の健康や経済状況、育てる環境が整っているかなど、総合的にどちらが親権者としてふさわしいのか判断されます。
親権争いで母親が負けることってあるの?という方は、こちらの記事を参考にしてください。
「親権争いで母親が負ける理由とは?親権争いを勝ち取る6つの対策も解説」
面会交流
離婚後子どもと離れて暮らすことになる親には、定期的に子どもと会ったりやり取りができる「面会交流」の権利があります。離婚時には面会交流について、次のような項目を決めておくといいでしょう。
- 面会交流の頻度
- 面会交流の時間や場所
- 連絡方法
- 都合が悪い時の対応
- 学校行事へ参加するかどうか
- 宿泊・旅行は可能かどうか
- 祖父母との面会をどうするか
- 交通費の負担はどうするか(遠方の場合)
人によっては「夫に子どもを会わせたくない」と考える方もいるでしょう。しかし面会交流は一方の親と子どもに与えられた権利で、あなたがいくら嫌でも原則として拒否できません。ただし次のようなケースでは、状況によって面会交流を拒否できます。
- 子ども又は母親に暴力を振るっていた
- 子どもの意思で面会交流を拒否している
- 面会交流時に夫が子どもを連れ去るリスクがある
- 相応しくない場所に子どもを連れていった実績がある
夫との面会交流を拒否したいとお考えの方は、こちらの記事を参考にしてください。
「面会交流を拒否したい!子供に会わせないことの違法性と対処法を解説!」
⑥自分と子どもの姓・戸籍について
女性が離婚する場合、自分と子どもの姓(名字)や戸籍をどうするかについても、事前に考えておく必要があります。
離婚後の姓をどうするか
離婚届を提出すると、夫の姓を名乗っていた人は旧姓に戻るのが原則です。結婚していたときの姓を離婚後も名乗りたい場合は、離婚の日から3カ月以内に「離婚の際に称していた氏を称する届」を本籍地または住民票がある自治体の役所に届け出る必要があります。
子どもがいる場合、両親が離婚しても子どもの姓は夫側のままで変わりません。ここで何も手続きをしないと、子どもを連れて離婚して一緒に暮らしているのに母親(旧姓)と子ども(婚氏)とで名字が異なる状態に。
子どもの姓を母親と同じにするには、家庭裁判所に「子の氏の変更許可」を申し立てる手続きが必要です。子どもの年齢や子どもの意思、あなたの気持ちなどにより、どちらの名字を選択するか事前によく考えておきましょう。
離婚後の戸籍をどうするか
離婚後に自分と子どもの姓を同じにするには、自分を筆頭者とした戸籍を作り、そこに子どもを入れるという手続きが必要です。戸籍というのは親と子の二世代までしか入ることができず、祖父母-母親-子という三世代を同一の戸籍に入れることができません。また一つの戸籍には、同じ姓の人しか入ることができないというのも原則です。
そのため、自分と子どもの姓を同じにするためには、新しい戸籍を作らなければなりません。離婚後の戸籍は、旧姓でも婚姻時の姓でも作れます。ただし役所に「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出した後は、旧姓に戻すことができなくなるので慎重に検討してください。
離婚後の戸籍がどうなるかについて詳しくは、こちらの記事を参考にしましょう。
「離婚後の戸籍はどうなる?チャート式選択肢と子どもの戸籍・名字について徹底解説」
⑦離婚協議書の作成
夫婦の話し合いで離婚条件等が決まったら、その内容を離婚協議書に残しておきましょう。記録に残しておくことで言った・言わないのトラブルを防げます。養育費の支払いなどより確実に約束事を守ってもらうためには、取り決めた内容を公正証書にすることをおすすめします。
中でも「強制執行認諾文言付き公正証書」を作成しておくと、毎月の養育費や財産分与の分割払いなどが滞ったとき、裁判所手続きを経なくても強制執行により相手の財産を差し押さえできます。
厚生労働省の調査によると、離婚時に養育費について取決めが行われている母子家庭の割合は42.9%、そのうち現在も養育費を受け取っている割合は24.3%にとどまります。つまり養育費の取り決めをしていても18.6%の人が養育費を受け取れていないという現状です。
そうならないためには、離婚時に条件についてしっかりと取り決めを行い、いざというときにすぐに強制力を発揮できる公正証書を作成することをおすすめします。
養育費を強制執行するメリット・デメリットは、こちらの記事を参考にしてください。
「養育費を強制執行する・されるデメリットとは?強制執行の基礎知識とデメリット回避方法」
女性の離婚準備に必要な期間
女性が離婚する場合に必要な準備について知ったところで、その準備にどのくらいの期間がかかるのか解説していきます。
平均的な離婚準備期間
離婚時の平均的な準備期間は1年前後といわれています。しかし女性が離婚する場合の準備期間は、「女性自身の経済力」と「未成年の子どもの有無」によって異なります。女性自身にしっかりとした経済力があり未成年の子どもがいない場合には、比較的短期間で離婚に至るケースが多いようです。
子どもがいると長引く傾向に
しかし未成年の子どもがいる場合、離婚の準備期間は長引く傾向に。というのも子どもの親権や養育費、面会交流など離婚時に話し合うべきことが増えるからです。また子どもの年齢やタイミング(受験・進学など)によっては、離婚時期をずらす必要も出てくるでしょう。
未成年の子供を連れて離婚する場合は、子どもへの影響を第一に考えながら、通常よりも時間をかけて準備を進めるべきでしょう。
妊娠中なのに離婚を考えている方は、こちらの記事を参考にしてください。
「妊娠中なのに離婚したい…気になる親権や養育費、認知について解説」
専業主婦は離婚前にしっかり準備
同様に経済力のない専業主婦の方もまた、離婚前にしっかりと準備を行ってください。まずは離婚後の生活基盤を安定させるために、収入を得るための準備を始めてください。ブランクがありなかなか就職先が見つからないという方は、資格取得などのスキルアップを目指しましょう。
このような場合の離婚準備期間は年単位になる可能性がありますが、焦らないことが重要。離婚を決意した時点で精神的には限界が来ているでしょうが、離婚後も子どもと一緒に暮らすためには経済的な安定が何よりも大切です。実家など頼れるものは総動員しながら、離婚準備を着実に進めましょう。
専業主婦だけど離婚をお考えの方は、こちらの記事を参考にしましょう。
「専業主婦だけど離婚したい!離婚後に成功するための準備と注意点」
モラハラ・DVがあるときは身の安全を第一に
専業主婦の方や未成年の子どもがいる方の離婚準備は時間をかけてと伝えましたが、夫からのDVやモラハラなどで身の危険を感じているときにはその限りではありません。早急に夫から距離を置くために、しかるべき対策を取る必要があるでしょう。
まずは警察や都道府県の配偶者暴力支援センターに相談し、夫からDVを受けていること、保護を必要としていることを伝えましょう。そのうえでシェルターなどに子どもと一緒に逃げることも考えてください。夫から再び危害を加えられないか心配な方は、裁判所に申し立てて「接近禁止命令」を発令してもらってください。
DVから身を守るための接近禁止命令の出し方は、こちらの記事を参考にしてください。
「DVから身を守る『接近禁止命令』を出すには?手続き方法・注意点・離婚の方法を詳しく解説」
【手続き別】離婚成立までの期間
離婚には様々な手続き方法があると説明しましたが、手続き別の離婚成立までの期間は以下の通りです。
協議離婚 | 1カ月~半年 |
調停離婚 | 半年~1年前後 |
裁判離婚 | 1年~2年程度 |
争点が多い場合や事実を認定する証拠が少ない場合、双方の対立が激しかったりすると調停や裁判が長引く傾向に。また財産分与の調査が入ったり子どもの親権が争点になっていたりすると、様々な調査によって離婚までの期間が長引きます。
離婚裁判の流れと期間について詳しくは、こちらの記事を参考にしてください。
「離婚裁判の期間を手続きの流れごとに解説!長引くケース・期間を短縮する秘訣とは?」
スムーズに離婚するためのポイント
女性が離婚するにあたり、スムーズかつ有利に離婚するためには、次のような点に気を付けましょう。
証拠集めを忘れずに
夫に離婚原因があるときには、証拠集めを忘れずに行いましょう。できれば離婚話を切り出す前に、不倫やDV、モラハラがあったことが分かる証拠を確保するのがいいでしょう。離婚の話を切り出した後では、夫が警戒して証拠を集めるのが難しくなるからです。離婚前に別居をお考えの方は、別居前に必要な証拠を集めるのがベスト。
離婚そのものや慰謝料を裁判所で争うことになったときには、あなたの言い分が認められるかどうかは、証拠の有無やその内容にかかってきます。客観的に見て第三者からもそのような行為があったと分かる証拠が得られれば、その後の離婚裁判で有利に働きます。たとえ裁判にまで至らなくても、協議や慰謝料請求に役立つでしょう。
浮気調査で証拠が出なかった場合にどうしたらいいかは、こちらの記事を参考にしましょう。
「浮気調査で証拠なかった…どうしたら?自分で証拠を集めるときのポイントと注意点とは?」
夫の財産調査
離婚を決意したら夫に切り出す前に、夫の財産調査も忘れずに行ってください。離婚協議の段階で、夫が自分の財産を隠さずにすべて開示してくれるとは限りません。隠している財産があるときには、財産分与で不利になる可能性があります。
できれば夫の給与明細や源泉徴収票、預金通帳などのコピーを取っておきましょう。また証券会社から来た通知や不動産の登記簿などを調査して、隠し財産を持っていないかどうかをチェックしてください。また貸金庫の鍵が自宅に保管されていないかや、通帳に貸金庫の手数料が引き落としされていないかも確認してください。
共有財産として請求を忘れがちなのが、任意保険の解約返戻金や退職金など。保険証券や退職金額計算書などを探し出し、こちらも忘れずにコピーしておきましょう。
離婚時に財産を隠すことはできるか知りたい方は、こちらの記事を参考にしましょう。
「離婚時に貯金を隠すことは可能?財産分与の基礎知識と不利にならない方法」
NG行為をしない
スムーズに離婚するには、次のようなNG行為はしないように注意しましょう。
- 準備なしに離婚を切り出す
- 不用意に離婚条件の約束をする
- 正当な理由なく家を出る
- 別居中の不倫
- 財産を隠す・持ち出す
よく考えずに相手が提示した離婚条件を飲んでしまうと、後から覆すのが難しくなります。また正当な理由なく家を出て戻ってこないと、悪意の遺棄としてあなたが有責配偶者になってしまいます。たとえ別居中であっても、他の男性との不倫や誤解されるような行為はNGです。逆にあなたが慰謝料を請求される立場になってしまいます。
別居後の離婚話が進まないときには、こちらの記事を参考にしてください。
「別居後の離婚話が進まない…原因と対処法、スムーズに離婚するためのポイントを解説!」
弁護士に相談
離婚を有利に進めるためには、弁護士に相談するのがベストです。とくに夫と冷静に離婚の話し合いができない方は、早めに弁護士に依頼するのがいいでしょう。また離婚条件がどうしても折り合わないという場合も同様です。弁護士が第三者として間に入れば、相手との交渉を任せられたり専門家としての立場から、様々なサポートを得られるはずです。
前出の証拠や財産の証拠集めなどでは、弁護士から「このような証拠をこうやって集めるといい」などのアドバイスを受ければ、より効率的に動けます。離婚問題に強い弁護士であれば、個々の具体的な事情に応じてあなたの希望やそのための戦略を示してくれるでしょう。
まとめ
女性が離婚を決意したら、スムーズに離婚できそうかよく考え、離婚の方法についての知識を得てください。同時に離婚後の生活のためのお金や収入、子どもの親権や養育費についてもよく考えてください。事前に自分と子どもの姓・戸籍をどうしたいのかについても検討するといいでしょう。
女性が離婚までに必要な期間は、離婚方法や子どもの有無、女性自身の経済状況によって異なります。協議離婚だと長くても半年程度ですが、離婚裁判になると年単位でかかることも覚悟してください。なるべく有利に離婚するには、証拠の確保や財産の調査が必須です。
そしてなるべく早い段階で、離婚問題に強い弁護士に相談することも忘れずに。当人同士で協議がまとまらずに調停や裁判になるケースでも、弁護士が間に入ると協議で合意できる可能性も。まずは弁護士事務所の無料相談を利用して、あなたが信頼して任せられる弁護士を見つけましょう。